一級建築士は食えないって本当?資格の価値やリアルな収入事情まで徹底解説!

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「一級建築士は食えないと言われるのは本当?」

「収入はどのくらい?これから取得する価値はある?」

などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。

一級建築士の資格があれば、あらゆる建物の設計が可能になるため、取得すれば幅広いキャリアプランに役立てられます

しかし、一級建築士には「食えない」「稼げない」といった悪い評判もあります。ネットでそのような書き込みを見て、取得して良いものか不安に思った方もいるでしょう。

そこで今回は一級建築士は本当に食えないのかについて、年収の事情や取得するメリットなどを含めて解説します。

一級建築士は食えないのかについてざっくり説明すると

  • 600万円以上の高い年収が得られる資格
  • 建物の老朽化で需要は増加
  • AI技術の進歩は激務の緩和という意味で好材料

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そもそも一級建築士とは

山と建物

建築士は、設計と工事管理を独占業務として行う国家資格です。

一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、それぞれで業務が行える範囲が異なります。

3つの中で最もランクが高い一級建築士は、あらゆる建物を設計することが可能です。戸建て住宅はもちろん、学校や病院、映画館なども設計できます

オリンピックの種目が行われる競技場など、かなり大規模な建造物も扱えるため、行政のプロジェクトに携わることも多いです。

なお、一級建築士は設計士として設計事務所に勤務することを想像されがちですが、実際はゼネコンなどで働く一級建築士もたくさんいます

合格率10%程度の難関資格

公益財団法人 建築技術教育普及センターの発表によると、過去7年間の一級建築士試験の合格率は以下の通りです。

学科 製図 総合
2016年 16.1% 42.4% 12.0%
2017年 18.4% 37.7% 10.8%
2018年 18.3% 41.4% 12.5%
2019年 22.8% 35.2% 12.0%
2020年 20.7% 34.4% 10.6%
2021年 15.2% 35.9% 9.9%
2022年 21.0% 33.0% 9.9%

上記の通り、一級建築士試験は、例年合格率が10%程度である難関試験です。

合格者数は毎年3,500人程度で、25,000人以上は不合格になることからもその難しさが伺い知れます。

一級建築士は食えないと言われる実態

分析

以下では、一級建築士が「食えない」「稼げない」と言われる背景について解説します。

「足の裏の米粒」と揶揄される

「足の裏の米粒」とは、「取らないと気持ち悪いが、取ったところで食えない」という皮肉です。

これはつまり、一級建築士は誰しもが取得したくなる資格ですが、取っても稼げるとは限らないということを意味しています。

後述の通り、一級建築士の資格は決して「足の裏の米粒」などではありませんが、設計士として独立した場合、一級建築士の資格を持っていても食べていくのが難しくなるケースがあることは事実です。

取得難易度にリターンが見合わない

一級建築士試験を受験するには、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 大学、短大、高等専門学校、専修学校などを指定科目を修めて卒業
  • 二級建築士
  • 建築設備士
  • 外国大学を卒業した者など国土交通大臣が認める者

これらの受験資格を満たした者が受けられる試験は、合格率10%程度の難関です。

学科と製図の両方を対策しなければならないので大変であり、試験は年1回しか実施されないので、不合格になった場合のリスクも大きいと言えます。

また登録には実務経験要件も設けられているため、実務経験がなければ、試験に合格してもすぐには一級建築士として活動できません。

このように一級建築士になるのはかなり難しいですが、同じく難関資格である税理士や司法書士などと比べると、取得するメリットが少ないと言われています。

実際、設計業界においては、一級建築士は「持っていて当たり前」と捉えられることもあり、資格を取ったからといって劇的な変化があるわけではありません。

AIに取って代わられる?

敷地調査や基本設計、図面作成など、単純で正確性が重視される業務は、今後AIに代替される可能性があります。

このことも一級建築士が「食えない」「稼げない」と言われる一因でしょう。

しかし、マーケティングやコンサルティングなど、顧客の心理を探ったり、コミュニケーションを取ったりすることが必要な仕事は、AIに取って代わられる確率が低いです。

よって、一級建築士の業務においても顧客のニーズに合わせて図面を作成するなど、顧客目線に立った業務を強みとすることでAI隆盛の時代でも生き残ることができるでしょう。

「一級建築士は仕事ない」は誤った情報

あきらめるな

「一級建築士の仕事がない」という言説は、全くの誤りです。少なくても現在においては、一級建築士にはかなりの需要があります。

以下では、一級建築士の需要の高さを示す根拠をいくつか示していきます。

建設技術者は人手不足

厚生労働省に2019年2月1日に発表した「一般職業紹介状況」では、2018年の建設技術者の有効求人倍率は6.18倍とされています。

これは一人の求職者に対して、6件以上の求人がある状況を示すことから、一級建築士を含む建設技術者は、かなり人手不足の職種だと言えるでしょう。

建物の老朽化により需要が増加

昨今は老朽化した建物が多くなってきており、解体工事や新規の建設の件数が増加しており、建築士の需要も高まっています。

建築士は周辺環境にも配慮しながら、安全かつ効率的に工事を行うのに必要な存在であり、特に一級建築士は重宝されることが多いです。

一級建築士の活躍の場は幅広い

一級建築士の主な職場としては、ゼネコンや設計事務所、ハウスメーカー、工務店などが挙げられます。

企業規模は大手企業から地域に根ざした中小企業、個人事務所など様々であり、活躍のフィールドはとても広いことが伺えます。

建築士が重宝される職場は

一級建築士の資格は、ゼネコンや設計事務所だけでなく、様々な職場で活かすことができます。

ゼネコンや設計関連の職場であれば、一級建築士の有資格者が多いので、資格を持っていても大きな武器にはなりません

しかし、不動産会社や飲食店の店舗開発などであれば、一級建築士は希少価値が高いので重宝されます

そのため、設計やものづくりにどっぷり浸かりたいのでないなら、他業種で建設や開発関連の部署で資格を活かして働くのもおすすめです。

多様なキャリアに役立てられるので、自分から心から楽しいと思える仕事に活用すると良いでしょう。

大手に所属するなら安定

個人の設計事務所は、業務の自由度が高いことは魅力的であるものの、どれだけの業績が挙げられるかが個人の能力にかかっている部分が大きいです。

そのため、能力次第では食べていくのが難しいこともあります。

一方で大きな設計事務所に属する場合は、働き方に一定の制約はかかりますが、安定した給料が得られます

平均年収は641万円とかなり稼げる

お金の画像

2019年版の賃金構造基本統計調査によると、一級建築士の所定内給与額は410,300円、年間賞与その他特別給与額は1,487,200円です。

これより、一級建築士の平均年収は641万円程度と考えられます。日本人の平均年収は441万円程度なので、一級建築士の給与水準はかなり高いことがわかります。

勤務先による給料の違い

勤務先 年収
ゼネコン 650万円
建築会社 640万円
ハウスメーカー 660万円
設計事務所 600万円

上記の通り、一級建築士の年収は勤務先によって異なります。中小規模の設計事務所よりも大手のゼネコンに勤めたほうが、高い収入が得られます。

しかし、勤務先に関わらず、一級建築士の平均年収は、日本人全体の平均水準に比べるとかなり高いです。

年齢階級別・企業規模別の年収も確認

同じく賃金構造基本統計調査の結果を参照し、以下では一級建築士の平均年収を、年齢階級別・企業規模別に紹介します。

<一級建築士(男)の年齢階級別平均年収>

①所定内給与額 ②年間賞与その他特別給与額 ①×12+②
20〜24歳 318,900円 0円 3,826,800円
25〜29歳 288,200円 1,184,400円 4,642,800円
30〜34歳 380,200円 1,700,900円 6,233,000円
35〜39歳 402,100円 1,649,200円 6,474,400円
40〜44歳 439,400円 2,208,400円 7,481,200円
45〜49歳 458,300円 1,860,400円 7,360,000円
50〜54歳 444,400円 1,743,600円 7,076,400円
55〜59歳 502,900円 1,758,100円 7,792,900円
60〜64歳 459,800円 678,800円 6,196,400円
65〜69歳 315,600円 609,000円 4,396,200円
70歳〜 344,500円 719,700円 4,853,700円

上記の通り、一級建築士は20代や70代でも十分な収入が見込めます。また30〜64歳までは、かなりの高収入が期待できます。

<一級建築士の企業規模別平均年収>

①所定内給与額 ②年間賞与その他特別給与額 ①×12+②
10〜99人 380,300円 1,047,200円 5,610,800円
100〜999人 396,300円 1,559,000円 6,314,600円
1,000人以上 499,000円 2,315,900円 8,303,900円

この通り、一級建築士の年収は企業規模に比例します。企業規模が大きい場合の年収はかなりの高水準ですが、規模が小さくても日本人全体の平均と比べると相当高額です。

以上を踏まえると、「一級建築士は稼げない」という噂は、明らかな誤りであると言えます。

一級建築士の将来性はどうなるのか

成長戦略

以下では一級建築士の将来性について論じます。

AIで作業を効率化

計算や分析処理など、手間がかかる単純作業をAIに任せれば、人間はより一層クリエティブな業務に特化していけるようになります。

そのため、AIの技術が発展することは、必ずしも悪いことではありません。

実際、昨今は建築にBIM(Building Information Modeling)システムが導入され、設計から施工までの一連の業務が大きく効率化されています。

一球建築士の仕事は激務になりがちですが、今後はこのような機械化が促進され、労働環境はどんどん改善されていくでしょう。

様々なスキルを身につけよう

ほかの建築士と差別化を図るには、建築や設計以外の分野で、知識やスキルを習得することが重要です。

例えば、昨今は高齢化やSDGsなどが注目されているので、バリアフリーや環境問題に関する勉強や経験が役に立ちます

またコミュニーション能力や営業力など、時代の流れに左右されない普遍的な能力を身に付けておくのも有意義です。

高齢化が進み今後希少価値が上がる

参照:国土交通省(2017), 建築行政に係る最近の動向, p.43

上記は建築士事務所に所属する一級建築士(所属建築士)の数を、年代ごとにまとめたものです。

これを見てもわかる通り、所属建築士の約8割は40代から60代であり、30代は11%程度、20代に至っては1%あまりしかいません

非常に高齢化が進んでいる職種であることから、若い一級建築士の希少価値は高いです。

これから一級建築士を目指す方にとっては、良い状況だと言えるでしょう。

一級建築士は取得がおすすめの資格

一級建築士は一定以上の需要や将来性があり、十分な高収入も得られるので、これから取得するのはおすすめです。

建築・設計業界で働くなら必須

独立して自分の設計事務所を構えるなら、登録の際に建築士の資格が必要です。

二級建築士や木造建築士でも登録は可能ですが、一級建築士があれば「一級建築士事務所」として登録できるので、顧客獲得などの面で有利になります。

よって独立して活躍することを狙う場合は、一級建築士は必須の資格だと言えるでしょう。

また一級建築士があると、昇格や昇進に繋がったり、就職・転職の際に良いアピール材料になったりすることも珍しくありません。

そのため、キャリアアップの目的で取得するのも大いにおすすめです。

一級建築士は食えないのかまとめ

一級建築士は食えないのかまとめ

  • 高齢化が進んでおり、若い世代は重宝される
  • 建設・設計業界では大いに役立つ
  • 独立開業にもキャリアアップにも有用

一級建築士は食えないのかについて解説しました。

結論を言うと、一級建築士は十分に稼げる仕事です。600万円以上の高い年収が得られる可能性が高く、収入アップを目指して資格を取得するのもおすすめできます。

また建物の老朽化などの要因で需要が高まっており、高齢化が進んでいるため、若い世代は重宝されます。そのため、特に20代、30代にとっては将来性も十分と言えるでしょう。

さらに独立・開業やキャリアアップ、キャリアチェンジにも役立ちます。

これから取得を考えるのも非常に有意義だと言えるので、ぜひ前向きに検討してみてください。なお、試験対策は通信講座を活用して効率的に行いましょう。

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