建築士は数学が苦手でもなれる?設計者に必要な知識や建築士試験の内容も詳しく解説
「数学が苦手でも建築士になれる?」
「建築士の仕事がしたいけれど、数学が苦手だから不安がある」
こんな疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですが、実際の現場で数学を使うことはほとんどないというのが現状です。つまり実際には、数学が苦手でも建築士になれるということです。
実際に建築士として必要な知識や方法について解説します。きっとこの記事を読めば、数学に不安のある人も安心して建築士を目指すことができるでしょう。
建築士のなり方についてざっくり説明すると
- 建築士は数学が苦手でも問題ない
- 建築士に必要な数学の知識は限られている
- 数学以外にも勉強しなければならない分野がある
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建築士は数学が不得意でも大丈夫
建築士は、数学の知識がなければ活躍できないと考えている人が多くいます。その理由の一つに、大学などの建築学科が挙げられます。建築学科は理系に属するため、授業では数学を勉強するのです。
しかし、実際の仕事では数学が不得意でもほとんど支障はありません。仕事で数学を使うことはあまりないからです。
建築士の受験内容と資格概要
建築士は、建築士国家試験に合格した人で、設計や工事管理を行なう人のことです。一級・二級・木造の3種類があり、級によって携わる種類や規模が異なります。3種類の中では一級が一番難しく、二級と木造は同レベル程度と言われています。
建築士の多くは建築系事務所に属して働きます。サラリーマンと同じような環境で仕事ができるため、収入も安定します。建築系の仕事で資格を活かしながら、安定した収入も得たいという人にはおすすめです。
また、3種類の中では一番難しい一級建築士ですが、試験に合格して資格を取得すると構造設計者としての道も開けます。
構造設計者の具体的な仕事内容としては、耐震性を考慮した設計を行なったり、設計図を作成したりします。更に、経済面などのような条件を考えながら、用いる梁や柱の性能、配置場所などをも決めていきます。
一級・二級・木造建築士よりも仕事の範囲が広がり、やりがいを感じることが多くなります。取得している資格のレベルがあがるにつれて、収入も増えますから、更なる上を目指してチャレンジする人も多いのです。
実務経験が必須である
建築士国家試験を受験するには、一定の実務経験が必要です。必要とされる実務経験は、受験する級によって異なります。
要件 | 実務経験年数 |
---|---|
大卒 | 2年以上 |
3年制の短大卒 | 3年以上 |
2年生の短大または高卒 | 4年以上 |
二級建築士の資格保持者 | 二級建築士として4年以上 |
建築整備士の資格保持者 | 建築整備士として4年以上 |
上記の一覧表は、一級建築士の試験を受験する場合に必要な実務経験の条件の一部です。これ以外に「国土交通省が同等と認める者」という条件もあり、その場合は所定の実務経験が必要です。
二級建築士の試験を受験する場合に必要な実務経験の年数は、これよりも少なくなります。例えば大学・短大・高卒の場合は、実務経験は不要で受験することができます。
ただし、受験資格は変動することがあります。建築技術教育普及センターでは、毎年その年度に行なわれる試験の受験資格や試験内容が公表されます。最新のものが公表されますから、こまめにチェックすることをおすすめします。
建築士に必要な数学の内容
建築士と言うと、「数学が得意な人」とイメージする人が一定数います。ですが、実際には簡単な数学ができれば試験でも仕事でも支障はありません。
具体的にどのような数学の知識が必要なのか、解説します。
勉強すべき数学の範囲
建築士の試験合格のために勉強すべき数学の範囲は、大学1~2年生のレベルの知識です。それだけのレベルの数学知識があると、試験だけではなく、実務でも支障をきたすことはないでしょう。
大学1~2年生レベルの数学の知識と言われて、ピンとこない人もいるでしょう。そこで、次の項目で必要な数式や公式について紹介します。
四則演算と三角関数は必須
建築士の国家試験に合格して資格を取得したいと思っているのなら、「四則演算」と「三角関数」は必須の数学知識です。
試験だけではなく実務でも、面積や体積や長さなどを求める必要があります。これらは四則演算で数字を求めます。また、角度を求める場合には三角関数を用います。ただし、「数学」と言いますが、実際は要求される計算レベルは小学校で習うような「算数」のレベルです。
ただ、大学などの建築学科への入学を目指している人は、四則演算や三角関数だけでは不充分です。入試という難関がありますから、それ以外の数学の知識も必要になるため、注意しましょう。
建築士が覚えるべき数学の公式
一般的な公式
公式名 | 具体的な公式 |
---|---|
三平方の定理(ピタゴラスの定理) | a^2=b^2+c^2(※aは直角三角形の斜辺、b,cはそれぞれその他の辺) |
重心の計算 | G/A(※Gは断面一次モーメント、Aは断面積) |
角度の計算 | θ=Atan(a/b) |
体積の計算 | a×b×c(※円形・三角形・矩形についてそれぞれの公式を覚える必要があります。) |
面積の計算 | a×b(※円形・三角形・矩形についてそれぞれの公式を覚える必要があります。) |
上記は、建築士を目指す上で覚えておかなければならない必要最低限の数学の公式の一覧表です。これらは建築士として仕事に携わる上で、必ず必要になるので、四則演算と三角関数と共に覚えましょう。
建築士ならではの公式
公式名 | 公式 |
---|---|
単純梁(両端固定等分布荷重) | δ=wL^4/384EI |
単純梁(両端支持中心荷重) | δ=PL^3/48EI |
片持ち梁(片持ち等分荷重) | δ=wL^4/8EI |
片持ち梁(片持ち先端荷重) | δ=PL^3/3EI |
断面係数(図心より縁に至る距離yo) | bh^2/6 |
断面一次モーメント | S=A*y2(※A:ある図形の断面積、S:図形の重心から与えられた軸までの距離) |
断面二次モーメント | I=bh^3/12(b:部材の幅、h:部材の丈) |
構築設計者を目指す場合には、更に上の一覧表の公式も覚えておく必要があります。また、これとは別に「座屈荷重」の求め方も暗記しておきましょう。
建築士が使用する公式は上記の他にもあるので、式の用い方から確認できるテキストを一冊手元に置いておくこともおすすめです。
数学以外に勉強しておきたい分野
建築士として仕事をするためには、数学だけの知識では不充分です。それ以外にも必要な知識があります。
ここでは、数学以外に仕事でも活用できる勉強の分野について紹介します。
意匠設計には計算が必要
構造設計士の中でも、意匠設計を担当する人は数学の知識は必要ないという人も一部にはいます。数学でわからないことがあったら、上司に質問したり外注したりすることができるというのが主な理由です。
その一方で、意匠設計の仕事に携わる場合も、簡単な計算はできておいた方が良いという意見もあります。何故なら、意匠設計は建物のデザインを担当するという仕事が多くなるからです。
建物のデザインをする場合、面積や強度などの計算は意匠設計を担当する人が行なうことになります。仮にこれらの計算の部分を外注したとしても、最終チェックを行なわなければいけないので、計算は不可欠なのです。
意匠設計でも計算をしなければならない場面は出てきます。そのような時、スムーズに仕事を進めるという意味でも、数学の知識はあった方が良いでしょう。
構造設計者には物理が必須?
建築士で必要なのは、数学よりもむしろ物理の方です。物理と言うと範囲が広くて難しいと感じますが、実務で必要な知識は物理の中でも力学です。
具体的には力同士のバランスのとり方や、力と変形の関係性などについての知識です。ただ、深堀する必要はなく、基本的な知識だけを押さえておけば充分という程度です。
ただし、構造設計者や設備設計者として仕事に携わりたい場合は、物理の中でも「構造力学」についての知識は必要になります。なぜなら、一級建築士の試験で必要になるからです。
構造設計士や設備設計士になるためには、まずは一級建築士の資格を取得しなければなりません。この試験の範囲に「構造力学」が含まれていますが、レベルは大学4年生ぐらいと難しい内容なので、試験合格に必要なレベル以上に深堀する必要はないでしょう。
また、実際の一級建築士の試験で必要な「構造力学」は、暗記レベルです。必要な知識を丸暗記すれば、試験で必要な点数は充分得られる程度ですから、しっかり勉強しましょう。
建築士になるための方法
建築士になるためには、建築士国家試験に合格する必要があります。今回はその中でも一級建築士試験の内容や勉強方法について、解説します。
一級建築士資格の試験内容
建築技術教育普及センターにて公表されている試験内容は以下の通りです。
出題科目 | 出題数 | 出題形式 | 試験時間 |
---|---|---|---|
学科I(計画)/学科II(環境・設備) | 20問/20問 | 四肢択一式 | 計2時間 |
学科III(法規) | 30問 | 四肢択一式 | 1時間45分 |
学科IV(構造)/学科V(施工) | 30問/25問 | 四肢択一式 | 計2時間45分 |
上記の一覧表は、学科の試験科目と出題数、形式、試験時間を表したものです。学科試験はすべて四肢択一式です。
また、「学科I(計画)」と「学科II(環境・設備)」は、2科目合わせて試験時間が2時間となっています。どちらもそれぞれ20問ずつあるため、時間配分を間違うと時間不足になってしまう可能性があります。
「学科IV(構造)」と「学科V(施工)」についても同じで、2時間45分の試験時間内に2科目分の問題を解く必要があります。問題数は合計で55問もあるため、時間配分に注意したいところです。
出題科目 | 出題数 | 出題形式 | 試験時間 |
---|---|---|---|
設計製図 | 1課題 | 公表されている課題の建築物についての設計図書の作成 | 6時間30分 |
一級建築士の試験は学科だけではありません。設計製図という実技の試験もクリアしなければいけません。試験で作成しなければならない設計図の建築物は、あらかじめ公表されており、試験当日はその設計図を作成します。
通常、学科試験は7月に実施されます。この学科試験で合格した人は10月に行なわれる設計製図の試験を受験し、合格できれば晴れて一級建築士となることができます。
建築士試験の勉強方法
3種類ある建築士の中でも、最も難易度が高いとされているのが一級建築士です。合格すれば、構造設計者としての道も開けますから、難易度が高いのは当然と言えるでしょう。
そんな難しいと言われている一級建築士に合格するには、どのような勉強方法で学習を進めれば良いのでしょう。具体的な勉強方法を紹介します。
建築が学べる学校に通う
一級建築士には、さまざまな受験資格の条件があります。例えば、建築を学ぶことができる大学や短大を卒業して実務経験を積む、または二級建築士の資格取得後に実務経験を積むなどです。
仮に二級建築士の資格を取得した後、実務経験を積むという選択をした場合、必要となる年数は4年以上とされています。これは二級建築士としての実務経験です。自分の仕事内容が二級建築士の範囲内かどうか確認する必要があります。
一方、建築を学ぶことができる大学を卒業して実務経験を積むという選択をした場合は、2年以上の実務経験が必要になります。二級建築士としての実務経験の半分で良いということです。
学校を卒業している人の方が、必要とされる実務経験の年数が低い傾向にあります。もし費用や時間にゆとりがあるのなら、学校に通うことも選択肢として入れると良いでしょう。
テキストを利用し独学する
一級建築士の試験合格を目指すのなら、独学という方法もあります。書店には「設計製図試験問題集」や「建築関係法令集」など、試験に対応したテキストや問題集が売られています。
学科だけではなく、実技でもある設計製図の試験に対応した問題集やテキストも数多く出版されています。テキストをうまく活用することで難易度は高いですが、独学でも合格を掴むことは可能です。
一級建築士の受験資格を得るには、実務経験という条件をクリアしなければいけません。その際の補助的な教材としてもテキストや問題集は充分役立つでしょう。
もし独学で合格を目指すのなら、必ず学科試験の勉強から進めましょう。一級の試験は学科試験と設計製図の2種類あります。ただ、学科試験に合格しなければ、設計製図の試験を受験することはできません。
通常、学科試験は毎年7月に実施され、設計製図は10月に実施されます。3カ月の期間がありますから、先に学科試験の対策を進めて難関を乗り越えましょう。
通信講座がおすすめ
ここまで、建築士試験合格に必要な数学の難易度について解説してきましたが、どうしても数学が苦手という方は通信講座も有効活用しながら合格を目指すことがおすすめです。
スタディングの建築士コースは1級対策向けコースが99,000円、2級対策向けコースが88,000円という建築士講座としては圧倒的に安価な受講費用で数学を含めてしっかりと試験対策をすることが可能です。
スタディングの建築士講座では建築士試験合格に必要な数学等の知識も授業の中で自然に扱われるため、数学が苦手な方でも合格を目指すことができます。
建築士の数学事情についてまとめ
建築士の数学についてまとめ
- 建築士の業務に必要な知識は大学1~2年生レベルの数学
- 四則演算と三角関数は特に重点的に学習しよう
- 数学が苦手な方は通信講座を利用することがおすすめ
- 建築士試験の数学は努力すれば突破できるレベル
建築士のなり方や数学の知識の有無について解説してきました。建築士には数学の知識が必要だと思われがちですが、実際にはあまり使うことはありません。
数学が苦手な人でもしっかりと勉強すれば、建築士になることは可能です。数学が不得意だからと諦めず、ぜひ建築士を目指して勉強を始めてみてください。