女性が一級建築士として活躍することは可能?給料や有名女性建築家を紹介
「建築士に女性ってどれくらいいるの?」
「女性で建築士になるとどのようなメリットがあるの?」
こんな疑問を持っていませんか?
建築関係の仕事は「男性」というイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、女性建築士を取り巻く環境はどんどん変わってきています。
また、女性が建築士になることで、男性では享受できないメリットもたくさんあるのです。
そこで、この記事では女性の建築士の割合やメリット、なった場合のおすすめの働き方などを紹介していきます。
この記事を読んでいただければ、女性建築士の現状が把握できます。建築士を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。
女性建築士についてざっくり説明すると
- まだまだ女性の建築士の数は少ない
- 国が女性の社会進出を後押ししているので、女性の割合は増えていきそう
- 女性ならではの視点で建築に携われる
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女性の建築士はどれくらいいるの?
「建築士業界に女性ってどれくらいいるの?」
大工や建築士は男性のイメージが強いので、女性は特に気になる部分だと思います。「果たして女性でも建築士になれるのか?」「女性が建築士になって定着できるのか」
ここでは、女性建築士について詳しく解説していきます。
女性の一級建築士は25%ほど
結論からいって、女性建築士の数はそれほど多くないのが現状です。女性一級建築士の数は全体の25%程度ですので、100人いれば25人程度しか女性はいない計算になります。
令和元年に行われた一級建築士試験を見ても、この割合に変わりはありません。例えば、一級建築士学科試験の合格者を見れば、男性と女性の割合は75:25です。
つまり、一級建築士が4人いれば女性は1人しかいないということになります。
また、建築士製図試験も学科試験と同様で、女性の割合は他の業種と比べるとかなり少ないです。その割合は男性72:女性28ですので、一級建築士10人中女性は3人程度の数にとどまります。
ただし、この割合に変化の兆しがあります。こういえるのは、実務経験がなくても四年制大(指定科目を取得)を卒業すればなれる二級建築士の割合が増加傾向に変わってきているためです。
例えば、令和元年の二級建築士の学科合格者数の割合は男性68:女性32です。さらに、製図試験に至っては、男性63:女性37ですので、さらに女性の割合が高くなっています。
二級建築士の資格を取ってさらに実務経験が4年あれば、一級建築士の受験資格が得られます。
つまり、二級建築士の女性の割合が増えていけば、自然と一級建築士の男女の割合にも変化が訪れる可能性が高まるのです。
国が女性の社会進出を後押し
大学卒業間もない若い女性が建築業界への進出を増やしている理由は、他にもあります。それは、民間だけでなく、中央官庁である国土交通省などが主体となって後押ししているからです。
例えば、「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~Plan for Diverse Construction Industry where no one is left behind」を策定していることが挙げられます。
これは、環境を整備して建設産業に女性が定着しやすいようにするための取り組みです。官民が一体となることで、女性が建築業界でも働きやすい環境を作っているのです。
ちなみに、過去には「建設産業女性活躍推進ネットワーク」の創設や「建設産業女性活躍ケースブック」などの事業が行われています。
このように、国家的な取り組みが継続されていることで、女性の社会、建築業界への進出は加速していくと考えられるのです。
女性の建築士のメリット・デメリット
女性の割合が増えてきたとはいえ、まだまだ男性が多い建築業界。女性が建築士として働くメリットはどれくらいあるのかどうかやデメリットについて気になる人も多いと思います。
そこで、ここでは女性が建築士になるメリットとデメリットをそれぞれ紹介していきます。
女性が建築士になるメリット
建築士を目指す人にとって「本当に女性が建築士になってもメリットはあるの?」と心配になるでしょう。
しかし、実はたくさんのメリットが存在し、一級建築士になって長く建築業界にいる女性もいます。
では、どんなメリットがあるのでしょうか?いくつも存在しますが、ここでは主な4つを紹介していきます。
家事・育児が設計に生きる
建築士の仕事は、実際にそこに住む人の暮らしを考えて、その人に合った空間を作り上げることです。そのため、家事や育児をしてきた女性の経験が設計に活かせるのです。
例えば、家事や育児の動線を把握していないと、生活パターンを想定することはできません。家事や育児の経験がある女性であれば、リビングやキッチンを環境に合った設計で考えられるのです。
もちろん、設計にはいくつものパターンがあり、組み合わせることでデザイン性や利便性をアップさせて満足度の高いものに近づいていきます。
しかし、本当に欲しいもの、あると嬉しいものは実際に経験がある人でないとわかりません。
女性はこの点で有利といえるのです。
ガーリーな空間デザインも可能
女性が建築士になって得られるメリットに、女性ならではの感性を活かした色彩感覚や空間デザインを作れることがあります。
特にお店を作る時には重宝されます。例えば、アパレル系のお店では「女性受けするようなデザインにしてほしい」という要望もあります。こんな時男性ではイメージができず、意図を正確にくみ取ることが困難です。
しかし、女性ならクライアントの要求に対してきめ細かい対応ができ、些細なことにも気づくことができるのです。また、女性同士なら話しやすく気軽に相談がしやすいのもメリットの1つといえます。
このような女性建築士の特性は、男性では感じ取りにくいニーズを感じ取り、空間づくりに取り入れる際にも非常に効果的であると言われており、多様なプロジェクトにおいて求められることが増えています。
理系の中では女性の割合が高い
建築士になるには、建築学を学ばなければなりません。理系の中では物理系や工学系の学科と比べて、建築学科は女性の割合が多いのもメリットの1つです。
理系に憧れがあって進んでも、女性が少ないと仲間ができず勉強がはかどらないことは多々あります。女性の割合が多い理由の1つは、デッサン中心の授業内容が好まれているからかもしれません。
いずれにしても、建築士を目指す建築学科は女性の割合が多いので、お互い切磋琢磨して技術や知識を深めていきやすい環境だといえます。
この女性同士の協力的な学びの環境が、将来的に現場でのコラボレーションやチームワークを円滑に進めるための基盤となり、女性建築士としてのキャリア形成においても有利に働くことが期待されます。
女性が仲良くなりやすい
現在は女性の建築士の数は少ないです。そのため、女性同士横のつながりが強くなりやすい傾向にあります。これも建築士として働くメリットの1つです。
仕事をしていれば、相談したいことが必ず出てきます。そんな時、男性の一級建築士でももちろん構いません。しかし、女性に対してしか聞けないような問題もあります。
また、女性が相談しやすいのは、同性である女性であることの方が多いです。そのため、横のつながり・結びつきが強くなるのです。
さらに、「全国女性建築士連絡協議会」や日本建築士連合会の女性委員会などもあります。
女性が仲良くなりやすい環境はかなり整ってきているのです。建築士になれば、他では作れないほど深い関係が気づきやすいといえるでしょう。
女性が建築士になるデメリット
「女性が建築士になるメリットがあるのはわかったけど、デメリットはないの?」メリットがわかればデメリットについても知りたくなるものです。
どの業界にもありますが、建築士にもデメリットがいくつかあります。そこで、ここでは女性が建築士になるデメリットについても紹介していきます。
結婚や出産などによる退職も
女性が建築士になるデメリットの1つは、結婚や出産を機に退職してしまうケースが多いことです。
他の業種でも女性は結婚や出産で退職するケースが多々あるので、「どこも同じでは?」と感じるかもしれません。
しかし、建築業界では特に多い傾向にあります。その理由は、家事や育児をしながら建築の仕事がしにくいことが挙げられます。
例えば、建築士になると図面上で設計をするだけでなく、現場に行く必要があります。
出産してすぐの小さい子供がいる女性にとっては難しい仕事です。また、「男性が外で仕事をして、女性が家を守る」という意識はまだまだあります。
そのため、結婚を機に男性が女性に仕事をやめてほしいと考えているケースもあります。
そんな時、現場で働く建築士の仕事では続けられず、女性はやめてしまうのです。そのために、まだまだ女性建築士の割合は低い状態が続いているのです。
ハードワークでタフさが求められる世界
女性建築士のデメリットとしては他にもあります。それはかなりハードワークで肉体的・精神的なタフさが求められる世界であることです。
例えば、建築士は裁量労働制を敷いています。そのため、良いものを作ろうと追及していくと、仕事で残業や休日出勤の多くなってかなりハードになってしまうのです。
男性と比べて体力面で劣ってしまう女性にとってはかなりハードといえます。
また、ハードワークが重なってくると、どうしても納期前に男性建築士の協力も必要な場面も出てきます。そのため、自分1人で仕事を完結できない歯がゆさも感じることもあるのです。
さらに、現場に行けば職人肌の男性大工が多くいて、女性だと思って舐めてかかられるつらさも感じる人もいます。
女性が建築士になれば必ずこのような思いをし、タフさが求められるわけではありません。しかし、まだまだ建築業界は男性社会の構図が強く残っているので、女性にとっては肉体的・精神的につらい思いをすることも多くなります。
女性におすすめの働き方
前の章で女性が建築士になるメリットとデメリットを説明しました。特に、デメリットを聞くと「本当にやっていけるかな?」と不安が強くなると思います。
しかし、上手に働けばデメリットを軽減することも可能です。そこで、ここでは女性建築士におすすめの働き方を紹介していきます。
一級建築士を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。
大手建設会社に務める
女性が建築士として働くなら、大手建設会社やゼネコンに勤めるのがおすすめです。その理由は、職業が分業化されているためです。
請け負ってから完成までのすべての業務を任されることがなく、同じような仕事を繰り返すのでスキルが上がって仕事をスムーズに終えやすくなります。つまり、作業時間が短くなって仕事への負担が少なくなるのです。
また、大きい会社なら人員が整っていることもメリットです。仕事が忙しくなってきても、人がたくさんいれば他の人に任せられます。
もちろん、結婚や出産などで生活環境が変わっても、仕事が分業化されていれば、自分に合った仕事に変われる可能性もあります。
このような理由から、大手建設会社に勤めるのがおすすめの働き方です。
独立開業して設計事務所を立てる
もう1つのおすすめの働き方は、独立開業して設計事務所を立ててしまうことです。
独立して自分で仕事ができれば、仕事を自分の生活や体力などに合わせて調整できます。こうすれば、女性建築士のデメリットの多くを払しょくできます。
また、自宅を職場にすれば、仕事をしながら家事や育児をすることも容易です。
最近はCADを身につけている人が多く自分で案件を請け負いやすくなったので、女性が独立・開業するのも珍しくなくなってきています。
もし、独立開業を目指すなら、自分に合ったCADソフトを見つけて置くようにしましょう。より独立後の仕事がスムーズに進めやすくなります。
女性建築士の給料
ちなみに、一級建築士として働いた場合の給料ってどれくらいか気になりますよね。ここでは、女性建築士のだいたいの給料を紹介していきます。
一級建築士の年収は、平均でズバリ681万円です(49才の場合)。多く感じますよね。ただし、注意点があり、男性と女性では収入に下記の通りばらつきがあることです。
性別 | 月収 | ボーナス平均 | 平均年収 |
---|---|---|---|
男性 | 42.45万円 | 191.07万円 | 700.47万円 |
女性 | 33.86万円 | 103.07万円 | 509.36万円 |
女性の方が男性に比べて低くなる傾向があるので、企業に勤める際は念頭に置いておくようにしましょう。
有名な女性建築家
日本の建築業界は男性社会が色濃く残っています。しかし、そんな日本の建築業界でも有名になって成功している女性建築家はたくさんいるのをご存じですか?
そこで、ここでは有名な女性建築家について紹介していきます。
ザハ・ハディッド
建築に興味がない人でも「ザハ・ハディッド」という名前を聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。
それもそのはず。実は新国立競技場のデザインの原案を手掛けた世界一有名な女性建築家の1人です。
また、新国立競技場に関わっただけでなく、日本には縁がある女性建築家でもありました。例えば、建築ではありませんが、内装のデザインとして札幌で1つのプロジェクトを成功させています。
ただ、彼女の設計はデザインを最優先するあまり、技術的・金銭的に実現するのが難しいものばかりでした。
そのため、コンテストで優勝しても実際には立てられないこと多かったため、「アンビルドの女王」と呼ばれています。
長谷川逸子
日本の女性建築家の中でも特に有名な人は、関東学院大学客員教授の長谷川逸子氏が挙げられます。彼女は日本建築学会賞作品賞受賞で湘南台文化センターの公開コンペで最優秀賞を受賞しています。
そして何よりも、英国で歴史がある「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」という芸術組織が作った「ロイヤル・アカデミー建築賞」の第一回の受賞者でもあるのです。
つまり、日本だけでなく世界でも評価されて有名な女性建築家なのです。
妹島和世
もう1人、有名な日本の女性建築家なら、横浜国立大学大学院教授の妹島和世氏が有名です。
オクスフォード大学名誉学位授与や王立英国建築家協会国際研究奨励賞(IFRIBA)受賞、さらに紫綬褒章も獲得するなど、日本や世界で活躍し評価されている人です。
特に大きな偉業としては、「建築界のノーベル賞」ともいわれて建築界で最も権威ある賞の1つである「プリツカー賞」を女性としては2人目、日本人で初めて受賞していることが挙げられます。
女性建築士についてのまとめ
女性建築士についてのまとめ
- 女性建築士は数が少ない
- 国の支援などで数は右肩上がりが予想される
- 建築士になれば女性ならではのメリットがある
- 日本にも世界で活躍する女性建築家がいる
建築業界は男性社会の傾向が強いので、女性一級建築士の数は全体の25%と数は少ないです。
しかし、国が女性の社会進出を後押ししている影響により、二級建築士の女性の割合は増えてきています。
男性社会ですが、女性が建築士になるメリットはいくつもあります。
例えば、女性目線で設計ができるので、ガーリーなデザインを求める人に重宝されるのです。また世界でも活躍する女性建築家も日本には数多くいます。
建築家に興味を持っている人は大学で単位を取るのもいいですが、通信講座も存在します。通信講座を受講して建築士を目指してみてはいかがでしょうか。