アクチュアリーの求人・就活状況は?仕事内容・年収から大学生のインターンまで解説!
アクチュアリーは企業や個人の資産やリスクを定量的に評価・管理する専門職です。社会のニーズが高まっているため、年収や安定性の高い職業の一つとされています。
アクチュアリーがなぜ社会から求められているのか、その実態はどういうものなのかについて解説します。
アクチュアリーについてざっくり説明すると
- アクチュアリーとして働くには、アクチュアリー候補生として就職しなくてはならない
- アクチュアリーになるには資格試験に合格する必要がある
- アクチュアリー資格試験は8~10年近くもの時間がかかる
- 資格取得も就職も大変だが、その分年収が高く、安定した職業である
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アクチュアリーの就活やインターンの実態
日本の場合、アクチュアリーは独立せず、企業のアクチュアリー候補生の求人に応募し、就職するのが一般的です。最初はアクチュアリーの就活について触れていきます。
アクチュアリーの就職の概要
アクチュアリーの場合、正社員として働き始めるまでに 大体8~10年もの長い時間が必要です。そのため、研究員や準会員の求人に応募し、働きながら正社員を目指すのが一般的な就職です。
アクチュアリーとして企業で働くには、企業のアクチュアリー候補生として採用されることが第一となります。この候補生コースの求人は企業の規模によって違いますが、大体10人前後の募集が行われます。
このコースに内定するには、 少しでも良い成績を残す必要があります。1教科でも多くの科目に合格することがそのまま強みにつながるのです。
アクチュアリーの主な就職先
では、このアクチュアリーコースの求人を出している企業とは、どの様な企業があるのでしょうか。次はアクチュアリーの主な就職先を解説していきます。
生命保険会社
生命保険の掛け金や保険金は、金利や死亡率等のデータから算出されます。算出の際に使われるのが、膨大な統計データと統計学です。
この保険に関わる金額を算出する過程を生命保険数理といいます。アクチュアリーはこの生命保険数理を使い、以下の内容を決定するのが主な仕事です。
- 新しい保険商品の価格評価
- 保険契約者に支払う保険金の積立金額の評価
保険会社による違い
保険会社は国内の 日系会社と海外の外資系会社の2つの種類があります。この違いはアクチュアリーの扱いや社風にも影響を与えています。
日系の場合、総合職よりも地位が高い傾向にあります。アクチュアリー同士の結束が強いのが特徴です。
外資系は自由な社風と高い給与が目立ちますが、日系とは違い実力主義な傾向が強くなります。
損害保険会社
損害保険会社も、アクチュアリーが重宝されます。損害保険の場合、被保険者の損失を補填する形で保証が行われる保険です。そのため、リスクマネジメントに優れたアクチュアリーが求められます。
リスクマネジメントは経営との関りも深いため、企業がM&Aを実行する時のリスクを低評価する仕事を任せられる場合もあります。
生命保険会社との違いを上げると、他の総合職との垣根が低い印象があります。どちらの会社がいいかは、自分のアクチュアリーとしての能力で選ぶといいでしょう。
信託銀行
保険会社以外の金融企業だと、 信託銀行が多いです。信託銀行の「信託」とは、外部の財産を自分名義で預かり、運用することです。信託銀行は、この信託業務を行う銀行全般を指しています。
アクチュアリーとしての仕事は、主に年金制度に関わる仕事が多いです。具体的には、以下の内容になります。
- 顧客から預かった資金を年金制度に活用する
- 年金の掛金設定
- 年金制度の相談
仕事内容を見ると分かるのですが、信託銀行で働く場合、アクチュアリーとしての専門知識があればいい、という訳ではありません。顧客と対面し、悩みや不安を聞き出し、解決するコミュニケーション能力が求められます。
その他の注目されている職場
この他、アクチュアリーの求人としては以下の職業があります。
- 総合商社のリスク管理業務
- ビッグデータ解析
- マーケティング
- 法人営業
色々な就職先がありますが、基本は データを分析・解析することが主な業務となります。
因みに、日本ではあまり見かけませんが、海外では個人事業主としてコンサルティング業務を行うアクチュアリーもいます。就職や就活とは少し違いますが、これもアクチュアリーとしての働き方の一つです。
なぜアクチュアリーの活躍が期待されるのか
アクチュアリーの求人を見ると、保険会社や銀行を中心としていますが、実に様々な所で活躍が期待されていることが分かります。これはそれぞれの業界の仕組みや、社会情勢が関係しているためです。
金融系の職種や企業でアクチュアリーが求められる理由
保険会社の場合、保険商品を承認させるためには「保険計理人」という仕事に就くアクチュアリーが最低1人必要です。保険会社のアクチュアリーは、保険会社を成立させるための重要な役割なのです。
信託銀行をはじめとした金融系の仕事の場合は、国際会計基準の導入が関係しています。
この基準の導入によって、従来のアクチュアリーとしての仕事に加え、 資産を時価評価する仕事が加えられるようになりました。
アクチュアリーのニーズを高める社会情勢
この他、以下の要素もアクチュアリーのニーズを高める要因だと言われています。
- 金融自由化
- 少子高齢化
- 年金制度の改革
どれも資産や社会のありように影響を与える要素です。不安定な社会の中で、資産やリスクを定量的に測定・評価し、統合や管理、意思決定が出来るアクチュアリーが求められるのは、自然な流れと言えるでしょう。
アクチュアリーの就職先の探し方
金融系企業をはじめとしてニーズが高まっているアクチュアリーですが、就活の方法は他の職種とほとんど変わりません。
地道な作業が要求されます。主な方法は以下の方法となります。
- アクチュアリー候補生の求人がある企業サイトをチェックする
- アクチュアリーとして働いている先輩や知人から求人情報を得る
- 就職サイトや転職サイトに希望職種をアクチュアリーで登録する
アクチュアリーならではの就活事情
最初の方でアクチュアリーのキャリアプランについて触れましたが、アクチュアリーの求人や就職情報は 他の職種に比べて少ないです。 こまめな情報収集が採用を得る手掛かりとなります。
また、 アクチュアリーの募集は総合職よりも早い時期に行われます。早めの情報収集が採用のカギとなるのです。
アクチュアリー選考試験の特徴
選考試験の傾向としては、 数学の筆記試験が含まれる傾向にあります。良く出される問題は以下の問題が多いです。
- 微分
- 線形
- 確率
- 統計
レベルはそれほど高くなく、理系学生が大学教養課程までに学ぶレベルの問題が出ます。この他、まれに プログラミング知識や論理的思考力を試す問題が出る場合もあります。
面接では、企業で働いているアクチュアリーが面接官を務めている場合が多いです。アクチュアリーとしての能力はもちろん、コミュニケーション能力や日本語力も試されます。
対策としては、以下の方法が有効です。
- 選考プロセス等事前に分かる情報を少しでも早く、正確に仕入れる
- 面接で聞かれやすいことを調べ、対策をする
アクチュアリーの就活を採用に導くには、専門的な知識だけでは不十分です。知識と情報を出来るだけ早く、多く集めるようにしましょう。
インターンシップに参加するメリット
アクチュアリーを目指す際、本格的に就活を始める前にも出来ることがあります。それが、 インターンシップへの参加です。
インターンシップを通して、実際に働く企業の実態や、働く際の雰囲気を知れば、それを就職活動に活かせます。
また、現役で働くアクチュアリーや、アクチュアリー候補生同士でコミュニティを築くことが出来れば、就職活動の情報収集に役立ちます。 この繋がりは、採用後にも役立てられる貴重なつながりです。
アクチュアリーになるには
アクチュアリーは就職活動だけでなく、募集要項を満たすまでの期間も大変です。次はアクチュアリーになるまでの道のりを解説します。
アクチュアリーになるには最短でも8年かかる
アクチュアリーになるには、公益社開放日本アクチュアリー会が実施する 「アクチュアリー資格試験」に合格し、準会員になる必要があります。その後、先に紹介した方法で就職しなくてはいけないのです。
アクチュアリー資格試験の内容
資格試験は条件があります。4年制大学に休学期間を除き2年以上在籍し、62単位以上の単位を修得した大学生、つまり 最速で大学3年生から受験できます。
試験は第一次試験と第二次試験に分かれており、合格の状況によって以下の会員となります。
- 第一次試験5科目の内、1~4科目に合格 → 研究会員
- 第一次試験全てに合格 → 準会員
- 第二次試験に合格 → 正会員
正会員になるには少なくとも8年以上かかります。 アクチュアリーを目指す方の多くが、企業に所属しながら資格試験に挑戦するのはこのためです。
アクチュアリーになるために必要な資格・試験
アクチュアリー資格試験は試験内容が2つに分かれています。 この2つの試験は答案の仕方も、出題される科目も違うため、試験内容に合わせて勉強する必要があります。試験の答案の仕方は以下の通りです。
- マークシート方式の第一次試験
- 論述式の第二次試験
2つの試験は同時に挑戦できるわけではありません。第二次試験に進めるのは、第一試験を全て合格した準会員のみです。 次は試験に出題される科目に触れていきます。
まずは第一次試験で出題される科目です。
- 数学
- 生保数理
- 損保数理
- 年金数理
- 会計・経済・投資理論
次に、第二次試験の科目です。
- 生保
- 損保
- 年金
第二次試験は3つの科目の中から問題を選び、回答していきます。
準会員から第二次試験を突破し、日本アクチュアリー会の理事長から承認を得られた人だけが、正会員になれます。 アクチュアリーとして本格的に働けるようになるのは、この正会員です。
アクチュアリーという仕事や転職事情
資格試験に合格し、晴れて正会員になれば、アクチュアリーとして本格的に働けるようになります。道のりはかなり長いですが、アクチュアリーの仕事や転職についても知っておきましょう。
アクチュアリー業の特徴
アクチュアリー業の特徴として、 転職が少ないことがあげられます。これは、企業の専門部署である数理部門に採用されること、アクチュアリー自体の需要が供給に対して多いことが関係しています。
アクチュアリーは専門部門であるためにリストラの心配が無く、あっても需要が高いため転職活動を初めてもすぐに採用される傾向にあります。安定性という点でいえば、アクチュアリーはかなり優れている職業です。
アクチュアリーの年収
アクチュアリー資格試験には会員ランクがあります。この会員ランクによって、アクチュアリーの年収は変化します。 当然ですが、階級が上がれば上がる程、年収の額も大きくなります。
平均的な金額で言うと、 研究員が大体500~550万円、準会員が700~800万円、正会員で900~1200万円となります。
アクチュアリー資格試験は早ければ学生の内から取得できますから、年収を少しでも上げたい場合は、学生の頃からの努力が重要になります。
年収は個人差がありますから一概にこの金額、とは言えません。アクチュアリーとして働く方の中には1500万円以上の年収を得ている方もいるのです。
アクチュアリーの待遇
企業でアクチュアリーに関わる部署に就くと、仕事を通してアクチュアリーとしての基本を学べるようになります。
また、企業がアクチュアリー資格試験のサポートをしてくれる場合もあります。
- 資格試験対策講座の受講費を負担してくれる
- 試験に合格することで特別手当が支給される
企業にとって、アクチュアリーは無くてはならない存在です。当然、自社に所属するアクチュアリーの技能が高ければ高い程、企業にとってはプラスになります。資格試験のサポートをしてくれるのはそのためです。
アクチュアリーの転職
アクチュアリーの転職は先にも触れたとおり、あまりありません。 特に信託銀行の場合、監査法人へ転職する方はいても、銀行から銀行へと渡り歩くような方はいません。
保険会社の場合、日系から外資系に転職する方がいます。 これは、外資系の方が高めの給与をもらえる傾向にあるためです。
因みに、給与や転職に深く関わる要因である福利厚生についてですが、アクチュアリーだからといって、手厚くなるという訳ではないようです。
他の職種には無い特徴としては、先の項目で触れたとおり、資格試験へのサポートが手厚い所が多い、という点があげられます。
アクチュアリーの難易度まとめ
アクチュアリーの難易度まとめ
- アクチュアリー資格試験の合格は早くとも8年近くの時間がかかる
- アクチュアリー候補生の募集は少なく、時期が早いため、就職活動も他より大変な傾向にある
- 大学生の内から資格受験や情報収集をしておくと就職に有利
- アクチュアリーの難易度は高いが、それだけの価値がある仕事である
アクチュアリーは資格試験も就職活動も他の職種に比べて大変です。しかし、社会からのニーズを考えると、その大変さに見合うだけの収入や安定性が期待できる職業でもあります。
興味を持った方は、アクチュアリー資格試験や、アクチュアリー候補生の募集に挑戦してみてはいかがでしょうか。