建築士と設計士の違いは?なるための条件や仕事内容・年収を解説!
「建築士と設計士、どちらも似たような名称だけど、どのような違いがあるの?」「建築士と設計士、比べてみたらどちらがよいの?」といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
建築士の場合、特に一級建築士ともなれば、資格取得の難易度が高いことが定番とされています。そう簡単に就ける仕事という訳ではありません。
一方、設計士と呼ばれる業種も存在し、その業務内容などに建築士と差があるのか、普通はあまりよく知られていません。設計という言葉があるように、毎日デスクに向かって図面を引いている印象ではありませんか?
そこでこの記事では、建築士と設計士との業務の差、その他の内容の違いなどを分かりやすく解説していきます。建築士と設計士の日常についてを、細かくご紹介する特集です。
建築士と設計士の違いについてざっくり説明すると
- 建築士は資格を有した人物で、設計士は資格に関係がない
- どちらも建築の図面やデザインに関わる業務である
- 建築士は建物へトータルに関わるが、設計士は意匠やデザインに特化している
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建築士と設計士の違いは
建築士と設計士、この2つの名称は頻繁に耳にするはずです。建築に関わる仕事をする人、建物の図面を描く人物が建築士、もしくは設計士という一般的なイメージが強いようです。
どちらも、家やビル、その他世の中に存在する建造物に関して、基準とされている法規と理想の間を取って、できるだけ施主の要望に応えるための業務です。
しかし建築士と設計士との違いを線引きすることは、一般的に無頓着な部分もあります。結構、双方の違いについて、認識している人のほうが少ないようです。
建築士と設計士はいつも表裏一体のような印象を受ける傾向があります。この2つには、業務上の特徴の差、具体的な違いがあるのでしょうか?
建築士と設計士の違いは資格の有無
建築士と設計士、この2つの士業はよく聞く言葉なので、何となくわかっているつもりになっている方も多いのではないでしょうか?
正確に建築士と設計士の違いについて、あなたは説明できるでしょうか?今回は、建築士と設計士の違いについて述べていきます。
まず一般的な建築士と呼ばれる職種は、一級建築士試験や二級建築士試験に合格した人物のことを指す総称です。
一方、設計士とは、建築士の資格の有無には一切関係はありません。建設業界のデベロッパーやゼネコンといったところで、建築関係に関連した設計やその補助を行っている人物全般のことをそう呼ぶのだと言ってもよいでしょう。
建築士じゃなくても設計できるの?
建築士とは国家資格です。試験に合格した人物だけが名乗れる士業です。そのため社会的な立場もそれなりに認められている職業とされています。
それとは別に設計士と呼ばれている業種の人々は、名目上ただその業務の呼び名で称されている人たちで、資格そのものではありません。
もし設計士になるとしたら、特に何か必要な条件などは基本的に無くて、その気になれば誰でも名刺を作って、今日から設計士だといえば成立します。
ただし、建築士法によって、100平方メートルを超えた建物の設計をするには、資格が必要となっています。
100平方メートル未満の建物や模型づくりなど、建築士のサポートとしてなら資格がなくても可能です。
建築士と建築家の違いは建築領域
設計士や建築士とは別に「建築家」という名称もよく耳にします。これも微妙な違いがありながらも、基本的には業種の呼び名の一つに過ぎません。国家資格も何も関係のない総称だといえます。
建築家と称する場合には、建築士の中でもデザインに関わる意匠領域に重点をおいた設計を行っている人物であることが目立ちます。
そのため、実際には資格を有した建築士でありながらも、あえて自らを建築家と名乗って活動するという人物もいますし、その使い方そのものについての制約はなく自由です。
紛らわしい名前は罰せられる
建築家と名乗るのは自由だとは申しましたが、最近では、建築士として資格を持っていない人物が建築家を名乗るケースも目立ってきました。
本来であれば、建築士法第三十四条にて「建築士でない者は、建築士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」という規定があります。
建築士の資格を持ったものが建築家と名乗ることは、それなりに筋が通っていますが、その逆である場合は、注意して警戒したほうがよいでしょう。
設計士だとしても、十分な実務経験を証明できるのであれば、それは建築家の括りには入れるでしょう。しかし念のために、資格を持っておくほうが無難です。
建築士や設計士になるには
建築士と設計士とでは、何となく名前も似通っていて、同じ業種・業界でありながらも、微妙な違いがあることは先述してあるとおりです。
では、建築士もしくは設計士になって、それなりに仕事を得るようになるには、どのような経緯を辿る必要があるのでしょうか?ここでは、建築士や設計士になるための方法についてご紹介します。
建築士になるには国家試験の合格が必要
建築士とは、正確には一級建築士、二級建築士、木造建築士という3種類のグレードに区分されます。いずれも国家資格として認定されています。
一定基準の資格試験で合格したら、さらに実務経験を積むことによって、初めて建築士として認められます。
中でも一級建築士の資格はハイレベルとされています。大学レベルでの建築系の授業を履修したもの、あるいは建築系の学部を卒業したレベルであることが条件です。
二級建築士の場合も、高校以上の学歴および建築系の授業を履修、もしくは実務経験7年以上あることが条件とされています。
一級建築士の合格率は10%台とかなり難関です。二級建築士の場合でも20%台なので、建築士の資格そのものは決して楽に取得できる類ではありません。それなりに勉強をしないと合格ラインが見えてきません。
建築家になるには事務所での下積みが必要
建築家として仕事を得るまでには、師匠ともいえる建築家の下に就いて修行を重ねながら実践方法を学ぶ必要があります。
その具体的な方法としては、設計事務所にて見習いなどから入って手伝いをしながら、建築デザインのノウハウを実践的に学ぶという道筋が一般的です。
もちろん大学の建築系や工学系の学部で勉強することも必要ですが、実際には大学での授業よりも、一本立ちしている建築家の事務所に入ってからのほうが、下積み経験がやがて生かされるため、取り組み方次第では将来性が広がっていきます。
また他にも、信頼度や認知度が必ずしも高いわけではありませんが、社団法人「日本建築家協会」にて実施されている資格にチャレンジしてみてもよいでしょう。
設計士になるには建設会社への就職が必要
設計士と建築士とは、業務内容がかなりだぶることが多いので、設計士の場合でも、大学の建築系や工学系の学科を卒業している人が目立ちます。
もし設計士として仕事を得るのであれば、設計業務を行うディベロッパーや建設会社、工務店、住宅メーカーの設計部門などへの就職をすることが必須と言えます。
設計士に特別な資格や試験などはありませんが、上記のような企業にて入手採用試験にパスして数年勤め上げることで、初めて専門性のあるプロとしての仕事ができるようになります。
建築士や設計士の仕事内容と年収
世間的には、1級建築士の資格を持って独立開業している人物に、社会的ステイタスを感じます。
しかし必ずしも設計士では駄目だということではありません。実務経験が豊富な設計士のほうが、ありきたりな建築士よりも実績を持っているケースがたくさんあります。
あるいは設計士として実務を積み重ねながら、1級建築士の資格を目指すという方法もできます。では、建築士と設計士の主な仕事内容や年収などについて触れていきましょう。
建築士は独占業務がある
建築士は国家資格であることから、弁護士や医師と同じように独占業務が存在します。主な建築士の独占業務の中には、設計業務、工事管理業務、手続き業務という3つの業務があります。
設計段階での業務は、施主が思い描いている建築物のイメージを具体的にすることがメインとなります。
例えば、若者の街に建てるスタイリッシュで洗練された雰囲気のビルを考えているといったように、施主には各々に要望が存在するはずです。
その施主の理想を実現させるために、まずは細かくヒアリングをして実現可能なこと不可能なことを洗い出し、専門知識に基づいた提案を次々に行いながら決定させていきます。
工事管理の業務段階では、現場で働く大工や左官職人、電気工事業者、空調業者などに、工事における具体的で細かな指示を出していきます。
常に建築現場には、立場も年齢も異なった人々が行き交うことになるので、チームビルディングやマネジメントに関した能力も問われてくる、監督という立場でもあります。
建築士の手続き業務とは、完工していよいよ施主に引渡しをする際の各種手続きのことです。設計書で思い描いたことと照合して食い違いがないか、汚れや傷が目立っていないかなど、施主立会いのもとでのチェックを行います。
やがて、建築費用の支払いを通じて引渡しとなります。また、建築士の平均年収は、実力や経験の差もありますが、概ねで681万円程度とされています。
一級建築士の業務内容
1級建築士の業務には、建築する建物の規模に制限が設けられていません。つまり施主の要望が広範囲だとしても、仕事を請け負うことが可能です。
例えば、一般企業が新しく高層ビルを作ろうとしている時や、オリンピックスタジアムといった大規模な国家的プロジェクトにも関わることができます。
二級建築士の業務内容
二級建築士とは都道府県知事が免許を公布し、その業務は、比較的に小規模な建物(一般的な戸建住宅)の建築に関わることができます。
基準としては、延べ面積30㎡から300㎡までの鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造の建築物の設計・工事監理ができます。
また、木造建築士の場合には、3階建てまでが基本とされていて、高さ13m、軒高9mを超える建物は設計できない決まりになっています。延べ面積にも制限があり、1000㎡以上の建築物の設計はできません。
木造建築士の業務内容
木造建築士は、二級建築士の業務からさらに小規模な木造建築にのみに携われます。階数は2階建て以下、延べ床面積300平方メートル以下の木造の建物の設計や監理が可能です。
一般的な住宅の面積が130平方メートルなので、内容によってはレストランや飲食店などの設計や建築に関わることも可能です。
建築家の業務はデザインとコンペティション
建築家の業務とは、通常どのような流れを汲んで仕事として成立するのでしょうか?
一般的には、依頼者から発注が来てデザインをすることになりますが、大きなプロジェクトになると、自からデザインの企画にコンペとして応募するという方式もとられます。
建築家は、顧客や仕事の獲得に関して、かなり個人差とばらつきがある職種といえます。一級建築士としての資格があるかないかだけでも相当差が広がっていきます。
例えば、オリンピックなどに代表される国家的な競技場の建設プロジェクトに参加するためには、企画書を書いて提出し通過したら予算をとれるといった内容です。
そのため、建築家の収入に関しては、名前が売れて著名にでもなれたなら、億単位にも跳ね上がったギャランティも夢ではありません。しかし無名のままでは、ほとんど仕事が回ってこないという現実も考えられます。
設計士の業務は多岐にわたる
一方、設計士の業務の流れはどうなっているのでしょうか?設計士は先述しているとおり、資格を有した独占士業というわけではありません。仕事を発注してくる企業によってその役割もかなり異なってきます。
代表的なものとしては、建築物についての設計部署のあるとろから、外注として図面を書く仕事が発注されてくるのが主流となってきます。また、必ずも建築物だけに限っていません。機械の部品用の図面などを書く依頼も含まれています。
建築関係だけに限って言うとすれば、規定内での建築物の設計とその補助を行うことが、設計士の主な業務となってきます。
設計士の年収はどのくらいが平均でしょうか?これは各種ばらつきがかなりあるため明確な線引きはありませんが、概ねでは500~600万円が平均とされています。
一級建築士と比較してみると収入は低いと言えますが、これも著名な設計士だとしたら、平凡な建築士よりも数倍以上稼いでしまうというケースもあります。
建築士と設計士の違いについてまとめ
建築士と設計士の違いについてまとめ
- 建築士は国家資格として士業に該当するが、設計士には括りがない
- 建築家という広範囲な見かたでは、どちらも実務経験が必要である
- 年収の差は、どちらも個人の実力によって大差が出てくる
建築士と設計士とでは、同じような名称であることから同種類な業務として括られがちです。どちらも建築物に関する図面やデザインにも関わる重要な仕事なので、かなり共通項目も多く見受けらるのは事実です。
しかし実際には、細かい箇所での違いや、業務上での差があることが理解できたかと思います。特に建築士になるには1級から2級、木造建築士までの3段階のグレードがあり、その資格取得も並みならぬ努力が必要です。
設計士の場合も、名称が漠然と独り歩きしていますが、建築家の一人として名が売れるまでに下積みの経験も必要となってきます。どちらも、建築物に関する専門的な道筋を辿って成せる職業だと言えます。