アクチュアリー試験数学の勉強法は?過去問活用法やオススメ参考書も紹介

アクチュアリー試験の数学ってどうやって勉強すれば良いのか分からない

という悩みを持つ方もいるでしょう。

アクチュアリー試験は平均して合格に8年かかると言われる難関試験で、高度な数学力が要求されます

そんな試験において、第1次試験の「数学」は最初の山場ともいうべき存在ですが、特に初学者にとって、その勉強法に関しては悩むところが多いでしょう。

今回はアクチュアリー試験の「数学」の勉強法について、過去問の活用法やおすすめの参考書などにも言及しながら詳しく解説します。

これを読めば、アクチュアリー試験の数学の勉強法がよく分かるはずです。

アクチュアリー試験数学の勉強法をざっくり説明すると

  • 数学はじめに取り組むべき科目
  • 基礎固めから始めて、過去問で仕上げるのがセオリー
  • 公式テキストで分からない部分は、市販の参考書でカバー

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アクチュアリーの数学の難易度

悩む女性 アクチュアリー試験の「数学」について、難易度や出題傾向など詳しく解説します。

アクチュアリーの仕事とは

アクチュアリーは、統計学や確率論を用いて、リスクや不確実性を数値的に予測・評価することが仕事です。

発祥は17〜18世紀のイギリスで、当時黎明期を迎えていた近代的な保険システムに関して、イギリス人の死亡率などを計算し、保険料などを算定し始めたのが起源とされています。

現在は当時のイギリスとは違い、生命保険事業や損害保険事業のみならず、年金事業や共済事業、さらには企業の資産運用などでも多彩に活躍している職業です。

アクチュアリーになるには

アクチュアリーになるには、日本アクチュアリー会が主催する資格試験に全科目合格する必要があります。またプロフェッショナリズム研修(初期研修)の受講も必須です。

試験は第1次試験(基礎科目)と第2次試験(専門科目)に分かれています。

第1次試験は、「数学」を含めた5科目です。第2科目は3つのコースから1つを選択して解答します。

ちなみに第1次試験に1科目でも合格すれば、アクチュアリー会に入会できます。1科目以上合格した時点で「研究会員」、第1次試験を突破すれば「準会員」です。

第2次試験の合格者は「正会員」となります。

アクチュアリーの年収

アクチュアリーの年収は平均1,200万円程度だと言われています。

各方面で需要が増えている一方、試験の難易度が高くアクチュアリー数は増えにくいため、空前の売り手市場は今後もしばらく続くでしょう。

ちなみに研究会員の段階では、600万円程度だと言います。

また外資系コンサルなどに就職・転職すれば、年収2,000万円を超える場合も多いです。

アクチュアリー数学の試験範囲

アクチュアリー試験の数学は第1次試験の科目です。

その試験範囲は、「確率」「統計」「モデリング」の3分野となります。

各分野の詳細は以下の通りです。

分野 内容
確率 事象と確率/確率変数、確率分布、確率密度関数、分布関数/確率変数の平均値、分散/変数変換と和の分布/積率と積率母関数/確率母関数、特性関数/大数の法則と中心極限定理
統計 データのまとめ方/統計的推定、区間推定/統計的検定/標本分布論と標本調査/最小2乗法と相関係数と回帰係数の推定、検定
モデリング 回帰分析/時系列解析/確率解析/シミュレーション

アクチュアリー数学の合格率と難易度

アクチュアリーの数学の合格率は以下の通りです。

年度 合格率
R2 19.2%
R1 23.9%
H30 13.0%
H29 10.3%
H28 19.7%
H27 20.2%
H26 26.5%
H25 18.4%

数学の合格率は10%〜25%程度と低く、難易度の高さがうかがえます。そのためしっかりとした試験対策が必要です。

その他科目の合格率

第1次試験のその他科目の合格率は以下の通りです。数学を応用する分野が多いので合わせて知っておきましょう。

科目 H30 H29 H28 H27 H26 H25
生命数理 12.8 26.2 10.6 14.0 10.2 26.5
損保数理 23.5 13.7 13.2 20.5 22.6 30.1
年金数理 35.2 16.4 16.6 18.5 10.2 58.2
会計・経済・投資理論 14.1 19.0 17.2 46.1 22.0 20.3

第1次試験全般で見ると、合格率は10%〜30%前後(58.2は例外)まで大きく推移しています。

数学は他科目に比べるとやや難解であると言えます。

アクチュアリー「数学」で必要な学力レベル

アクチュアリーで必要な数学的知識及び数学力は、「高校数学レベルの確率・統計」「大学教養レベルの線形代数」「大学教養レベルの微積分」の3つです。

高校数学

アクチュアリーの数学には、高校数学の知識のみで解ける問題も一定数存在します。

そのため高校数学が得意だった方にはアドバンテージがあると言えるでしょう。

また高校数学の中でも特に確率、場合の数、データの分析などの知識が役に立ちます。

これらが得意だとさらに良いと言えます。

基本的な線形代数

理系学部の場合、大学1年の教養過程で習う分野及びレベルです。具体的にはマルコフ連鎖や重回帰分析に関連した問題が出題されます。

レベルのイメージとしては行列の計算ができれば良いという程度です。

しかし最近は行列ができなくても合格できるような出題がされているという現状もあります。

基本的な微積分

こちらも理系学部が教養過程で習う分野及びレベルです。

線形代数と異なり、微積分の知識を使う出題が毎年目立つため、合格のためには必須だと言えます。

また確率密度関数などの理解のためには、偏微分や重微分などの微分を知っておく必要があります。

それらの知識がないと確率や統計分野の勉強が進みません。

理論と違うアクチュアリーの数学

アクチュアリーの実務は、大学で習うような純粋な理論数学とは別物です。

通常の学問としての確率は、過去の経験を基に、過去の傾向が今後も続くという過程の上で計算を行います。

しかし、それが本当に正しいのかについては、現実世界の現時点では決して知り得ないことです。

医療技術の進歩や社会情勢の変化などは簡単に予測することができません。そのため想定と違った場合にどんな影響力があるかを考える力も必要です。

現実世界に対応するためには、新しい手法を柔軟に取り入れ、継続的に進歩することが求められます。

近年では、ビックデータの集取も用意になったので、それを活用できるアクチュアリーの需要も高まっています。

アクチュアリー数学の公式テキスト

アクチュアリーの数学の公式テキストは以下の通りです。

  • 確率
分類 題名 著者 出版社
教科書 入門数理統計学第 (12 章、第 13 章を除く) ホーエル. P. G 培風館
演習書 確率統計演習1 確率 国沢清典 培風館
  • 統計
分類 題名 著者 出版社
教科書 基礎統計学(1)/統計学入門 東京大学教養学部統計学教室 東京大学出版会
演習書 確率統計演習2 統計 国沢清典 培風館
  • モデリング
分類 題名 著者 出版社
教科書 モデリング - 日本アクチュアリー会

参考書としては「確率・統計・モデリング問題集」(日本アクチュアリー協会)があります。

出題範囲は教科書に限られるので、参考書はあくまで教科書理解を深めるための存在です。

初学の人が勉強を始める時のポイント

親指を立てるポーズ アクチュアリーを本気で目指すなら受験する科目の順番が重要になります。

初学者は数学から始めるのが最適です。以下、その理由を解説します。

数学は数理科目の基礎となるから最初に

アクチュアリー試験は、何年もかかって合格科目を揃えるのが一般的ですが、受験者はまず数学の合格を目指すべきです。

難易度を考えると最も勉強しやすい科目は、会計・統計・投資理論となります。しかし数学を突破できないと生命数理や年金数理、損保数理に手がつけられません

数学が専門でない方や、文系の方は特に数学の攻略を最優先すべきです。

会社による手厚いバックアップも不可欠

まず前提としてアクチュアリーは合格までに時間がかかる試験です。大学の数学系学部出身者でも合格には数年かかると言われています。

そのため、まず保険会社や信託銀行などにアクチュアリー候補生として採用された上で、様々な業務をこなしつつ、勉強を進めていくことがとても重要となります。

そうすれば会社の金銭的・時間的バックアップを受けられるからです。

アクチュアリー会では、1次試験に1科目でも受かれば研究員、1次試験に全科目合格すると準会員になれます。2次試験に合格すれば正会員です。

ちなみに、合格までどのくらい時間がかかるかというと、準会員になるのに5年、正会員なるまでに8年かかると言われています。

アクチュアリー数学の勉強法

雲を眺める女 アクチュアリーの数学の勉強法には決まったパターンがあります。ここではそのセオリーを紹介しましょう。

基礎固め時期(勉強開始〜2ヶ月)

まずは基礎固めとして、先ほど紹介したような高校数学や大学教養過程レベルの数学の知識を身に付けましょう。

具体的には教科書を読み返したり、マセマが出している「大学数学キャンパスゼミ」シリーズなどを読破しましょう。

簡単な計算に対してスラスラと手が動く状態が作れれば理想です。

確率分野と統計分野の攻略(2〜4ヶ月目)

「入門統計学」や「基礎統計学(1)/統計学入門」などを使って基礎を身につけましょう。

それと同時に「確率統計演習」や「確率統計演習2」で理解を深めることも重要です。

この段階では、計算の仕方や公式の運用方法などが分かれば良いので、早めに進めましょう。

統計に使う統計量は、試験前にもう一度確認しておくべきです。

モデリングの攻略(4ヶ月目)

モデリングは範囲は広いものの、比重はそこまで大きくありません。

シミュレーションでは、逆関数を用いた趣味レーションや正規乱数の生成などをマスターしましょう。

回帰分析は、最小2乗法などをスラスラできるレベルで十分です。

時系列解析は、ARMAモデル/ARIMAモデルなどについて抑えていれば良いでしょう。

確率過程は、ポアソン過程やブラウン運動を知ることが必要です。

とにかく手法を覚えることを優先させてください。実際に手法を実行できるレベルになるのはこの次の過程です。

時間があれば線形計画などをやっても良いですが、範囲には含まれません。

過去問による実践的攻略(5〜6ヶ月目)

最後は過去問演習を行います。この過程は特に重要です。出来るだけ多くの時間を過去問演習に使いましょう

早めに過去問に取り掛かり、自分に何が足りないのかを把握します。

その上で分からなかった部分に対して、重点的に復習や演習を行い、アバウトな知識を正確にしていくという方法がおすすめです。

過去問は最低でも10年分以上は解きましょう。

ここまでの過程を全てこなせば、個人差はありますが、200〜300時間の勉強になります。

日本アクチュアリー会から過去問を手に入れよう

アクチュアリーの過去問は、日本アクチュアリー会のHPで公開されています。数学に限らず全科目の入手が可能です。

問題の他に解答や解説、配点も掲載されています。そのため直前期の実力試しや学習を始める前に自分の現在地を把握するのに有効です。

ただ冊子など紙媒体での提供は行われていないため、紙で過去問が欲しい場合は印刷の必要があります。

アクチュアリー受験研究会も

アクチュアリー受験研究会は、アクチュアリーの合格を目指す受験生で構成されるオンラインコミュニティです。

ウェブサイトでの情報発信と毎月開催の勉強会が主な活動になります。

ウェブサイトでは先輩の勉強法や過去問のより詳細な解説や別解など、試験対策に役立つ様々な情報が集約されています。

新しい情報も常に追加・更新されているようです。

過去問は人によって解き方は様々です。よってアクチュアリー受験研究会を利用して、難問に対する他の受験生のアプローチを学ぶことは良い経験となります。

また最短経路での解き方を学ぶことも重要です。

関東アクチュアリー試験勉強サークル

アクチュアリー受験研究会以外にもサークルはあります。

アクチュアリー志望者に向けた「アクチュアリーへの道しるべ」という電子書籍を出版しているサークルです。

この書籍に関してはAmazonで購入することができます。「Kindle Unlimited」の会員なら無料購読が可能です。

またtwitterやLINEグループなどで情報共有を盛んに行っています。

アクチュアリー試験だけでなく、アクチュアリーの就活ノウハウも知ることができるため、刺激になって良いでしょう。

余裕を持った勉強時間を

アクチュアリー試験の数学は他の試験科目にも通じるため、時間をかけて対策しましょう。

会社員であっても1日1〜2時間は最低数学に時間をかけるべきです。継続的な学習が重要となります。

ちなみに朝の方が集中しやすい人も多いので、朝6時に起きて出勤まで勉強をするというのも良いでしょう。

公式テキストでわからない時の対処法

鍵の束 公式テキストを使って勉強していると、公式テキストだけでは理解できない瞬間が誰にでも訪れます。

その時には以下で進めるテキストを用いると良いでしょう。

弱点克服大学生の確率・統計

著者は藤田岳彦で、3,080円で東京図書より出版されているテキストです。

この書籍には、大学までの統計や確率で習う基礎的な内容が紹介されています。

アクチュアリー試験の数学では、大問1の全12問で出題される内容が網羅的に収録されているテキストです。

実際の試験で出題される形式とは異なりますが、公式の復習を兼ねて問題を解きましょう。

この本にある公式を体得したら十分です。別の書籍に移りましょう。

全部で8章ありますが、8章の保険金融数理入門はやらなくて良いです。他の章を反復しましょう。

明快演習 数理統計

小寺平治著で共立出版より販売されているテキストで、価格は2,640円です。

これはアクチュアリー試験の出来を左右させる本だと言えます。

問題を何度も反復して解きましょう。特に3章以降については重点的にやるべきです。

アクチュアリーの数学では、大問1に出題される12問を網羅することができます。また大問3についても効果的です。

アクチュアリー試験の数学の大問3は「誘導アリの証明問題」が出題されますが、こうした証明問題にもこのテキストは対応しています。

44の例題で学ぶ統計的検定と推定の解き方

著者は上田拓司で、オーム社より2,860円で出版されています。

統計検定や推定の色々なパターンが掲載されている本です。

統計や統計的仮説検定をパターン化して覚えたいという人におすすめです。

見開きで例題と解答が見られるという、すっきりとしたレイアウトも魅力的でしょう。

アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 数学

著者はアクチュアリー受験研究会代表MAHで、東京図書から出版されています。価格は3,530円です。

アクチュアリー合格を目的として設計されているため、受験勉強には最適の構成になっています。

有名なアクチュアリー受験研究会の方が執筆しているということもあり、権威性や信頼度も十分のテキストと言えるでしょう。

アクチュアリー試験についてもう少し詳しく

グラフのイラスト アクチュアリー試験全体について、もう少し補足説明を行います。

第1次試験と第2次試験

アクチュアリーになるための必要条件は、第1次試験と第2次試験の全科目に合格することです。

第1次試験

第1次試験の目的は「第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するどうかを判定すること」です。

多肢選択や語群選択が、マークシート方式で出題されます。センター試験のようなイメージです。出題範囲は教科書に限られます。

試験科目は以下の5科目になります。

  • 数学

  • 生保数理

  • 損保数理

  • 年金数理

  • 会計・経済・投資理論

一年1科目のペースで合格したら上出来と言われる試験です。そのため「準会員」になるための目安は5年とされています。

受験資格は、学校教育法による大学(短期大学を含む)の卒業となります。また以下の例外規定に該当する場合も受験が可能です。

  • 大学3年生以上の者(4年制大学において、休学期間を除き2年以上在学し、 かつ62単位以上の単位を修得した者)

  • 高等専門学校卒業者

  • 学士資格を有しない大学院生

  • 外国の大学を卒業した者、または、外国において上記①~③に相当する学校教 育における課程を修了した者

  • 生保数理、損保数理、年金数理等の日本アクチュアリー会資格試験の受験科目に 関連する知識を必要とする、保険・年金などの業務に3年以上携わった者

第2次試験

第2次試験の趣旨は、「アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知 識および問題解決能力を有するかどうかを判定することを目的とする」ことです。

全体の5割程度を目安に第Ⅰ部と第Ⅱ部に分けられます。

第Ⅰ部は「アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識を有するかどうかを判定する問題」で、第Ⅱ部が「アク チュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識に加え問題解決能力を有するかどうかを判定する問題」です。

専門的知識の部分は教科書・参考書を中心に出題されますが、問題解決能力の部分はアクチュアリーの役割や時事問題についても出題範囲に含めて論述式の解答を求められます。

そのためより広い専門職としての見識が問われます。

第2次試験では、3つのコースから1つを選択します。コースは以下の通りです。()は科目です。

  • 生保コース(生保1、生保2)

  • 損保コース(損保1、損保2)

  • 年金コース(年金1、年金2)

受験資格は、第1次試験の全科目合格です。第2次試験の難易度は1次試験よりもさらに高く、合格して「正会員」となるには、3年が目安とされています。

プロフェッショナリズム研修

第2次試験に合格し、かつ、理事会の承認を得たものが日本アクチュアリー会の正会員になれます。

この理事会の承認を得るには、プロフェッショナリズム研修(初期教育)を受講済みであることが必要です。

プロフェッショナル研修は1日研究となります。例年2月に実施されます。例えば、2020年は2月26日(水)に実施されました。

アクチュアリー試験数学の勉強法まとめ

アクチュアリー試験数学の勉強法まとめ

  • 数学をはじめに固めて、他科目に活用するべき
  • 過去問演習を最重要視して、理解の精度を上げていくのがおすすめ
  • 紹介した参考書を使って公式テキストをカバー

アクチュアリー試験数学の勉強法について、学習の手順やおすすめのテキストなど、詳しく解説しました。

初学者の皆さんは、「数学」からまず取り組みましょう。そうすれば他の科目に応用が効きます。

具体的な勉強法としては、基礎固めから各分野の大まかな理解へと移っていき、過去問演習によって仕上げていく方法がおすすめです。

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