二級建築士の仕事内容は?難易度や実務経験・一級建築士との違いまで解説
「二級建築士は一級建築士とどのような違いがあるの?」
「二級建築士はどのような仕事しているの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
二級建築士は一級建築士よりも受験資格のハードルが低く、難易度も易しめです。
しかし、どちらの試験でも学歴によっては実務経験が求められるため、しっかりと確認しておく必要があります。
こちらの記事では、国家資格である二級建築士の仕事内容や一級建築士との違いなどについて解説していきます!
二級建築士の仕事内容や一級建築士との違いについてざっくり説明すると
- 住宅を設計したり建築する際の専門家である
- 一級建築士は建築できる建物の規模に制限はないが、二級建築士には制限がある
- 細かい受験資格や実務経験の規定が設けられている
- 合格率は20%程度と、かなり難関試験
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二級建築士とは
一級建築士は聞いたことがあっても、二級建築士については詳しく知らない人は多いのではないでしょうか?
こちらの記事では、二級建築士の仕事内容や試験の概要について解説していきます。
二級建築士の仕事内容
国家資格である二級建築士の資格は、都道府県知事が免許を公布しています。
主な仕事内容は、設計業務と工事管理業務を法律の定める範囲内で行うことです。
一級建築士には設計できる建築物の規模に制限がありませんが、二級建築士には設計できる建築物の規模に制限があります。
具体的には、延べ面積が30㎡から300㎡までの鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造の建築物の設計・工事監理がメインとなるため、住宅規模の建物の建築が主な仕事となります。
なお、木造建築士の場合は3階建てまでが基本で建物高さ13m、軒高9mを超える建物は設計できません。
また、建築物の延べ面積が1000㎡以上の建築物設計はできないため、二級建築士と同じく住宅規模の建物の建築が主な仕事となります。
二級建築士については公的なデータがないためあくまで推計値となりますが、年収の水準は480万円程度です。
日本の平均年収よりは少し高いくらいのイメージであるため「悪くはない年収かな」程度に考えておきましょう。
1級建築士との違い
一級建築士も二級建築士も、試験を受けて合格しなければなることができません。
一番大きな違いとしては、一級建築士には設計できる建物の規模に制限がないため、国家的なプロジェクトであるオリンピックスタジアムの建設や大規模なビル群の建設、タワーマンションの建設にも携わることができます。
先程述べたように、二級建築士は建物の規模に制限があるため、この点が一級建築士との大きな違いとなります。
また、免許を公布しているのが一級建築士は国土交通大臣であるのに対し、二級建築士は都道府県知事です。
同じ国家資格ですが、発行主体にも違いがあるのです。
二級建築士の難易度
こちらのトピックで、二級建築士試験の難易度はどれくらいなのかを見ていきましょう。
二級建築士の受験資格は厳しい
二級建築士を受験するためには、定められている受験資格をクリアしなければなりません。
なお、受験資格は以下の3通りで、いずれかを満たすことが必要です。
-
大学、高専、高校において建築に関する科目を修めて卒業したもの
-
都道府県知事が、1と同じレベルの知識と建築経験を持つと認めた人
-
建築実務経験が7年以上ある人
ちなみに、一級建築士の受験資格が原則として「大学、高専、3年制短期大学、2年制短期大学の中で建築に関する指定科目を履修して卒業した人」又は「二級建築士の資格を取得している人」であることを考えると、二級建築士のハードルはやや低めと言えます。
二級建築士の試験形式と合格ライン
二級建築士試験は、学科試験と設計製図試験から構成されています。
それぞれの試験範囲は以下の表のようになっています。
- 学科試験
五肢選択問題が100問出題され、試験時間は6時間。
科目 | 出題内容 | 出題数 |
---|---|---|
学科I | 建築計画 | 25問 |
学科II | 建築法規 | 25問 |
学科III | 法規 | 25問 |
学科Ⅳ | 見地宇幸三 | 25問 |
- 設計製図問題
1課題が事前に公表され、試験時間は5時間となっています。
二級建築士学科の合格ラインは100満点中おおよそ6割にあたる57~60点以上の正答となり、科目別基準点が13点程度となっています。
製図試験は二級建築士として備えておくべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」を有することを見る試験です。
具体的には、試験の結果がランクⅠ〜Ⅳの範囲で評価され、Ⅰの評価を受けないと合格とはなりません。
なお、各ランクの標語は以下の通りです。
- ランクⅠ
「知識及び技能」を有するもの
- ランクⅡ
「知識及び技能」が不足しているもの
- ランクⅢ
「知識及び技能」が著しく不足しているもの
- ランクⅣ
設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの
二級建築士は建築士になる為の登竜門として行われる試験であり、学科試験では毎年20,000人~25,000人が受験して、製図試験は約10000人が受験しています。
二級建築士試験の申し込みと合格発表
建築士試験の学科試験は例年7月上旬、製図試験は9月中旬に行われています。
一次試験の申し込みは、以下のように申し込み期限が狭いので、うっかり出願し忘れがないように気をつけましょう。
- インターネット申込みの場合
4月中旬頃の8日間程度
- 郵送での申込みの場合
3月下旬頃の7日間程度
- 受付場所での申込みの場合
4月上旬~中旬頃までの5日間程度(土・日含む)
なお、学科試験の合格発表は8月下旬頃で、製図試験の合格発表は12月上旬頃です。
なお、受験料は17,700円とかなり高額なため、一発合格を狙いましょう。
二級建築士の合格率は約20%
過去13年分の2級建築士の学科試験・設計製図試験それぞれの合格率は以下のようになっています。
二級建築士の学科試験合格率は30~40%程度であり、製図試験の合格率は50~55%程度で推移しています。
これらを総合的に判断すると、毎年の二級建築士の合格率は20~25%程度となるのです。
4~5人に1人しか受からない計算になるため、かなりの難関試験と言えるでしょう。
なお、参考までに一級建築士の学科試験合格率は15%~20%程度、製図試験の合格率は40%程度で推移しています。
これらを総合的に判断すると、毎年の一級建築士の合格率は10%程度と、二級以上の難関試験となっています。
一級建築士に至っては10人に1人しか合格できないため、非常に狭き門と言えるでしょう。
木造建築士や宅建との難易度差はどれくらい?
木造建築士の学科試験合格率は50~60%、製図試験の合格率は50~75%と大きな幅があります。
これらを総合的に判断すると、毎年の木造建築士の合格率は30~40%程度となり、比較的簡単な試験となっています。
つまり木造建築士よりも二級建築士の方が難易度が高く、活躍できるフィールドも広いです。
ちなみに、同じく不動産系の資格である宅建士試験の合格率は、例年15%前後で推移しています。
受験資格のない宅建試験と受験資格のある二級建築士試験の合格率を比べても難易度を正確に測ることはできませんが、合格率だけをみると宅建の方が難しいと言えるでしょう。
合格後には実務経験を積む必要がある場合も
二級建築士になるためには、学歴に応じて実務経験を積まなければなりません。
なお、登録のために必要な実務経験の期間は以下のようになっています。
学歴 | 実務経験年数 |
---|---|
大学・短大・高専卒業 | 実務経験不要 |
高卒 | 実務経験が2年以上必要 |
実務経験7年以上で合格した人 | 7年以上の実務経験が必要 |
都道府県知事が特別に認定した人 | 定められた期間の実務経験が必要 |
以上のように、学歴によってはかなりの実務経験が必要となるため、しっかりと確認しておきましょう。
二級建築士の勉強法
合格率20%という難関試験である二級建築士の対策は、どのようにして行っていけばいいのでしょうか?
以下では具体的な対策法について詳しく解説していきます。
二級建築士に必要な勉強時間は半年間
二級建築士の合格のために必要な勉強時間の目安は、建築初学者であれば1年間、建築系の科目を履修したことのある人であれば半年間程度と言われています。
なお、勉強時間で換算すると建築初学者で合計1000時間、建築系の科目を履修したことのある人で合計500時間程度になります。
初学者が1年間で1000時間勉強こなすためには、1日あたり3時間以上は勉強する必要があるため、毎日継続してこなすのはかなり大変であるといえるでしょう。
仕事をしながら1日あたり3時間勉強するのは非常に難しいため、休日にまとめて勉強するなどして勉強時間を確保する必要があります。
二級建築士の勉強のポイントは順番
二級建築士の学科試験の対策は、勉強する科目の順番が大切です。
二級建築士の学科試験で躓く人がもっとも多い科目が「法規」です。
そのため、まずは「法規」科目から取り組み、苦手意識を持たないように丁寧に勉強していきましょう。
法規の問題は、試験に出てくる問題を建築基準法が掲載されている「法規」を参照しつつ解いていく試験となっています。
つまり、法規の引き方に慣れていないと問題のポイントや自分が探している条文を見つけることができず失点してしまうので、早めに対策を練っておくと良いでしょう。
演習を繰り返すことで、法規のどの辺りに答えの該当箇所があるか、これまでの問題でよく出されているひっかけのポイントはどこなのかが分かってきます。
このように、出題のクセを掴むことも試験対策上とても有効です。
学科試験は過去問演習を重点的に
学科試験は過去の問題と似たものがよく出題され、出題傾向があまり変わらないことから、過去問をひたすらやり込むことが非常に有効な勉強方法です。
特に「建築計画・建築構造・建築施工」は出題傾向がほとんど変わらないので、演習をやり込んだ量が点に直結します。
得点の目安としては6割程度の得点が合格ラインとなるため、7割ほど取れれば十分に安全圏と言えます。
そのため、日頃の演習でも7割の得点を目指しておくと、本番でも慌てることなく落ち着いて取り組めるでしょう。
解くべき問題の目安としては、過去5ヵ年分となる500問を5周ほど解けば十分です。
その中で、得意な科目は3回、苦手な科目は5回解くなどメリハリを付けて勉強することで効率的な勉強となります。
また、過去問を解く際には本番のつもりで緊張感を持って取り組みましょう。
法改正もしっかり勉強する
建築基準法について改正があった場合は、しっかりと改正点について頭に入れておかないと簡単な問題で失点してしまう可能性があります。
特に、大きな改正点については必ず出題されると覚悟して勉強しておきましょう。
改正点については出題者としては狙いやすいポイントなので、重点的に対策しておくべきです。
製図試験は合格者に添削をお願いする
製図試験は本番の3日前に問題が公表されるものの、あらゆる出題パターンを頭の中に入れておく必要があります。
独学で対策を行う場合は、模範解答をトレースして描き方に慣れることが基本となります。
図面を書くことに慣れた上で、与えられた課題を元に図面の計画をまとめるプランニング(エスキス)などの対策を行うと良いでしょう。
また、採点については初心者ではわからない部分も多いため、建築士に合格した経験がある人や予備校の講師などに採点・添削してもらいましょう。
添削をしてもらわないと自分の誤りや課題を把握できないため、本番でも失点につながってしまいます。
合格のための勉強スケジュール
二級に合格するためには、学科試験が7月上旬に行われることを逆算すると、遅くとも2月には勉強をスタートするべきです。
勉強スケジュールのイメージとしては、2月いっぱいを使って最初の1ヶ月間で法規科目の勉強をこなし、3月と4月の2ヶ月を使って他の学科科目の勉強を行うと良いでしょう。
5月と6月に入ったら、過去問演習と改正法の確認を行い、本番に向けた実践力を高めていきます。
また、7月の学科試験が終わったら、間を空けずにすぐに製図試験の対策に取り組んで10月の製図試験に備える必要があります。
通信講座やアプリの利用も
独学だと不安だったり、二級建築士の勉強を効率よく進めたいならば、通信講座を利用することもオススメです。
通信講座では、これまでの出題実績などを分析した効率的な教材とカリキュラムが組まれています。
つまり、出題傾向に沿って「頻繁に出るところだけ」にフォーカスした対策を行えるため、短期間で効率的な勉強が可能なのです。
また、スマートフォンで学習ができる二級建築士の試験対策用アプリなども開発されているため、それらを使ってみても良いでしょう。
スマートフォン学習ができれば隙間時間を活用した勉強ができるため、より効率的な勉強も可能です。
二級建築士試験はやり込んだ演習量に比例して得点が伸びるため、忙しい人ほど効率的に対策することが求められます。
なかなか勉強時間が確保できずに悩んでいる人、短時間でも効率的に学習できる通信講座などを利用すると良いでしょう。
二級建築士のメリットやキャリアプラン
建築士資格を持たずに設計などを行っている人は、一般的に設計士と呼ばれます。
二級建築士を取得をすることで「建築士」を名乗ることができるようになるため、周囲からの信頼が高まります。
こちらのトピックで、二級建築士になる具体的なメリットについて解説します。
二級建築士を取得するメリット
二級建築士の資格を取得することで、仕事上や就活の面などで様々なメリットを享受できます。
業務の範囲が広がる
二級建築士を取得することで、100平米以上の建物の設計ができるようになります。
これにより、取得前は住宅しか設計できなかったのに対し、取得後はカフェなどの店舗を設計できるようになる違いがあります。
つまり、自分が設計できる建築物の幅が広がり、業務の範囲も広げることができるのです。
就職や転職につながる
建築士の資格が持っていることで、建築に関する専門知識を持つ人間と評価してもらえます。
これにより、就職や転職の選考の際に有利になるでしょう。
建築士の人材はかなり不足しており、売り手市場の状況にあります。
住宅メーカーや設計事務所、ゼネコン会社や不動産会社、官公庁など様々な働き口があり、どこに行っても重宝されるでしょう。
なお、設計事務所では家屋の設計、ゼネコンでは大規模な施設や都市・街の開発、不動産系ではコンサル業務などを行っている企業が多く、自分のやりたいことと照らし合わせて就職先を選ぶと良いでしょう。
年収やキャリアアップにも
資格を持つことで、資格手当などがついて年収アップにつなげることができたり、昇進のきっかけにもなります。
昇進要件に資格の取得がなくても、資格があれば顧客からの信頼度が増すので、仕事の成績が向上して結果的にキャリアアップにつながります。
また、二級建築士の取得をすることで一級建築士の受験資格をクリアすることができるため、さらなるステップアップを狙って一級建築士を目指すきっかけにもなり得ます。
このように、金銭面やキャリアアップの面でも良い影響が期待できます。
二級建築士に向いている人
二級建築士は住宅の設計をメインとした仕事なので、顧客の一人一人としっかり打ち合わせを行った上で顧客の要望をしっかりと聞き、生活に寄り添った建物を作ることが求められます。
一方で、一級建築士はオフィスビルや商業施設などの大規模施設を作る機会が多く、顧客の一人一人に寄り添って建物を作ることがなかなかできません。
つまり、色んな人とコミュニケーションを取ることが好きで、顧客に寄り添いながら建物の設計に携わりたいのであれば、あえて二級建築士としてのキャリアを築くこともアリでしょう。
二級建築士から一級建築士へのステップアップを目指すメリット
二級建築士を取得した後に一級建築士を目指す人は多くいます。
こちらのトピックで、一級建築士へステップアップした時のメリットをご紹介します。
さらなるキャリアアップにつながる
建設業界では建築士の人手不足が顕著であり、特に一級建築士の人材不足はかなり深刻な状況にあります。
そのため、建設業界にとって一級建築士の有資格者は非常に貴重な存在なのです。
また、現在既に建設業界で働いている人が一級建築士資格を持つことで、キャリアアップに繋がりやすいメリットがあります。
年収アップを目指して大手ディベロッパーやゼネコンへの転職を目指すときにも、高い技能と知識を持っていることがアピールできます。
大手のゼネコンやディベロッパーの福利厚生や待遇は非常に恵まれているため、安心して働くことができるメリットもあります。
信頼を得られる
一級建築士資格は国家資格であり、建築業界の中でも最高峰の資格と位置付けられています。
そのため、一級建築士を取得していることで各方面からから厚い信頼を得ることができ、キャリアアップにつながります。
当然、二級建築士よりも一級建築士の方が社会的な信頼度は高く、 また試験制度に詳しくない人から見たら「二級よりも一級の人のほうが腕が良いに決まっている!」と見られがちです。
つまり、一般的な信頼感などの面から見ても一級建築士を目指すメリットは大きいのです。
金銭的なメリットが大きい
一級建築士は二級建築士よりも年収が上がるというメリットがあります。
具体的には一級建築士の年収は500~900万円程度の間で推移して、一般的なサラリーマンよりもかなり高い水準にあります。
これまでよりも高い年収を目指し、よりスケールの大きい仕事を行いたいと考えている人は、一級建築士へのステップアップを狙うと良いでしょう。
二級建築士の仕事内容や一級建築士との違いのまとめ
二級建築士の仕事内容や一級建築士との違いのまとめ
- 二級建築士は小規模店舗や一般住宅の設計を専門的に扱っている人が多い
- およそ半年間の勉強期間を設ければ、合格を狙える
- 取得メリットは非常に大きく、建設や不動産業界で広く活躍できる
- スケールの大きい仕事をしたい場合は一級建築士を目指すと良い
二級建築士は、一見すると一級建築士よりも劣っている印象を受けますが、実際にそんなことはありません。
むしろ、一般住宅に設計に関して一級建築士よりも優れていることもあり得ます。
国家資格なので非常に社会的な信用が高く、建設業界で幅広く活躍できる魅力的な資格なので、興味がある人はぜひ二級建築士の資格取得を目指してみてください!