アクチュアリーの年収はどれくらい?給与を仕事内容や年齢・職種別に大公開!
「アクチュアリーってどのくらい給料がもらえるんだろう」
と疑問に思っている方もいるでしょう。
アクチュアリー(保険数理士)は、高度な数理スキルを持つリスク管理のプロです。資格試験は難関で、合格までに8年を要するとも言われています。
しかしなるのが難しいだけあって、収入も多い職業です。今後その需要は増していくとも予想されています。
今回はアクチュアリーの年収について、給与を仕事内容や年齢、職業別に大公開します。
これを読めば、アクチュアリーの懐事情がよく分かるはずです。
アクチュアリーの年収についてざっくり説明すると
- 平均年収は1200万円程度
- 年齢や職種によって異なるが、外資系なら2000万円超えも
- アクチュアリーは現在売り手市場
このページにはプロモーションが含まれています
アクチュアリーとは
アクチュアリーとはそもそもどんな仕事なのでしょうか。
リスク管理の専門家
アクチュアリーは、統計学や確率論などの数理的知識を用いてリスクや不確実性を分析・評価するのが仕事です。
活躍するフィールドは生命保険事業や損害保険事業、年金事業などで、日本では「保険数理士」とも呼ばれます。
17〜18世紀のイギリスにルーツを持ち、当時誕生した近代的なシステムの保険制度において、イギリス人の死亡率を統計や確率などから検証し、保険料などを算定し始めた人々が始まりです。
また最近では企業の資産運用におけるリスクマネジメントやコンサルティング業務など、かつての「数理保険士」の枠にとらわれない業務内容になりつつあります。
さらに技術革新によってビックデータの集計が容易となった現代において、その活用のためにアクチュアリーの数理的能力が期待されているという現状もあるのです。
アクチュアリーの需要は今後高まっていくと予想されます。
アクチュアリーになるには
アクチュアリー(保険数理士)になるには、日本アクチュアリー会が実施する資格試験の全科目合格と同会のプロフェッショナリズム研修(1日研修)の受講が必須です。
アクチュアリーの資格試験は難易度が高いことで知られており、合格までに8年を要するとも言われています。
アクチュアリーの資格試験は第1次試験と第2次試験があり、計7科目に合格しなければなりません。
第1次試験
アクチュアリーの第1次試験の目的は、「第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するかどうかを判定すること」です。
科目は「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」の5科目となります。
1年に1科目でも合格できれば上出来と言われることからも難易度の高さが伺えます。
合格率は例年、各科目10%〜30%程度の間を推移しています。
第2次試験
アクチュアリーの第2次試験は「アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識および問題解決能力を有するかどうかを判定すること」を目的に行われます。
第1次試験は教科書内容に出題範囲が限定されたマークシート方式ですが、第2次試験は教科書や参考書を超える出題もある論述試験です。そのため難易度はさらに上がります。
科目は3つのコースからの1つを選ぶ方式です。1コースはそれぞれ2つの科目を持ちます。
コース(及び科目)は、生保コース(生保1と生保2)、損保コース(損保1と損保2)、年金コース(年金1と年金2)です。
合格して「正会員」となるには3年かかると言われています。
アクチュアリーの年収はどれくらい?
統計的知識を生かしたリスクの分析や不確実性の予想を仕事とするアクチュアリー(保険数理士)は、その収入が高いことで知られています。
では実際は一体どのくらいなのでしょうか。
アクチュアリーの平均年収は1,200万円
アクチュアリーの平均年収は、1,150~1,380万円程度と言われています。最大年収は2,000万円以上だそうです。
一方で日本人の平均年収は令和元年時点で436万円です。それに比べるとアクチュアリーの年収は約3倍で、破格の高値だと言えます。
またアクチュアリーと一口にいっても、実際には3つの段階が存在します。
一般にアクチュアリーと呼ばれるのは、日本アクチュアリー会の「正会員」のことです。正会員になるには日本アクチュアリー会が主催する資格試験に全科目合格する必要がありますが、試験は第1次試験と第2次試験に分かれます。
第1次試験に1科目でも合格すると「研究会員」、全科目合格すると「準会員」としてアクチュアリー会に入会できるのです。
正会員の平均年収は1,200万円ですが、準会員では平均1,000万円程度となります。また研究会員の年収は平均800万円と言われています。
アクチュアリーの給料が高い理由は?
アクチュアリー(保険数理士)は、統計学や確率論の知識を活かして、生命保険会社や損害保険会社、金融機関などで働く人のことを指します。
顧客におきうる病気や事故などのリスク、不確実性を予測する専門家です。
日本アクチュアリー会が実施する1次試験と2次試験に合格しなければアクチュアリーにはなれません。この試験は難関で、1次試験突破までに5年、2次試験突破に8年を要するとされる長い道のりです。
そのため需要が増している中でもなかなか人が増えません。アクチュアリーは目下売り手市場なのです。それが給与の高さに繋がっています。
またアクチュアリーの行う「リスク予測」はどの分野においても重宝されます。さらにその仕事は、確率や統計に関する専門知識と年金や保険に関する教養がなければ果たせない高度な専門業務です。替えが効かないため給与もその分高くなります。
アクチュアリーの年収は外資企業が高い
アクチュアリーの給料は職業別で異なるという観点もあります。
待遇などで様々な差があるため、外資系と日系企業を単純比較することはできません。しかし、やはり外資系企業で働くアクチュアリーの年収は青天井です。下記の表で比較しても、その収入差は明らかと言えます。
職業 | 給料 |
---|---|
生命保険会社 | 1350万円〜 |
損害保険会社 | 1360万円〜 |
銀行などの金融機関 | 1200万円〜 |
外資系企業 | 2000万円〜 |
会計監査 | 1000万円〜 |
年金数理人 | 1000万円〜 |
アクチュアリーの年齢別年収
他の職業同様、アクチュアリーの給料も年齢と共に増加する傾向があります。下記の表を見るとその傾向がよく分かります。
年齢 | 年収 | 月給 | ボーナス |
---|---|---|---|
20〜24歳 | 936.7万円 | 64.3万円 | 165.5万円 |
25〜29歳 | 1,220.2万円 | 83.7万円 | 215.6万円 |
30〜34歳 | 1,405.7万円 | 96.4万円 | 248.3万円 |
35〜39歳 | 1,540.5万円 | 105.7万円 | 272.2万円 |
40〜44歳 | 1,660.3万円 | 113.9万円 | 293.3万円 |
45〜49歳 | 1,755.2万円 | 120.4万円 | 310.1万円 |
50〜54歳 | 1,828.6万円 | 125.5万円 | 323.1万円 |
55〜59歳 | 1,802.0万円 | 123.6万円 | 318.4万円 |
60〜64歳 | 1,350.9万円 | 92.7万円 | 238.7万円 |
20代についてですが、業務への責任感や高度な計算力はもちろん必要です。
また交渉力や非専門家に対して分かりやすい説明を行う能力、コミュニケーション能力なども重要になります。それらの能力と経験によって給料が決まり、平均は年収1000万円前後です。
一般に給与は50代まで上り調子となります。知識と経験に裏打ちされ技術が向上していくからです。
一方で50代を過ぎると定年を意識して給与が下がる傾向にあります。とは言え、アクチュアリーは50代になっても1800万円程度を維持しているため、一般的なサラリーマンとは異なります。
最後まで高い給与が支払えわれ、生涯賃金では一般のサラリーマンの3.5倍となる6.7億円を稼ぎます。
アクチュアリーのボーナスや昇給は?
アクチュアリーのボーナスの内容は、企業によって異なります。銀行や保険会社では年2回の賞与が多いようです。
一方外資系企業は年俸制であり、インセンティブがつく場合もあると言います。
またアクチュアリーの昇給についても同様、企業次第です。大手企業ならば昇給制度が整っているとこともありますが、やはり企業によって異なります。
そのため一概に金額や給与体系を断定することはできません。
アクチュアリーと会社規模・職階
大企業で働く場合、アクチュアリーの平均年収は1450万円程度となります。
一方で中小企業のアクチュアリーであれば、年収1200万円程度が平均です。
また日系企業ではアクチュアリーといえども総合職扱いとなり、職階が存在します。
主任級だと平均年収は1072万円、係長なら1335万円です。さらに課長であれば1764万円、部長クラスなら1950万円と上昇していきます。
アクチュアリー合格のインセンティブ
アクチュアリーの試験に合格すれば、合格ボーナスがもらえることもあります。日系企業なら準会員合格で2万円、正会員合格で10万円程度と言います。
一方で外資系企業では1科目合格(研究会員)で一時金5万円、準会員合格で一時金50万円、正会員合格で一時金100〜200万円など、合格ボーナスの待遇も良い場合があるそうです。
アクチュアリーの就職・転職
アクチュアリーの就職及び転職事情はどうなっているのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
アクチュアリーの仕事は拡大し続けている
現在アクチュアリーとしての就職及び転職先は、保険会社や信託銀行、官公庁などが主となっています。
また多くの会社が活用しようとしている「データサイエンス」を専門業務とするアクチュアリーの需要が増加中です。
さらに企業年金が複雑化しているため、企業年金の債務や掛け金などの計算業務の仕事は今後増え、アクチュアリーの業務における中心になるという予想もあります。
年金業務では、企業ごとの制度及び給付内容や人員数を分析し、将来の年金額を賄うために必要な掛け金を算定します。
また商品設計や、企業の社員に制度内容や積立状況を説明し、必要に応じて変更するなどのコンサルティング業務を行うこともアクチュアリーの役目です。
そのためアクチュアリーを志すなら、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を磨いておくべきでしょう。
売り手市場の今、アクチュアリーの資格を取れば、就職や転職がうまく行きやすいと言えます。
アクチュアリーの雇用形態
アクチュアリーの多くは、銀行や保険会社に正社員として勤務しています。独立するケースは稀です。
アクチュアリーはその需要に対し、試験合格者が少ないため、慢性的な人員不足です。
昇進スピードは他の一般社員と変わりませんが、転職することでアップする場合も多くあります。
そのためメーカーなどからアクチュアリーを目指して転職する人も多いです。
アクチュアリーの仕事のやりがい
年収が高いので豊かな暮らしが望めることはアクチュアリーの魅力の一つです。
またスペシャリストなので、企業に就職した場合は尊敬のまなざしで見られることも多いでしょう。
アクチュアリーの仕事は、商品開発や掛金算定など、今後の企業業績を左右する重要なものです。
会社の経営にも関わる機会もあり、やりがいは十分だと言えます。
アクチュアリーの仕事の大変さ
アクチュアリーは、資格を取得した後も法改正や業界知識などの学ぶ必要があります。
そのため勉強することや努力することを生涯求められる職業です。
またアクチュアリーは、国内ではまだ少なく、慢性的な人手不足となっています。そのため法改正や決算などの時期には、仕事が集中し激務となります。
また膨大な資料を読み込み、計算や分析を行う地道な仕事内容に慣れる必要もあるでしょう。
責任も大きく、肉体的・精神的にプレッシャーの大きな仕事だと言えます。
アクチュアリーの試験は独学可能?
難関と言われるアクチュアリーの試験ですが、独学で合格することは可能なのでしょうか。
アクチュアリーは独学可能だが難易度は高い
結論から言って、アクチュアリーの試験に独学で合格することは可能です。
その場合は自分で参考書や問題集を読み込んでいかなければなりません。
アクチュアリーになるには準会員で5年、正会員で8年かかると言われています。道のりはかなり長いため、忍耐が必要です。
場合によっては日本アクチュアリー会が実施するアクチュアリー講座や民間のアクチュアリー試験対策講座を活用するのも良いでしょう。
アクチュアリーの正会員になろう
アクチュアリーとして年収を上げたいと思うなら、その近道は何よりも資格を取ることです。
アクチュアリー試験には第1次と第2次合わせて7科目あり、年に1科目ずつ合格しても資格取得には7年を要します。
しかし、企業によっては準会員、正会員の取得が管理職登用の必要条件になっているところもあり、資格の取得は有益です。
もしアクチュアリーへの転職を志望するなら、20代であれば2〜4科目への合格、30代なら準会員であることが必要でしょう。
40代の転職なら正会員であることが望ましいと言えます。
アクチュアリーに向いている人
アクチュアリーは「保険数理士」と呼ばれるくらいですから、まず必要となるのは高い数理的知識や能力でしょう。
またアクチュアリーは、景気動向や経済指標の動きなど多くの要素が絡み合う複雑な数的情報を扱います。
そのため社会の動きに敏感であることや、会計や法律、コンピューターシステムなどの幅広い知識が必要です。
マーケティングセンスを持ち合わせていればなお良いでしょう。
また自分が出した結論を投資家やクライアントへわかりやすく説明するには、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力があった方が有利です。
上記の知識や能力を持った人はアクチュアリーに向いていると言えるでしょう。
アクチュアリーと学科の関係
アクチュアリーを目指す人にはやはり数学科の人が多いです。そのため数理関係の学部を卒業した人はアクチュアリー向きと言えます。
しかし文系のアクチュアリーが存在しないかというと決してそのようなことはありません。
経済学部を中心に文系出身のアクチュアリーも一定数います。そのため文系学部の卒業生でもアクチュアリーを目指すことは可能です。
ですがその場合には、数学が苦手でないことが必須条件となります。
アクチュアリーに必要な性質と姿勢
アクチュアリーの仕事は「数学」とは違います。数学のようにいつも正解が一つに決まるわけではないからです。
そのため一つの「解」に固執することなく、常に様々な可能性を視野に入れながら作業ができる「柔軟性」「フレキシビリティ」が必要になります。
その性質はリスク管理を仕事とするアクチュアリーには必要不可欠なのです。
また保険業法などの改正が業務内容に影響する場合も数多くあります。そのためアクチュアリーは常に最新の情報をキャッチし学び続ける姿勢が重要です。
アクチュアリーになるまで
ここからは難易度の高いアクチュアリー試験に合格するまでのことを説明します。
働きながら勉強するのが基本
アクチュアリーの試験は、何年もかけて合格するのが普通です。そのため多くの受験生は働きながら勉強を続けます。
保険会社や金融機関にアクチュアリー候補生として採用されれば、会社から時間的・金銭的なバックアップを受けながら勉強することが可能です。
様々な実務をこなすことによってアクチュアリーとしての将来に活きるような経験も積めるでしょう。
また先述したように、企業によっては試験の合格によって祝金が出る場合もあります。
アクチュアリーの勉強方法
アクチュアリーの勉強方法には成功パターンがあるとされています。これは独学で勉強する場合のセオリーです。
基本は日本アクチュアリー会が指定した教科書や演習書、参考書を使って勉強を進めましょう。試験は教科書を元に作成され、特に第1次試験は試験範囲が教科書に限定されます。
指定されたテキストでは勉強が進めにくいと感じた科目に関しては、市販の参考書を使うと良いでしょう。
まずはテキストを1周読み込んで試験範囲の概要を頭に入れましょう。
続いて過去問演習に移ります。アクチュアリー試験の勉強では過去問の反復が最も有効な勉強法です。
過去問を解き、分からなかった箇所をテキストで復習するという作業を繰り返すことをおすすめします。徐々に解答の精度が上がり合格点に近づいていくはずです。
過去問の入手方法
過去問は日本アクチュアリー会のHPから無料でダウンロードすることができます。
ただし冊子での販売等は行っていないため、紙で欲しい場合は自分で印刷しましょう。
過去問は最低10年分は解き、出題の傾向を把握しましょう。
アクチュアリーになったら
ここではアクチュアリー試験に合格した後のことを解説します。
今回は日本生命を例に挙げて、アクチュアリーがどのような仕事をしているのかについて、具体的に説明しましょう。
保険業界で働くアクチュアリー
アクチュアリーは様々なフィールドで活躍していますが、その代表的なフィールドは保険業界になります。
例えば日本生命には、アクチュアリーの資格を持つ社員が100人以上存在するそうです。日本生命の社員するは1500名程度なので15人に一人はアクチュアリーということになります。
ちなみに日本生命の現代表取締役社長もアクチュアリーの有資格者です。
商品開発部に所属するアクチュアリー
日本生命の商品開発部に所属するアクチュアリーの一例を挙げましょう。
その業務の一つは、旧商品の分析・評価です。具体的には保険料率の改定やリスク管理などになります。
またそれに伴う認可取得などに関わる書類の作成もアクチュアリーが行います。
さらにアクチュアリーは新商品の開発も行います。
例えば「ニッセイ学資保険」です。日本生命には「こども保険」という主力商品がありますが、大学進学率の上昇と共に、教育資金に特化した保険のニーズが増加しました。
そこでアクチュアリーは高度な数理的能力を駆使して返戻率の高い学資保険を作りました。
返戻率を高めれば、それだけ自社に取っては収益性が下がることになるので、顧客ニーズと自社の利益のバランスを適切に算定するのがアクチュアリーの役目です。
そして生まれたのがニッセイ学資保険で、こちらも日本生命のヒット商品になりました。
以上がアクチュアリーの業務内容の一例です。
アクチュアリーの年収についてまとめ
アクチュアリーの年収まとめ
- 平均年収1200万円で、これは日本人平均の3倍
- 上位の職階や外資系なら2000万円を超える
- 慢性的な一手不足で今後も高い収入が期待できる
アクチュアリー(保険数理士)の年収について詳しく解説しました。
アクチュアリーは難関な試験を突破する必要があるものの、需要が多く年収も高い、やりがいのある職業です。