土地家屋調査士と測量士の違いは?難易度や仕事内容の違いまで徹底解説!

「土地家屋調査士と測量士はどっちが難しいの?」

「土地家屋調査士と測量士のダブルライセンスは可能?」

土地家屋調査士や測量士に興味がある方の中には、このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

この記事では、土地家屋調査士と測量士の違い、試験の難易度などについて解説しています。

資格の違いを知り、ぜひ資格合格やダブルライセンスの取得を目指しましょう!

土地家屋調査士と測量士の違いについてざっくり説明すると

  • 土地家屋調査士は登記目的の測量ができるが、測量士は登記目的の測量はできないという違いがある
  • 土地家屋調査士は測量以外にも登記などの仕事があるが、測量士は測量の仕事がメインとなる
  • 試験の難易度は測量士の方が低い

土地家屋調査士と測量士の主な違い

パソコンと眼鏡

土地家屋調査士と測量士には、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、仕事内容の違いについて解説します。

土地家屋調査士と測量士の仕事内容の違い

土地家屋調査士とは、測量や、まだ登記されていない建物の登記を行う表題登記を中心に行う仕事であり「測量と表題登記のプロ」と呼ばれています。

土地家屋調査士の仕事には、大きく分けて以下の三点があります。

まず、土地や建物の調査や測量を行い、不動産の位置、構造、床面積、用途を明らかにする業務があります。

また、曖昧な土地の境界の特定を精密に行い、公法上の境界である筆界を特定する「筆界特定」を行うことも仕事です。

さらに、表題登記の申請手続きを代理で行うこともします。

土地の境界に関する民事紛争が起きた際には、境界問題相談センター(ADRセンター)にて紛争解決の手続きの代理も行います。

一方、測量士は登記目的以外の測量を行います。登記目的の測量は測量士ではなく土地家屋調査士の仕事です。

測量士が行う登記目的以外の測量とは、道路・トンネルなどの公共建築物を作る際に必要な測量のことです。

ですから、測量士は土地の登記もすることができません。この点も、測量士と土地家屋調査士の大きな違いの一つです。

つまり、土地家屋調査士は測量以外にも登記など業務があるのに対して、測量士は測量をメインに行うという違いがあります。

両者が扱う法律は異なる

土地家屋調査士は、主に

  • 土地家屋調査士法
  • 不動産登記法
  • 民法

とさまざまな法律をもとに業務を行います。

しかし、測量士は基本的に測量法のみに則して業務を行います。

このように、測量士と土地家屋調査士では、扱う法律も異なります。

土地家屋調査士と測量士の難易度の違いを比較

土地家屋調査士と測量士の難易度の差はどのくらいなのでしょうか。

それぞれの直近5年の合格率は以下の通りです。

年度 土地家屋調査士 測量士
令和4年 9.6% 14.4%
令和3年 10.5% 17.9%
令和2年 10.4% 7.7%
令和元年 9.7% 14.8%
平成30年 9.5% 8.3%

※土地家屋調査士試験の合格率の小数点第2位は筆者が四捨五入

このように、土地家屋調査士は毎年8~9%ほどの合格率で推移しています。

一方、測量士の合格率はその年によって変動しますが、おおよそで言うと10%前後ほどであると言えます。

土地家屋調査士も測量士も、試験に受験資格はありません。その点を考慮して合格率を見ると、試験の難易度は土地家屋調査士の方が高いことがわかります。

土地家屋調査士と測量士のダブルライセンス

ペンを持つ女性

土地家屋調査士と測量士の資格を両方取得するダブルライセンスは相乗効果が期待できるためおすすめできます。

ここからは、土地家屋調査士と測量士のダブルライセンスの取得の仕方や、ダブルライセンスによるメリットについて解説します。

測量士を持っていることで午前試験が免除

測量士や測量士補の資格を持っていると、土地家屋調査士試験では午前に行われる測量の試験が免除されます。

これは、測量士とのダブルライセンスを取得する上で大きなメリットです。

実際に、令和元年の土地家屋調査士試験では、午前の部では4,000人近くの受験者のうち31人しか受験していませんでした。

1級建築士、2級建築士も午前の試験が免除されますが、測量士や測量士補の資格を持っていることで免除になった受験生も多かったと考えられます。

午前の測量の試験の免除制度を利用する受験生が多い理由としては、土地家屋調査士の午前試験の難易度が高いことがあります。

午前の試験に合格するために効果的なテキストがないため試験対策がしにくく、午前の試験を受験すると合格が難しくなる可能性が高くなると言えます。

また、多くの人が免除制度を利用して午後の試験だけを受験するため、午前の試験も受けてしまうと体力的な面で不利になってしまうということも、ほとんどの人が免除制度を利用する理由の一つです。

このようなことから、ダブルライセンスを取得する際には、まずは測量士を取得してから土地家屋調査士を取得するという順番が鉄則です。

午前免除を主に狙うなら測量士補が最も効率的

測量士の下位資格として測量士補があります。土地家屋調査士試験の午前試験の免除を狙うのであれば、測量士よりも測量士補の資格を取得する方がおすすめです。

測量士よりも測量士補の方が難易度がかなり低く取得しやすいため、土地家屋調査士試験の免除を狙うという目的のみであれば、測量士よりも測量士補の資格を取得する方が楽なのです。

試験範囲は異なる点が多い

土地家屋調査士と測量士の試験範囲はどのような違いがあるのでしょうか。

土地家屋調査士は、筆記試験と口述試験があります。

【筆記試験・午前の部】

  • 平面測量 10問
  • 作図 1問

【筆記試験・午後の部】

  • 不動産登記法・民法などから20問(択一式)
  • 土地・建物から各1問(書式)

【口述試験】

  • 筆記合格者のみが受験できる
  • 1人15分ほどの面接試験
  • 筆記試験の午後の部と同じ内容が問われる

また、測量士の試験では、

  • 多角測量
  • 凡地球測位システム測量
  • 水準測量
  • 測量に関する法規及び関連する国際条約
  • 地域測量
  • 写真測量
  • 地図編集
  • 応用測量

の8つの分野が問われます。午前試験は択一式で28問、午後試験は記述式です。

このように、土地家屋調査士と測量士の試験範囲は重複する部分がありません。それぞれしっかり試験勉強をする必要があります。

ダブルライセンスのメリット

土地家屋調査士と測量士のダブルライセンスによるメリットはさまざまあります。

先に測量士としての実務経験がある場合、測量機器の取り扱いに慣れているため、すぐに土地家屋調査士としての業務を始めることができます。

また、ダブルライセンスを持っていることにより、他の土地家屋調査士や顧客から信頼されやすくなります。

さらに、独立までの期間が短くなるというメリットもあります。土地家屋調査士の資格取得後は、土地家屋調査士事務所に勤め、補助者として経験を積んでから独立するのが一般的です。

しかし、測量士として実務経験を積んでおけば、補助者としての期間を短縮でき、早く独立することが可能なのです。

土地家屋調査士と測量士はどっちを目指すべき?

クエスチョンマーク

土地家屋調査士と測量士はどちらを目指すべきでしょうか。

土地家屋調査士試験の午前試験の免除を受けられるという点からすると、測量士→土地家屋調査士の順番で資格を取得することがおすすめです。

それ以外の目的がある場合は、目的に合わせて取得する資格を選ぶようにしましょう。

需要は両者とも一定数保たれている

土地家屋調査士と測量士の需要は、現在どのくらいあるのでしょうか。

土地家屋調査士の需要

土地家屋調査士の場合、2003年に規制緩和があったことにより案件を確保するハードルが高まり、競争が激化しています。

しかし「表題に関する登記」という業務は土地家屋調査士の独占業務であるため、需要はある状態です。

また、近年人々の権利意識が高まったことにより土地の境界問題に関しての相談が増えたり、高齢化社会になっていることで相続に関する登記の業務が増えたりしており、新たな需要が生まれていると言えます。

測量士の需要

測量業務を行う会社は、測量士補か測量士を一人以上配置することが義務付けられています。

また、測量士の有資格者が多いことは会社の信頼に繋がるため、測量士の求人は多いです。

さらに、近年は災害が多発していることから、復旧業務での測量は需要が高くなっています。また、工事での測量業務も未だに需要が高い状態です。

測量士による測量業務はさまざまな場面で求められており、需要はなくならないと言えます。

このように、土地家屋調査士も測量士も一定の需要がある仕事なのです。

年収は測量士のほうがやや高め

測量士の平均年収は456万円程度と言われています。一方、土地家屋調査士の平気年収は600万円前後とされています。

給料面では土地家屋調査士の方が高くなっています。金銭面を重視するなら土地家屋調査士を目指した方がよいでしょう。

土地家屋調査士のほうが取得は困難

土地家屋調査士の合格率は、令和4年度で9.6%です。

土地家屋調査士試験は、測量方法、図面作成方法、不動産登記手続きなど、実務の知識を問う問題が大半であり、難関試験であると言えます。

土地家屋調査士試験の合格に必要な勉強時間は約1,000時間程度です。

一方、測量士の合格率は、令和4年度は14.4%です。

測量士試験では、測量技術、測量成果の管理・評価、測量に関する法令、公共測量の実務が問われます。

測量士試験は土地家屋調査士試験より合格率が高めではありますが、それでも合格率は10%台であり、難関試験の一つです。

また、測量士試験に合格するための勉強時間は300時間程度です。

測量士は数学の知識を使う部分の比重が高いため、文系の方は300時間では終われず、さらに数百時間の勉強をする必要があると覚悟した方がよいでしょう。

しかし、土地家屋調査士試験の勉強時間は1,000時間ほどですから、取得の手軽さは、測量士の方が上であると言えます。

土地家屋調査士と関連性の深い他の資格6選

博士帽をかぶる女性

ここからは、土地家屋調査士と関連が深い資格を6つ紹介します。

土地家屋調査士とここでご紹介する資格とのダブルライセンスもおすすめできます。

行政書士

行政書士試験と土地家屋調査士試験は民法の試験内容がかぶっており、その部分の知識は両方の試験に役立てることができます。

また、行政書士と土地家屋調査士は、農地転用、相続、開発許可などの仕事で被る部分があり、それぞれの知識を活かすことができます。

例えば、これらの仕事を行政書士として行う際に測量が必要な場合、土地家屋調査士の資格を取得していれば測量を自分ですることができ、仕事が広がります。

マン管・管業

マンション管理士・管理業務主任者試験の試験では、民法や不動産登記法などの科目の内容が土地家屋調査士試験の内容と重複する点があります。

特に、区分建物(マンション)についてはマンション管理士・管理業務主任者試験の勉強で学ぶことから、その点についても土地家屋調査士試験では有利に働きます。

また、マンション管理士・管理業務主任者試験と土地家屋調査士に合格していると、マンションの新築時などに必要な登記代理ができたり、マンション建築時に登記まで見据えた質の高いアドバイスができるようになります。

建築士

先ほども述べたように、1級建築士か2級建築士を取得していると、土地家屋調査士試験の午前の試験が免除されることができるというメリットがあります。

また、1級建築士・2級建築士と土地家屋調査士両方の資格を持っていると、自分で設計した建物を自分で登記することができるようにもなります。

一人で一通り行えるようになりますので、顧客から見てもメリットになると言えます。

司法書士

司法書士試験では、民法、不動産登記など土地家屋調査士試験と重複する科目があります。そのため、まず司法書士試験の勉強をしておくと、土地家屋調査士試験で出題される表示に関する登記(表示登記)に勉強時間を割くことができます。

また、土地家屋調査士は表示登記、司法書士は権利登記と登記の業務が別れていますが、ダブルライセンスを取得することにより、表示登記と権利登記の両方をすることができるようになります。

宅建士

宅建士の試験では民法の科目が出題されるため、その知識を土地家屋調査士試験でも活かすことができます。土地家屋調査士試験のメインである不動産登記法についても宅建士試験で多少出題されるため、こちらも土地家屋調査士試験に役立ちます。

また、例えば宅建士の資格により土地売買に関わる際、土地家屋調査士の資格も持っていれば土地の分筆登記を自分でできるため、大変便利です。

土地家屋調査士と測量士の違いについてまとめ

土地家屋調査士と測量士の違いについてまとめ

  • 測量士として実務経験を積んだあと土地家屋調査士の資格を取ると、測量の経験があるため実務がスムーズに始められる
  • 年収は測量士より土地家屋調査士の方が約150万円ほど高い
  • 測量士より土地家屋調査士の方が試験の難易度が高い

土地家屋調査士は登記目的の測量ができ、測量士は登記目的ではなく工事などでの測量の仕事に従事するという特徴があります。

土地家屋調査士と測量士のダブルライセンスを取得するのであれば、まず測量士を取得した方がよいでしょう。

測量士の資格を持っていると、土地家屋調査士試験の午前試験が免除されるというメリットがあるからです。

測量士の方が試験の難易度も低いですので、ダブルライセンスを目指す場合はまず測量士試験の受験をおすすめします。

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