建築士の実務経験とは?必要な実務経験年数や改正による変更点などを解説!

「どのくらいの経験を積めば建築士になれるんだろう」

こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?

建築士は難関資格として知られていますが、その上実務経験が必要となると不安に思う人も多いでしょう。

そこで今回は建築士の実務経験について、年数や法改正の内容なども含めて詳しくまとめました。

読み終わった頃には実務経験に関する不安は無くなっているはずですよ。ぜひしっかり読んで、疑問を解消してくださいね!

建築士の実務経験についてざっくり説明すると

  • 建築士の試験に合格し、登録する際には実務経験が必要
  • どのくらいの実務経験が必要なのかは、受験要件によって個々異なる
  • 改正建築士法により令和2年から実務経験と見なされる範囲が広がった
  • 建築士試験を受ける時には実務経験は必須ではないが、必要な場合もある

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建築士の実務経験は級によって異なる

オフィスビルの窓

建築士の実務経験は級によって異なります。ここでは1級・2級でそれぞれ必要な 実務経験の年数から実務経験に該当する要件を詳しく解説します。

一級建築士の場合

一級建築士として登録する場合、受験時に有していた「受験資格要件」によって、必要な実務経験の年数が異なります

具体的には以下のようになります。

受験資格要件 必要な実務経験の年数
大学卒業 2年以上
短期大学(3年)卒業 3年以上
短期大学(2年)卒業または高等専門学校卒業 4年以上
二級建築士 二級建築士として4年以上
国土交通大臣が同等と認める者 所定の年数以上
建築整備士 建築整備士として4年以上

二級建築士の実務経験年数はやや少ない

次に、二級建築士の登録に必要な実務経験についても解説します。

具体的には以下のようになっています。

受験資格要件 必要な実務経験の年数
大学・短期大学・高等専門学校卒業 なし
高等学校、中等教育学校 2年以上
実務経験7年 7年以上
都道府県知事が同等と認める者 所定の年数以上

二級建築士については、受験資格要件によっては実務経験を必要としないこともあります。この点は一級建築士とは大きく異なる点です。

実務経験として認められるもの

実務経験と認められるもので経験年数を積まないと、登録の際の実務経験にカウントされません。

建築士の「実務経験」として認められる内容は多岐にわたりますが、以下のようなものになります。

(なお、以下に示す「実務経験要件」は平成20年11月28日から令和2年2月29日までのものです。令和2年3月1日以降は対象が拡大しますが、詳しくは後述します。)

◎設計・工事監理に必要な知識・能力を得られる実務

(1)建築物の設計(建築士法第21条に規定する設計をいう。)に関する実務

(2)建築物の工事監理に関する実務

(3)建築工事の指導監督に関する実務

(4)次に掲げる工事の施工の技術上の管理に関する実務

イ 建築一式工事(建設業法別表第一に掲げる建築一式工事をいう。)

ロ 大工工事(建設業法別表第一に掲げる大工工事をいう。)

ハ 建築設備(建築基準法第2条第三号に規定する建築設備をいう。)の設置工事

(5)建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査等に関する実務

(6)消防長又は消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する実務

(7)建築物の耐震診断(建築物の耐震改修の促進に関する法律第2条第1項に規定する耐震診断をいう。)に関する実務

(8)大学院の課程(建築に関するものに限る。)において、建築物の設計又は工事監理に係る実践的な能力を培うことを目的として建築士事務所等で行う実務実習(インターンシップ)及びインターンシップに関連して必要となる科目の単位を所定の単位数(30単位以上又は15単位以上)修得した場合に実務の経験とみなされる2年又は1年の実務

※1 建築士等の補助として当該実務に携わるものを含む。

※2「建築実務の経験」には、単なる写図工若しくは労務者としての経験又は単なる庶務、会計その他これらに類する事務に関する経験は含まない。 出典:建築技術教育普及センター

上記でご紹介した業務以外にも並行して従事している場合は、実務経験に該当する期間を合算して規定の年数に達すれば、条件を満たしていると見なされます。

建築実務の経験として認められないもの

建築士の現場で働いていても、以下のようなものは建築実務とは見なされません

  • 単なる建築労務者としての実務(土工や設計事務所で写図のみに従事していた場合など)
  • 昼間の学校在学期間(中退者の在学期間を含む)

出典:建築技術教育普及センター

建築士に登録するための実務経験を積む際は、それが実務経験として見なされるのかを確認の上、従事するようにしましょう

なお、ここまでの内容は令和2年度に行われる「改正建築士法」により条件が変化します。次の章で詳しくご説明いたしますので少しお待ちください。

試験の際には受験資格が必要

ネクタイをしめる人 実務経験と合わせて押さえておきたいのが、受験資格の内容です。

受験資格も級によって内容が異なるので、きちんと内容を確認しておく必要があるでしょう。

一級建築士の受験資格

まず一級建築士の受験資格を見ていきましょう

以下の条件のいずれかを満たせば、一級建築士の受験資格を得ることができます。

  • 学校教育法による大学、もしくは高等専門学校、旧大学令による大学または旧専門学校令による専門学校において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法による専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
  • 二級建築士の資格を有する者
  • 国土交通大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識、及び技能を有すると認める者

一級建築士は、特定の教育機関で指定科目を修了すれば受験資格を得ることができます

それ以外にも、二級建築士の資格があれば、一級建築士の試験も受けることができます

二級建築士の受験資格

次に二級建築士の受験資格を見ていきましょう。二級建築士の試験を受けるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 大学(短期大学含)または高等専門学校おいて、指定科目を修めて卒業した者
  • 高等学校または中等教育学校において、指定科目を修了し卒業した者
  • 上記の学歴がない場合は、7年以上の実務経験を有する者
  • 建築整備士、その他都道府県知事が特に認める者

つまり二級建築士になるためには、建築に関する知識を指定の教育機関で養っておく必要があるということです

建築士の知識を得るに相当する学歴がない場合は、7年以上という長期間の実務経験が必要です

これらいずれかを満たさなければ、二級建築士の試験は受けられません。

受験は計画的に

ここまでの内容を一度まとめますと、建築士になるためには試験を受けて合格し、その後も実務経験を積む必要があります。(一部を除く)

試験を受けるための受験資格が定まっていますので、まずはご自身がそれに該当するかをしっかり確認しておきましょう。

試験に合格した後も、登録するための要件として実務経験がどれくらい必要なのか、実務の内容なども必ず事前に調べるようにしましょう

改正建築士法による変更

積み重なる本と眼鏡

先ほども少し触れましたが、改正建築士法が令和2年3月1日から施行されました

建築士の実務経験の対象が拡大されるなど、色々な変更があります。

以下で解説する内容の注意点としては、改正後に新しく対象となったもののうち令和2年3月1日以前のものはカウントできないことです。

これを踏まえた上で詳しい内容を解説していきます。

実務経験の対象の拡大

改正建築士法では、主に「実務経験として認められる対象」が追加されることになりました。

これは近年の建築士の存在意義が変化したことで、実務経験の内容を拡大すべきという考え方によるものです。

以下では各分野で追加された新しい内容を解説していきます。

建築物の設計に関する業務

「建築物の設計に関する業務」では以下の2つが新しく追加されました。

  • 基本計画策定に関わる業務において、建築士事務所で行う建築物の設計に関する図書の作成業務(例えば「設計与条件整理」「事業計画検討」など)

  • 建築士事務所で行う標準的な設計業務(例えば「事務所内部で使用する標準仕様の作成」「BIM部吊の作成」など)

建築物の指導監督に関する業務

「建築物の指導監督に関する業務」では以下の内容が新しく追加されました。

  • 法令に沿って、法人による建築工事の指導監督に関する実務(ただし、単なる記録係のようなものは省きます)

こちらの実務経験の例としては、住宅瑕疵担保責任保険にかかる「保険検査」、住宅性能表示制度における「性能評価」、独立行政法人住宅金融支援機構の「適合証明」、建築物エネルギーの「省エネ適判」などが含まれます。

建築物に関する調査または評価に関する業務

建築物に関する調査または評価に関する業務の分野では以下の内容が新しく追加されました。

  • 建築士事務所における建築物に関する調査、または評価の業務

こちらの例としては、「既存建築物の調査、検査」「調査結果をふまえた劣化状況等の評価」「建築基準法第12条第1項に規定する定期調査、報告」などが挙げられます。

建築工事の施工の技術上の管理に関する業務

以下の全てを満たす工事が実務経験の内容として追加されました。

  • 専門性が高く、なおかつ独自に施工図の作成が必要な工事
  • 建築物の部分または機能の一部に関する工事であり、なおかつ建築物全体、もしくは構造、設備、計画など多くの機能との関係が密接である工事

上記の例としては、「鉄骨工事」「鉄筋工事」「解体工事(ただし4号建築物以外のもの)」などです。

建築・住宅・都市計画行政に関する業務

「建築・住宅・都市計画行政に関する業務」の追加内容は主に3つに分類されます。

  • 建築行政
  • 住宅行政
  • 都市計画行政

建築行政では、(建築基準法等に係る個々の建築物の審査、検査、指導、解釈、運用」「法律に基づき行う認定、審査、判定」「建築物に係る技術的基準の策定」といったものが実務経験として含まれます。)

住宅行政は、建築物に直接関係する業務に限られ、例としては「建築物の性能向上等を図るための補助金の審査」「特定の空家の調査」といった内容が挙げられます。

都市計画行政は、具体的な建築物の整備に関わる業務に限定されます。市街地の再開発事業や土地区画整理などが対象となります。

建築教育、研究、開発、その他の業務

「建築教育・研究・開発・その他の業務」では主に以下の2つが追加されました。

  • 建築土試験に関する全科目を担当可能で、なおかつ設計製図を担当する建築教育の教員の業務

  • 建築物に関する研究

※研究内容については、学会誌に査読を通過して掲載されるなど、第三者による一定の審査を得たのちに公開されたものに限ります。

  • 建築士事務所で行われる、既存建築物の利活用検討や維持保全計画策定の業務

※建築物に直接関係する業務に限り、それ以外は含まれません。

受験資格の変更

改正建築士法では、受験資格についても変更が加えられました。

以前までは、受験資格にも実務経験が必須でした。しかし改正建築士法の施行により、実務経験なしでも試験を受けることが可能となりました

また二級建築士の資格があれば一級建築士の試験を受けることができるようになったのも、建築士法の改正によるものです。

このように建築士の試験時には実務経験が不要になりましたが、資格を登録する際には実務経験が必要です

建築士になるには実務経験が必須であることは今も変わりません

ご自身がどのような形で実務経験を積むかについては、試験を受ける前からある程度考えておきましょう。

登録要件の変更

実務経験が登録要件に移行となったのはここまでにご説明した通りですが、年数にも若干の変更が加えられました。

以前は、高等学校・中等教育学校出身で二級建築士の試験に合格した場合、登録に必要な実務経験は「3年」という規定でした。

これが改正建築士法の施行により、現在は「2年」となっています

若干の変更ではありますが、「高等学校・中等教育学校出身で二級建築士の試験に合格した」という要件に該当する方は、しっかり確認しておいてください。

この変更により、特定の学歴背景を持つ二級建築士が実務経験を早期に積み、登録へと進むプロセスが一層スムーズになりました。結果として、建築業界への参入障壁が下がり、多岐にわたる才能が育成される機会が拡がるでしょう。

学科試験の有効期間が5年に

改正建築士法では、もう一点試験に関する条件が変更されています。

以前までは、学科試験に合格した後の学科試験では、2回の学科試験が免除となっていました。これが令和2年以降の試験では「4回分のうち2回分が免除」されることになっています。(設計製図試験を欠席する場合は3回)

つまり学科試験の合格後に行われる5回の設計製図試験のうち、3回の設計製図試験の受験が可能となった形です

これによって学科試験の有効期間が、従来の3年から5年に延長されることになりました。

この変更により、より多くのチャンスが与えられることになるため、合格への道が広がったと言えるでしょう。多少の失敗があっても、次回への挑戦が可能となるため、受験者にとってはプレッシャーの軽減と長期的な計画立てがしやすくなるメリットがあります。

建築士の実務経験まとめ

建築士の実務経験まとめ

  • 建築士として登録する際には実務経験が必須
  • 受験時の要件によって必要な実務経験の年数は異なる
  • 改正建築士法によって実務経験の範囲が広くなった
  • 実務経験以外にも改正された点があるので、各自よく確認しておくこと

建築士の実務経験については、それぞれの受験時の条件によって年数が異なります。また、実務経験と見なされる内容も多岐にわたります

ぜひご自身の状況と照らし合わせながら、間違いが無いようによく確認しておいてくださいね

適切な実務経験を積んで、立派な建築士になりましょう!

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