土地家屋調査士の年収はどれくらい?年齢・役職別の収入の実態や仕事事情を解説!
「土地家屋調査士の年収ってどのくらい?」
「年齢や役職で年収はどう変化する?」
などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。
土地家屋調査士は比較的高収入が期待できる職業です。独立開業すれば年収1,000万円超えも夢ではありません。
今回は土地家屋調査士の年収について、年齢別・役職別の収入実態や仕事事情などを解説します。
これを読めば、土地家屋調査士の懐事情がよく分かるはずです。
土地家屋調査士の年収についてざっくり説明すると
- 平均年収は600万円前後
- 40〜50代では800万円以上が期待できる
- 課長以上なら1,000万円超えも
土地家屋調査士とは
まずは土地家屋調査士に関する基本情報をお伝えします。
不動産登記を行う
土地家屋調査士は不動産登記に関する業務独占資格です。不動産の測量と表題登記の申請手続きを行います。
土地家屋調査士の仕事は、土地や建物などの不動産を測量し、面積や境界、住所などを算定するところから始まります。
その後、算定した数値を元に正確な図面や書類を作成し、法務局への申請手続きを行うまでが土地家屋調査士の仕事です。
土地家屋調査士の仕事は、不動産売買におけるトラブルを防ぐことに寄与します。
ちなみに土地家屋調査士の独占業務は表題に関する登記であり、権利に関する登記ではありません。
表題とは面積や住所、構造などの不動産に関する情報であり、所有権や抵当権などは司法書士の領分になります。
土地家屋調査士になるには
土地家屋調査士になるには、土地家屋調査士試験に合格する必要があります。試験内容は以下の通りです。
筆記試験 | (10月の第3日曜日) |
---|---|
午前 | 平面測量10問・作図1問 |
午後 | [択一]不動産登記法・民法他から20問 [書式]土地・建物から各1問 |
口述試験(1月中旬) |
---|
一人15分程度の面接形式 |
土地家屋調査士の合格率は8〜10%で推移しており、行政書士や社労士などにも引けを取らない難関資格となっています。
また、合格ラインも午前・午後試験両方に設けられていることからバランスの良い勉強を行うことが合格への近道であるといえるでしょう。
土地家屋調査士の年収
土地家屋調査士の年収はどのくらいなのでしょうか。以下で詳しく解説します。
土地家屋調査士の平均年収は600万円前後
土地家屋調査士の平均年収は600万円前後と言われています。日本人の平均年収は420万円前後と言われているため、比較的高い水準です。
ボーナスは年間で100万円程度なので、月収は約40万円、手取りにして30万円程度になるでしょう。
一方、アルバイト・パートの場合は平均時給が1,000円程度であるので、こちらは比較的標準的な値段であるといえます。
年収には個人差がある
600万円というのはあくまでも平均値であり、実際の収入にはかなりの個人差があります。
特に独立すれば、平均よりも高い収入を狙うことも可能です。雇用されている土地家屋調査士の年収は400〜600万円程度ですが、独立して成功すれば、年収1,000万円を超える可能性もあります。
ただし、独立した場合は年収の下限も存在しないため、事業が軌道に乗らなければ400万円を下回ることもあるでしょう。
土地家屋調査士の資格手当
土地家屋調査士の有資格者には、1〜2万円の資格手当が支給されることが一般的です。
基本給が高い土地家屋調査士ですが、資格手当の金額はあまり高くないと言えるでしょう。
ちなみに社労士などを取得すれば、5万円程度の資格手当が支給される場合もあるようなので、これらの難関資格と比較すると低い支給額であるといえるでしょう。
土地家屋調査士の年齢層別の年収
土地家屋調査士の年収を年齢層別に確認してみましょう。
年齢 | 年収 | 月給 | ボーナス |
---|---|---|---|
20~24歳 | 428万円 | 27万円 | 107万円 |
25~29歳 | 533万円 | 33万円 | 133万円 |
30~34歳 | 585万円 | 37万円 | 146万円 |
35~39歳 | 668万円 | 42万円 | 167万円 |
40~44歳 | 750万円 | 47万円 | 188万円 |
45~49歳 | 840万円 | 53万円 | 210万円 |
50~54歳 | 900万円 | 56万円 | 225万円 |
55~59歳 | 893万円 | 56万円 | 223万円 |
60~65歳 | 608万円 | 38万円 | 152万円 |
上記を見ると、一般的な職業と同様に土地家屋調査士でも年齢と共に収入が増加する傾向にあることが分かります。
なお、40〜50代の平均年収が高くなっているので、役職についたり、独立・開業して成功する人が多くなるからだと考えられます。
実績と経験によって年収は1,000万円近くまで上昇するため、夢のある職業と言えるでしょう。
都道府県によって年収に差がある
土地家屋調査士の年収は、業務を行う都道府県によっても差があります。
一番年収が高くなるのはやはり関東圏で、中でもトップの東京は1,050万円という高水準です。また大阪・神奈川・愛知がそれに追随します。
一方で沖縄をはじめとするいくつかの県の平均年収は600万円で、東京とは400万円以上の差があります。
物価や地価なども異なるため、一概に比較することはできませんが、やはり都心部の方が収入の面では恵まれていると言えるでしょう。
男性のほうが女性より年収が高い
これも他の職業と同様ですが、土地家屋調査士においても女性よりも男性の方が年収が高い傾向にあります。
以下は土地家屋調査士の年収を年齢別・男女別にまとめたものです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20〜24歳 | 602万円 | 413万円 |
25〜29歳 | 619万円 | 478万円 |
30〜34歳 | 660万円 | 510万円 |
35~39歳 | 682万円 | 559万円 |
40~44歳 | 766万円 | 626万円 |
45~49歳 | 863万円 | 708万円 |
50~54歳 | 935万円 | 769万円 |
55~59歳 | 927万円 | 762万円 |
60~65歳 | 775万円 | 624万円 |
上記を見ると、どの年齢層においても男性の方が150万円程度年収が高いことが分かります。
会社規模・役職別の年収
土地家屋調査士の年収は会社規模や役職によっても異なります。
昇進すれば収入が上がる
土地家屋調査士の役職別の平均年収は以下の通りです。
役職 | 平均年収 |
---|---|
主任 | 644万円 |
係長 | 801万円 |
課長 | 1058万円 |
部長 | 1170万円 |
上記より、土地家屋調査士でも昇進するに連れて年収が上昇することが分かります。
特に課長以降は年収が1,000万円を超えるため、魅力的な職業と言えるでしょう。
大企業であるほど収入が高い
会社規模別の土地家屋調査士の年収は以下の通りです。
会社規模 | 平均年収 |
---|---|
大企業 | 870万円 |
中企業 | 720万円 |
小企業 | 653万円 |
上記を見ると、やはり企業規模が大きい方が年収が高くなることが分かります。ただし、大企業は倍率が高いため、年収が高い分入るのも困難です。
測量士より収入が高い
測量士も土地家屋調査士と同じく、土地の距離や面積などの測量に関する国家資格です。ただし、測量士の場合は登記の手続きは行えません。
厚生労働省が発表した「2018年賃金構造基本統計調査」によると、測量士の平均年収は464万円でした。土地家屋調査士に比べると150万円程度少ない水準です。
この結果を見ると、やはり不動産登記に関する独占業務を持つ土地家屋調査士の方が需要の高い資格であることが分かります。
土地家屋調査士の仕事事情
土地家屋調査士はどのような仕事を行っているのでしょうか。以下では土地家屋士の仕事事情について、報酬の仕組みや需要、メリットなどを解説します。
土地家屋調査士の報酬の仕組み
土地家屋調査士の報酬額は、依頼者との契約によって決められるため、仕事量や難易度によってその額は変動します。
例えば、事前調査を含めた土地の調査では、最大30万円〜40万円ほどになることもあるようです。
また戸建住宅の測量及び調査では、都市部なら100万円前後、山間部なら300万円前後のことが一般的と言われています。
測量する不動産に公共用の道路や水路が含まれる場合は、基本報酬に境界立会い費や境界確定申請費が加わるので、報酬額は高くなる傾向にあります。
土地家屋調査士の需要はなくならない
土地家屋調査士の独占業務である「表示に関する登記」は、不動産売買の際は必ず行わなければならないと法律によって定められています。
不動産売買の件数が今より著しく減少することは考えにくいので、土地家屋調査士の需要もまたなくならないと言えるでしょう。
特に都市部では再開発が盛んに行われるため、常に土地家屋調査士が求められます。
ただし、需要は安定しているものの、少子化などの影響を考えると今後不動産建設や公共工事の件数が大幅に増加することもまたないと言えるでしょう。
土地家屋調査士の仕事のメリット
先述した通り、土地家屋調査士は土地の測量と登記の手続きの両方を行います。そのため、フィールドワークとデスクワークの両方が仕事です。
デスクワークで部屋に缶詰になることはなく、定期的に屋外で気分転換できるため、アクティブな人にとっては理想的な仕事と言えるでしょう。
また特定の管轄内で業務を行うことが多いため、出張や転勤、異動が少ない職業でもあります。よって、プライベートを充実させたいという方にはおすすめです。
そもそも将来性は十分な職業ですが、ダブルライセンスなどスキル次第では、さらに仕事の幅を広げることもできます。
土地家屋調査士のきついところ
屋外での測量は炎天下で行うこともあるので、ある程度の体力は必要です。また草むらなどで測量を行わなければいけないこともあります。
さらに境界画定の立ち会いでは、隣地所有者を呼ぶのに苦労することもあるそうです。
基本的に需要の多い仕事ですが、景気によって仕事量が変動しやすく、特に独立・開業の場合は収入が安定しないことも珍しくありません。
高収入を望むなら大手企業
先述したように、中小企業よりも大企業に勤める土地家屋調査士の方が年収が高い傾向にあります。
年収差が100〜200万円程度になることもあるため、安定して高収入が得たいという場合は大企業への就職を目指しましょう。
特に都市再生機構やUR都市機構の大型住宅など、規模の大きな住宅を扱う法人は年収が高いので狙い目です。
さらに大手ゼネコンと関わりのある公共事業や大型商業施設・タワーマンションなどの建設に関わる建設会社との契約・提携を行った場合は、報酬額も跳ね上がります。
独立・開業も可能
独立・開業すれば年収1,000万円以上を目指すこともできます。
ただし、開業には数百万円の初期投資が必要になるので、独立・開業を狙うなら計画的に貯金しておきましょう。
また初めは顧客を集めるのに苦労することも想定されるので、建設会社などの人脈を作っておくと事業がスムーズに進められます。
資金や人脈を含めて、独立・開業の際は事業計画を綿密に立てておくようにしましょう。
ダブルライセンスがおすすめ
先述した通り、同じ不動産登記でも権利関係の登記は司法書士の独占業務です。
そのため、土地家屋調査士と司法書士の両方を取得すれば、不動産登記のスペシャリストとして活躍することができるでしょう。
また不動産鑑定士や宅地建物取引士を取得すれば、登記簿の作成など業務のクオリティを上げることもできます。行政書士の資格があれば、相続や開発許可などの一連の仕事に携わることが可能です。
特に独立・開業の場合は、タブルライセンスで業務の幅を広げることで、顧客獲得のハードルが下がります。年収アップにも直結するため、余裕があればダブルライセンスを目指すべきです。
土地家屋調査士は独学で合格できる?
土地家屋調査士試験は、合格率8〜10%の難関試験です。そのため、独学での合格は困難と言えるでしょう。
特に計算や作図問題は難易度が高いため、自力で取り組むのは厳しいです。
また土地家屋調査士は比較的マイナーな資格なので、参考書や問題集などが少ないという問題もあります。独学では良質な教材を探す段階から苦労するでしょう。
さらにネットなどの試験情報も少ないので、疑問や悩みなどを解決するのも困難です。特別勉強が得意な方でない限り、独学ではモチベーションの維持が難しくなるでしょう。
よって、土地家屋調査士の試験対策には通信講座を活用するのがおすすめです。通信講座ならプロ講師による効率的な講義を受けることができるので、多忙な社会人でも短期間で合格を目指せます。
土地家屋調査士になる流れ
土地家屋調査士になるには、以下の手順を踏む必要があります。
まずは試験に合格する
土地家屋調査士になるには、まずは国家試験に合格して資格を取得しなければなりません。
土地家屋調査士試験に受験資格はありません。学歴や実務経験に関わらず、誰でも受験することができます。
先述した通り合格率は8〜10%で、合格するには1年以上の勉強が必要と言われています。独学での対策は困難なので、通信講座を活用するのがおすすめです。
土地家屋調査士連合会に登録する
土地家屋調査士として働くには、試験合格後、日本土地家屋調査士連合会の「土地家屋調査士名簿」に登録しなければなりません。
登録には手数料として25,000円が必要です。
なお、実務経験がなくても登録することは可能ですが、登録前に連合会の研修を受ける場合もあります。
また登録後も新人研修やその他の研修を受けることが努力義務とされているので、資質向上のための勉強はいつまでも続きます。
企業などで実務経験を積む
中には実務経験なしで開業する人もいるようですが、企業などで一定期間働いてから独立するのが一般的です。
企業に勤務すれば、建設会社や測量会社などの人脈を築くことができるので、独立・開業への良い準備となるでしょう。
また試験内容と実務の内容が違う可能性もあるため、やはりある程度の実務経験を積んでから独立するのが現実的です。
経験が浅いことで顧客に迷惑をかけてもいけないので、一通り仕事を覚えてから独立を考えるのが良いでしょう。
測量機材などを揃えるのにはかなりの初期投資が必要なので、独立・開業を考えるなら資金面も含めて計画的に準備をする必要があります。
土地家屋調査士になったら
土地家屋調査士の主な勤務先は土地家屋調査士事務所や測量会社ですが、独立・開業して自らの事業を営むという選択肢もあります。
事務所や会社に勤務する
どこかに勤めるという場合は、正規雇用と非正規雇用という二つの選択肢があります。
正規雇用の場合
正規雇用には終身雇用というイメージがあるでしょうが、土地家屋調査士の場合は異なります。土地家屋調査士は数年で独立する人が多いからです。
もし独立開業よりも安定した企業勤務を希望する場合は、法人形態の企業を選ぶと良いでしょう。
非正規雇用の場合
非正規雇用のメリットは仕事の責任が軽く、勤務時間を比較的自由に決められることです。
一方でデメリットとしては契約が不安定なことが挙げられます。業務は補助作業が中心となるため、あまり高収入も期待できません。
独立・開業すれば業務が増える
独立・開業のメリットは、勤務時間や休日などを自分の裁量で決められることです。
ただし、土地家屋調査士は法務局の業務取扱時間に合わせて仕事をすることが多いので、基本的には平日に働いて土日に休むことになるでしょう。
また独立開業すれば、土地家屋調査士としての業務に経営者としての仕事も加わるので、仕事量は増加します。
特に事業が軌道に乗るまでは、経営者としての業務がかなり大変になるでしょう。
土地家屋調査士の年収まとめ
土地家屋調査士の年収まとめ
- 男性の方が女性よりも年収が高い
- 資格手当は1〜2万円
- 独立・開業で高年収を手に入れられるチャンスも
土地家屋調査士の年収について解説しました。
土地家屋調査士の平均年収は600万円前後と言われており、比較的高収入が期待できる職業です。
経験や能力によって年収は上昇していき、40〜50代でピークを迎えます。課長以上に昇進すれば年収1,000万円超えも可能です。
また独立開業すれば、それ以上の高収入を狙うこともできます。土地家屋調査士の業務は不動産売買に深く関わるため、需要及び将来性も十分です。
土地家屋調査士になりたいという場合は、まずは通信講座を利用して、土地家屋調査士試験合格を目指しましょう。