土地家屋調査士と行政書士はダブルライセンスすべき?開業・独立の際のメリットも解説
「土地家屋調査士と行政書士ってダブルライセンスできるの?」
「開業や独立のメリットも知りたい!」
このようにお考えの方は多いのではないでしょうか?
ダブルライセンスにも色々な組み合わせがありますが、土地家屋調査士と行政書士は相性が良い資格だと言われています。
そこでこの記事では土地家屋調査士と行政書士をダブルライセンスすべき理由を中心に、独立開業についても詳しくご紹介します。
ぜひよく読んで参考にしてくださいね!
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスについてざっくり説明すると
- 土地家屋調査士と行政書士は試験範囲が被っているため、片方の資格を持っているともう片方の勉強もしやすい
- ダブルライセンスで両方の資格を持っていると、業務の幅が増えて収入増が期待できる
- 独立や開業にも有利
土地家屋調査士と行政書士はダブルライセンスすべき?
土地家屋調査士と行政書士は、ダブルライセンスしやすい資格だと言われています。その理由や、ダブルライセンスのメリットをご紹介します。
共通した試験範囲の勉強がしやすい
行政書士は法律系の資格として有名ですが、実は土地家屋調査士も法律関連の知識を多用する資格です。
試験範囲も共通している部分が多いため、勉強しやすいと言われています。
民法の出題が共通している
土地家屋調査士の資格試験において、法律の出題範囲は現在「総則」「物権」「相続」から出題されます。
これらは「民法」に分類される分野ですが、行政書士の資格を持っていれば民法の知識は元から持っていますよね。共通した知識を必要とする土地家屋調査士の資格は、行政書士の資格があれば合格しやすいと言えます。
逆に、もし民法の勉強は初めてという方には、土地家屋調査士の法律分野の勉強はかなり難しいです。
法律の専門用語を覚えなければならないのもそうですが、土地家屋調査士に民法分野の出題が始まったのは平成16年度と比較的最近のことです。過去問が少ないため初学者にとっては対策がしづらいと言われています。
今後も土地家屋調査士の試験では民法がさらに幅広く出題されるようになると言われていますので、行政書士の勉強をしておけば土地家屋調査士の資格はかなり取りやすくなるでしょう。
勉強方法が確立されている
資格を取るためには、一定の勉強時間が必要です。特に社会人の方が仕事をしながら勉強時間を作るには、かなりの忍耐力や効率良く勉強するためのコツが必要になります。
しかし一度何らかの資格を取ったことがある人なら、忙しい中でも勉強をする習慣が身に付いていますよね。
中でも行政書士の資格を持っているなら、かなりの時間を勉強に費やしたはずです。そういう人にとっては、土地家屋調査士の資格の勉強もそれほど苦にならないでしょう。
また行政書士と土地家屋調査士には、両方とも択一式の問題が出ます。片方の資格を取るために行った対策法が、もう片方の受験勉強でも活かされることは間違いありません。
業務の幅が増える
土地家屋調査士の業務には、農地転用や開発許可申請など、役所への申請が必要なものが多くあります。
申請の際には、官公署に提出する書類作成や手続きの代理を行政書士に頼むことになるのですが、もし土地家屋調査士が行政書士とダブルライセンスだった場合、全ての手続きを自分一人行えますよね。
業務の幅が増えますので、収入増にも期待できるでしょう。
独立・開業の際に有利
土地家屋調査士と行政書士、両方の資格を持っていれば、独立開業した場合兼業で経営することができます。
片方のみの資格で開業するよりも収入の経路が2倍になりますから、安定した経営を続けることができるでしょう。
もちろんダブルライセンスで資格を取ることは、時間も労力もかかるので大変です。しかしその価値は十分あると言えます。
両者には関連する仕事内容がある
土地家屋調査士と行政書士の仕事には、重なる部分が多くあります。
もともと、行政書士の仕事は不動産に関する業務が多いと言われています。土地家屋調査士の仕事も不動産に関わるものですから、行政書士としての知識の多くを土地家屋調査士の仕事にも活かせます。
「表題登記申請」のように、土地家屋調査士は独占業務を有する仕事です。ただ、それだけに業務内容は狭くなりがちです。行政書士の仕事もできるようになれば、仕事の幅はかなり広がるでしょう。
農地転用
行政書士・土地家屋調査士のダブルライセンスが有利な業務として、農地転用があります。
農地を宅地や駐車場に変更する場合、使用用途が変わることの許可申請や届け出が必要になります。ここは主に行政書士の領分です。
一方、土地を測量して分筆したり、地目を変更したりといった業務は土地家屋調査士が行わなくてはなりません。この両方を一人でできるのはかなり強みです。
相続
遺産相続の案件では、現金以外に不動産の遺産分割が行われることも多いです。相続に関しては弁護士や行政書士など、法律の専門家の出番です。
一方で、土地を分筆して相続したり、土地の境界を確定させるという業務は土地家屋調査士の仕事です。ここでもダブルライセンスで両方の資格を持っていれば大いに活躍できるでしょう。
開発許可や風俗営業許可
開発許可や風俗営業許可の場面でも、行政書士・土地家屋調査士両方の資格が活用できます。
一定規模以上の開発を行う際には、土地家屋調査士が土地の区画を分筆・合筆する必要があります。また風俗営業の許可申請を行う際にも、土地家屋調査士が店舗の測量や図面の作成を行わなくてはなりません。
そしてその手続きについては、行政書士が行います。
意外なところでの行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスが役立つということですね。
女性でも幅広く活躍ができる
土地家屋調査士は現場での測量の仕事も行うことから、体力勝負だと思われることの多い仕事です。ただ、仕事の内容をよく見ていくと、女性でも活躍できる可能性が高いと言えます。
測量と言っても工事をするわけではありませんから、腕力がなくても十分可能です。
それに土地家屋調査士は、隣接する土地の所有者などと交渉する機会も多いです。女性ならではの柔和な雰囲気が役立つ場面も多くあることでしょう。
今後の女性の活躍に期待
平成25年度時点では、日本土地家屋調査士会連合会の女性会員の割合はわずか2.9%でした。
現時点では女性の土地家屋調査士が少ないのは事実ですが、行政書士とのダブルライセンスで業務の幅を増やすといった工夫をしていけば、女性でも独立・開業して活躍することは十分可能と言えるでしょう。
土地家屋調査士と行政書士の違い
土地家屋調査士と行政書士の仕事内容は、具体的にどう違うのでしょうか。それぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう。
土地家屋調査士と行政書士の仕事の違い
土地家屋調査士と行政書士は、ひとつの案件の中でお互いが分担して請け負うことが多い資格です。
それぞれの仕事分担はどのようになっているのでしょうか。
土地家屋調査士は表示登記がメイン
土地家屋調査士は、「表示に関する登記」が独占業務となっています。つ
「表示に関する登記」とは所有者に義務付けられたもので、不動産の形状や使用目的を法務局に届け出ることを指します。調査や測量を十分におこなった上で境界を画定し、正確な書類を作成しなくてはなりません。
この点は行政書士が代わることのできない、土地家屋調査士としての重要な業務となります。
行政書士は行政手続きを行う
行政書士の仕事は、官公署に提出する書類の作成や手続きの代理です。
「官公署」とは、各省庁や都道府県庁、市、区役所、警察署など、多くの公的機関を指します。
書類のほとんどは許認可などに関するもので、1万種類以上の書類を取り扱うことになり、間違いの許されない業務です。
土地家屋調査士と行政書士の難易度を比較
ここで、土地家屋調査士と行政書士の難易度を比較してみましょう。
わかりやすいように、それぞれの直近8年間の合格率をまとめました。まずは以下の表をご覧ください。
<土地家屋調査士・行政書士直近8年間の合格率>
年度 | 土地家屋調査士の合格率 | 行政書士の合格率 |
---|---|---|
2015年 | 8.8% | 13.12% |
2016年 | 8.9% | 9.95% |
2017年 | 8.7% | 15.7% |
2018年 | 9.5% | 12.7% |
2019年 | 9.7% | 11.5% |
2020年 | 10.4% | 10.7% |
2021年 | 10.5% | 11.2% |
2022年 | 9.6% | 12.1% |
上の表を見ますと、行政書士よりも土地家屋調査士のほうが例年の合格率が低いことがわかります。合格率で比較するなら、土地家屋調査士のほうが難しい資格だと言えるでしょう。
勉強時間も土地家屋調査士のほうが多い
資格試験の合格に必要な勉強時間で比較すると、土地家屋調査士が約1200時間なのに対し、行政書士は800時間程度だと言われています。
土地家屋調査士のほうが400時間も多く勉強しなくてはなりませんので、勉強時間で比較しても、土地家屋調査士のほうが難易度が高いと言えそうです。
どっちの資格を先に取得するのがおすすめ?
行政書士と土地家屋調査士は、勉強時間の差はあれど、資格の取りやすさとしてはほぼ同じくらいだと言われています。
ただ土地家屋調査士のほうが比較的将来性があると考えられますので、どちらを先に取るか迷った場合は、土地家屋調査士から挑戦すると良いでしょう。
なぜ土地家屋調査士のほうが将来性があるのかなどを踏まえて、以下で詳しく解説します。
取得の難易度はあまり変わらない
先ほども少し触れましたが、土地家屋調査士と行政書士の難易度は、土地家屋調査士のほうが若干上ではあるものの、そこまで大きく違いません。
合格率は土地家屋調査士が8~9%、行政書士が10%~15%です。どちらも1割前後の合格率ですから、多少の違いは誤差の範囲と言えます。
難易度面で「どちらを先に取るべきか?」を考えるなら、どちらが先でも良いと言えるでしょう。
土地家屋調査士のほうが需要が安定
資格としては行政書士のほうが有名だと思いますが、実は土地家屋調査士のほうが将来的に需要が安定していると言われています。
行政書士は競争が激化している
行政書士は以前から人気資格として有名で、ここ10年ほどで資格保有者が20%も増えています。2022年現在では約51,000人が行政書士として働いています。
しかし資格保有者が増えたということは、競争が激しくなっていることも意味します。人口減少によって顧客数もかなり減っているため、行政書士は今後どのように顧客を獲得するかが大きな課題になっていくでしょう。
土地家屋調査士はライバルが少ない
増加の一途をたどる行政書士に対して、土地家屋調査士は近年減少傾向にあります。この10年ほどで1割近く減っており、2022年現在では全国に19,000人程度しか土地家屋調査士はいません。
もちろん、行政書士と同じように人口減少の影響は受けることでしょう。しかし住宅やビルなどの建設は今後も行われますし、需要は安定していると言えます。
競合面、需要面、両方を考えると、今は土地家屋調査士を先に取ったほうが有利であると考えられます。
ダブルライセンスにおすすめな他の資格
最後に、土地家屋調査士とのダブルライセンスとして、行政書士の他におすすめできる資格をご紹介します。
司法書士
行政書士と並ぶ人気資格である「司法書士」も、土地家屋調査士とのダブルライセンスで取得するにはオススメです。
司法書士は、「権利に関する登記」が独占業務です。
登記に関する部分は土地家屋調査士の仕事をする上では常についてまわります。しかし独占業務であるため、その都度司法書士に依頼しなくてはなりません。
ダブルライセンスで司法書士の資格も持っていれば、書類のやり取りなどに時間をかけることなく、不動産に関する登記を一人で全て行うことができます。
独立・開業を行う場合でも、司法書士と土地家屋調査士の両方を持っていれば安定して仕事を得ることができるでしょう。
測量士補
「測量士補(そくりょうしほ)」は、測量を行うのに必要な国家資格です。
土地家屋調査士は現場での測量を行うことの多い仕事ですが、測量士補の資格を持っていれば測量士の指示のもと、自分で測量を行うことができます。
また、土地家屋調査士試験を受ける際、測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士の資格のうちいずれかを持っていると、筆記試験の午前の部が免除となります。
これらの資格の中では「測量士補」の資格が一番難易度が低いため、まず測量士補の資格を取ってから土地家屋調査士の資格試験を受ける受験生が多いと言われています。
なお測量士補の試験は、毎年5月に実施されます。土地家屋調査士の筆記試験は10月ですので、時期が被ることがありません。両方とも同時に勉強を進めておくと、一気に資格を取ることができるでしょう。
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスまとめ
土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスまとめ
- 土地家屋調査士と行政書士、両方をダブルライセンスで持っていると業務の幅が広がる
- それぞれの独占業務を一人でこなすことができるため、収入アップも期待できる
- 独立・開業をするにもおすすめ
- どちらを先に取るか迷ったら、より将来性のある土地家屋調査士からチャレンジしよう
土地家屋調査士と行政書士をダブルライセンスで取得しておくと、複数人で担当しなければならない案件を一人で進めることができます。
女性にもおすすめできる資格ですので、キャリアアップを考える方はぜひ、土地家屋調査士と行政書士のダブルライセンスを考えてみてくださいね!