司法試験の合格後の流れは?司法修習や職業への進路を詳しく解説!
「司法試験に合格した後のことが知りたい」「司法修習生になったらどのように進路決定をするの?」
このような疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
そこで資格Timesでは、司法試験の合格後についての流れを詳しくまとめました。司法修習とは何かをはじめ、進路決定の方法も詳細にご紹介いたします。
ぜひ司法試験に挑む際には参考にしてください!
司法試験の合格後についてざっくり説明すると
- 司法試験に合格した後は1年間司法修習生となって様々なことを学ぶ
- 司法修習が終わったあとは「二回試験」を受ける
- 司法修習に申し込むためには数多くの書類が必要になる
- 司法試験合格後すぐに修習生にならなくても良い
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司法試験合格後の司法修習とは?
まずは、司法試験合格後の司法修習についてを解説します。
司法試験に合格しますと1年間は司法修習生として学ぶ必要があります。
その後、法律の専門家として弁護士・裁判官・検察官のいずれかとして働く道が開けていくのですが、そこまでの概要を知っておきましょう。
司法修習の概要
司法試験に合格しても、すぐに法律家として働けるわけではありません。約1年間は司法修習生として勉強する必要があります。
司法修習では法律家としての実務能力の他、職業意識や倫理感を学んでいくことになり、司法試験の合格発表後の12月から翌年の12月まで行われます。
修習は全国各地の修習地の中から選択した場所となります。
司法修習のカリキュラムの大半は「分野別実務修習」
司法修習では導入演習・分野別実務修習・集合修習・選択型実務修習といったカリキュラムがあり、最後には考試(二回試験)に合格する必要があります。
司法修習の大半は分野別実務修習で、「民事裁判」「刑事裁判」「検察」「弁護」の4科目について、2ヶ月を1クールとして実施されます。
判決書を実際に起案したり、裁判に立ち会うなどして実際の弁護実務を体験していきます。
導入演習とは
導入修習は修習生全員を集めて行う3週間程度の座学を中心とした内容で、いわば1年間の修習のガイダンスのようなものです。
2014年11月の68期から始まったもので、通勤可能外の修習性は寮に入って修習を受けます。
司法修習が始まりますと修習生は全国に散らばっていきます。つまりその年の修習生が一同に会する機会はここしかありません。友人を作るなら導入演習の時だというのが、修習生の中での慣例です。
選択型実務修習とは
選択型実務修習は司法修習の中の選択科目のようなものです。裁判所、検察庁、弁護士会が提供するプログラムから司法修習生が自主的に選択します。
例えば検察庁であれば、科捜研や法務局などを見学することができる他、法テラスの業務を体験することができます。
司法修習を終えた後にどの方面に行きたいかを考えた上で、より希望に則したプログラムを選択すると良いでしょう。
集合修習とは
集合修習は司法修習のまとめのような位置付けです。民事裁判、民事弁護、刑事裁判、刑事弁護、検察実務について、実際の記録を元に事件処理を総まとめ的に学ぶフローになっています。
ちなみに選択型実務修習と集合修習はABふたつの班に分けられます。片方が集合修習を行っている間、もう片方は選択型実務修習を行うという方式です。
二回試験とは
ここまでの全ての修習が終わりますと、二回試験という考試を受けます。 二回試験は11月下旬に5日間をかけて行われます。
1時間の昼食休憩を挟んで10:20~17:50まで行われるというハードな試験で、科目は民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目となります。
約100ページ強にも及ぶ事件記録をもとに事件の処理を起草するという試験内容ですので、かなりの体力と集中力を要求されると思ってください。
優・良・可・不可という採点の種別があり、一科目でも不可があれば不合格とされます。
司法修習に申し込む手順
司法修習に申し込むには、ざっくり申しますと「登録申請書を入手する」→「申請書を提出する」という流れになります。
それぞれの注意点や、修習開始までの流れなども詳しくご紹介いたします。
司法修習登録申請書を入手する
司法修習生となるためには、まず修習登録の申請書を入手する必要があります。
司法試験本番は5月中旬ですが、司法修習生採用への出願はその年の9月下旬から始まります。司法試験の合格発表日は9月10日前後ですから、合否の発表後すぐに申請をしなくてはならないことになるのです。
司法修習の登録申請を出願しますと、11月末に採用内定が発表(発令)されます。
出願から採用発令までは2ヵ月ほどありますが、この間に教材や事前課題が送付されます。内定の発令までにしっかりこなしておきましょう。
なお、修習の出願は速達書留郵便で行います。
申し込み用紙の入手方法
司法修習登録申請の申込用紙の入手方法は以下のいずれかとなります。
- 最高裁判所のウェブサイトからダウンロード
- 来庁による入手(最高裁判所もしくは大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌・高松の高等裁判所)
- 郵送での取り寄せ(返信用封筒を最高裁の担当部署に郵送の上請求)
司法試験会に申請書を提出する
司法修習生の申し込み時は、選考申込書だけでなく色々な書類を提出する必要があります。
成績証明書や司法試験合格書のコピー、また登録に必要な写真も必要になります。提出先は最高裁判所の担当部局です。全てしっかり揃えた上で、不足の無いように提出してください。
以下に必要な提出書類を一覧でご紹介いたしますが、こちらの内容は一考に留めていただき、最終的な内容や記入方法などは裁判所のHPでしっかりご確認されることをおすすめいたします。
提出書類一覧
司法修習の申し込みに必要な提出書類は以下の通りです。
- 司法修習生採用選考申込書(署名・押印・写真貼付)
- 司法試験合格証書のコピー
- 戸籍抄(謄)本又は住民票の写し
- 学校の成績証明書
- 学校の卒業(退学)年月を証する書面
- 退職証明書
- 資格の登録抹消証明書等
- 健康診断票
- 実務修習希望地調査書
- 身上報告書2部・カラー写真5枚(縦4㎝×横3センチ)
なお、以下は入寮希望者のみ必要となる書類です。簡易書留で郵送してください。
- 入寮許可願
- 84円相当の切手を貼付した返信用封筒
追完することができる書類
先ほどご紹介した書類の中には、色々な事情ですぐに提出できないなどの事情から、追完することができるものもあります。
追完できる書類は以下の通りです。
- 学校の成績証明書
- 退職証明書
- 再検査等結果証明書
全て普通郵便で受け付けていますが、不着の場合は再提出となりますので、事故を防ぐためにも簡易書留郵便を利用することをおすすめいたします。
書類作成時の注意事項
申込書の記入の際は、記載要領などをよく確認した上で、全てを正確に記入しましょう。もし虚偽の記載が発覚した場合は採用後でも取り消しになる場合があります。
また提出書類については、それぞれについて注意事項が詳細に定まっています。
今回ご紹介した内容はあくまでも概要ですので、実際の申込書記入に当たっては各自ご自身の目でひとつひとつ確認しながら書類を作成してください。
こうした書類作成能力も、修習を終えた後の職業選択に関わってきます。ぜひ気合いを入れて作成してください。
司法試験合格から修習開始まで
司法試験合格後に司法修習の申し込みをすることになりますが、申し込みの書類数が多いことから、申し込むための準備自体がかなり大変になることでしょう。
しかし合格発表から修習の申し込みまでの期間は半月ほどしかありません。この事を考えますと、合格発表を待たずに司法試験受験後から徐々に必要な資料を集めていくことをおすすめいたします。
事前に準備をしておけば合格発表後に慌てずに済むはずです。
発表前から準備をすることは気が引けるかもしれませんが、誰もが司法試験合格を目指して受験しているはずです。ぜひ準備を進めておきましょう。
修習申し込みが拒否されることも
司法修習の申し込みをしますと、全ての書類がチェックされます。
実は司法試験に合格したからと言って、必ずしも司法修習生になることができるわけではありません。不採用事由があった場合は申し込みを拒否されることもあり得ます。
不採用事由としては現在病気があることや禁錮以上の刑に処せられたことがある、成年被後見人・被保佐人である、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていないなどがあります。
司法試験に合格できるほどであればこれらの事由はクリアしていると考えるのが普通ですが、万が一のこともありますのでぜひご自身でもチェックしておきましょう。
弁護士会の支援企画で情報を得ることも可能
司法修習は裁判所により行われていますが、弁護士会も司法修習を支援しています。
弁護士会では修習生支援イベントを主催しています。こちらのイベントでは、既に修習を経験した弁護士の生の声を聞くことができます。
こうした場で修習に関する情報を収集しておくことも、司法修習生となるにあたって有益なことでしょう。
ぜひ色々な修習生支援イベントに参加し、スムーズに司法修習を進めることができるように情報を集めておいてください。こうしたリサーチ能力も後の実務に必ず活かされるはずです。
司法修習・登録にかかる費用
ここでは司法修習に関わる費用面についてをご紹介いたします。
大切なことですのでしっかりチェックしておいてください。
司法修習生には給費がある
2017年に裁判所法が改正されたことで、司法修習生に支給されていた給費制度が復活しました。給費としては月額一律13万5,000円が支給されます。
また、賃貸物件を借りて単身住まいをしている研修生には3万5,000円を上限に居住手当が支給されます。
こうしたこともあり、修習生の経済的負担は軽減されています。
司法修習にはどのような費用がかかるのか
司法修習生になるにあたってかかる費用は、主に以下のようなものです。
- 健康診断費用
- 修習地のガイダンスに向かう交通費と宿泊費
- 参考書代
健康診断の費用は5,000円程度なのでそこまで高額ではありませんが、交通費や宿泊費は場所によっては数万円単位でかかる可能性があります。
また参考書代も毎月8,000円程度、年間にすると10万円前後かかると言われています。
司法修習生は兼業・副業等が禁止されていますので、給費があるとは言え貯蓄を用意しておいたほうが良いでしょう。
弁護士登録にかかる費用
実際に弁護士の職に就く場合、弁護士登録をする必要があります。日弁連と各地の弁護士会に加入しなければなりません。
日弁連への名簿登録費用は3万円、各地の弁護士会の入会金は最安値の東京で3万円、最高値の奈良では60万円が必要になります。さらに資格登録免許税が必要となり、弁護士の場合は6万円がかかります。
つまり、弁護士として登録されるためには地域によって12万円から69万円がかかります。ただしこれは初期費用ですので、最初のみかかるお金ということになります。
弁護士の登録にかかる費用の詳細は下記の記事をご覧ください。
弁護士は年会費もかかる
先ほどは弁護士になるための初期費用をご紹介いたしましたが、弁護士資格を保つためにはその他に年会費も必要となります。
日弁連の会費は月1万4,000円、これに加えて各地の弁護士会費(1万2,000~6万円)もかかります。
これらを全て合わせますと、弁護士資格を保つための年間負担額は50万~100万円ほどになります。これだけの費用が弁護士を続ける限り毎年必要になることを知っておいてください。
しかし、まだ年収が少ない若手弁護士にとってこの金額はかなりの負担になることでしょう。そのため、若手の弁護士に対しては会費の減免措置が取られています。
数年の間は会費を減額・免除するなど、各地でさまざまな措置がありますので、ご自身の所属する地域についてしっかり調べておくことをおすすめいたします。
独立開業後にかかる費用は?
弁護士として事務所に所属する場合は上記の費用までで完了となりますが、もし独立開業する場合は他にも費用がかかります。
独立開業する際に必要な費用の主な内訳は以下の通りです。
- 事務所費用
- 名刺などの備品
- 他宣伝費など
名刺以外の備品についてですが、弁護士事務所に関わらず独立開業する際はコピー機やFAXが必須になります。
コピー機についてはリースで導入すれば月額単位での支払いになりますし、メンテナンスも頼めるので便利でしょう。
事務所の費用としては、ご自宅で開業するなら50万円ほど、自宅外であれば100~300万円ほど必要になると思って下さい。このため、最初は自宅で開業する方が多いようです。
宣伝費用はどのくらい必要か
弁護士として独立する際に宣伝費がどのくらい必要かについてですが、ご自身がどういった宣伝をしたいかによります。
単にチラシを撒くだけであれば数万円ほどで済みますが、弁護士事務所に頼りたい方は事務所周辺だけでなく広範囲からいらっしゃることでしょう。できればHPを開設してしっかり宣伝したいところです。
HPを開設する場合、プロに任せると数十万~100万円単位で費用がかかります。この辺りもしっかり見積もりを取って考えておく必要があります。
独立開業に当たっての立地など
弁護士として開業する場合、どこに事務所を構えるかは宣伝以上に大切なことです。
何かしらの店舗を構える場合は駅前が鉄則ですが、弁護士事務所の場合、場所によっては駅前で人目に付き安すぎる場所は逆に嫌厭されるというケースも多いようです。
弁護士事務所に訪れる人がどのような考えを持っているかをよく考えた上で、一番ふさわしい立地を検討することも、独立開業を成功させるためのカギとなります。
司法試験合格後すぐに修習に行かなくてもよい
司法修習についてをご紹介してきましたが、実は司法試験に合格したからと言って直後に修習生となる必要はありません。
司法試験の合格後わずか3ヶ月で司法修習生となるのは、申し込みの手間もかかりますし体力・精神面両方においてかなり大変でしょう。
司法試験に合格した後も、司法修習生に申し込むための期限などは特にありません。すぐに修習生にならないからといって合格が取り消しになることもないのでご安心ください。
次の年度以降で司法修習生になる道もあり
実際に司法試験に合格した方の中には、その年度の司法修習生となることを一度見送り、次年度である1年3ヶ月後の修習に参加する方も一定数おられます。
その間に司法修習生となる準備を含め、色々な人生経験を積んでおけば、法律以外の分野でのスキルアップも可能です。
弁護士など法曹界で働くためには幅広い知識が必要になります。そのためにも修習生になることを一度見送る道もあることを知っておきましょう。
どのような経験を積んでおくべきか
学生が司法試験に合格したというルートの場合は、在籍年次によってはまだ学生の期間が残っていることもあるでしょう。この場合は、ぜひ残りの学生生活をしっかり謳歌しておいてください。
修習生としての横のつながりも大切ですが、学生として色々な分野に巣立つ前の人たちとの人脈も大切です。
また、就業中の方は会社内などでの人脈を確実なものにしておくことをおすすめします。開業した後にどのような人脈が役立つかわかりませんので、ぜひ良好な人間関係を築いておきましょう。
司法修習・登録のメリット
司法修習生になることや弁護士登録をすることは、当然ながら非常に多くのメリットがあります。
司法修習では現役の検察官や裁判官、弁護士と関わることができます。こうした場面から人脈をつないでいき、修習終了後にはそれぞれが望む環境で働くことができるようになるでしょう。
また弁護士会に登録することで、会報を受け取ることができるようになります。研修会などに参加できるようになりますので、これらも有益な経験値になることは間違いありません。
修習は情報収集の場
司法修習では、法律の実務家が教官となって実務の指導に当たります。
司法試験受験生時代にも予備校やロースクールで色々な情報を得ていたことと思いますが、実際の現場で働く方と接することでより実地的な情報収集ができるでしょう。
何事も現場での経験に勝る知識はありません。ぜひ司法修習の場を有益に活用してください。
人脈を広げることができる
司法修習の現場では、現役の弁護士や検察官、裁判官が有望な人材を探す場でもあります。
ですから修習だからと言って気を抜いてはいけません。毎日の行動が全て見られています。修習の場で法律家としての能力や志望度の高さをアピールすることができれば、修習後の採用にも有利になることでしょう。
また、修習期間は同期の法律家と知り合う絶好のチャンスです。修習生としての横のつながりはその後何十年も続くとも言われています。ぜひ人脈づくりを意識して、修習生時代を過ごしてください。
修習参加者数はどれくらい?
最後に、司法修習生の人数についてをご紹介いたします。
近年では、司法修習参加者の人数は一期あたり1,500人ほどとされています。年間の司法試験の合格者数もおよそ1,500人ほどですから、司法試験合格者のほぼ全員が修習に進んでいることになります。
ただし先ほども触れましたが、司法試験に合格した直後に司法修習生になる必要はありません。目指すものや経験の積み方は個々違いますから、ぜひご自身なりの考え方で司法修習に臨んでください。
司法試験の合格後と登録手順まとめ
司法試験合格後の登録まとめ
- 司法試験合格後は1年間司法修習生となり色々な実地経験を積む
- 司法修習後の「二回試験」に合格した上で全ての課題をクリアしたことになる
- 司法修習に申し込むためには準備段階からかなり手間と体力がかかるので次の年度に修習生になるもいる
- 修習中のアピールが後の職業選択に関わることもあるため気合いを入れて臨むこと
司法試験合格後の流れをご紹介してきました。
司法修習から二回試験に合格するまでには色々な関門がありますが、ひとつずつしっかりと受け止めながら法曹界への道を目指していきましょう!