司法試験はやめとけって本当?将来性や弁護士が稼げないと言われる理由まで徹底解剖!
「司法試験はやめとけと言われるのはなぜ?」
「司法試験合格者の将来性は?弁護士は稼げない?」
などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。
かつては難関国家試験の花形だった司法試験ですが、最近は「受験するのはやめとけ」「合格しても稼げない」などと言われることもあります。
今回はそんな「司法試験はやめとけ」という言説について、合格者の将来性や弁護士が稼げないと言われる理由を含めて解説するので参考にしてください。
「司法試験はやめとけ」についてざっくり説明すると
- 司法試験の受験はおすすめ
- 弁護士の仕事は十分にある
- AIによって職を奪われる心配も少ない
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司法試験がやめとけと言われる理由を紹介
司法試験が「やめとけ」と言われる背景には、以下のような状況があります。
司法試験は難易度が高すぎて挫折する
司法試験は、日本の最難関試験の一つに数えられ、合格までには長い勉強時間を要します。
膨大な年月を受験勉強に捧げても、必ず合格できるとは限らず、何年も費やした挙句、挫折してしまう人も多いです。
司法試験が「やめとけ」と言われる理由には、第一にこうした難しさが挙げられます。
受験資格を得るための予備試験の合格率は3〜4%
司法試験の受験資格を得るには、法科大学院を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があります。
法学部やロースクールに馴染みのない人が、これから司法試験合格を目指すなら、まずは予備試験を突破しなければなりませんが、以下で合格率を紹介するように予備試験は超難関です。
<過去5年間の予備試験の最終合格率>
年 | 合格率 |
---|---|
2022年 | 3.63% |
2021年 | 3.99% |
2020年 | 4.17% |
2019年 | 4.04% |
2018年 | 3.89% |
このように、予備試験では受験生のほとんどが不合格になります。
一方で法科大学院のほうも、修了するには2〜3年大学院に通わなければならないので、こちらもハードルが高いです。
社会人にとって資格は必須ではない
社会人として活躍する上で資格は必須ではなく、現場で実践的なスキルを身につけていけば、成功できる可能性は十分にあります。
また資格を持っていても、職能や人間性、人脈、コミュニケーション能力などがなければ、うまくいかないことも珍しくありません。
こうした理由から、形式的な資格よりも実質的なスキルのほうを重視する職場も多いです。
法曹になるには司法試験の合格が必要
裁判官、検察官、弁護士になりたいなら、基本的に司法試験に合格しなければなりません。
法務大臣の認定によって弁護士資格を付与する特例もありますが、こちらは司法試験合格よりもレアケースです。
よって「司法試験はやめとけ」はすなわち「法曹はやめとけ」と意味します。
司法試験の将来性に不安が残る
2006年に新司法試験制度が導入されたことで、司法試験の合格者数はかなり増加しました。
これによって合格者の質が低下したと言われるようになり、2015年以降、政府は合格者を減らすように働きましたが、合格者の質は依然として下がったままです。
確かに近年、合格者数は減っているものの、受験者数も同時に減少しているので、極めて優秀なごく一部の人間だけが淘汰されるという状況ではありません。
仕事がない弁護士が増えていることもあり、司法試験の人気は明らかに低下してきています。
そのため、将来性を不安視して、司法試験の受験を断念する人も多いです。
弁護士は稼げない職業に
司法試験合格者は、弁護士になることが多いですが、日本にはすでに膨大な数の弁護士がおり、供給過多とも言える状況です。
そのため、かつて弁護士は高収入が得られる希少な職業でしたが、昨今はずいぶんポジションが変わってきています。
今でも高所得者はそれなりにいますが、稼げない弁護士も決して少なくありません。よって需要や将来性を懸念して、弁護士になることを諦める人もいます。
諸外国と比べると日本の弁護士数は少ない
『弁護士白書 2022年版』によると、2022年における各国の弁護士数は以下の通りです。
国 | 弁護士数 |
---|---|
日本 | 44,101人 |
アメリカ | 1,327,010人 |
イギリス | 167,751人 |
ドイツ | 167,085人 |
フランス | 70,894人 |
そして、2022年における弁護士1人あたりの国民数を算出したものが以下になります。
国 | 弁護士1人あたりの国民数 |
---|---|
日本 | 2,810人 |
アメリカ | 255人 |
イギリス | 402人 |
ドイツ | 499人 |
フランス | 912人 |
これを見ると、日本の弁護士数は、欧米各国の弁護士数に比べて、かなり少ないことがわかります。
無論、弁護士の活動内容や国民の利用度などに差があるため、単純比較することはできません。しかし、諸外国と比べると、一人あたり3,000人弱の顧客がいる日本では、まだまだ弁護士の活躍の余地があるとも言えるでしょう。
受験生は司法試験はやめるべきかを検討
「司法試験はやめとけ」との声には、それなりの理由はあるものの、司法試験を受験することにはメリットも多いです。
司法試験を受けるかどうか迷っている方は、以下の内容を参考に、今一度前向きに受験を検討してみてください。
本当に弁護士の仕事がないのか
「司法試験はやめとけ」と言われる背景には、弁護士の将来性に対する懸念があります。
しかし、先述した通り、日本には弁護士一人あたり3,000人弱の顧客がいるので、仕事がないわけではありません。働き方などの工夫によっては、いくらでも稼ぎようはあります。
例えば、都内は弁護士数が多いのですでに飽和状態と言われていますが、地方ではその限りではありません。
また企業法務に特化してスキルを磨き、企業内弁護士として働く選択肢もあります。
さらに単純作業が少ない弁護士の業務は、AIに代替される可能性が低く、今後機械化がさらに進行しても、そのことで仕事がなくなることはないでしょう。
平均年収は高い
厚生労働省が発表した令和4年の賃金構造基本統計調査によると、法務従事者(弁護士、裁判官、司法書士など)の収入は、平均月給が642,800円、平均賞与額が年間1,740,000円です。
弁護士以外の職業も含めた平均とはいえ、つまり少なくとも平均で約950万円の年収が得られる計算になるので、弁護士は決して稼げない職業ではありません。一般的な会社員に比べると、金銭的には格段に恵まれています。
また、弁護士数の増加から競争率が高まり、従来的な業務だけでは稼ぐのが難しくなったことは事実ですが、市場開拓の動きも見られます。
その代表例である企業内弁護士になれば、安定して高収入が得られ、充実した福利厚生のもとで働けるので魅力的です。
不合格でも学んだ経験は活かせる
司法試験や司法試験予備試験は難易度が高いので、合格できずに挫折してしまう人もいます。
しかし、不合格になったり、途中で勉強を断念したりしても、学んだことは無駄になりません。身につけた法律知識は、その後の仕事で活かすことができます。
特に近年は法務を重視する企業が増えており、法科大学院の出身者や司法試験の受験者が積極的に採用されるケースも多いです。
また司法試験で挫折した後に、大手企業に採用され、そこから成功を収める人もたくさんいます。挫折の経験が、以後の馬力になることもあるでしょう。
そのため、司法試験を受験したい気持ちがあるなら、不合格を恐れず、積極的にチャレンジするのがおすすめです。
司法試験に向いている人
以下に該当する方は、司法試験に向いているので、受験を前向きに検討してみてください。
論理的思考力のある人
司法試験に合格するには、論理的思考力が欠かせません。
特に論文試験では、論点を的確に把握し、それをもとに議論を展開していく上で、順序立てて物事を考える力が必要です。
根拠を明確にし、自らの考えや事実をわかりやすく述べていける人であれば、司法試験で良い結果が期待できます。
以上を踏まえると、司法試験は文系だけでなく、理系学部の出身者にも向いている要素も多いと言えるでしょう。実際、理系の弁護士もたくさんいるので、過去の学習経験にかかわらず、積極的に挑戦してみてください。
なお、感情的な判断が先行してしまい、合理的に判断するのが苦手な方には、司法試験は向いていません。
コミュニケーション力がある人
司法試験の合格後、弁護士や検察官、裁判官として活躍するには、コミュニケーション能力が必要です。
業務において、幅広い人間と関わることになるので、性別や地位などを問わず、色々な人と円滑に意思疎通を取り、必要な情報を引き出せなければ、成功するのは難しいでしょう。
ちなみに弁護士の業務がAIによって代替されにくいと考えられるのにも、コミュニケーション能力が関係しています。
クライアントの気持ちに寄り添い、臨機応変な対応をしなければならないので、機械ではなく人間でなければなりません。
なお、裏を返せば、コミュニケーション能力がなければ、AIに仕事を奪われてしまう可能性があるとも言えます。
努力し続けられる人
司法試験に合格するには3,000〜8,000時間程度の勉強が必要だと言われています。そのため、コツコツ努力を継続できる人でないと、成功するのは難しいです。
また効率的・効果的に受験勉強を進めていくには、スケジュール管理やモチベーション管理を上手に行わなければならないので、そうした自己管理が得意な人のほうが向いています。
さらに司法試験では、覚えるべきことが膨大にあることから、暗記に長けていることが望ましいです。
加えて、勉強がうまくいかなかったときに挫折しないためには、法曹になりたいという熱意や根気なども要ります。
「司法試験はやめとけ」まとめ
「司法試験はやめとけ」まとめ
- 弁護士の平均年収は依然として高い水準
- 不合格になっても活躍のチャンスはある
- 論理的思考力や根気のある方に特におすすめ
「司法試験はやめとけ」と言われることについて解説しました。
そのような言説とは裏腹に、司法試験を受験するメリットは大きいです。
試験に合格して弁護士になれば、十分な高収入を得ることができ、地方や企業内弁護士であれば、需要や将来性も心配ありません。
また不合格になったり、途中で挫折したとしても、受験勉強で身につけた知識を企業法務などで活かすことができます。
以上を参考に、司法試験の受験を前向きに検討してみてください。