ビジネス会計検定ってどんな資格?資格の必要性・難易度・勉強法まで全て解説!
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「ビジネス会計検定試験という会計関連の資格があると聞いたけど、どんな資格?どんな活用ができるの?」
最近、簿記資格以外の会計系の資格で、実用的な資格として「ビジネス会計検定」が注目されています。
この記事では、そのビジネス会計検定について、その内容や特徴、活用の仕方、難易度や勉強方法、試験日程などについて解説していきます。
読み終わった時には、ビジネス会計検定の社会での有効性や難易度、試験対策についての知識がしっかり身についていることでしょう。
ビジネス会計検定試験についてざっくり説明すると
- 財務諸表を分析する能力が身に付く
- 大阪商工会議所主催の資格
- ビジネスマンにとって大きな武器
- 就活生にとっても企業選びに有利
ビジネス会計検定ってどんな資格?
最近、会計分野の資格で注目を集めているのが、「ビジネス会計検定」という資格です。
ビジネス会計検定の特徴、内容、簿記資格との違い、難易度など、詳しく見ていきましょう。
ビジネス会計検定とは
ビジネス会計検定は、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表に関する知識や分析力を問う資格で、財務諸表が表す数値を理解し、ビジネスに役立てることを目的としています。
つまり、ビジネス会計検定は、財務諸表の 分析力に重点をおいた試験であると言えるでしょう。
また、ビジネス会計検定試験は、知識としての「会計」 と 実際の「ビジネス」 を結びつける検定とも言えます。
ビジネス会計検定の主催団体
ビジネス会計検定は、大阪商工会議所の主催で行われています。
受験者層のデータを見てみると、21~30歳と31~40歳の受験者が3割ずつ、41~50歳が2割程度となっています。
比較的若い層が受験しているようです。
さらに職種ごとに見ると、製造業(16.7%)、サービス業(15.6%)、金融・保険業(11.0%)、学生(10.2%)、卸売業(8.2%)、情報・通信業(8.2%)、電気・ガス・水道業(4.5%)と、様々な業種の方が受験しているようです。
ビジネスマンは数字に強いとかっこいい!
ビジネスマンは、この検定を通して、客観的に数字をみて判断する力を養うことができます。
会計は単なる数字の収支ではなく、ビジネスの共通言語だからです。
ビジネス会計検定を学ぶと、数字を通して会社の状況を理解するための基本的な知識や、考え方を身につけることができます。
さらに、この検定の勉強を通して、財務諸表の勉強をすることで、新聞や経済雑誌、ニュースの見方が変わってくるでしょう!
数字で論理的な思考が出来るビジネスマンは、多くの会社から重宝されます。
ビジネス会計検定と簿記との違いは?
簿記検定は、日々の取引から、仕訳などを行い財務諸表を作成することが目的です。皆さんもよく知っている、典型的な会計資格ですね。
一方、ビジネス会計検定は、作成時に用いられた会計基準や法令を理解し、財務諸表を分析し、企業状況を把握することに重きをおいています。
イメージとしては、「簿記=財務諸表の作成」「ビジネス会計検定=財務諸表の分析」という違いと思ってください。
財務諸表を作り出すことは、もちろん重要なことですが、それを活用することはさらに重要です。そもそも、財務諸表は活用されることに最も重要な意味があるからです。
未だ知名度で言えば、日商簿記の方がかなり高いようですが、ビジネス会計検定は、最も重要な部分を担っている資格であると言えるでしょう。
ビジネス会計検定試験で扱う財務諸表とは
ビジネス会計では、財務諸表を分析する力が試されますが、そもそも財務諸表とは一体何なのでしょうか?
財務諸表の意味が分かると、その重要性が分かり、ビジネス会計検定がいかに重要な資格なのかを理解することが出来ます。
簡単に、財務諸表の中身を覗いてみましょう!
財務諸表の中身
財務諸表とは、簡単に言うと「会社の成績表」ですね。会社の経営がうまくいっていると、当然、成績表の中身も良くなっていきます。
会社の成績は、端的に言うと、「いくら儲かっているか」や、「お金は十分にあるか」、「お金は十分に回っているか」というポイントで判断します。
それらの成績ポイントに相当するのが、財務諸表の「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」と言われる計算書類です。
これらは、企業経営の実態を表す、重要な書類です。では、具体的にそれらの書類が何を表しているのか、見ていきましょう。
損益計算書
この計算書類は、会社が1年間に達成した利益を集計する資料です。
会社を支えるのは、売上や利益です。しかし、実は利益と言っても様々な利益の種類があります。
利益が複数あるって、何だか不思議ですね。でも、それらの利益には、とっても重要な意味があるんです。
粗利益
売上から商品の原価や製品の製造原価を引いた後の利益です。
ビジネス上最初の利益ですから、ここがそもそも赤字ということは、ビジネス自体が成り立っていないことを表します。かなり、酷い会社ということですね。
営業利益
粗利益から、各種の経費を引いた後の利益を表します。本業で稼いだ利益と言えます。
営業利益でしっかり稼いでいる会社は、健全な経営を行っていると判断して良いでしょう。
経常利益
営業利益から、本業以外での収入や支出を差し引きした後の利益です。
本業以外の収入というと、預金の金利や株の売買で得られた収入などです。反対に、本業以外の支出では、借入金の金利や株の売却損などがあります。
貸借対照表
この計算書類は、企業の財政状態を表しています。企業活動にはお金が必要です。貸借対照表は、そのお金をどうやって集めて、どう使ったかを表す資料と言えます。
「なぜ、そんな資料が要るの?」「儲かっていればいいじゃない?」この計算書類のお話をすると、そんな疑問も湧いてきそうですね。
しかし、儲かっていても、現金が無い会社は倒産します。取引先に一杯買ってもらって、計算上、利益は出ているけれど、支払いは来月ってことありますよね。
こんな状態で、仕入先に支払いが出来なくなってしまう現象が、いわゆる「黒字倒産」というやつです。
そういうのを、貸借対照表で見抜くことが出来るのです。財務諸表って凄いですよね。
貸借対照表の中身は「自己資本」「負債」「資産」に分かれます。
自己資本
ビジネスを行う上での自前のお金のことです。他人からお金を借りると返済や金利の支払いが必要ですが、自己資本にはその必要がありません。
自己資本が多いと、安定した経営が可能になります。
負債
これは、いわゆる借金のことです。多くの企業は銀行などの金融機関から資金を借り入れています。
銀行借り入れの他に、広い意味では買掛金と言われる、他社から商品や原材料を仕入れて、まだ払っていないものも、負債に含まれます。
簡単に言うと、借金以外でも、将来現金が減る要素があれば、それは負債に入るわけです。
資産
自己資本と負債によって資金を調達した企業が、その資金をどう使ったかという結果が資産です。いわば、お金の使い道ですね。
現金や在庫している商品、商品を売ってまだ拐取していない売掛金、土地や建物、設備などがあります。
資産が多いことは、一般的に良いことですが、ビジネスに活用できていない設備や売れない商品が多いことは経営上大きな問題です。
キャッシュフロー計算書
現金の増減と、その理由を調べることが出来る計算書類です。
お金が増えたり減ったりする理由を、「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」 の視点から分析します。
- 営業活動によるキャッシュフロー
本来のビジネス活動によって生み出される現金の流れを表します。売上が上がったり、仕入原価が下がったりすると増加します。これは、企業がお金を生み出す基本ですね。
- 投資活動によるキャッシュフロー
株式や土地、建物などを売買した際に発生する現金の流れを表します。
- 財務活動によるキャッシュフロー
金融取引による現金の流れを表します。銀行から借り入れを行えば、キャッシュは増えますし、返済をすればキャッシュは減ります。
ビジネス会計検定の実用性
これまで、ビジネス会計検定の概要を見てきましたが、次はこの資格がどんなシーンで役に立つのでしょうか?
学生の就職活動や、ビジネスシーン、職種別などに分けて見ていきます。
学生が取っておけば就職活動に役立つ!
ビジネス会計検定では、2級以上の資格を持っていれば、学生の場合、金融機関への就職活動のアピールとなります。
企業などに融資を行う際、金融機関では、必ず財務諸表を分析するからなのです。
さらに、簿記2級を併せて取得していれば、評価はもっと上がる事でしょう。
また、企業の財務諸表を読むことができれば、新聞、経済雑誌、経営記事の見方が大きく変わり、本当に業績が安定している会社がわかります。
と言うことは、就職活動の際の企業選びについても、ライバルが出来ないことが出来てしまうわけです。
会社に内定した後からでも、資格を取得すれば、同期に一歩リードできるでしょう。
多くの分野に役立つ試験!
昨今、新たな取引先を評価する際や、自社の決算内容を理解する、株式投資する、新聞記事を理解するなどの様々な場面で、会計の知識は求められています。
そのため、ビジネス会計検定は経理部門の方に限らず、様々な分野の方に役立つ資格試験であると言えます。
また、ビジネス会計検定は簿記の知識を必要としないため、実社会で役立つ会計知識を得ることができます。
会社員の場合、自社や他社の決算内容や業績を理解しやすくなりますし、日経新聞やニュースに載る企業の業績が理解できるようになります。
キャリアに不可欠
数字から裏付けられる論理的説明力は、社会人として必要なスキルです。そのため、ビジネス会計検定試験合格が昇格・昇給に役立つ企業も存在しています。
キャリアが上がり管理職となったとき、財務諸表の分析力は、大いに役立つでしょう。
管理職のマネジメントには分析力が不可欠です。自社、ライバル社の財務諸表を分析し、次の戦略をたてることが可能になるからです。
財務数値を分析する力は多岐に役立つ
ビジネス会計検定で身に付く財務数値を分析する力は以下の様々な役職や場面で役に立つでしょう。
- 【経理】
自社の財務状況を分析して、事業の弱点を把握し、社内で共有することが出来ます。
- 【マーケティング】
他社の広告・宣伝活動を分析し、自社の活動の参考にすることが出来ます。
- 【経営企画】
市場や競合の財務状況を分析し、今後の経営戦略を決定することが出来ます。
- 【営業】
取引先の財務状況を分析し、営業戦略を練ることに活用できます。
- 【人事】
自社の財務状況を理解し、応募者に適切な情報を提供できます。
- 【副業】
投資対象企業の財務諸表を分析し、株式投資の善し悪しを考えることが出来ます
ビジネス会計検定試験の試験内容・難易度
では一体、ビジネス会計検定の試験内容や難易度は、どの程度なのでしょうか?具体的な項目名や数値をもとに解説していきます。
ビジネス会計検定の試験範囲と出題形式
ビジネス会計検定は、1~3級までの3段階に分かれています。
ビジネス会計検定の試験内容は以下の通りです。2級受験ならば3級、1級受験ならば2級と3級の試験の出題範囲も包含されるため注意が必要です。
目標級と勉強時間のバランスが重要ですね。
級 | 試験方式 | 試験時間 | 合格基準 |
---|---|---|---|
3級 | マークシート方式 | 120分 | 100点中70点以上 |
2級 | マークシート方式 | 120分 | 100点中70点以上 |
1級 | マークシート方式+論述式 | 150分 | 200点中、論述式50点以上かつ全体で140点以上 |
準1級も存在する
1級不合格者の内、120点以上の得点した受験者には準1級が認定されるという制度があります。
つまり、頑張った分は一定の評価がされるということですね。
レベルごとの到達レベル
【3級】
会計の用語、財務諸表の構造・読み方・分析等、財務諸表を理解するための基礎的な力を身に付けること。
【2級】
企業の経営戦略や事業戦力を理解するため、財務諸表を分析する力を身に付けること。
【1級】
企業の成長性や課題、経営方針・戦略などを理解・判断するため、財務諸表を含む会計情報を総合的かつ詳細に分析し、企業評価できる力を身に付けること。
3級の学習内容・出題範囲
基本財務諸表としての貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書に記載されている項目と計算構造を学習します。
その上で、企業の成長や、債務の支払い能力、儲ける力、株価に対する利益の高低などの財務諸表分析の基本を学習します。
【出題範囲】
-
財務諸表の構造や読み方に関する基礎知識
-
財務諸表の基本的な分析
2級の学習内容・出題範囲
有価証券報告書の連結財務諸表に記載されている項目と計算構造について学習します。
3級の内容に加え、多くの分析指標を学び、近年注目度を集めているキャッシュフローの分析、企業の採算性を探る損益分岐点分析などの応用的領域に関しても学習します。
【出題範囲】
-
会計情報に関する総合的な知識
-
財務諸表を含む会計情報のより高度な分析
1級の学習内容・出題範囲
会計情報に関する総合的な知識として、投資関連の各種ディスクロージャーや財務諸表と計算書類の総合的な理解を深めます。
また、会計基準の内容を理解し、注記を含む補足情報の読み方についても学習します。
さらに、ビジネス会計の応用として、概念フレームワーク、会計基準、内部統制やマネジメントにおける事業評価に活用できる企業価値分析の基本的な考え方や、分析方法も学習します。
【出題範囲】
-
財務諸表の構造や読み方に関する基礎知識
-
財務諸表の基本的な分析
ビジネス会計検定の合格率・難易度
ビジネス会計検定の合格率は、3級は60%前後、2級は40~50%、1級は20~30%程度となっています。
ビジネス会計検定の難易度は、2級・3級は普通レベルという感じですね。1級は論述問題も導入されるため、難しいと言えるでしょう。
ビジネス会計検定の過去5回分合格率データ
過去5回分の試験の合格率は以下の通りです。
カッコ内は実受験者数を表しています。
実施回/級 | 実施時期 | 3級 | 2級 | 1級 |
---|---|---|---|---|
第25回 | 2019年9月 | 59.2%(4.502人) | 48.5%(1,850人) | 未実施 |
第24回 | 2019年3月 | 62.4%(3,859人) | 48.0%(1,858人) | 29.4%(211人) |
第23回 | 2018年9月 | 61.8%(3,847人) | 36.3%(1,671人) | 未実施 |
第22回 | 2018年3月 | 58.5%(3,438人) | 40.7%(1,731人) | 22.3%(224人) |
第21回 | 2017年9月 | 70.0%(3,581人) | 30.1%(1,494人) | 未実施 |
ビジネス会計検定の勉強法
ビジネス会計検定には、どんな勉強方法があり、どんなテキストや対策が有効なのでしょうか?
ビジネス会計検定の勉強法は?独学は可能?
ビジネス会計検定の取得を目指す人の主な勉強法は独学です。しかし、個人の持っている事前知識や実務経験によって勉強時間は大きく異なるでしょう。
また、講座やセミナーもよく開催されているため、必要に応じて利用することをお勧めします。
最新版の公式テキストを手に入れよう!
ビジネス会計検定公式テキストが1級~3級まで中央経済社から刊行されています。
公式テキストは、試験範囲に準拠しているため、公式テキストを中心に勉強すると、効率よく学習できるでしょう。勉強時間の無駄が省けますね。
基本的な勉強は、公式テキストと過去問を繰り返し行うと良いでしょう。
過去問はする
ビジネス会計検定の過去問に関しては、「ビジネス会計検定試験公式過去問題集」が1級~3級まで中央経済社から刊行されています。
また、公式ホームページには、各級ごとの試験問題例があるため、過去問と併せて解いてみても良いでしょう。
商工会議所の対策講座が存在!
ビジネス会計検定では、各商工会議所で受験対策講座や無料講座が開催されています。
その無料講座では、財務諸表の読み方・活かし方を学ぶセミナーが開催 されています。近くの商工会議所で開催されているかどうか、調べてみると良いでしょう。
TACなどが講座・講習会を開設している
会計資格学校の名門TACも、「ビジネス会計検定試験対策講座」を2級と3級に関して行っています。
さらに、弥生カレッジCMCの対策講座、ヒロ・ビジネス・スクールのeラーニングによる対策講座が実施されています。
ビジネス会計検定の試験日程・会場・申し込み方法
ビジネス会計検定では、以下のような試験日程や場所、方法で行われています。自分に合った場所やタイミングを考えて、トライしていきましょう。
ビジネス会計検定の基本情報
ビジネス会計検定の2級と3級の試験日程は、年2回実施されていて、3月と9月ごろに実施されます。
1級の試験日程は3月のみで、年1回実施されています。
ビジネス会計検定の実施会場は、以下の場所から選択できます。
ビジネス会計検定実施会場
札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、松山、福岡
また、試験には電卓またそろばんなどの計算器具が持参可能です。
ビジネス会計検定に受験資格はある?併願可能?
ビジネス会計検定の受験資格はなく、どの級からでも受験が出来ます。
ビジネス会計検定の試験時間
- 1級:13:30~16:00
- 2級:10:00~12:00
- 3級:13:30~15:30
2級と3級、1級と2級は、試験時間がずれており、併願が可能です。合格チャンスが広がりますね。
ビジネス会計検定の受験料
ビジネス会計検定の受験料は以下の通りです。
ビジネス会計検定の受験料
- 1級:¥10,000+税
- 2級:¥6,000+税
- 3級:¥4,000+税
ビジネス会計検定試験まとめ
ビジネス会計検定試験まとめ
- 財務諸表を分析できるため、多くの職種で活用できる資格
- 就活生はライバルに出来ない企業選びが可能
- 様々な業種の、比較時若い層が受験している
- 合格率は、3級は60%前後、2級は40~50%、1級は20~30%程度
- 2級と3級の試験日程は年2回3月と9月ごろ
- 1級の試験日程は3月のみで年1回
- 勉強法は独学が基本、しかし、商工会議所の無料講座やライセンススクールの講座もあり
ビジネス会計検定の内容や難易度、活用方法や勉強の仕方など、色々な角度からご紹介してきました。
ビジネス会計検定は、非常に実務的な資格です。社会人としてのフル活用はもちろんのこと、就活生の時期から活用できる資格としても有望ですね。
皆さんも、ぜひ、実用性の高いビジネス会計の資格にチャレンジしてみましょう!