貸金業務取扱主任者ってどんな資格?取得目的・難易度・勉強法まで全て解説!
「貸金業務取扱主任者ってどのような資格なの?」
「貸金業務取扱主任者試験の難易度や合格率のデータを知りたい!」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
貸金業務取扱主任者は、違法な貸金業者を取り締まる金融の世界には欠かせない資格です。
まだまだ認知度はそこまで高くないため、必要な勉強時間やどのような勉強法で進めるべきか、悩んでいる人は多いと思います。
こちらの記事では、貸金業務取扱主任者試験についての難易度や合格率、試験日程などの基本的な情報をお伝えしていきます!
貸金業務取扱主任者についてざっくり説明すると
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消費者金融やクレジット会社に勤める場合は必須の資格
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就職や転職の選考で採用の決め手になることはほぼ無い
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あまり現実的ではないが、独立も可能
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過去問を中心に勉強すると効率的
貸金業務取扱主任者ってどんな資格?
貸金業務取扱主任者とは
貸金業務取扱主任者とは、金銭の賃貸借契約において違法な取り立てを行う貸金業者を取り締まるために導入された国家資格です。
平成初期のころは貸金業法という法律が存在しておらず、貸金業者は返済が滞っている人に対して厳しい取り立てを行っていました。
その結果、自殺をする人が多く出てしてしまったことから、違法な取立てから債務者を守る必要が生じたため貸金業法という法律が整備されるのと同時に貸金業務取扱主任者の資格が誕生したのです。
なお、貸金業とは銀行ではない信用供与(シャドーバンク)のことを指していて、市場性資金を利用して消費者や事業者を対象に融資を行う金融業のことです。
具体的には消費者金融や事業者金融、クレジットカードのローンなどが代表的です。
そのような貸金業者の社員が違法な取り立てをするのを防ぎ、貸金業法などの法令順守を徹底するために貸金業務主任者は助言や指導をしなければならないことになっています。
試験は毎年1万人程の人が受験しており、クレジット会社などで仕事をしている人が多くを占めています。
貸金業務取扱主任者は賃金業者には必須の資格!
貸金業務取扱主任者は貸金業者の従業員に対して法令順守を徹底させるのが目的です。
また、貸金業法という法律に、「貸金業者は、営業所又は事務所毎に貸金業務取扱主任者を法令で定める数、設置すること」というルールがあります。
つまり、貸金業務取扱主任者は消費者金融やクレジット会社などの貸金業務の事業者に必ず1名以上設置しなければならないのです。
具体的には、事業所においては従業員50人以上ごとに貸金業務取扱主任者が1名以上いなければならず、もしこの基準が満たされていないことが発覚したら、業務改善命令や業務停止命令などの処分を受けることになります。
これらの処分を受けることで企業の信頼はがた落ちして、事業に悪影響が出てしまうのは言うまでもありません。
貸金業務取扱主任者は役立つ資格なのか?
貸金業務取扱主任者資格は昇格・昇進に貢献!
貸金業者に勤めている人であれば、貸金業務取扱主任者は従業員のリーダー的な役割を果たすことができるようになるため、昇格や昇進を目指すうえでは欠かせない資格です。
また、キャリアを積んでいき支店長などの現場責任者クラスになるためには必須の資格でもあります。
試験の難易度はやや高く合格率も低いため、早めに勉強して資格取得に備えておいた方が良いでしょう。
また、クレジット会社などの貸金業界への就職や転職を目指している人は、事前に取得しておくとすんなりと実務に入ることができます。
貸金業務取扱主任者資格は転職・就職には不向きかもしれない
貸金業務取扱主任者の資格を持っていても、転職や就職の選考の場で採用の決め手になることは少ないです。
実際の業務では活用できる範囲がかなり狭く、人事担当者から高評価を得ることはあまり無いため、就職や転職で生かすことができる資格ではありません。
また、貸金業に従事していない限り役立つことはあまりない点にも注意が必要です。
「貸金」という名称があるため、一見銀行などの金融機関への就職や転職を目指すときには有利な資格のように思われますが、実際はあまり評価されません。
その理由は、銀行などの金融機関は貸金業法の適用を受けないため貸金業務取扱主任者の設置用件がないためです。
お金の貸出業務に関しても、銀行業法などでルールが規定されているため貸金業務取扱主任者の資を持っていなくても融資業務などを行うことができるのです。
コンプライアンス問題に需要がある資格!
昨今は、時代の流れなどもあってコンプライアンスの必要性が高まっています。
つまり、貸金業務取扱主任者は貸金業に従事していないと活用は難しい資格ではあるものの、全く需要がないというわけではありません。
この資格を保持していることにより、融資業務に関する一定の知識があると評価されるため、就職や転職の際に多少有利に働く可能性はあるでしょう。
また、「自分の見識を広げるために取得した」旨のアピールをして「好奇心旺盛で何事も自発的に行う人柄」であることのアピールにつなげることはできるでしょう。
貸金業務取扱主任者になるには登録が必要!
貸金業務取扱主任者となるには、試験合格後に「主任者登録」が必要です。
この主任者登録の手続きは申請から登録完了まで、約2ヵ月かかると言われています。
試験に合格してもすぐに貸金業務取扱主任者となれるわけではないため、自身のスケジュールはよく確認しておく必要があるでしょう。
合格しても個人で貸金業はできない!
かなり少数ですが、企業に属さずに個人で貸金業を行っている人もいます。
しかし、貸金業として開業するためには次の3つの要件をクリアしなければなりません。
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貸金業の実務経験が3年以上あるものを常勤で雇用する
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5千万円の自己資本金を用意する
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細かな法令上の基準をクリアする
これらの条件をクリアして申請しなければならないため、実際には現実的ではありません。
貸金業務取扱主任者の難易度
ここで、試験の難易度について見ていきましょう。
貸金業務取扱主任者の試験範囲と出題形式
試験は四択問題が50問、マークシート形式で出題されます。
なお、試験時間120分です。
試験範囲は主に以下の科目に分けられます。
- 法及び関係法令に関すること
この科目では22~28問出題され、最も重点的に勉強するべきです。
賃金業法と同施行令・利息制限法などについて問われますが、特に賃金業法に関する出題が多いため、時間を割いてしっかりと得点できるようにしましょう。
- 貸付及び貸付に付随する取引に関する法令及び実務に関すること
この科目からは14~18問され、民法・民事手続法・商法・倒産法・刑事法などについて勉強します。
民法などの法律を勉強した経験がある人であれば苦労はあまりしないと思われますが、法律初学者の人にとっては鬼門と言えます。
しっかりと法律の趣旨と目的を理解しつつ、丁寧に勉強していきましょう。
- 資金需要者等の保護に関すること
この科目では4~6問が出題され、個人情報保護法・消費者保護法・経済法などが出題されます。
勉強範囲が広いにも関わらず出題は多くないため、重要論点だけを押さえてメリハリをつけた勉強をすれば問題ありません。
- 財務及び会計に関すること
この科目では2∼4問出題され、家計診断・財務診断について勉強します。
この科目の資金需要者等の保護に関することと同様、時間をかける必要はありません。
場合によってはテキストをスキップして過去問題だけチェックしていく程度で良いでしょう。
貸金業務取扱主任者の合格率、合格ライン
試験の合格ラインは毎回試験実施後に決定されており、例年50点中30~35点で推移しています。
なお、試験の合格率は約30%であり、難易度は比較的高い方であると言えるでしょう。
ただし、貸金業務取扱主任者は同じく法律により必置資格である宅地建物取引士や管理業務主任者に比べれば内容的には簡単です。
宅地建物取引主任士の合格率の目安は15%程度、管理業務主任者の合格率の目安は8~9%となっているため、貸金業務取扱主任者は比較的取得しやすいことが分かります。
貸金業務取扱主任者の5年分の合格率まとめ
それでは、直近5年分の試験データを見てみましょう。
実施回 | 実施年 | 合格率 | 合格基準点 | 合格ライン |
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第14回試験 | 2019年 | 30.0% | 29点 | 58% |
第13回試験 | 2018年 | 31.5% | 32点 | 64% |
第12回試験 | 2017年 | 32.5% | 34点 | 68% |
第11回試験 | 2016年 | 30.5% | 30点 | 60% |
第10回試験 | 2015年 | 31.3% | 31点 | 62% |
このように、実施回によって合格点は微妙に変動していますが7割の得点ができれば安全圏であると言えます。
そのため、日頃の勉強では7~8割程度の得点を目指して勉強していけば、本試験でも問題なく合格点に到達できるレベルの学力は身に着くでしょう。
貸金業務取扱主任者の勉強法
貸金業務取扱主任者の勉強時間は初心者で3か月!
貸金業務取扱主任者の取得を目指す人の勉強時間は、民法などの法律関係の知識が全く無い法律初学者の人であれば3か月程度が目安となります。
一方、実務経験がある人や過去に行政書士・宅地建物取引士・管理業務主任者・マンション管理士などの勉強を通じて民法・商法・会社法などの法律に関して勉強をしたことがある人であれば、1~2か月程度の勉強時間で済むでしょう。
事前知識や習熟度の差によっては、1か月未満で合格を狙える人もいます。
特に、宅地建物取引士の勉強経験があり民法を学んだことがある人は、短い時間でマスターできるでしょう。
勉強のコツ
オススメの勉強法は、まずテキストを3周以上繰り返し読み込んでインプットを行い、インプットを十分にこなしたら次に過去問を繰り返し解くアウトプット作業を行う流れです。
アウトプット作業の中でインプットが甘い論点が見つかれば、徹底的に復習して知識を固めるようにしてください。
また、出題率が多い分野や重要論点は徹底的に勉強してどのような切り口の問題でも対応できるようにしておく必要があります。
文章量の多い問題も出てきますが、パッと見て後回しにせず、焦らずしっかり読み込んで問題に取り組む集中力が大切です。
過去問はHPで手に入る
過去問はホームページで公開されているため、いつでもチェックすることができます。
過去問を使うことで頻出問題の把握や重要ポイントを押さえることができるので、ぜひ積極的に活用してください。
過去問題をたくさん解けば解くほど問題に慣れることができ、様々な問題にも対応できるようになるため、何周も解いて答えを暗記してしまうくらいまでやりこむと良いでしょう。
貸金業法は重点的に勉強すべき
貸金業法とは消費者金融などの貸金業者に関することや、貸金業者からの借入れについて定めている法律で試験対策上もっとも重要な論点です。
試験では貸金業法について問われる問題が半分近くあるため、貸金業法を押さえることが合格の近道となります。
逆に、貸金業法でつまづいてしまったり苦手を作ってしまうと合格できる可能性が非常に低くなってしまうので、もし分からない論点が出てきたらできるだけ対策時間を設けるようにしてください。
その他にも民法や商法、消費者保護法の出題も多いため、過去問題を通じてしっかりと出題傾向や出題の癖などを確認しておくようにしてください。
独学が不安なら通信講座での学習がおすすめ
もし独学で勉強するのが不安だという人であれば、通信講座を利用すると良いでしょう。
特にスタディングは独学者が気になる価格の安さと教材のクオリティを両立した講座となっているので、非常におすすめです。
忙しい人でも合格できるようにスマホ学習に特化した仕様となっており、わかりやすい講義から効率的な演習までこれ1つで完璧にできます。
ぜひスタディングの講座で試験勉強を始めてみては以下かでしょうか?
貸金業務取扱主任者の試験日程・会場・申し込み方法
貸金業務取扱主任者の基本情報
貸金業務取扱主任者の試験は年に1回しか行われず、試験日は例年11月中旬~下旬頃です。
試験の実施会場は全国17か所(令和元年度試験)で行われ、過去の会場などはホームページなどで調べてみると良いでしょう。
試験の申し込み期間は7月上旬~9月上旬頃なので、発表されたら忘れないうちに申し込んでおくと安心です。
試験の申し込みはインターネットか郵送によって行うことができます。
なお、試験結果は1月上旬に通知され、正答数・順位・各問題の正誤などの詳細な試験結果はインターネットか書面で開示されます。
貸金業務取扱主任者に受験資格はある?
貸金業務取扱主任者試験には受験資格はないため、実務経験や学歴に関係なく誰でも受験することができます。
そのため、大して勉強していない冷やかし受験の人も多くいるため、このような人たちが合格率を下げている一因になっていると言えるでしょう。
貸金業務取扱主任者の受験料
貸金業務取扱主任者の受験料は8,500円です。
「あまり使い勝手が良い資格ではないわりには高い」という意見が多いです。
決して安い試験料ではないため、できるだけ一発合格できるように仕上げていきましょう。
受験に必要なもの
貸金業務取扱主任者試験に必要なものは、受験票・公的証明書(運転免許証、パスポートなど)・筆記用具の3つです。
忘れてしまうと試験が受けられない恐れがあるため、必ず忘れないように準備してください。
貸金業務取扱主任者とFPは相性が良い
貸金業務取扱主任者の資格単体では活用できるフィールドや取得メリットもかなり狭く制限されてしまいますが、併せてFPを取得すると自分の価値をより高めることができます。
FPはいわゆる家計相談や将来のマネープランに関する専門家であるため、マイカーローンや住宅ローンなど、借金に関することも扱うことになります。
FP事務所などが住宅ローンなどの紹介をする場合は貸金業者の登録が必要となるため、その際に貸金業務取扱主任者資格は必須となります。
住宅ローンの紹介をする際にFPとして将来のライフプランやマネープランの相談などのサービスを提供することができれば、顧客から信頼してもらえるでしょう。
このように、FPと貸金業務取扱主任者はとても相性が良いため、ぜひ取得を狙ってみると良いでしょう。
貸金業務取扱主任者のまとめ
貸金業務取扱主任者のまとめ
- 貸金業者以外ではあまり役に立たないが、ダブルライセンスなどで価値を高めることは可能
- 近年はコンプライアンスの意識が高まっているため、見識を広げる意味合いで取得すると役立つ
- 貸金業法は徹底的に対策をすると合格に近づく
- 合格率は3割程度と難易度は比較的高いため、勉強時間はしっかり確保すること
貸金業務取扱主任者は貸金業に勤めている人にとっては非常に大きな取得メリットがあります。
また、まず手始めに貸金業務取扱主任者を取得して知識の幅を徐々に広げていくとキャリアアップに役立ちます。
自分の見識を広げることができる資格でもあるので、興味がある人はぜひ取得を目指してみてください!