管理栄養士の年収はどれくらい?仕事・栄養士別比較から年収UPのコツまで全て解説!
「管理栄養士の年収っていくらくらいなの?」
と疑問をお持ちの方もいるでしょう。
管理栄養士の職場は多種多様であり、一口に年収いくらと決めることはできません。そうした管理栄養士の収入の実態に関しては不明な点も多いはずです。
今回は、管理栄養士の年収について、職場ごとの年収比較や年収アップのコツを含めて、詳しく解説します。
これを読めば、管理栄養士の年収に関する実態がよく分かります。
管理栄養士の年収についてざっくり説明すると
- 平均年収には職場などによって、322〜500万円の幅がある
- 病院や保健センター、大手企業などは年収が高い
- 専門性を高めたり、管理職になることなどで収入は上がる
そもそも管理栄養士とは
管理栄養士の年収を解説する前に、まずは管理栄養士に関する基本情報をお伝えします。
管理栄養士の働き方は様々
管理栄養士は、栄養に関する専門的な知識や技術を用いて仕事をする、国家資格の一つです。
病院や介護施設をはじめ、学校や行政機関、一般企業など、あらゆる場面で活躍します。そのため、赤ん坊からお年寄りまで幅広い世代に関わる職業です。
女性が多い職業ですが、最近では男性の管理栄養士も増えています。管理職登用など、男性の方が有利な場面もあるようです。
管理栄養士になるには
管理栄養士になるには、管理栄養士国家試験に合格しなければなりません。受験資格は、管理栄養士養成施設を卒業することで得られます。
また栄養士養成施設を卒業し、実務経験を一定期間積むことでも、受験資格の取得が可能です。
そのため、一般の社会人から管理栄養士を目指す場合は、管理栄養士養成施設に通うことになります。管理栄養士養成施設とは、管理栄養士養成課程のある大学や短期大学、専門学校です。
これらの学校に、夜間学校や通信教育はないため、昼間の学校に通わなければなりません。よって、社会人から管理栄養士を目指すなら、キャリアを一旦中断することになります。
ちなみに、栄養士の資格であれば、栄養士養成施設を卒業するだけで取得できます。
管理栄養士国家試験
管理栄養士国家試験の難易度は、受験生の条件によって異なりますが、管理栄養士養成課程の新卒の場合は、例年80%以上の合格率です。
試験問題は、以下のような科目から出題されます。
-
社会・環境と健康
-
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
-
食べ物と健康
-
基礎栄養学
-
応用栄養学
-
栄養教育論
-
臨床栄養学
-
公衆栄養学
-
給食経営管理論
試験地は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、岡山県、福岡県、沖縄県の8都道府県です。
管理栄養士の年収はどれくらい?
管理栄養士はどのくらいの年収があるのでしょうか。
管理栄養士の平均年収は430万!
管理栄養士の平均年収は430万円と言われています。また年収の幅は322〜500万円のようです。
同じ職業の中で、180万円もの格差が生まれる原因は、職場によって給料が大きく異なることが考えられます。管理栄養士の職場は、病院や介護福祉施設をはじめ、一般企業や自治体など様々です。それぞれ環境や地域も異なります。
そのため、管理栄養士は「職場・環境・地域で給料差が激しい」職業であると言えるでしょう。
管理栄養士の生涯推定年収は?
管理栄養士の雇用期間を38年とすると、430万円×38年なので、生涯推定収入は1億6340万円になります。
また管理栄養士は、職場や環境、地域によって給料差が激しい職業です。年収には322〜500万円の幅があると言われるため、生涯推定収入にも、1億2236万円〜1億9000万円の幅があると考えられます。
栄養士の年収は?
栄養士は、管理栄養士の下位資格です。栄養士の年収は280〜410万円と言われており、管理栄養士よりもやや少なくなります。
栄養士と管理栄養士の職場はほぼ同じであるため、栄養士の年収にも、職場や環境、地域の差が生まれるでしょう。
管理栄養士の平均年齢・月給・ボーナスの比較
下記の表は、管理栄養士と栄養士を比較したものです。比較対象は、平均年齢・月収・ボーナスになります。
管理栄養士 | 栄養士 | |
---|---|---|
平均年齢 | 36歳 | 35歳 |
平均月収 | 26.9万円 | 24万円 |
平均ボーナス | 107万円 | 57.4万円 |
管理栄養士と栄養士では、月収とボーナスにかなりの差があることが分かります。
この差には資格手当が関係しているようです。管理栄養士の資格手当は、5,000〜10,000円なのに対し、栄養士の資格手当は、2,000円〜5,000円しかありません。両者には実に2倍ほどの差があります。
また、管理栄養士にしかできない独占業務も存在します。栄養士にはその業務はできないため、月収やボーナスに差が生まれるのです。
年齢別の管理栄養士年収一覧!
管理栄養士の年収は、年齢によって以下のように推移していきます。
平均年収 | 平均月給給与 | ボーナス | |
---|---|---|---|
20〜24歳 | 245.1万円 | 15.3万円 | 261.3万円 |
25〜29歳 | 305.3万円 | 19.1万円 | 76.3万円 |
30〜34歳 | 335.4万円 | 21.0万円 | 83.9万円 |
35〜39歳 | 382.7万円 | 23.9万円 | 95.7万円 |
40〜44歳 | 430.0万円 | 26.9万円 | 107.5万円 |
45〜49歳 | 481.6万円 | 30.1万円 | 120.4万円 |
50〜54歳 | 516.0万円 | 32.3万円 | 129.0万円 |
55〜59歳 | 511.7万円 | 30.0万円 | 127.9万円 |
60〜65歳 | 348.3万円 | 21.8万円 | 87.1万円 |
難しいが、栄養士から管理栄養士へのキャリアアップを!
栄養士と管理栄養士では、月収やボーナスでかなりの差が出ます。管理栄養士へのキャリアアップを目指しましょう。
栄養士から管理栄養士へ
現に栄養士の資格を所有しているのであれば、実務経験を規定年数積めば、管理栄養士を目指すことができます。年数は取得した状況によって変わりますが、最低でも1年以上の経験が必要です。
月収とボーナスがかなり違うため、大きな年収アップが期待できるでしょう。
ただし、管理栄養士の試験は簡単ではないため、合格にはかなりの努力が必要です。
管理栄養士になるための受験条件
管理栄養士試験の受験資格は、以下のどちらかに該当する者に与えられます。
-
4年制の管理栄養士養成校(大学or専門学校)を卒業者または卒業見込み者
-
大学・短大・専門などの栄養士養成施設を卒業して栄養士資格を取得後1~3年の実務経験を積んだ者
実務経験として認められるのは、以下のような場合です。
-
寄宿舎、学校、病院等で、特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの
-
食品の製造、加工、調理または販売を業務とするもの
-
学校、専修学校、各種学校、幼保連携型認定こども園など
-
栄養に関する研究所および保健所などの行政機関
-
上記のほか、栄養に関する知識の普及・指導の業務が行われるもの
栄養士から管理栄養士を目指す場合、何年制の栄養士養成施設を卒業するかによって、必要な実務経験の年数が決まります。詳細は以下の通りです。
養成施設 | 実務経験 |
---|---|
2年制の栄養士養成施設を卒業 | 3年以上の実務経験 |
3年制の栄養士養成施設を卒業 | 2年以上の実務経験 |
4年制の栄養士養成施設を卒業 | 1年以上の実務経験 |
働きながら栄養士から管理栄養士となれるのは10~20%
栄養士として働きながら管理栄養士を目指すのは、難易度が高いと言われています。
管理栄養士試験全体の合格率は約60%ですが、新卒者の合格率は90%近くあります。
また、受験者の5割から6割が管理栄養士課程卒業の新卒です。
一方で、既卒者の合格率は20%前後になります。新卒者と既卒者では大きな差があることが分かります。
ちなみに、ここで言う既卒者とは、社会人として働きながら合格を目指す者のことです。
新卒者は大学の講義などで学べる上、試験対策をする時間も十分あります。学習環境が充実しているため、合格率が高いのです。
働きながら合格を目指す場合には、1日2時間程度勉強したとしても、4〜6ヶ月の勉強期間が必要と言われています。
管理栄養士が活躍する仕事場は多種多様
管理栄養士の資格を活かした仕事は、栄養指導員や研究員など様々です。栄養指導の現場は、病院や介護福祉施設、保育園、給食センター、学校などになります。
また研究活動の現場は、大学や研究所、食品会社です。
さらに農村の生活改良普及員などの仕事もあります。
まずは年収に焦点をあててみましょう。
職場ごとに管理栄養士の年収を比較!
以下は、管理栄養士と栄養士の平均年収を、職場別に比較したものです。
管理栄養士 | 栄養士 | |
---|---|---|
介護福祉施設 | 430万円 | 305万円 |
病院 | 440万円 | 350万円 |
保育園 | 341万円 | 300万円 |
給食センター | 600万円 | 340万円 |
食品メーカー | 420万円 | 360万円 |
行政・自治体(初任給) | 323万円 | 300万円 |
管理栄養士および栄養士の職場としては、上記以外にもスポーツ関連施設や飲食店などが挙げられます。
管理栄養士は”求められている”職種
上記の表において、介護福祉施設・病院・給食センター・食品メーカーの年収は高くなっています。それには理由があるのです。
介護福祉施設・病院
介護福祉施設や病院の年収が高い理由としては、今後予想される超高齢化が挙げられます。超高齢化に向けて介護福祉施設や病院は増設されており、それに伴って人でが求められているのです。
これからは市場が、優秀な人材の確保に乗り出すと予想されます。そのため、給料や待遇はさらに良くなるかもしれません。
給食センター・食品メーカー
給食センターは常に人不足に悩まされており、離職率を減らす動きや積極的な採用を行う企業が多いです。それに伴って待遇も良くなっています。
食品メーカーの仕事は、新商品の開発や研究などです。それらには実務経験が必要で、即戦力の実力者が採用されるため、給料や待遇が良くなっています。
公務員の年収は経験年数で上がっていく!
管理栄養士は、働く職場によっては公務員になることもあります。上の表における「行政・自治体」がその場合です。
表を見れば、公務員の管理栄養士の初任給は322万円となっています。これは他と比べて低い水準です。
しかし、公務員の年収は、経験年数に応じて確実に上昇していきます。例えば、20年間勤務すれば、収入は600万円程度です。そのため、公務員でも経験年数によっては、民間企業を上回る可能性もあります。
「行政・自治体」とは、保健所や保健センター、公立病院、公立保育園・幼稚園などです。これらは自治体が管理運営する施設です。その給料は各自治体の俸給表によって、一律の金額が定められています。
ちなみに公務員の場合も、栄養士と管理栄養士では、管理栄養士の方が高待遇です。栄養士は「地方中級公務員」になるのに対し、管理栄養士は「地方上級公務員」として扱われます。
民間企業なら医薬メーカーがおすすめ
民間企業で働く管理栄養士も数多くいます。その中で給料の高い職業は、研究職やDMR(臨床検査薬情報担当者)、MR(医薬情報担当者)、MS(医薬品卸販売担当者)などです。
医療品メーカーに勤務した場合、20代でも平均で年収451万3,000円貰えると言われています。先述した地方上級公務員の初任給と比べれば、遥かに高い水準です。
仕事ごとに管理栄養士の年収・仕事を解説!
ここからは、管理栄養士が活躍する主要な職業について、平均年収と仕事内容をまとめていきます。
病院
【平均年収】 440万円
【仕事内容】
-
患者の栄養管理および栄養指導
-
食事の献立決め
病気の人には食事管理が必要なため、病院でも管理栄養士の重要があります。場合によっては調理師とともに、料理現場に入ることもあるでしょう。
超高齢化に向かっていく日本では、今後入院患者の増加が見込まれ、病院での勤務における将来性は十分です。
保育園
【平均年収】 341万円
【仕事内容】
-
厨房での給食管理
-
食育活動
保育園で働く管理栄養士は少人数です。業務が限られることもあり、年収は低めになります。
仕事は2種類あり、一つは給食やおやつを作ることです。生徒によってはアレルギーを持っていることもあり、それにも対応しながら献立を決める必要があります。
食育では、食の大切さを理解してもらったり、好き嫌いをなくすための教育をします。公立の保育園に勤務する場合は、公務員の扱いです。
高齢者施設
【平均年収】 430万円
【仕事内容】
-
入居者の栄養管理および栄養指導
-
食事の献立決め
病院と同様、高齢化によって需要が増していく職場のため、給料は高い水準です。
高齢者施設では、入居者に合わせて介護食を提供することもあります。入居者の体調や状況によっては、固形食の摂取が難しく、ゼリー状で提供しなければいけないこともあるでしょう。
スポーツ関連施設
【平均年収】 380万円
【仕事内容】
-
スポーツジムでの栄養管理や栄養指導
-
プロアスリートの専属栄養士
健康意識の高まりや東京オリンピック効果で、需要が増しつつある職業です。
スポーツジムなどで勤務する管理栄養士が多く、会員の栄養管理や指導を行います。
平均年収は380万円と普通ですが、プロアスリートの専属となった場合は、さらなる高収入を得られるかもしれません。
保健センター(公務員)
【平均年収】 470万円
【仕事内容】
-
母子や高齢者の栄養相談や栄養指導
-
集団検診や給食施設の巡回、栄養・衛生指導(保健所)
保健センターや保健所で働く場合は、管理栄養士の試験に加え、公務員試験を突破する必要があります。
他の職場と比べ、業務内容の難易度は高めです。食品衛生行政に関する知識を要します。
ただし、その分給料や待遇が良く、人気の職場です。
食品メーカー
【平均年収】 420万円
【仕事内容】
- 新商品の開発や研究
食品メーカーに研究職として雇用されれば、ある程度の高収入が見込めます。
栄養学の知識などを活かして、新商品の開発に従事することが多いです。
大手企業に就職すれば、その分給料や待遇も良いでしょう。企業の一社員として働くため、勤続年数や役職によって給料は上下します。
キャリア・企業規模による年収の違い
管理栄養士の収入は、雇用形態によって変化します。また、役職や企業規模の違いによっても変わるようです。
雇用形態別の管理栄養士年収一覧!
以下は管理栄養士の年収を雇用形態別にまとめたものです。
雇用形態 | 年収 |
---|---|
アルバイト | 135.4万円 |
派遣社員 | 229.2万円 |
契約社員 | 257万円 |
業務委託 | 299.2万円 |
正社員(正規雇用) | 310.5万円 |
アルバイトと正規雇用には、実に2.3倍もの年収差があります。高収入を求めるならば、正社員の雇用を探すべきです。
正社員のメリット
正社員のメリットは、何と言っても終身雇用です。特別な事情がない限り、定年まで働き続けることができます。
また、企業による充実した福利厚生を受けられることもメリットでしょう。
勤続年数が長くなれば、昇給の機会もあり、ボーナスの額も多くなります。
一方、デメリットとしては、長期間同じ職場に拘束されるということが挙げられます。
非正社員のメリット・デメリット
非正社員のメリットは、任期満了となれば別の職場に移れるという、フットワークの軽さにあります。
様々な職場で働くことで、多種多様なスキルアップやチャレンジが可能です。
自分に合った働きをデザインしやすいスタイルだと言えるでしょう。
しかし、給料が低い点やボーナスがない点はデメリットです。福利厚生も受けられません。雇用期間が限定されていることも、安定性という意味では、デメリットと言えるでしょう。
役職別の管理栄養士の年収の違い
以下は管理栄養士の年収を、役職別にまとめたものです。
平均年収 | 平均月収 | ボーナス | |
---|---|---|---|
主任 | 368.9万円 | 23.1万円 | 92.2万円 |
係長 | 459.2万円 | 28.7万円 | 114.8万円 |
課長 | 606.8万円 | 37.9万円 | 151.7万円 |
部長 | 670.8万円 | 41.9万円 | 167.7万円 |
上記から役職によって、年収にかなりの差が生まれることが分かります。主任と部長では、300万円以上の年収差です。
企業規模ごとの管理栄養士の年収の違い
以下は管理栄養士の年収を、企業規模によって分類したものです。
平均年収 | 平均月収 | |
---|---|---|
大企業の管理栄養士 | 498.8万円 | 31.2万円 |
中企業の管理栄養士 | 412.8万円 | 25.8万円 |
小企業の管理栄養士 | 374.1万円 | 23.4万円 |
やはり企業規模によって、年収に差が生まれるようです。大企業に働く管理栄養士と小企業に働く管理栄養士では、年収に100万円以上の差があります。
年収をアップさせるには?
平均年収がそれほど高くない管理栄養士ですが、工夫次第ではより高い年収を目指すことも可能です。
専門性をさらに上げる
専門性を上げることによって、管理栄養士としての独自性や希少価値が増すため、それだけ支払われる対価も大きくなります。
専門性を証明する方法の一つは、日本栄養士会の認定を受けることです。所定の研修を修了することなどで、「認定管理栄養士」(8分野)や「特定分野管理栄養士」(5分野)として認定を受けることができます。
最近は健康需要の高まりから、栄養管理や食と健康、栄養バランスといったトピックが注目されています。そうした流行も参考にしながら、極める分野を決めると良いでしょう。
経験を積んでキャリアアップを
上記で確認したように、役職によって年収は大きく異なります。管理職につけば大幅アップが期待できるでしょう。
管理職は離職率の低い男性に多いようですが、経験や実力次第で女性にも十分チャンスがあります。
また、役職が上がれば業務の幅も広がるでしょう。一般に業務の幅を広げると収入も上がると言われています。
更なる資格を取得しよう!
管理栄養士の業務と関わりが深い、食にまつわる資格を取得するのも良いでしょう。
調理師免許を取得すれば、献立作りだけでなく、調理にも主体的に関われるようになります。業務の幅が必然的に広がるため、収入も上がるでしょう。
同様の理由で、野菜ソムリエやフードコーディネーターもおすすめです。業務の幅を広げるだけでなく、専門性も高められるため、収入アップに効果的と言えます。
フードコーディネーターについて興味がある方は、是非こちらの記事もご覧ください。
管理栄養士の年収についてまとめ
管理栄養士の年収についてまとめ
- 管理栄養士の年収は、職場や環境、地域によって様々
- 勤続年数や企業規模、役職などでも年収が変わる
- 専門性を高めたり、業務の幅を広げるのが年収アップのコツ
管理栄養士の年収について、職業別の年収比較や年数アップのコツなど、詳しく解説しました。
管理栄養士の平均年収には180万円ほどの幅があり、働く条件によって年収は変わります。また他の資格を取得したり、昇進するなど、自身の努力次第で年収がアップする職業です。