土地家屋調査士の合格率は上がっている?試験内容や合格点・勉強時間から試験の難易度を考察
「土地家屋調査士の試験は難しいの?」
「土地家屋調査士の試験対策を知りたい!」
こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
土地家屋調査士は、不動産系資格の中でも難易度が高いと言われている資格です。この難易度の高さには理由があり、それを知ることが試験対策の第一歩となります。
この記事では、土地家屋調査士の合格率やその仕組み、試験対策について解説していきます。土地家屋調査士に興味を持たれた方は、ぜひご覧下さい。
土地家屋調査士試験の合格率についてざっくり説明すると
- 土地家屋調査士は不動産系資格の中でも高難易度の難関資格
- 合格率が8~9%とかなり低い
- 合格点だけでなく足切りとなる基準点が設けられており、この2つの点数をクリアしなくてはいけない
- 独学での合格はかなり難しい資格
土地家屋調査士試験の合格率は?
土地家屋調査士の過去10年間の合格率は以下のとおりです。
グラフを見ると、土地家屋調査士試験の合格率は、現状8~9%と非常に低いことが分かります。土地家屋調査士の合格率がここまで低いのには、理由があります。まずは合格率の低さについて解説していきます。
口述試験の合格率は100%なの?
土地家屋調査士試験には口述試験があります。この試験は一般的にほぼ全員が合格するといわれています。
そのため「午後の部」つまり筆記試験対策だけしていればいいといわれることが多いです。しかし、油断は禁物です。ほぼ100%受かるといわれている口述試験でも、落ちる人は一定数います。 対策を全くしないのは危険です。
土地家屋調査士試験の試験対策は、午後の部の筆記試験を中心に、満遍なく試験対策を行うようにしましょう。
他の人気国家資格と比較
土地家屋調査士試験の難易度は10%以下とかなり低いです。ここまで低いとかえって難易度の想像がつかない方もいるかと思います。そこで、人気の高い国家資格の難易度を調べました。
- 司法書士 およそ3~4%
- 社会保険労務士 3~9%
- 行政書士 およそ10~15%
土地家屋調査士試験の合格率は8~9%ですから、司法書士よりは高いが、行政書士よりは低い、というのが土地家屋調査士試験の難易度と言えます。社会保険労務士と難易度がほぼ同じです。
土地家屋調査士は国家資格の中では難関資格に入ります。試験対策はしっかり行いましょう。
土地家屋調査士の試験科目
試験対策をするには、試験内容を知っておく必要があります。以下の図は筆記試験の試験内容をまとめたものです。内容を頭の中に入れておきましょう。
部門 | 出題範囲 | 出題数 |
---|---|---|
午前の部 | 平面測量、作図 | 平面測量10問 作図1問 |
午後の部 | 民法に関する知識、登記の申込手続(登記申請書の作成に関するものを含む)および審査請求の手続に関する知識、その他土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力 | 択一式20問、書式は土地・建物から各1問 |
これに加え、さきほど触れた口述試験を行います。口述試験は1人15分程度の面談形式で行われます。試験範囲は筆記試験の午後の部と同じです。
試験内容のボリュームを見ると、午後の部の方が多いです。試験範囲の広さという意味でも、午後の部の試験対策をしっかり行わなくてはならないことが分かります。
土地家屋調査士の受験資格
土地家屋調査士は、受験資格がありません。 誰でも試験を受けることができます。
また、免除制度があり、以下の資格を保有していると筆記試験の午前の部を免除されます。
- 測量士
- 測量士補
- 一級建築士
- 二級建築士
口述試験を受験するにはその前にある筆記試験に合格する必要がありますから、免除制度を使っても、試験対策はしっかり行わなくてはなりません。免除制度の条件を満たしている場合でも、試験対策は怠らないようにして下さい。
合格点と基準点の両方がある
土地家屋調査士試験を受ける際に注意しなくてはならないのが、合格点と基準点です。
筆記試験には合格点と基準点があり、すべての基準を満たさなくてはなりません。例年、 基準点は30~35点で合格点は70~75点です。
少し分かりにくいので例を挙げますが、午後の部のみを受験した場合、択一式と書式試験を受けることになります。このそれぞれの試験で基準点を超え、なおかつ合格点を超える必要がある、ということです。
午前の部と両方受験する場合は、両方の部でどちらも全ての基準点と合格点を超えなくてはなりません。
令和4年度試験の合格点・基準点
次は実際の合格点と基準点を見てみましょう。以下の図は令和4年度の試験における合格点と基準点をまとめた図です。
最初は合格点の図です。
部 | 合格点 |
---|---|
午前の部 | 100点満点中68.0点 |
午後の部 | 100点満点中79.5点 |
次は基準点をまとめた図です。
部 | 出題形式 | 基準点 |
---|---|---|
午前の部 | 択一式 | 60点満点中30.0点 |
書式 | 40点満点中32.0点 | |
午後の部 | 択一式 | 50点満点中37.5点 |
書式 | 50点満点中34.0点 |
合格点、基準点ともに、わずかではありますが、午後の部の方がどちらも点数が高いことが分かります。しかし、土地家屋調査士試験の難易度が高いのは、この点数の高さだけではありません。
土地家屋調査士の合格率が低い理由
合格点や基準点を見ると、午後と午前で難易度に大きな変化があるようには思えないかもしれません。土地家屋調査士試験の合格率の低さは、試験難易度だけでなく、試験の仕組みが関係しているのです。
筆記試験の午前の部は、免除を受ける方がほとんどです。そのため、難易度も午後の部よりも低い傾向にあります。また、筆記試験を乗り越えた後にある口頭試験は、ほとんどの方が合格する試験です。
このことから、難易度を引き上げているのが、筆記試験の午後の部であることが分かります。次の項目では、午後の部の筆記試験の難しさについて解説していきます。
暗記以外にも計算や作図が必要
午後の部の筆記試験が難しい理由に、暗記だけでなく計算や作図が必要になる点があります。
計算問題は高度ではありませんが、三角関数や複素数といった数学的知識を求められます。作図問題はズレや未記入があれば減点されてしまいますから、素早く、正確に描く必要があります。
問題に合わせて要求される知識や技術が違うため、限られた時間内に良い成績を残すのは至難の業となります。
民法は出題範囲が広い
また、出題される科目の一つである民法は出題範囲が広いです。民法は以下3つの分野から問題が出題されます。
- 総則
- 物件
- 相続
3つの分野から3問出題されると聞くと簡単なように思えますが、出題範囲がかなり広いです。難易度自体は高くありませんが、法律をはじめて学ぶ人だと多少苦労します。
民法は平成16年から出題範囲になった新しい科目でもあるため、他の問題よりも過去問が少ないです。対策が他の問題よりも難しい点も、民法を厄介な科目にしている原因です。
試験時間の割に問題量が多い
午後の部の試験時間は、 2時間30分です。この間に以下の問題を全て正確に解かなくてはなりません。
- 20問の択一問題
- 2件の申請書作成
- 座標値や辺長・面積を求めた上での3つ以上の作図
問題を解くスピードが遅ければ遅い程、減点を増やす要因となります。土地家屋調査士試験では、知識や技術の正確さだけでなく、問題を解くスピードも要求されるのです。
スピーディに問題を解けるようになるには、とにかく問題に慣れる必要があります。試験対策をする際は、ただ問題を解くだけでなく、問題を解く速度を引き上げる訓練が必要です。
バランスよく得点する必要がある
土地家屋調査士試験では、基準点が存在します。つまり、筆記試験は足切り制度が採用されているのです。先程取り上げた通り、択一問題と書式問題には基準点があります。この基準点を両方で満たす必要があるのです。
どちらか片方が基準点よりも低い場合、もう片方は採点すらしてもらえません。 たとえ片方が基準点をクリアしていても、意味がないのです。
土地家屋調査士試験の試験対策では、基準点を下回るような苦手科目は作ってはいけません。
近年は合格率がわずかに増加
かなり難易度が高い土地家屋調査士試験ですが、近年は受験者数の減少により、合格率がわずかに上昇しています。
これは、筆記試験の合格基準が相対評価であり、受験者上位400名程度が合格するようになっているためです。最近は書式問題が易化していることも関係しているようです。
ただ、上昇率自体はほんのわずかな数値です。合格率が高くなっているからといって、油断してはいけません。
土地家屋調査士の実際の難易度は?
次は土地家屋調査士の実際の難易度について解説していきます。実際の難易度から、試験勉強の大変さについても触れていきます。
不動産資格の難易度ランキングで比較
不動産資格の難易度ランキングを見ると、土地家屋調査士は上から2番目、偏差値64の難関資格です。不動産資格の中では、飛び抜けて難易度が高い資格といえます。
他の資格と比べてみると、マンション管理士の合格率は8~9%で、土地家屋調査士と同程度です。有名な資格である宅建の合格率が13~15%であることを見ると、難易度の高さがよく分かります。
勉強時間は1000時間以上必要
次は勉強時間から難しさを知っていきましょう。
土地家屋調査士は、取得までの勉強時間が 1000~1500時間程度、平均で1年半程必要といわれています。働きながら勉強する場合、勉強に避ける時間は限られますから、 2~3年近くかかる可能性があります。
土地家屋調査士を目指していた人の中には、だらだら勉強したせいで合格に数年かかってしまう方や、途中で挫折してしまう方もいます。
試験を受ける時はもちろん、試験対策の時点から、気を引き締めて取り掛からないといけない資格なのです。
独学では勉強の継続が困難
土地家屋調査士試験は学校の勉強とは違いますから、勉強をさぼってもだれも何も言いません。自分が試験に合格できる時間が延びるだけです。そのため、モチベーションの維持が難しくなります。
まじめに勉強をしていても、内容を理解できないために挫折してしまう場合も多いです。特に、勉強に避ける時間に制限のある社会人は、試験勉強に費やす期間が長い分、挫折してしまう可能性も高くなります。
土地家屋調査士を独学で挑戦するのは、かなり厳しいと思っておきましょう。
独学以外の勉強方法
土地家屋調査士は、通信講座や通学講座があります。独学で勉強するよりも、通信講座や通学講座を活用した方が、試験対策はやりやすいです。
講座を活用すれば、講座のカリキュラムに従って勉強していきますから、自分で勉強計画を立て、遂行する手間を軽減できます。だらだらと勉強することでモチベーションを下げてしまうことがありません。
わからない部分があれば質問できるので、挫折する可能性も下がります。講義や問題を通して自分の足りない部分を確認できるので、苦手要素が分かりやすくなるというメリットもあります。
土地家屋調査士は、試験そのものの難易度も高いですが、試験対策も大変な資格です。少しでも自分の負担を減らすためにも、通信講座や通学講座を活用しましょう。
土地家屋調査士の勉強方法
独学で勉強するのがかなり難しい土地家屋調査士試験ですが、独学でも効率よく勉強する方法はあります。
この勉強方法は、通信講座等を受けている場合の復習でも役立つ知識です。独学で勉強する方も、通信講座等を検討している方も、参考にしてください。
民法の勉強から始める
試験勉強を始める際、どこから手を付けるかによっても、勉強の効率は変わります。土地家屋調査士試験の場合は、民法の勉強から始めましょう。
民法の概念を理解しておくと、その後の不動産登記法等も勉強しやすくなります。これは、不動産の売買や申請の代理等の多くの要素が、民法の知識が基になっているためです。
また、民法は量が多いです。不動産登記法の勉強時間を効率的に確保するためにも、早めに終わらせた方が良いのです。問題は択一式ですから、早い段階から過去問で対策しておきましょう。
電卓・定規・申請書の書き方に慣れる
書式の問題を解く際、電卓や定規を使います。道具をスムーズに使いこなせるようになれば、少ない試験時間でも慌てずに問題を解けるようになります。電卓と定規は何度も使って使い方を体に覚えさせましょう。
申請書も例を繰り返し写し込むことで、記載方法を頭にしみこませられます。
書式の過去問は問題数があまりありませんので、1問1問をきちんと理解して、自力で解答ができるレベルまで仕上げましょう。
過去問演習を繰り返す
試験問題になれるには、過去問演習を繰り返すことが大切です。最初は内容をあまり理解できなくても、問われ方を体感して、問題に慣れれば、スムーズに解けるようになります。
過去問で間違えた所や、悩んだ所、あやふやなことに気がついた所は、テキストに戻って復習しましょう。
先程も少し触れましたが、近年は問題が易しい傾向にあります。過去問を解くときは近年から昔に遡るようにして解くといいでしょう。問題に挑戦する時は時間を計って、解くスピードを上げる訓練も忘れずに行って下さい。
午後の部の対策が合格を決める
土地家屋調査士試験は、午後の部の筆記試験対策によって合否が決まると言っても過言ではありません。
試験対策は午後の部に特化した対策をとる必要があります。以下の項目では、午後の部の対策に特化した勉強方法を解説していきます。
択一式は8割以上を目指す
択一式問題は8割以上を目指しましょう。近年、出題の傾向としては、以下のような形で出題されます。
科目 | 出題数 |
---|---|
不動産登記法 | 16問 |
民法 | 3問 |
土地家屋調査士法 | 1問 |
総則、物件、親族・相続からの出題が多く、債権からほとんど出題されます。 ここを中心に、苦手科目をつぶしていく形で勉強しましょう。合格者と不合格者の差は僅差です。8割以上の得点を目指して下さい。
書式は解き方を理解する
書式問題は試験時間が短い割に記述量が多いです。座標や面積を求める計算問題や作図問題、資料から必要な登記を読み取る問題等が出題されます。
知識をただ丸暗記するだけだと、試験時間を大幅にロスしてしまいます。知識だけでなく、解き方から理解して、応用できるようにしておきましょう。
独学での合格はかなり難しい
土地家屋調査士の出題範囲はかなり広く、テキストも少ないことから独学での合格はかなり厳しいものとなっています。
特に計算や作図問題などの内容は、1人で理解を深めていくのが難しい分野であり、独学の際は特に苦労するでしょう。
また、書式問題は自分で客観的に採点を行うことが難しく、試験の経験が豊富な講師に直接採点してもらう必要があります。
これらの要因から、よほど自信のある人でない限りは独学での勉強はしないほうが無難です。
通信講座での学習がおすすめ
土地家屋調査士の学習を進めるにあたって、通信講座を用いた学習をおすすめします。
通信講座では独学時に不安だった範囲の内容理解も、わかりやすいテキストや講義を通して理解を促してくれるシステムとなっており、質問対応なども受け付けているところが多いです。
通信講座を受講する際は、特にアガルートの講座がおすすめとなっています。
アガルートの講座は、わかりやすいフルカラーテキストや、プロの信頼できる講師による解説動画が大きな売りとなっており、独学で不安点だった部分も安心して学習できます。
また、カリキュラムも徹底した分析に基づいて、実力が最大限身につく設計となっていることから、合格に最短で近づけるクオリティの高い講座であること間違いなしです。
勉強を開始する際には、アガルートの土地家屋調査士の受講を検討してみてはいかがでしょうか?
土地家屋調査士試験の合格率まとめ
土地家屋調査士試験の合格率まとめ
- 土地家屋調査士試験の合格率は8~9%とかなり低い
- 免除制度や口述試験の関係から、午後の部の筆記試験が難関となる
- 試験当日だけでなく、試験対策の時点から効率的に動くことが合格のカギ
- 独学での勉強はかなり難しいので、プロの手を借りた方がいい
土地家屋調査士は不動産系国家資格の中でも群を抜いて難しい資格です。合格するには、試験対策の時点から効率的に動く必要があります。試験対策にかける時間が長い分、モチベーション維持も大きな課題です。
難易度が高く、正確性とスピードが求められる資格は、独学での勉強はかなり難しいです。試験合格には、プロの目と手を借りることをおすすめします。
土地家屋調査士に興味を持たれた方は、通信講座の活用を検討してみて下さい。