一級建築士と二級建築士の違いとは?難易度や仕事内容・取得メリットまで徹底比較

「一級建築士と二級建築士の違いは?」

「一級建築士と二級建築士どちらの資格を取ればいいの?」

このような疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。

建築物の設計や工事監理を行う人を「建築士」と言い、取り扱いができる建築物の規模などによって一級建築士と二級建築士の2つに分かれます。

「建築士」という同じ資格名で呼ばれるのが一般的ですが、国家資格のランクとしては一級建築士が二級建築士の上位資格であり、両資格にはさまざまな点において違いがあります。

この記事では、一級建築士と二級建築士の仕事内容の違いだけではなく試験の難易度や合格率、取得メリットなどの違いについても紹介します。

記事を読みすすめていけば、一級建築士資格取得に挑戦することへの決心と自信がつくはずです。

一級建築士と二級建築士の違いについてざっくり説明すると

  • 受験資格や免許の交付元に違いがある
  • 資格試験の合格率などの難易度に違いがある
  • 設計や工事管理できる建物の規模に違いがある

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一級建築士と二級建築士はどう違う?

? 一般的な住宅を建築する場合、依頼主は、建築士の資格が一級か二級かといったことはほとんど気にしません。

これは、戸建て住宅などの小規模な建物の建築を依頼する際、一般的には、一級建築士しか設計しないような芸術性や創造性を必要とする住宅建築の依頼をしないからです。

一般的な戸建て住宅などの建築の際に気にすることがないとはいえ、一級建築士と二級建築士では、手掛ける仕事内容だけではなくさまざまな点で違いがあります。

以降では、この一級建築士と二級建築士の違いについて、「交付先・受験資格・仕事内容・合格率・平均収入・メリット」といった観点から詳しく紹介しましょう。

一級建築士の交付先は国土交通省

一級建築士と二級建築士の違いで最初に押さえておきたいのは、誰が建築士の免許を交付するかということです。

一級建築士になるためには、一級建築士試験に合格して免許を受けなければなりません。

一級建築士の免許は、試験合格後に一級建築士名簿に登録することによって行われ、免許が与えられるときには「国土交通大臣から」一級建築士免許証が交付されます。

それに対し二級建築士の場合は、それぞれの都道府県知事が行う二級建築士試験に合格し、その都道府県知事の免許を受けなければなりません。

二級建築士試験合格者は受験申込みをした都道府県で「登録手続き」を行い、この登録手続きを行うことで「各都道府県知事から」二級建築士としての免許が交付されます。

受験資格が異なる

一級建築士と二級建築士では、それぞれの資格試験における「受験資格」に違いがあります。

●一級建築士試験の受験資格

NO. 建築に関する学歴または資格など
大学、短大、高専、専修学校校などで指定科目を修めて卒業した者
二級建築士
建築設備士
その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者など)

●二級建築士試験の受験資格

NO. 建築に関する学歴または資格など 実務経験年数
大学、短大、高専、高校、専修学校、職業訓練校などで指定科目を修めた卒業者 最短0年
建築設備士 0年
その他都道府県知事が特に認める者(外国の大学卒業者など) 所定の年数以上
建築に関する学歴のない者 7年以上

令和2年の一級建築士の試験から、従来の「実務経験要件」は受験時の要件ではなくなりました。

しかし、二級建築士試験においては、一部の受験者に限り実務経験が必要です。

一級建築士と二級建築士の仕事内容

一級建築士と二級建築士では、仕事での取扱いが認められている「建物の種類・規模・構造」には大きな違いがあります。

一級建築士には、設計・工事監理できる建物に制限がありません。

そのことから、オリンピック競技場のような大規模な建築物、大型商業施設や公共施設を建築する機会が多いと言えます。

それに対して二級建築士が設計・工事管理できる建物は、次表に示すとおりです。

項 目 内 容
建物の構造 木 造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石 造・れんが造・無筋コンクリート造・コンクリートブロック造
木工建築物の規模 高さ13mかつ軒の高さが9m以下、2・3階は延べ面積1,000㎡以下
木造以外の建物の規模 高さ13mかつ軒の高さが9m以下、延べ面積30~300㎡以内
その他の構造の建築物 / 木造以外 延べ面積1,000㎡

なお、建物構造が無筋コンクリート造の学校や病院などの公共施設の場合については、延べ面積500㎡以下に限られます。

また、二級建築士が日常的に手掛ける仕事で多いのは小規模な建物で、特に「戸建て住宅の建設がメイン」と言えるでしょう。

難易度は一級建築士の方が高い

一級建築士試験および二級建築士試験の「合格率」は、次表のとおりです。

学科試験合格率 実技試験合格率 総合合格率
一級建築士 20%以下 約40% 10%前後
二級建築士 40%前後 約50% 20%前後

このように、合格率という観点から見れば、難易度は一級建築士試験の方が二級建築士試験よりも高いと言えます。

一級建築士の合格率は約10%

一級建築士の平成27年度から令和4年度までの合格率は、次表のとおりです。

年 度 学科試験合格率 製図試験合格率 総合合格率
平成27年 18.6% 40.5% 12.4%
平成28年 16.1% 42.4% 12.0%
平成29年 18.4% 37.7% 10.8%
平成30年 18.3% 41.4% 12.5%
令和元年 22.8% 35.2% 12.0%
令和2年 20.7% 34.4% 10.6%
令和3年 15.2% 35.9% 9.9%
令和4年 21.0% 33.0% 9.9%

このように、一級建築士の合格率は総合で10%程度であり、国家資格のなかでも難易度の高い資格と言えます。

なお、二級建築士の合格率は、次表のとおりです。

年 度 学科試験合格率 製図試験合格率 総合合格率
平成27年 30.1% 54.0% 21.5%
平成28年 42.3% 53.1% 25.4%
平成29年 36.6% 53.2% 24.3%
平成30年 37.7% 54.9% 25.5%
令和元年 42.0% 46.3% 22.2%
令和2年 41.4% 53.1% 26.4%
令和3年 41.9% 48.6% 23.6%
令和4年 42.8% 52.5% 25.0%

一級建築士と二級建築士の平均年収は

『厚生労働省・賃金構造基本統計調査』などの最新のデータによれば、一級建築士の平均年収は約680万円です。

この金額は、性別・企業規模・所在地などに関係なく一級建築士の年収をひとまとめにして算出したもので、個人別に見れば300万~1,000万円以上までの開きがあります。

なお、二級建築士の場合、公的データが公表されていません。

そこで参考までに、ここでは民間調査機関の推計値を紹介すると、二級建築士の推計平均年収は約480万円です。

このように、一般的には一級建築士の方が高収入ですが、年収が300万円程度の一級建築士も存在しています。

つまり、一級建築士よりも年収の多い二級建築士も存在しているのが現実です。

なお、建築士の収入は、企業規模・都道府県・性別・年齢などによって大きな違いがあることを理解しておいてください。

建築士資格と宅建士のダブルライセンスは可能?

二本立て 建築士にとって、「建築士資格」に加えて「宅建士資格」を取得するという形であるダブルライセンスは、仕事をするうえで非常に有効です。

たとえば、大型商業施設を出店するケースで考えてみましょう。

利益の上がる商業施設をつくるには、依頼主は設計・デザインに優れた建築士に仕事の依頼や相談をするだけで良いというわけではありません。

依頼主は不動産の売買契約・融資先銀行との調整・出店店舗との賃貸契約・税金対策などに関しては、不動産会社などの宅建士に相談しなければなりません。

こうした依頼主の抱える大きな2つの問題を一人で解決してくれるのが、宅建士資格を持ったダブルライセンスの建築士です。

つまり宅建士資格を持ったダブルライセンスの建築士には、建築物の技術的な相談だけではなく法律や税金面に関する相談にも応じてくれます。

このように、建築士がダブルライセンスとして宅建士資格を取得することで、顧客に対し幅広いサービスの提供が可能になるのです。

以降では、建築士がダブルライセンスとして宅建士資格を取得する理由とそのメリットについて解説します。

試験範囲が似ている

建築士がダブルライセンスを目指す際には、「宅建士」が選ばれることが多いようです。

これは、両資格を取得することで顧客への幅広いサービスの提供が可能になるだけではなく、試験内容に重複部分が多いので効率的に受験勉強をできることが要因と言えます。

次に、建築士と宅建士で試験内容が重複する部分を宅建士試験の4科目ごとに示しておきましょう。

科目 重複内容
宅建業法 宅地建物取引業法
権利関係(民法) 区分所有法
法令上の制限 建築基準法・都市計画法・宅地造成等規制法・国土利用計画法・農地法
税金その他 建物構造・宅地

ダブルライセンスのメリット

ここでは、ダブルライセンスの代表的なメリットを、2つ紹介しましょう。

1つは、ダブルライセンスが「転職や独立の際の大きな武器になること」や「キャリアアップにつながること」です。

ダブルライセンスは転職活動ではシングルライセンスの求職者との差別化を図れますし、独立の際には、シングルライセンスより知識と業務の幅が広いことのアピールポイントになるといえるでしょう。

また、組織内のキャリアアップにつながることで、高収入を得る可能性が高くなることもメリットと言えます。

もう1つは、組織や企業内だけでなく「対外的にも信用度が高まること」です。

ダブルライセンスは周りや外部から信頼を得られる可能性がシングルライセンスより高く、「任される仕事の幅が広がる」「新規顧客の獲得できる」といったことにつながります。

一級建築士と二級建築士どちらがおすすめ?

バランス 一級建築士と二級建築士の資格を比較すると、取得の難易度は一級建築士の方が高く、設計・工事管理できる建築物の規模においても一級建築士の方が大規模な建築物の取り扱いを認められています。

しかし、大規模な建築物ではなく将来にわたって一般の戸建住宅の設計・工事管理を目指す人には、一級建築士資格の取得をあえておすすめしません。

一級建築士と二級建築士のどちらの資格を取得するかは、本人の適性や将来的に手掛けたい建築物の種類などによって決定すべきことだからです。

以降では、選択する資格を決定する際に参考にしたい情報を提供します。

一級建築士に向いている人の特徴

一般的には、「次のような人が一級建築士に向いている」と言われています。

とにかく大規模な施設の設計、オリンピックのような国家的プロジェクト、海外を飛び回りながら国際的な建築家になりたい、といった建築士を目指す人は一級建築士に向いていますし、一級建築士の資格取得は必須です。

また、「特にどの分野で働きたいという目標は決まっていないが、将来も建築業界で働きたいと考えている人」も、一級建築士に向いていると言えます。

建築業者の多くは住宅よりも商業施設や公共施設の設計・建築を行っており、これらは一級建築士でなければ設計することを認められません。

ですから、将来にわたって建築業界で働きたいのであれば、「向いている・向いていない」といったことに関係なく一級建築士の資格取得が必要です。

なお、一級建築士資格があると、就職や転職の際、非常に役に立ちます。

二級建築士資格の適性

「次のような人が二級建築士に向いている」、と言われています。

二級建築士は「戸建て住宅」の設計・工事管理がメインの仕事ですから、継続してそうした仕事をしたい人はあえて一級建築士資格を取得する必要がなく、二級建築士資格だけでも十分活躍できます。

戸建て住宅の設計は、1人ひとりと密に接する仕事ですから、将来、依頼者の顔を思い浮かべながら設計をしたいといった人は、二級建築士に向いています。

なお、戸建て住宅の設計・工事管理に特にこだわりを持っていない人には、将来の仕事の幅を広げるために、難易度は高いですが一級建築士資格の取得がおすすめです。

一級建築士の需要は高い

一級建築士への需要(求人需要)は、ハウスメーカーや戸建住宅設計会社などよりも、ゼネコンや建設会社からの需要が近年は多くなっています。

これは、ビルや商業施設・公共建築物など昔建てられた建築物が老朽化し、改修・建て直しの必要があることが一級建築士の需要が高くなっている最大の要因です。

また、一級建築士は高難易度の試験に合格したことでの世間的な信頼度が高いことや、即戦力として採用できることも一級建築士の求人需要の高さの要因と言えます。

二級建築士の方が難易度は低い

一級建築士資格試験と二級建築士資格試験の合格率は、次のとおりです。

これで明らかなとおり、二級建築士資格試験の方が難易度は低いと言えます。

  • 一級建築士資格試験の合格率:学科試験20%以下・実技試験約40%・総合10%前後
  • 二級建築士資格試験の合格率:学科試験40%前後・実技試験約50%・総合20%前後

両資格試験の難易度にはこうした違いがあることから、いきなり一級建築士資格の取得を目指すのではなく、難易度の低い二級建築士資格の取得に挑戦する人が多いようです。

なお、将来的にも戸建て住宅の設計・工事管理を目指す建築士のなかには、二級建築士の資格だけを取得して一級建築士の資格を取得しない人もいます。

二級から一級にステップアップ出来る

建築士の資格試験は、「受験資格」を満たしてさえいれば受験できます。

昨年までは受験資格として設定されていた「実務経験」が、令和2年の一級建築士資格試験から撤廃されました。

このことで、二級建築士試験に合格すれば、すぐに一級建築士試験の受験が可能になったのです。

一級建築士資格は仕事で扱える建築物が幅広いので、二級建築士資格取得者のキャリアアップには好都合な資格と言えます。

一級建築士資格試験は二級建築士資格試験に比べれば難易度が高く、簡単に合格できる資格試験ではありません。

取得に向けた勉強は大変ですが、それだけの苦労をして取得するだけのメリットを期待できるのが一級建築士資格であると言えます。

建築士と他の建築関連資格

勉強 ここでは、一級建築士として働いていて『仕事の幅を広げたい・スキルアップを図りたい・独立や転職を目指したい』といった人におすすめの、建築関連資格を紹介します。

設備設計・構造設計1級建築士資格

おすすめするのは、「構造設計1級建築士資格」と「備設設計1級建築士資格」です。

この2つの資格は一級建築士よりも上位の国家資格で、受験する際には次の受験資格を満たしている必要があります。

  • 一級建築士として5年以上の業務経験者
  • 国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習を受講した後、修了考査に合格した者

構造設計一級建築士の資格があれば、大型ビルや超高層マンションなど大規模な建造物の設計を行うことが可能になり、業務の幅が飛躍的に広がります。

設備設計一級建築士の資格があれば、国が決めた一定規模以上の建築物の構造設計については構造設計一級建築士が法適合確認を行うことが義務付けられているため、それをメインの業務にできます。

合格率は構造設計一級建築士試験が約30%前後・設備設計一級建築士試験が約65%の厳しい試験ですが、一級建築士だけに満足しないで、ぜひとも挑戦していただきたい試験です。

設計士と建築士

一級建築士や二級建築士は国家資格ですが、設計士は「建築業界において設計やその補佐をする人」の呼称です。

設計士は資格ではなく単なる呼び名ですから、設計士になるために何かをする必要はありません。

建築メーカーや設計事務所に就職して設計部門に携わることができれば、それだけで設計士と自称できます。

建築の設計や管理は建築士の資格を取得していることが必要なことから、設計士が担える仕事には限りがあり、基本的には建築士のサポートが仕事です。

ただし、100㎡未満の木造住宅の設計に限り建築士法で認められていることから、小さな木造住宅であれば設計士が設計をしても問題はありません。

なお、収入や将来性といったことを考えれば、設計士にとどまっているのではなく、建築士資格の取得をおすすめします。

「一級建築士と二級建築士の違いは?」についてまとめ

一級建築士と二級建築士の違いについてまとめ

  • 免許の交付は一級建築士が国土交通省で二級建築士が各都道府県
  • 合格率は一級建築士が10%前後で二級建築士が20%前後
  • 平均年収は一級建築士が約680万円程度で二級建築士が約480万円
  • 一級建築士に設計や工事管理できる建物の規模に制限はないが二級建築士は戸建て住宅がメイン

一級建築士と二級建築士の違いについてさまざまな側面から解説してきました。

建築業界で仕事をする人にとって、一級建築士の資格を取得することやダブルライセンスを取得することが大きなメリットにつながることを理解していただけたのではないでしょうか!

一級建築士の資格試験は非常に難易度が高いとはいえ、取得後のメリットを考えれば挑戦するだけの価値のある試験です。

まずは二級建築士資格取得へ向け、具体的な行動を開始されてみてはいかがでしょうか!

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