簿記のネット試験(CBT方式)とは?試験会場・申し込み方法・日程の違いまで解説

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簿記

公認会計士たぬ吉

「簿記のネット試験って、どのような出題がされるの?」

「簿記の統一試験とネット試験の違いを知りたい!」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

簿記試験は、2022年から好きなタイミングで受験できる「ネット試験」が導入されました。

従来の統一試験では、年に3回の試験を待つ必要がありましたが、ネット試験は自分の好きなタイミングで受験できます。

利便性が高い一方で注意するべき点もあるため、統一試験とネット試験の違いを知っておくことは重要です。

こちらの記事では、簿記の統一試験とネット試験の違い、申し込み方法などを解説していきます。

簿記の受験を検討している方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください!

簿記の統一試験とネット試験の違いについてざっくり解説すると

  • ネット試験の方が合格率が高い
  • ネット試験は好きなタイミングで受験できる
  • ネット試験は株式会社CBT-Solutionsの「CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト」で簡単に申し込める

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従来の簿記試験とネット試験(CBT方式)の違いとは

従来の会場で受験する簿記試験とネット試験(CBT方式)には、下記のように様々な違いがあります。

試験日 試験時間 試験会場 試験方式 試験問題 受講料/支払い方法 合格発表 筆記用具 その他持ち物
統一試験 2月
6月
11月
3級:60分
2級:90分
商工会御所か試験会場 紙で回答 受験者全員が同じ 3級:2,850円
2級:4,720円
1級:7,850円。クレジットカードまたはコンビニ支払い
2~3週間後に郵送 持ち込み可 受験票
電卓
身分証明書
ネット試験 いつでも 3級:60分
2級:90分
指定されたテストセンター パソコンで回答 受験者全員ごとに異なる 3級:2,850円
2級:4,720円
(別途事務手数料として550円必要)
クレジットカード・コンビニ・Pay-easy払いに対応
試験終了後にすぐに知ることができる テストセンターに用意されているものを使う(持ち込み不可) 身分証明書
電卓

ネット試験はいつでも受験できる利便性が大きな魅力ですが、統一試験前後は受験停止期間が設けられているため、注意しましょう。

なお、受験停止期間中は「一時的に受験ができない」だけで、受験の申し込みは可能です。

ネット試験は簿記2・3級のみ

ネット試験に対応しているのは、2級と3級のみです。

簿記1級は統一試験のみとなっており、ネット試験で受験することはできません。

なお、簿記1級は例年6月と11月の年2回行われています。

CBT方式とは

ネット試験は「computer based testコンピューター」を用いて解答するテストで、「CBT試験」と呼ばれることもあります。

統一試験とは異なり、すべてパソコンを使って解答する試験です。

全国各地のテストセンターで実施されており、A4のメモ用紙2枚と筆記用具が配付されます。

勘定科目はプルダウンメニューから選択し、数字はテンキー入力で解答する流れとなっています。

ネット試験が導入された経緯

ネット試験は、現在全国各地のテストセンターで行われています。

新型コロナウイルスの影響から、長時間にわたって大人数を同じ会場に拘束するのが難しくなったことを受け、ネット試験が導入されました。

ネット試験は個人が任意のタイミングで受験できるため、大人数を同じ会場に集める必要がありません。

簿記試験の運営と受験者の安全を考慮した結果、ネット試験が行われることとなりました。

簿記試験を主催しているのは各自治体の商工会議所で、今後の試験情報に関しては商工会議所の発表に注視する必要があります。

ネット試験は利便性が高いことから、今後はネット試験に順応していくことが重要です。

ネット試験と統一試験で合格率が違う

ネット試験と統一試験は、出題される問題が異なるため合格率も異なります。

<2級(統一試験)>

試験回 合格率
164回 21.1%
163回 24.8%
162回 20.9%
161回 26.9%
160回 17.5%

<2級(ネット試験)>

期間 合格率
2023年4月~2023年6月 39.5%
2022年4月~2023年3月 37.1%
2021年4月~2022年3月 38.1%
2020年12月~2021年3月 46.6%

<3級(統一試験)>

試験回 合格率
164回 34.0%
163回 36.5%
162回 30.2%
161回 45.8%
160回 50.9%

<3級(ネット試験)>

期間 合格率
2023年4月~2023年6月 42.3%
2022年4月~2023年3月 41.2%
2021年4月~2022年3月 41.0%
2020年12月~2021年3月 41.0%

上記のように、ネット試験の方が合格率がやや高い傾向にあります。

大人数がいないため集中しやすいなど様々な理由が考えられますが、データ上は統一試験よりもネット試験の方が受かりやすいと言えます。

ネット試験と統一試験の日程の違い

続いて、2023年のネット試験と統一試験の日程の違いを解説していきます。

<日商簿記統一試験日程>

試験回 日程
164回(2~3級) 2023年6月11日(日)
165回(2~3級) 2023年11月19日(日)
166回(1~3級) 2024年2月25日(日)

一方で、先述したようにネット試験はいつでも受験できますが、2023年度は下記の受験停止期間が設けられています。

<2023年度の受験停止期間>

  • 2023年4月1日(土)~2023年4月13日(木)
  • 2023年6月5日(月)~2023年6月14日(水)
  • 2023年11月13日(月)~2023年11月22日(水)
  • 2024年2月19日(月)~2024年2月28日(水)

受験停止期間でも、受験の申し込みを行うことは可能です。

また、統一試験でもネット試験でも、試験時間・出題範囲は同一となっているため、難易度に大きな違いはありません。

ネット試験のメリット

ネット試験は、自分の好きなタイミングで最寄りのテストセンターで受験できます。

統一試験よりも手間がかからないなど、多くのメリットがあります。

統一試験に比べるとカンタン?

出題範囲は統一試験の合格率とネット試験でも同じですが、合格率はネット試験とネット試験で差がある点は知っておきましょう。

簿記3級の統一試験の合格率は「30%から60%程度」とレンジが広い一方で、ネット試験の合格率は40%程度で安定しています。

また、簿記2級の統一試験の合格率は「10%~30%程度」となっていますが、ネット試験では40%程度でこちらも安定しています。

問題のレベルは同じであるはずですが、合格率にフォーカスすると「ネット試験の方が受かりやすい」と言えるでしょう。

受験日の調整が可能

簿記2級と3級の統一試験は、受験回数が年3回に限られていました。

しかし、ネット試験は受験停止期間を除き、都合が良いタイミングで受験できます。

受験できる機会が大幅に増えただけでなく、受験日の調整が随時可能である点がネット試験のメリットです。

ネット試験の日程は会場ごとに受け付けられており、申し込みの手続きも簡単です。

合否が即日でわかる

統一試験の場合、合否結果を知るまでに2~3週間ほどの期間がかかってしまいます。

しかし、ネット試験では合否判定が試験終了後にその場で分かるため、非常にスムーズです。

合否の結果を待つ期間は様々な不安やストレスを抱えがちですが、ネット試験であればそのようなストレスがありません。

仮に不合格になってしまっても、すぐに気持ちを切り替えられる点もネット試験のメリットです。

短い期間で何度でも受けられる

統一試験は、試験が年に3回しか行われないため試験に合格するチャンスが限られています。

しかし、ネット試験は不合格になってもすぐに試験を受け直すことができるため、また都合が良いタイミングで再チャレンジできます。

短い期間でも、すぐに再チャレンジできる点はネット試験ならではのメリットと言えるでしょう。

ネット試験のデメリット

ネット試験には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。

以下で解説するデメリットについて把握し、統一試験を受験するかネット試験を受験するか決めましょう。

問題用紙に書き込みができない

ネット試験は、問題の解答をすべてパソコン上で行います。

紙媒体で問題が配布されないため、問題用紙に線を引くことやメモをとることができません。

計算用紙としてA4用紙が渡されますが、人によっては計算スペースが足りないと感じることもあるでしょう。

ネット試験は、

  • 問題用紙に書き込みができない
  • 計算スペースが不足する可能性がある
  • 問題にマーキングできない

という点は押さえておきましょう。

試験方式に慣れが必要

ネット試験では、解答方法は選択式・入力式となっています。

選択式になったことで勘定科目が減る効果が期待できますが、正確に回答しなければならない点は押さえておきましょう。

ネット試験のではミスが減るメリットが期待できますが、試験方式に慣れないと回答に時間がかかってしまう可能性があります。

一緒に試験を受けている仲間の存在が感じられない

ネット試験では、個別のブースで受験することになります。

大きな会場で一斉に試験を行う統一試験と比較すると、孤独感から「試験を受けている実感が無い」と感じることもあるでしょう。

人によっては、試験会場のような張り詰めた雰囲気の方が集中できるケースもあります。

一緒に試験を受けている仲間の存在が感じられないことで、回答に集中できない可能性がある点は押さえておきましょう。

事務手数料で追加の料金が加算される

統一試験でもネット試験でも、受験料は一緒です。

しかし、ネット試験の場合は事務手数料として追加で500円加算されるため、余計なコストがかかる点は押さえておきましょう。

とはいえ、ネット試験は統一試験よりも自由度が高く、統一試験会場へ行く交通費を節約できるメリットがあります。

500円余分にかかるのは事実ですが、気にするほどのデメリットではありません。

ネット試験の対策方法を解説

続いて、ネット試験の対策方法を具体的に解説していきます。

ネット試験には特有の難しさや特徴があるため、事前に知っておくことでスムーズに対処できるでしょう。

なお、3級でも2級でも同じように対策すれば問題ありません。

ネット模擬試験を事前に入手

ネットの模擬試験は、市販の問題集で調達できます。

ネット模擬試験を事前に入手し、実際に取り組んで「どのような問題なのか」「どのように回答するのか」をイメージしておきましょう。

本番で見たことのない画面を前にすると、焦ってしまい本来の実力が発揮できなくなってしまう恐れがあります。

事前に模擬試験を受けることで、本番でも落ち着いて問題に取り組めるようになるでしょう。

電卓・マウスの置き方に気を配る

ネット試験の会場は場所が限られているため、

  • キーボード
  • マウス
  • 電卓
  • メモ用紙

の配置も考えなければなりません。

計算する度や打ち込みを行う度に配置を換えるのは、面倒な上にストレスとなります。

右利きや左利きかによって異なりますが、できるだけ配置を変えずに問題を解ける配置を決めておくと良いでしょう。

メモ用紙に仕訳を書き出す

第1問と第2問を解く際には、まずメモ用紙に仕訳をメモしておきましょう。

第1問と第2問は、メモ書きした仕訳を回答すれば済むため、難易度は低いです。

正確に回答するためにも、横着せずメモしておくことをおすすめします。

第3問は仕訳をするごとにPCに入力する

第3問な長丁場となるため、ミスを防ぐためにも仕訳をするごとにPCに入力するのがおすすめです。

先に仕訳だけ全部入力すると、入力後に動いた数値を見落としてしまい、連鎖的に失点を重ねてしまう恐れがあります。

仕訳を行うごとに画面に入力することで、以降の整理事項を処理する際に間違えるリスクを軽減できます。

第3問は多くの受験生が苦労するため、丁寧かつ着実に進めることを意識しましょう。

パソコンの操作方法に慣れておく

ネット試験のパソコン操作に慣れることも大切です。

勘定項目はプルダウンで選択し、数字はテンキーで入力する流れで問題を進めていきます。

スムーズに解ける一方で問題用紙に直接メモできないため、一定の制約がある点は押さえておきましょう。

A4用紙にメモを取りたいときのスペースを確保し、パソコンの操作方法に慣れておくなどの対策が有効です。

テストセンターでの直前の勉強は難しい

テストセンターでは、統一試験の会場のように直前に勉強することは難しいです。

指定されたテストセンターに着くと、試験の部屋に入る前に持ち物をロッカーの中に入れるように指示されるため、教材も手元から無くなってしまいます。

直前に確認を行うのは難しいため、会場入りする前に時間を確保して最終確認を済ませておきましょう。

簿記ネット試験の申し込み・予約変更方法

以下で、ネット試験を申し込むときの方法や予約変更するときの方法を解説していきます。

難しい操作はないため、誰でも簡単に申し込めます。

申し込みの流れ

申し込みは、株式会社CBT-Solutionsの「CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト」から行います。

「新規登録」から基本情報を入力し、ログインIDとパスワードを設定したらログインできるようになります。

ログイン画面で「CBT申込」を押し、受験する試験や試験日、会場を選択し、受験料を払い込めば完了です。

統一試験では商工会議所が申し込みの窓口となっていますが、ネット試験の場合は株式会社CBT-Solutionsの「CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト」と、分かれている点に注意しましょう。

試験の予約日時の変更・キャンセルは「CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト」のマイページから行うことができます。

なお、予約変更とキャンセルが行えるのは受験日の3日前までとなっているので、注意しましょう。

ネット試験で注意すべきこと

最後に、簿記のネット試験を受験する際に注意するべき点を解説していきます。

万全の状態で受験するためにも、一読しておくことをおすすめします。

受験票は出力しておく

ネット試験では、統一試験のように受験票は発行されません。

予約完了時の確認メールが届けば、試験の予約は完了していることになります。

試験当日は身分照会だけで済むケースがほとんどですが、万が一の事態に備えて受験票や予約完了メールを出力しておくと安心です。

ネット試験特有の記入方法に注意

ネット試験では、途中の過程は一切評価されず「正しいか」「誤っているか」で判断されます。

例えば、仕訳問題で同じ勘定科目を借方・貸方の中で2回使用すると、不正解となります。

1つの仕訳問題で、同じ勘定科目は1回しか使えない点は押さえておきましょう。

また、金額を入力する際には数字だけ入力するのが回答のルールです。

「¥」マークなどを記入すると不正解となるため、注意しましょう。

試験会場への到着時間に注意

CBT試験のポータルサイトに

30分以上前にお越しの場合、会場が開いてない場合や入場をお断りする場合があります。

とあります。

早く行くと入室できず、待ちぼうけとなる可能性があるため注意しましょう。

また、5分前までに会場に入室してない場合は受験不可となるため、時間ぎりぎりに行くのもおすすめできません。

試験当日は、適度な時間的余裕を持って行動しましょう。

合格証はPDFでダウンロード・印刷

試験に合格したら、合格証はPDF形式で発行されます。

デジタル合格証として発行されるため、必要に応じて自分で印刷することになります。

PDF形式でダウンロードできるためスマホやPCに保存可能ですが、印刷をしたい場合は自分で行わなければなりません。

簿記の統一試験とネット試験の違いまとめ

簿記の統一試験とネット試験の違いまとめ

  • ネット試験は好きなタイミングで受験でき、もし不合格でもすぐに受け直しができる
  • ネット試験特有の注意点があるので注意しよう
  • 合格率は統一試験よりもネット試験の方が高い

簿記のネット試験は、統一試験よりも合格率が高い上に、いつでも受験できるメリットがあります。

統一試験を待たずに簿記資格がほしい方は、ネット試験を活用すると良いでしょう。

ネット試験特有の注意点はありますが、しっかりと対策すれば合格をつかみ取ることができます。

こちらの記事を参考にしながら、ネット試験を活用しつつ簿記資格の取得を目指してみてください。

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