公認会計士と司法試験はどっちが難しい?試験免除の違いからダブルライセンスまで解説
「公認会計士と司法試験はどっちが難しいの?」
「公認会計士と弁護士のダブルライセンスは可能?
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
公認会計士試験と司法試験は非常に難易度が高い試験として知られていますが、細かく比べると司法試験の方が難易度が高いと言えます。
しかし、公認会計士に合格するためにも膨大な勉強時間が必要になるため、合格を目指す場合は相応の覚悟が必要です。
こちらの記事では、公認会計士と司法試験はどっちが難しいか、またダブルライセンスを実現するメリットなどを解説していきます。
公認会計士と司法試験はどっちが難しいかについてざっくり解説すると
- 受験資格などトータルで見ると、司法試験の方が難しい
- 司法試験合格者は、公認会計士の短答式試験と論文式試験の一部が免除される
- ダブルライセンスは非常に難しいが、実現できれば人材価値が飛躍的に高まる
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公認会計士試験と司法試験はどっちが難しい?
公認会計士は企業会計のプロフェッショナル、司法試験は法律のプロフェッショナルです。
公認会計士試験と司法試験の難易度を比べると、公認会計士試験の方がややハードルは低いです。
以下で、合格基準・合格率・勉強時間などの観点から各試験の難易度の差について解説していきます。
公認会計士試験と司法試験の難易度差
過去5年分の両試験の合格率を比較すると次のようになります。
こちらのグラフを見ると、司法試験の合格率は公認会計士の合格率と比較してかなり高めに推移していることがわかります。
ただ、公認会計士試験は合格率を算出する母集団が記念受験勢も含めた学力がバラバラな集団なのに対し、司法試験の母集団は合格率4%の予備試験突破 or 法科大学院で2~3年間法律を専門に学習してきた学力レベルの高い母集団となっています。
このことから、競争率の観点で見ると司法試験の方が遥かに高い試験となっているため、これらをトータルで見ると司法試験の方が難易度は高めであると言えるでしょう。
公認会計士試験と司法試験の合格基準
公認会計士試験と司法試験も、絶対評価ではなく相対評価で合否が判断されます。
つまり、絶対的な合格基準はなく、常に他の受験生との競争に打ち勝つ必要があるのです。
両試験とも多くの受験生が生活の大半の時間を学習に割いてくるため、その競争レベルは非常に高く、この競争に打ち勝つことは生半可な気持ちでは達成することができません。
両試験とも合格を掴み取るに際して、一般的な受験生が解ける基本的な論点の問題を取りこぼさずに確実に解き切ることが大きな鍵となります。
公認会計士試験と司法試験の勉強時間の差
試験に合格するための勉強時間の目安は、下記のとおりです。
- 司法試験:6,000時間以上
- 公認会計士:3,000時間以上
司法試験の勉強時間には、予備試験や法科大学院の勉強など、受験資格をクリアするための勉強時間が含まれています。
両試験とも試験範囲が膨大であることや身につけた知識を高度に運用する力が求められるため、要する学習時間の量も膨大なものとなります。
ただ、司法試験の方が公認会計士試験よりも莫大な時間を投下する必要があるケースが多いため、こちらの観点で見ると司法試験の方が難易度が高いと言えるでしょう。
受験資格について
司法試験を受験するためには、下記のいずれかの要件をクリアする必要があります。
- 法科大学院修了かつ修了後から5年以内
- 司法試験予備試験合格かつ合格後から5年以内
一方で、公認会計士は受験資格が設けられておらず、学歴・年齢問わず誰でも受験できます。
よって、公認会計士は司法試験と比較して敷居が低く誰でも挑戦しやすい資格であると言えます。
公認会計士試験と司法試験を比較
続いて、公認会計士試験と司法試験の試験構成などを比較していきます。
試験内容を知ることで必要な対策が見えてくるため、参考にしてみてください。
試験構成について
公認会計士試験と司法試験とも、短答式試験と論文式試験で構成で構成されています。
公認会計士試験では短答式試験の合格が論文式試験受験の受験資格となっている一方、司法試験では同時に短答・論文を受けて、短答式試験は論文を採点するか否かの足切りラインとしての役割を果たします。
よって、司法試験を受験する際は知識の詰め込みとその知識を記述にて応用する力の2つを同時に鍛える必要がある一方、公認会計士試験はそれぞれの試験の日程が分かれているため、1つ1つの力をじっくりと鍛えることができる時間的余裕が生まれるという違いがあります。
論文式試験について
論文式試験は、問題に対して自分の言葉で回答文を構成する必要がありその難易度は非常に高いです。
ただ合否を分けるのは、必要な力はいかに基本的な概念・知識を確実に解答に書き切れるかという観点であり、応用的な知識よりも基本知識がものをいう試験となります。
試験科目について
公認会計士試験では主に財務・管理会計や独占業務である監査に関する試験科目が同試験特有のものとなっており、司法試験と被る試験範囲は企業法(会社法メイン)、租税法の2つが挙げられます。
一方、司法試験では憲法・民法などの法律基本7科目が主に問われます。
試験科目は両試験とも膨大なものとなっていることから、各科目を満遍なく学習し切る能力も求められます。
公認会計士は試験免除あり
司法試験に試験科目免除の制度はありません。
しかし、公認会計士試験では短答式及び論文式試験で一部科目の免除があります。
公認会計士試験における試験免除は、下記のように定められています。
<短答式>
- 大学もしくは高等専門学校等において3年以上、商学または法律学に属する科目の教授もしくは准教授の職にあった者又は商学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
- 司法試験に合格した者
<論文式>(企業法と民法が免除)
- 大学もしくは高等専門学校等において3年以上商学に属する科目の教授・准教授の職にあった者
- 商学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
- 司法試験に合格した者
司法試験合格者は公認会計士試験の最初の難関である短答式試験が全科目免除、論文式試験では、大きな力を発揮します。
よって、ダブルライセンスを目指すルートとして司法試験合格→公認会計士合格のルートは非常におすすめできるのです。
公認会計士試験の概要
公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験に分かれています。
合格基準は、
- 短答式試験:総得点の70%基準
- 論文式試験:52%基準
上記のように定められていますが、相対評価なのであくまでも参考です。
なお、総得点で合格基準点を上回っていたとしても
- 短答式試験で満点の40%を満たさず、かつ原則として答案提出者の下位から遡って33%の人数に当たる者と同一の得点比率に満たない者
- 論文式試験で得点比率が40%に満たないもののある者
上記に該当すると不合格になることがあるため、注意しましょう。
公認会計士試験の試験科目
公認会計士試験の試験科目は、下記のとおりです。
短答式試験(4科目)
- 企業法
- 管理会計論
- 監査論
- 財務会計論
論文式試験(5科目)
- 監査論
- 租税法
- 会計学(財務会計論及び管理会計論)
- 企業法
- 選択科目(経営学・経済学・民法・統計学の中から1科目を選択)
会計や経営に関するレベルの高い問題が出てくるため、入念に対策する必要があります。
司法試験の概要
司法試験は、短答式が3科目・論文式が8科目となっています。
合格基準は、短答式と論文式の成績を総合して判断される相対評価となっており、明確な基準はありません。
なお、1科目でも
- 短答式で40%未満
- 論文式で25%未満
上記に該当すると不合格になる、厳しい足切りが設けられています。
司法試験の試験科目
司法試験の試験科目は、下記のとおりです。
短答式試験(3科目)
- 憲法
- 民法
- 刑法
論文式試験(8科目)
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 商法
- 民事訴訟法
- 刑法
- 刑事訴訟法
- 選択科目(倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際公法・国際私法の中から1科目を選択)
短答式試験は3科目ですが、論文式試験は8科目と多いことがわかります。
公認会計士と司法試験の仕事内容の違い
公認会計士試験と司法試験試験には共通点がありますが、専門分野が異なります。
仕事内容も大きく異なることから、自身の得意なフィールドで活躍するためにも仕事内容を知っておくことは大切です。
一般的に、弁護士は公認会計士より幅広い職種に就ける強みがあります。
公認会計士
公認会計士の専門分野は、下記の3つです。
- 企業の会計監査
- 税務
- コンサルティング
専門分野の中でも、最も多いのが企業の会計監査の仕事です。
監査は公認会計士だけが行うことができる独占業務で、企業会計のエキスパートとして活躍できるでしょう。
また、公認会計士は税務にも精通していることから、税金に関しても専門的な仕事を行うことができます。
会計や税務など、資格の知識を応用してコンサルタントをすることも可能で、活躍できるフィールドは広いです。
司法試験
司法試験に合格すると、弁護士・裁判官・検察官などの法曹三者として活躍するケースがほとんどです。
他にも、
- 行政書士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 弁理士
- 司法書士
などの仕事を行うこともでき、「法律に関連する仕事であれば何でもできる」と考えて差し支えありません。
その他にも、法律の知識を使って政治家や実業家、企業法務部などのインハウスローヤーなどで活躍することもできます。
公認会計士と弁護士の将来性を比較
公認会計士と弁護士の将来性について、悲観的な噂があるのは事実です。
しかし、両者とも高い専門性を有している人材として、常に高い需要があります。
将来性は十分に期待できることから、過度に恐れる心配はありません。
公認会計士の将来性
AIの発達に伴って公認会計士の仕事が奪われてしまう懸念がありますが、公認会計士の仕事がAIに代替される懸念は薄いです。
公認会計士は、単なる企業会計の監査だけでなく、企業や個人事業主に対して「会計状況を見極めた上で助言する」ことも行います。
状況を分析し、相手の立場を慮ったうえで最適な助言を行う必要があるため、AIでは代替不可能です。
また、監査は公認会計士の独占業務であるため、取って代わらないリスクは非常に低いと言えるでしょう。
弁護士の将来性
弁護士は、司法制度改革による弁護士数の増加や弁護士の平均所得が減少していることを背景に
- 需要がない
- 食えない
- 将来性がない
と言われることがあります。
実際に、日本弁護士会が実施した弁護士に対するアンケート調査によると、
- 2006年の弁護士の所得平均:約1,748万円
- 2018年の弁護士の所得平均:約959万円
となっています。
しかし、弁護士の5大事務所では採用数を増やしているため、弁護士の需要は増えていると言えます。
企業法務やインハウスローヤー、官公庁などで働く任期付き公務員をはじめ、弁護士の働き方は多様になっているため、将来性は高いです、
公認会計士と司法試験のダブルライセンスのメリット
公認会計士と司法試験のダブルライセンスを実現できれば、会計と法務に関して専門的知識を有していることが証明できます。
裁判官と検察官は国家公務員なので会計監査の仕事は行えませんが、弁護士だと副業することが可能です。
仕事の幅を広げて自身の価値を高めるためにも、公認会計士と司法試験のダブルライセンスは相乗効果が高いです。
差別化ができる
公認会計士と司法試験は日本でもトップクラスの難易度を誇る資格であり、両資格を取得している人は極めて少ないです。
いずれか一方の資格しか有していない人と差別化ができるため、相対的に自陣の価値の高さを証明できるでしょう。
会計事務所と弁護士事務所を開業すれば、専門性の高さと業務の幅の広さから競合と差別化ができ、顧客を獲得しやすくなります。
多方面の業務に対応できる
弁護士と公認会計士の両資格を持っていると、業務の幅が大きく広がります。
法律と会計に関して深い知識を有していることから、多方面からの視野を持てるようになります。
法人か個人かを問わず顧客のニーズに応えやすくなることから、貴重な人材として高い付加価値を提供できるでしょう。
年収アップが見込める
両資格を利用して開業すれば、世の中の様々な需要に対応できるようになります。
いずれか一方の資格しか保有していない競合よりも集客の幅が広がることから、平均以上の収入が見込めるでしょう。
顧客とのコミュニケーションがスムーズに
公認会計士と弁護士資格があれば、仕事内容によって共通する業務を行うことができます。
法務と会計の深い知識があれば、多方面から企業の問題を分析できます。
考え方の幅も広がり、顧客との問題共有などコミュニケーションがスムーズになるメリットが期待できるでしょう。
顧客ののニーズを的確に把握できれば、円滑に業務を進めることができ、顧客満足度が高まるメリットも期待できます。
公認会計士と司法試験のダブルライセンスのデメリット
公認会計士と司法試験のダブルライセンスを目指すとなると、合計で10,000時間近い勉強が最低でも必要になります。
勉強時間の負担が大きいため、働きながらダブルライセンスを目指すのは現実的ではありません。
特に、司法試験の受験資格をクリアするだけでも厳しいため、非常に大きな負担と言えるでしょう。
また、公認会計士としての登録を受けるためには、2年間の実務経験および3年間の補習所通学を経たうえで、修了考査に合格しなければなりません。
一方で、弁護士も登録を受けるためには司法試験合格後に1年間の司法修習を積む必要があります。
公認会計士と弁護士は、登録までにかなりの年数が必要になるため、実際にダブルライセンスを活かせるまでに時間がかかる点もデメリットです。
長い年月がかかる点を踏まえたうえで、ダブルライセンスを目指すべきか判断しましょう。
公認会計士と司法試験はどっちが難しいかまとめ
公認会計士と司法試験はどっちが難しいかまとめ
- 公認会計士試験と司法試験も相対評価で合否が決まる
- 必要な勉強時間の目安は、公認会計士が3,o00時間程度・司法試験が6,000時間以上
- 公認会計士も弁護士も将来性が高い
公認会計士試験と司法試験は、いずれも非常に難易度が高い試験です。
両試験とも相対評価で合否が決まることから、最後まで気を抜かずに勉強し、少しでも高い得点を獲得する必要があります。
公認会計士試験と司法書士試験には重複する部分があるため、自信がある方はダブルライセンスを狙ってみると良いでしょう。