簿記とはそもそも何?簿記の意味や級ごとに身に付く就活お役立ちスキルを紹介
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簿記
公認会計士たぬ吉
「簿記ってそもそもどんな資格なの?」
「簿記の資格ってどのくらい難しいものなの?」
このような疑問を持たれている方も多いのではないのでしょうか。
この記事では、簿記とはどのようなものなのか、歴史的な背景や意味、仕組みなどの基本的なことから、簿記を取得することでのメリットまで、簿記についてさまざまな点から解説しています。
簿記についてよくわからないという方も、ぜひ簿記の基本的な情報を理解し、合格を目指しましょう!
簿記とは何かについてざっくり説明すると
- 簿記とは日々のお金の取引を記録するための方法のことを言う
- 勉強することで会計に関する知識が身に付きやすい
- 取得すると就職や進学で有利になりやすい資格
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簿記とは結局何なの?
簿記は年間60万人が受験する資格であり、非常に有名な資格の一つです。
しかし、簿記とは何なのか、具体的にどのような資格なのかを知っている人は多くありません。そのような意味で、不思議な資格であると言えます。
そこで、まず簿記の歴史や意味、資格が生まれた背景などについて解説します。
簿記の歴史
もともとお金の流れについて記録すること自体は、紀元前2,000年ほど前の古代バビロニア人の時代から行われていました。
その後、14世紀にはイタリア・ヴェニスの商人たちの間で、現在の簿記の形のものが既に使われていたということです。
日本での簿記の歴史については諸説ありますが、その中の有力なものとして、明治時代に福沢諭吉が広めたとされている説があります。
福沢諭吉は自身の著書である『帳合之法』という本の中で、西洋の経営管理に関するノウハウを「帳簿記入術」という名称で紹介しました。
これがきっかけで、日本に簿記の概念が知られていったのではないかと考えられているのです。
このとき「帳簿記入術」は「簿記」と略され、実際にその後「簿記」という言葉が世間に広まっていきました。
簿記の意味
会社は株主、社員、お客さんに対し会社の経営状態について説明する必要がありますが、そのために作っているのが財務諸表という経営リポートです。
財務諸表は日々お金がどのように出し入れされているかをまとめて作成されるものです。
つまり、財務諸表を作るためには会社が行うお金の取引について毎回記録しておかなければなりません。
このように、財務諸表を完成させるため日々の取引を記録する方法が簿記なのです。会社経営にとって簿記はなくてはならないものだと言うことができます。
日商簿記が能力の証明に
簿記についての考え方が確立し定着していく中で、簿記に関する能力やスキルがあることを証明するための試験が生まれました。
試験を受けることで簿記に関する能力を持つ証明になるため、資格が誕生したのです。
そして、経理などの仕事に活かしたい方たちが受験を望むようになり、現在のように資格試験として定着しました。
日本商工会議所では日商簿記検定を行っていますが、このような経緯があり日商簿記検定が始まったのです。
日商簿記は3級、2級、1級があります。受験できる時期は、3級と2級は2月、6月、11月の年3回、1級は6月と11月の年2回の実施です。
一年に一度行われる資格と比べると、受験機会が多いために合格を狙いやすい資格だと言えるでしょう。
受験資格がないこともあり、受験する人の年齢層は高校生から社会人までと幅広いのも特徴です。
年齢制限もないため、ときどき小学生や中学生の見られます。
また、3級から受けなければならないというルールもなく、2級や1級からいきなり受験することも可能です。
内容さえ理解できれば誰でも受験できるというのが日商簿記検定の特徴と言えるでしょう。
簿記の基本の基本
簿記とはどのようなものなのか何となくわかったのではないでしょうか。
しかし、簿記の基本的なことの中でも、最も基礎的なことについて知りたいという方もいるでしょう。そこで、次に簿記の詳しい内容について解説していきます。
会社のお金の流れはこんな感じ
簿記は会社が行うお金に関する取引を記録したものですが、会社での実際の取引は金額が莫大です。
そのため、そのままの金額の規模で考えてしまうと、慣れないうちはよくわからなくなってしまうことがあります。
そこで、簿記のテキストでは、はじめのうちは数十円などの小さいお金に置き換えて計算することもあります。
そうすると、初心者の方でもわかりやすく勉強することができますよね。
小さな額に置き換えて、会社のお金の流れを表すと以下のようになります。
「〇〇(商品)を買うために、銀行から50円借りた」
「〇〇を50円で仕入れた」
「〇〇を150円で売った」
「〇〇を売ってくれた店員に給料として20円あげた」
「銀行にお金を50円返した」
「会社は80円の利益が出た」
会社のお金の流れは、このように例えることができます。
会社を経営するときには投資、営業、財務と言う一連の流れがあります。このような取引による会社のお金の増減を正確に記すことが簿記です。
特に「どれくらい財産があるのか」「いくら使っていくら儲けたのか」といった点については、簿記として最も注意しなければなりません。
このような視点で簿記を記録することにより、賃貸貸借表、損益計算書といった会社の経営に関するレポートが作られますが、簿記ではこれを「財務諸表」と呼んでいます。
簿記は自由でよい
財務諸表の作り方については、会社法、金融商標取引法、各種税法で定められています。
法律では、簿記を記述する上で一番重要な部分は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(GAAP)の通りにするように、と記載があります。
つまり、経理のやり方については、客観的な視点から許容範囲であると考えられるものであれば、自由な方法が認められているということです。
経営者は、その業種に合うように会計処理をしたり簿記の記述をしたりすることが許されている、ということなのです。
貸借平均(貸借一致)の原則
先ほども述べたように、会社の取引は「お金を集める(財務)」「お金でものを買う(投資)」「ものを買ったとき以上のお金で売る(営業)」の3つからなっています。
この3つの活動により資本や資産が増えたり減ったりすることになりますが、簿記では資本額と資産額の合計がそれぞれ必ず一致するという考え方が基本です。
このような考え方を「賃借平均(貸借一致)」の原則といいます。
お金の取引を記録する簿記帳簿では、左側の方を「借方(かりかた)」、右側の方を「貸方(かしかた)」と呼びますが、貸借平均(貸借一致)の原則から、この借方と貸方の額は、必ず一致するということになります。
簿記では、この貸借平均(貸借一致)の原則が、全ての問題を解くときの前提となっていますので、勉強を始める方はまずこの原則をしっかり理解することが大切です。
簿記3級のための基礎知識
ここまで簿記とは何かについて解説してきました。しかし、ここまでの知識だけでは、簿記3級を受験するレベルにはまだ至りません。
そこで、次はより深い話として、簿記3級を勉強するにあたり必要な基礎知識について解説します。
仕訳と複式簿記の基礎知識
会社では、商品を買えば商品が増え会社の現金が減るというように、取引をすることによって何かが増え、何かが減るという事態が起こります。これを取引の二面性と呼びます。
また簿記3級では、「仕訳」という取引別に記録をしたものを扱う点も特徴です。
会社で行われる取引は全て仕訳に従って分類されますが、仕訳した結果をまとめると財務諸表になることから、これを「複式簿記」と呼びます。
財務3表とは
財務諸表には4つあります。その中で「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つは財務3貸借平均(貸借一致)の原則 と呼ばれる重要なものです。
賃貸貸借表は右側に資産、左側に資本を並べた簿記帳簿を集計して作ったもののことをいいます。
損益計算書は、余剰金の増減の内訳を示したもので、一定期間ごとに作る財務諸表のことを指します。
また、キャッシュフロー計算書とは、現金や債務がどのように動いているかについて記録したものです。
伝票と補助簿
会社が大きくなると社員の人数が増えていきます。そうすると、様々な取引が同時に発生するため、仕訳帳を記入することが難しくなっていきます。
そのため売上、出勤、振替といった会社で行われる最低限の重要な取引について簡潔に記入した「伝票」を用います。
しかし、伝票だけではカバーできない情報もあるため、それを記すための「補助簿」というものも必要です。
簿記資格を取得するメリット
ここまで簿記の基礎についてご説明しましたが、簿記を取得することによるメリットが気になる方もいるでしょう。
具体的には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
簿記でできるようになること
簿記を取得することで、会社の経理事務をする際に必要な会計の知識を得ることができます。これにより、財務諸表を正しく読む力も身につけることが可能です。
また、財務諸表を適切に読めることで経営について考えることもできるようになります。
経営管理や経営に関する分析について、基礎的な能力を身につけることができるのです。
経理や小売り販売でも役立つ
簿記を勉強することで経理の仕事についてわかるようになるため、自分が勤めている会社の経営状況を把握することができるようになります。
また、コストの感覚はビジネスの基本ですが、簿記を勉強することによりこのコストの感覚を養うことも可能です。
簿記の考え方はコストについて特に意識すべき業界である小売業の販売にも役に立つという点も、メリットとして挙げられるでしょう。
営業・企画など全ての場で使える
簿記の資格を持つことにより経理で必要な考え方を使った分析ができるようになるため、そのような視点で企画立案や営業ができるようになります。
提案をする際にはあやふやな表現では説得力がありませんが、簿記では重要知識として損益や原価など具体的な数値を用います。
これらの数値を用いることで、説得力のある提案をすることが可能になるのです。
このように、どのような職種であっても簿記の考え方を活かすことができます。
就職・進学に使える
求人では簿記資格を持っていることを条件としている企業は少なくありません。
簿記は社会人として働いていく中で必要とされる資格であり、実際にハローワークで「簿記」というキーワードで検索すると、7,000件以上の求人が出てきます。
また、企業だけではなく大学でも、入試で簿記の資格を持っている学生を優先して合格させているところもあります。
例えば、日本大学や中央大学等は日商簿記検定を取得していると入試で優遇されることができます。そのような大学は全国で78校です。
起業経営に役立つ
起業すると、決算に関する書類や確定申告の書類を書く必要が出てきます。しかし、会社員ではそのような経験があまり無いことの方が多いでしょう。
そのため、起業して初めてそのような書類を書くことになったときに、知識がなくて戸惑ってしまうこともあるかもしれません。
一方で簿記を取得していると、このような場面でも知識や能力を役立てることができます。
企業経営だからといってレベルの高い資格が必要なわけでもなく、基本的に簿記3級を取得していれば特に支障はありません。
家計管理にも使える
簿記は仕事にも役立ちますが、日常生活でも役に立てることができます。
家庭は一つの企業と考えることもできますので、そのような観点から言えば簿記の知識を使って家計を正確に管理することができるのです。
さらに、会社では投資をする際に会社の経営状況を把握しておく必要がありますが、このような際にも簿記の知識は生きてくるでしょう。
簿記を取得するメリットについては下記の記事をご覧ください。
日商簿記3級や2級で具体的に何ができるようになるの?
日商簿記3級や2級を取得すると、どのようなことが出来るようになるのでしょうか。
簿記3級でできるようになること
簿記3級では商業簿記を学びます。
商業簿記では、お金の貸し借りをすることや、商品を仕入れたり販売をしたりして利益を得ることなどの記録・計算をして、適切な決算書を作ることが目的です。
簿記3級ではそのような商業簿記の基礎について学ぶことができるため、取得することによって簡単な決算書を書くことや読むことができるようになります。
簿記2級でできるようになること
簿記2級では、商業簿記だけではなく工業簿記というものも登場します。
また、商業簿記も3級よりも難しいものになり、新たに学ばなければならない内容が増えるため注意が必要です。
2級での商業簿記は、大企業に向いている株式会社会計、本支店会計、連結会計といったものも含まれます。
2級では、それに加えて、製造業特有の簿記である工業簿記についても学ぶため、3級とは雰囲気が全く変わってしまいます。
このように、3級ではどちらかというと個人経営や小さい企業に関する簿記を学びますが、2級となると大企業や製造業に関する簿記がメインです。
また、上場している大企業に関して経理をする能力が身に付いたり、経営に関する書類を読み解いたりする能力が身に付くことも特徴です。
そのような能力を身に付けることにより、大企業でも「即戦力」となれる証明をすることができるため、特に経理職では重宝されやすくなります。
また、営業や企画職でも評価されやすい傾向にあるため、そのような職業に就きたい方にとってもメリットは大きいです。
大企業や製造業に就職したい方は、2級も取得しておくと就職活動で大いに役立てることができます。
簿記1級でできるようになること
簿記3級では商業簿記、簿記2級では商業簿記と工業簿記を学びます。
それらに加えて、簿記1級では会計学や原価計算についても学んでいくため、会計学に関する専門的な考え方が身に付き、また会計学に基づいた処理能力を身に付けることもできます。
加えて簿記1級を学ぶと、会計基準、財務諸表等規則、会社法など、企業で行う会計に関する法律にも接するため、法律にも詳しくなれる点もメリットです。
そのため、取得後には知識を生かして経営コンサルタントに転身し活躍することも可能です。
さらに、企業への就職にも生かすことができます。1級を取得している方は、就職後には顧問税理士の方や監査法人の方と接するポジションを任されることもあります。
そのように、税や法律に関して第一線で働いている方と対等に渡り合うことができるため、簿記1級を取得することで、やりがいの大きな仕事ができるようになると言えるでしょう。
また、1級を取得できるレベルの方は、税理士試験の科目合格者や公認会計士試験の財務諸表論・管理会計論の合格レベルの知識を持たれている方と同じくらいのレベルと言われています。
1級を取得できるような方はその時点で優秀な方ですが、企業では税理士や公認会計士に合格する可能性がある人材と評価され、そのような人材にふさわしい仕事をさせてもらえる可能性も高くなります。
このように、1級を取得することは仕事で有利になることが多くなるため、キャリアを考えていく上ではとても重要な資格であると言えるのです。
簿記3級って誰でも受かるくらい簡単?
簿記3級は、一部で合格するのが簡単だと言われている資格であり、「誰でも受かる」とすら言われることもあるほどです。
しかし本当にそうなのでしょうか。実際にはどれほどの難易度の資格であるのか、詳しく解説します。
「簡単」だけど半分落ちる
簿記3級のテキストや問題集には「簡単」「1週間で受かる」というような宣伝をしているものが多いです。
しかし、実際にはここ10回分の合格率を平均すると出る合格率は46%程度になります。
46%という数字からは、必ず受かるというものではなく、簡単だと断言できるほどには合格率が高くないと言うことができます。
他の難関資格、例えば士業などの合格率と比べると確かに合格率は高めではありますが、2人に1人は落ちるということを考えると、誰でも受かる簡単な試験だと言うことはできません。
ただでさえ半数程度の受験生が落ちている資格ですので、簡単だからと勉強をおろそかにしたままで受験すると、落ちてしまう可能性が高くなってしまいます。
決して軽く考えるのではなく、しっかり勉強をすることによって確実に合格できるレベルになることを目指しましょう。
簿記3級の難易度は下記の記事をご覧ください。
独学で受かる人が大半
簿記3級に合格するために必要な勉強時間は150~200時間だと言われており、受験する人の多くは独学で勉強して合格しているのが特徴です。
しかし、簿記2級となると、内容が3級よりも難しく勉強しなければならない内容も増えるために、勉強時間は350~500時間ほど必要となってしまいます。
そのため、通信講座や資格予備校に通って対策をする方も多くなります。
簿記2級を独学で勉強してみたところ十分な勉強時間を取れずに勉強が進まないという方、内容が難しいと感じて合格することは無理なのかと諦めかけてしまっている方は、独学ではなく通信講座、資格予備校に通ってみてはいかがでしょうか。
一発合格を目指すなら十分な対策は必要
簿記3級は「確実に」「誰でも」受かるという簡単なイメージがある方もいるかもしれませんが、決してそのような試験ではありません。
確かに独学で合格することも可能ですが、もし独学を選ぶのであれば、合格するために対策をしっかり立てることが必要です。
もし独学でモチベーションを保つのが難しいと感じる場合には、通信講座を受講するのも選択肢の1つです。
完全独学は不安な人は
完全に自分の力だけで勉強を進めることに不安を感じる方は、スタディングのオンライン講座を受講されることをおすすめします。
スタディングの簿記3級講座であればスマホ1台で講義の視聴から問題演習までありとあらゆる学習が可能となっているので、日々の生活で生まれる隙間時間を最大限活用して勉強することができます。
もちろん学習スケジュール管理などもバッチリできるので、自分一人だと途中で投げ出してしまいそうという方でも安心です。
講座の価格も3,850円となっており、むしろ独学で教材をあれこれ揃えるよりも安く済むという破格の価格設定です。
あなたもスタディングを活用して、まずは簿記3級の資格から手に入れてみませんか?
簿記とは何かまとめ
簿記まとめ
- 簿記とは、財務諸表を作るために日々のお金の取引を記録したもの
- 簿記3級は合格が簡単と言われるものの、2人に1人は落ちてしまう資格
- 簿記2級を受験する場合、独学ではなく通信講座や予備校で勉強する人が多い
- 簿記3級は独学でも合格可能だが、モチベーションを維持するために通信講座を受講するのも方法の一つ
簿記とはどのような資格なのか、簿記にはどのような意味があるのかなどについて解説しました。
「簿記とは何なのかよくわからないから受験するかどうか迷っている」という方も、簿記を受験することのメリットなどを理解してもらえたのではないでしょうか。
簿記は就職や進学でとても役に立つ資格です。独学では難しいと感じても、通信講座や予備校に通うことで取得を目指しましょう!