USCPAの前に簿記2級を取るべき?1級との難易度差から勉強方法の違いまで解説
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簿記
公認会計士たぬ吉
「USCPAの前に簿記2級を取った方が良い?」
「USCPAは簿記何級に相当するんだろう?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
USCPAはアメリカの会計資格で、日本の簿記では「1.5級程度」に相当するイメージです。
USCPAは試験が英語で出題されるうえに受験資格が設けられているため、簿記との単純比較はできません。
また、USCPAの取得を目指すべきか簿記の取得を目指すべきかは人によって異なるため、自身の状況を踏まえて最適な選択をしましょう。
こちらの記事では、USCPAの特徴や簿記との難易度比較、簿記との勉強方法の違いなどを解説していきます。
USCPAの取得を検討している方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください!
USCPAと簿記1級・2級の違いについてざっくり解説すると
- グローバルに活躍したい場合はUSCPAの取得がおすすめ
- 日本企業で汎用性の高い資格が欲しい場合は簿記がおすすめ
- USCPAのレベル感は「簿記1.5級」
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USCPAの前に簿記は必要?
USCPAはグローバルに活躍できる資格として人気がありますが、USCPAを取得する前に簿記の取得を目指そうと考える人は多いです。
しかし、必ずしもUSCPAを取得する前に簿記を目指す必要はありません。
簿記とUSCPAは知識がかぶる点が少ないため、わざわざ時間を費やしてまでUSCPAの受験前に簿記を取得する必要性は薄いです。
USCPAの人気は近年急上昇
USCPAは英語を用いながら会計業務をこなせる資格で、日本の公認会計士のアメリカ版というイメージです。
世界を相手に仕事ができるため、グローバルに活躍しつつ会計の専門性を高めたいと考えている方におすすめの資格です。
近年は日本国内企業も海外企業の買収などを行っているため、英語を使って会計業務がこなせる人材の需要が高まっています。
会計や経理の部署にいるビジネスマンを中心に人気が高く、将来性も豊かといえるでしょう。
簿記は老若男女問わず人気が高い
簿記は、企業会計を理解し、企業のお金の流れを分析する能力があることを示す資格です。
USCPAとは異なり、語学力は関係ありません。
簿記の最終目的は決算書の作成であり、すべての企業において欠かせない経理業務をこなせる人材になれます。
企業のお金の流れや財務の安定度を把握できるため、様々な職種で役立つ強みがあります。
どっちを先に受験すべき?
USCPAと簿記のどちらを先に目指すべきかは、置かれている状況や将来のキャリアビジョンによって異なります。
学生などこれから社会人生活を迎える人は、企業で汎用性の高い簿記を先に受験するのがおすすめです。
また、現に経理部員として働いている方や外資へのキャリアアップなどを目指す場合は、USCPAを先に受験すると良いでしょう。
難易度は簿記よりもUSCPAが上ですが、必ずしもUSCPAの前に簿記を取る必要はありません。
会計知識がなくても合格は可能
USCPAも簿記も、もともと会計知識がない状況で勉強を始めても合格を目指すことは可能です。
予備校を有効活用して、計画的な学習をすれば会計初学者でも合格することは可能なので、身構える必要はありません。
USCPAの問題はすべて英語で出題され、英語で回答することになるため、USCPAの取得を目指す場合は英語の勉強を行うことも大切です。
USCPAと簿記の難易度差
USCPAと簿記は同じ会計に関する資格ですが、USCPAが簿記何級に相当するのかイメージできない方も多いでしょう。
以下で、USCPAと簿記の難易度について解説していきます。
USCPAは簿記何級レベル?
USCPAと簿記は、受験資格や出題形式などが異なるため単純比較ができません。
一般的に、USCPAの難易度としては「簿記1.5級程度」の感覚といわれており、かなり難しい試験と言えるでしょう。
「簿記2級よりかは難しい会計知識が問われるが、簿記1級ほどでない」という見方が多く、難易度をイメージする参考にしてみてください。
USCPAに簿記2級は必要?
USCPAの合格を目指すにあたり、簿記2級は必ずしも必要ありません。
会計の基礎知識は役に立りますが、USCPAではBEC(企業経営環境・経営概念)、REG(諸法規)、AUD(監査および諸手続き)などの内容も学びます。
簿記2級よりも試験範囲が広いことから、簿記2級を先に取得したからといって勉強時間が短縮できるわけではありません。
USCPAへの合格を目指す場合は、USCPAに合格するための勉強を行うことが最短のルートとなります。
USCPAvs簿記1級
USCPAと簿記1級を比較すると、財務会計系の科目における難易度としては簿記1級の方が難しい見方が強いです。
USCPAの4科目中2科目が簿記1級の範囲となっており、試験で求められるレベルは簿記1級の方が高いです。
ただ、USCPAは法律や監査手続きなど簿記試験では取り扱わない範囲も合わせて学習するため、試験範囲の広さなども考慮に入れるとUSCPAの方が難易度は高いと言えます。
なお、簿記1級を取得するための学習費用の目安は10~20万円程度ですが、USCPAは100万円以上かかります。
学習費用はUSCPAが圧倒的に高いものの、国際的に活躍したいと考えている場合はUSCPAが必須です。
USCPAを取得すればグローバルに活躍できる貴重な人材になれることを考えると、かけた学習費用は有意義な自己投資と言えるでしょう。
USCPAと簿記の合格率の差
USCPAと簿記の合格率を比較すると、下記のようになります、
- USCPA:50%程度
- 簿記2級:30%程度
- 簿記1級:10%程度
一見するとUSCPAの合格率が高いですが、50%という数字は「英語を母国語とするネイティブを含んだ全受験生の合格率」です。
日本人に絞るとUSCPAの合格率は20~30%程度といわれており、やはりイメージとしては「簿記1.5級」になります。
簿記1級は会計に関するエキスパートとして活躍できるため、難しさは特筆すべきものであることがわかります。
USCPAと簿記の勉強時間の差
続いて、USCPAと簿記の勉強時間の差を比較してみましょう。
- USCPA: 1200~1500時間
- 簿記1級: 800~2000時間
- 簿記2級: 350~500時間
USCPAと簿記1級は膨大な勉強時間が必要になるため、相対的に簿記2級は与しやすいといえるでしょう。
USCPAの問題は英語で回答する必要があるため、必要な勉強時間はその人が持つ会計の知識と英語力によって異なる点は知っておきましょう。
なお、公認会計士試験に合格できるレベルの方の場合、700~900時間程度の勉強でUSCPAに合格できる可能性があります。
また、簿記2級程度の会計の知識を有しており、TOEIC500点程度の英語力がある人の場合、1,000~1,200時間程度の勉強でUSCPAに合格できるチャンスがあります。
USCPAに英語力は必須
USCPA試験は全て英語で出題されるため、英語力がなければ回答できません。
- Multiple Choice:4つの選択肢の中から1つの正解を選択する
- Task Based Simulation:財務諸表や申告書の穴埋め、複数の選択肢からの択一形式など
- Written Communication:設問に対して英作文で解答する
USCPAは上記3つの出題形式となっていますが、選択式だけでなく記述問題もあります。
英語で書かれた膨大な量の問題を理解し、英語で解答する能力が求められることから、TOEIC700~800程度の英語力が必要です。
難易度ランキング比較
USCPAや簿記の難易度をイメージするために、他の資格の合格率とランキング比較してみましょう。(2022年試験)
試験 | 合格率 |
---|---|
公認会計士 | 7.7% |
FP1級(きんざい) | 2022年9月:12.2%、2022年5月:9.4%、2022年1月:6.7% |
簿記1級 | 2022年11月:10.4%、2022年6月:10.1% |
行政書士 | 12.1% |
税理士 | 19.5% |
簿記2級 | 2022年11月:20.9%、2022年6月:26.9%、2022年2月:17.5% |
USCPA | 52.8%(全受験者における平均合格率) |
上記ランキングは純粋な合格率だけで作成しています。
実際には、受験資格の有無などがあるため数字以上に難易度の高い資格がある点には留意してください。
また、上記のランキングの中で英語力が求められるのはUSCPAだけです。
単純比較は難しいものの、レベル感としては行政書士に近いといえます。
USCPAと簿記の試験を比較
USCPAと簿記は、試験内容が異なります。
以下で、USCPAと簿記の試験内容などを比較検討していきます。
USCPAは満たすべき受験資格の種類が多い
簿記試験は受験資格が設けられておらず、誰でも何級から受験可能です。
しかし、USCPAは学位要件として4年制大学を卒業していること、単位要件として会計単位・ビジネス単位を一定数以上取得していることが求められています。
受験資格は受験する州によって異なりますが、予備校等を活用して単位認定試験を合格すれば、単位要件を満たすことが可能です。
USCPAを目指す場合は受験資格を得る必要もあるため、受験に際しては受験資格を得るための費用も工面する必要があります。
試験の実施回数・試験日
USCPAは、いつでも好きなタイミングで受験可能です。
日程は自由に選択できますが、試験会場は東京と大阪に限られます。
一方で、簿記1級は年2回、2・3級は年3回行われており、全国各地の試験会場で行われます。
なお、簿記2・3級はCBT形式で受験することも可能で、CBT形式であれば自分の好きなタイミングで受験可能です。
試験形式を理解しよう
USCPAは
- FAR(財務会計)
- BEC(企業経営環境・経営概念)
- REG(諸法規)
- AUD(監査および諸手続き)
上記の4科目で構成されており、各科目の試験時間は4時間です。
英語のコンピューター試験で、1科目99点満点75点で合格となります。
簿記1級は
- 商業簿記
- 会計学
- 工業簿記
- 原価計算
上記の4つの試験科目で構成されており、試験時間は商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分(合計180分)です。
コンピューターではなく筆記試験で行われ、平均70%以上かつ1科目ごとの得点が40%以上で合格となります。
簿記2級は商業簿記と工業簿記の2科目で試験時間は各科目90分、平均70%以上で合格となります。
簿記2級は、会場受験とCBT方式(ネット試験)のいずれかを選択することができます。
試験科目の違い
USCPAの科目は全部で4科目ありますが、1科目ずつ受験可能です。
科目合格は18か月の有効期限があるため、有効期限が超過しないうちにすべての科目で合格する必要があります。
USCPAの問題は標準的で広範囲にわたるため、ヤマを張らずにバランスよく勉強することが大切です。
簿記1級は4科目、簿記2級は2科目となっており科目合格のシステムはありません。
USCPAと比較すると、簿記1級はクセのある難問や奇問も出ることがあるため、解ける問題を確実に解くように備えることが大切です。
試験の申し込み方法の違い
USCPAは大学の成績証明書などの学歴審査を依頼し、審査が完了したら受験票が到着します。
日本で受験する際の手数料を支払い、テストセンターを予約すれば準備は完了です。
一方で、簿記は誰でも受験可能なので受験資格の審査などはありません。
ネット申し込みで受験票が発行されるため、スムーズに手続きが進みます。
両資格の勉強方法の違い
USCPAと簿記では、勉強方法も異なります。
以下で、それぞれの勉強方法の違いを解説していきます。
USCPAの勉強方法
USCPAの受験資格をクリアできていない場合は、日本の予備校を利用して単位認定試験のプログラムを修了しなければなりません。
また、USCPAは各受験者で問題が異なるため、市販の教材がありません。
つまり、独学で合格を目指すのはほぼ不可能なので、予備校で勉強することになります。
簿記の勉強方法
簿記は市販の教材が充実しているため、独学でも合格を目指すことが可能です。
予備校や通信講座でも簿記の学習コースを用意しているため、自身のレベルに応じて最適な勉強方法を選択しましょう。
なお、少しでも合格できる可能性を高めたい場合は網羅的かつ本質的に会計を理解できる予備校や通信講座の受講がおすすめです。
教材の選び方
USCPAは市販教材が存在しないため、予備校の教材に頼らざるを得ません。
一方で、簿記は市販教材が充実しており、各予備校通や通信講座も質の高い教材が揃っています。
自身の学習スタイルや状況に合わせて、柔軟に勉強方法を選択しましょう。
独学と予備校どちらがおすすめ?
USCPAは各受験者で問題が異なるうえに市販教材がほぼ無いため、必然的に予備校で勉強することになります。
かなりの時間と労力、学習費用が必要になる点は知っておきましょう。
USCPAの勉強は、進捗状況や理解度の判断を自分で下すのが難しく、出願する州を決めるのも困難です。
予備校を活用しながら、疑問や不安を払しょくしながら勉強を進めましょう。
一方で、簿記はUSCPAよりは独学で進めやすいものの、合格する可能性を高めたい場合は予備校の利用がおすすめです。
独学とは異なり、いつでも質問できるうえに勉強しやすい環境に身を置くことができるため、効率よく合格を目指せるでしょう。
どちらの資格を取得するのがおすすめ?
USCPAも簿記も取得するメリットが多い資格ですが、置かれている状況やキャリア展望によっておすすめできる資格が異なります。
以下で、どちらの資格を取得するのがおすすめかを判断する基準などを解説していきます。
こんな人はUSCPAがおすすめ
下記に該当する方は、USCPAの取得がおすすめです。
- 英語を使った仕事や海外での仕事をしたい人
- 内部監査・経営に携わりたい人
- 専門性を身に着けたい人
英語を使って海外で活躍したい場合、USCPAの取得がおすすめです。
簿記だけでは「会計知識がある」証明にしかなりませんが、USCPAでは英語力や法律に関する知識を有していることが証明できます。
会計に関するビジネスマンとして、専門性を高められるメリットも期待できるでしょう。
実務経験ありの社会人
USCPAは簿記検定よりも専門性が高く、外資系に強い特徴があります。
USCPAは、転職などのキャリアチェンジではなく経理マンがキャリアアップするための資格です。
海外では、簿記やTOEICは評価されないため、会計の実務経験がある社会人はUSCPAの取得がおすすめです。
実務経験なしの20代の社会人
20代はポテンシャルが評価されやすいため、実務経験がなかったとしてもUSCPAを目指す価値があります。
若い時にUSCPA取得し、徐々に実務経験を積んでいけば外資系企業へキャリアアップできる展望も見えてきます。
また、監査法人で採用される可能性も高まるため、学習費用以上の高年収を見込めるでしょう。
こんな人は簿記がおすすめ
下記に該当する方は、簿記の取得がおすすめです。
- 何か役に立つ資格を取りたい
- 英語ができないが会計や経理の仕事をしたい
- 英語の勉強が苦手(したくない)
- 国内の会社の経理で働きたい
この世に企業活動がある限り、会計に精通している人材の需要がなくなることはありません。
「何か役に立つ資格が欲しい」といアバウトな希望を持っている方に、簿記はぴったりでしょう。
また、英語の勉強が苦手な方もUSCAPより簿記の勉強の方がスムーズに進むでしょう。
時間のとりやすい大学生におすすめ
USCPAよりも簿記の方が時間的に資格を取りやすいことから、何か役に立つ資格取得を目指している大学生は簿記の取得がおすすめです。
簿記検定は国内の企業で幅広く通用するうえに汎用性も高いため、つぶしもききやすいメリットがあります。
また、一般企業はUSCPAより簿記2級の方が認知度が高いため、簿記のほうがアピールしやすいです。
実務経験なしの30代以上の社会人
経理や会計の実務経験がない30代の社会人は、USCPA資格を活かせない可能性があります。
せっかく高い費用を払ったのにメリットが得られないと、何のためにお金と時間を使ったのかわかりません。
そのため、実務経験なしの30代以上の社会人は国内で活かせる可能性の高い簿記を取るのが無難です。
USCPAと簿記の有効性を比較
続いて、USCPAと簿記の有効性を比較してみます。
どちらの取得を目指すべきか迷っている方は、参考にしてみてください。
簿記2級はアピールにはならない
すでに経理で働いている社会人が新たに簿記2級を取得しても、大したアピールにはなりません。
一方で、経理分野を志望している新卒や20代の若手社員であれば、簿記2級を取得するメリットは大きいでしょう。
なお、簿記2級は転職でもあまり役に立たないのが現実です。
転職活動においては、保有資格よりも前職の実務経験が重視されるため、理想の転職を実現するための決定的要因にはなりません。
簿記1級は一目おかれる存在に
簿記1級は合格率10%程度の超難関資格で、会計や経理のエキスパートとして評価されます。
経理分野であれば一線級の存在になり、連結決算などの複雑な会計処理も行えるため、転職の際にも強いアピール材料となるでしょう。
特に、国内企業であればプラスに働く可能性が高いため、経理としての専門性を高めたい場合は簿記1級の取得を目指すのがおすすめです。
経理以外の仕事にも興味があり、能力の幅を広げたい場合は公認会計士やUSCPAの取得を検討すると良いでしょう。
USCPAはキャリアの幅を広げる
日本では語学力の高い人材が少ないため、USCPAを取得できればキャリアの幅が大きく広がります。
語学力があるだけで他の社員と差別化ができ、さらにUSCPA取得できれば付加価値が高まります。
外資系や海外で働く際に有利なのはもちろん、監査法人で働く選択肢ややコンサルタントを目指す選択肢も生まれます。
簿記よりも圧倒的にキャリアの幅が広がるため、外資系企業への転職を目指す方やキャリアの幅を広げたい場合はUSCPAの取得を目指しましょう。
USCPAと簿記1級・簿記2級の比較まとめ
USCPAと簿記1級・簿記2級の比較まとめ
- 置かれている状況によって、どの資格取得を目指すべきか異なる
- USCPAは「簿記1.5級」のようなイメージ
- グローバル企業や外資系企業への転職を目指す場合はUSCPAがおすすめ
USCPAと簿記1級・簿記2級、どの資格取得を目指すべきかは、置かれている状況や年齢などによって異なります。
USCPAは、取得するまでに時間とお金がかかりますが、転職やキャリアアップに成功すれば数年で元が取れる可能性があります。
簿記は汎用性が高い強みがあり、簿記1級まで取得できれば国内企業の経理部で働くときに困ることはありません。
こちらの記事を参考にしながら、自分がどの資格取得を目指すべきか、どの資格が最も取得メリットが大きいのか決めましょう。