管理栄養士の難易度はどれくらい?合格率・勉強のポイントまで全て解説!

「管理栄養士試験の難易度や合格率はどれくらい?」

「管理栄養士になるのは難しいの?」

このような疑問をお持ちの管理栄養士志望の方、いらっしゃいませんか?

管理栄養士は国家試験の一つで、子供からお年寄りまで、その人のための栄養バランスを考えた食事を考える仕事です。

管理栄養士の資格を目指す上で、試験の難易度や合格率などのデータは知っておきたいですよね。

こちらの記事では、管理栄養士の基本的な試験データやおすすめの勉強法について解説していきます!

管理栄養士についてざっくり説明すると

  • 管理栄養士養成過程を修了した者の合格率は9割を超えているが、全体的な合格率は6割程度
  • かなり幅広い科目から出題されるため、しっかりと勉強しなければならない
  • 受験資格は複雑なので、よく確認しておくこと
  • 資格を生かして活躍できるフィールドはとても広い

管理栄養士の難易度ってどのくらい?

管理栄養士の難易度表

管理栄養士の難易度はどのくらいなのか、合格率などを見ながら検証しましょう。

管理栄養士合格率まとめ

管理栄養士国家資格試験の、4年分の合格率は以下の通りです。

試験回 受験者数 合格率
第37回 16351人 56.6%
第36回 16426人 65.1%
第35回 16019人 64.2%
第34回 15943人 61.9%

このように、概ね60%前後で推移していることが分かります。

なお、管理栄養士の受験者は大きく以下の3通りに分けられます。

  1. 受験年に管理栄養士養成過程を修了した新卒者

  2. 過去に管理栄養士養成課程を修了た既卒者

  3. 過去に栄養士養成課程を修了し、実務経験を規定通り積んだ既卒者

4年分の新卒と既卒の合格率は以下の通りです。

試験回 管理栄養士養成課程(新卒) 管理栄養士養成課程(既卒) 栄養士養成課程(既卒)
第37回 87.2% 9.9% 16.0%
第36回 92.9% 20.5% 28.8%
第35回 91.3% 19.1% 24.3%
第34回 92.4% 12.0% 17.8%

ご覧のように、新卒の合格率は非常に高く、約9割となっています。

しかし、既卒者は働きながら合格を目指しているせいか勉強に集中できない人が多く合格率は低めです。

管理栄養士の合格率は60%、新卒は90%

近年の管理栄養士試験の合格率は約60%ですが、学校で専門的な勉強をしてきた新卒者の合格率は90%近くとなっています。

なお、受験者の5割~6割が管理栄養士課程卒業の新卒にあたります。

既卒者の合格率は20%前後で低迷しており、新卒と既卒で大きな差があることが分かります。

この理由としては、新卒者は大学の講義等で栄養学を専門的に学び、また国家試験対策をする時間が十分にあるためです。

また、社会人と比べて学習しやすい環境が整っていることから、圧倒的に合格率が高いのです。

既卒者の試験対策は困難

既卒者の大半は仕事をこなしながら勉強を行っているため、試験対策や勉強時間の確保が難しいのが実情です。

また、大学等に在籍していないため勉強に集中できる環境作りが難しい上に、試験に関する最新の情報やガイドラインに疎くなってしまうなどの不利があります。

ちなみに、既卒者は仕事終わりに毎日2時間程度の勉強をこなすなど、期間に換算すると3~6か月の根気強い勉強が必要となります。

管理栄養士国家試験の難易度は?

管理栄養士試験は国家試験の中では難易度は普通レベルであり、特別難しい試験ではありません。

しかし、学生と社会人では当人が感じる難易度は大きく異なるため、特に社会人の人は注意が必要です。

なお、試験の偏差値は62程度と言われており、食事・栄養の知識だけではなく、看護師に近い医療の知識も問われるため想像以上に勉強の負担は重いです。

管理栄養士国家試験の試験概要

ここでは管理栄養士国家試験の試験の概要を確認しましょう。

管理栄養士試験の試験日程・開催地・受験料

管理栄養士試験は年に1度、3月上旬に実施されます。

試験の実施会場は北海道・宮城県・埼玉県・東京都・愛知県・大阪府・岡山県・福岡県・沖縄県の主要都市8か所で行われています。

なお、管理栄養士の受験料は6,800円と他の国家資格と比べると安い費用で済みますが、何度も不合格を繰り返すと余計な費用がかかってしまうので、できるだけ一発合格を狙いましょう。

試験の結果は3月の下旬には本人に通知されます。

管理栄養士試験の試験科目

管理栄養士国家試験の試験科目は以下の通りです。

  • 社会・環境と健康
  • 人体の構造と機能および疾病の成り立ち
  • 食べ物と健康
  • 基礎栄養学
  • 応用栄養学
  • 栄養教育学
  • 臨床栄養学
  • 公衆栄養学
  • 給食経営管理論
  • 応用力問題

このように、栄養学に関する科目以外にも人体構造に関する出題もあるため、幅広く勉強しなければなりません。

また、栄養学も細かく科目が分かれていて、かなり専門的な知識が問われます。

管理栄養士試験の出題形式、合格ライン

試験問題は200問出題され、一問一点形式での200点満点となっています。

試験は午前中に2時間40分を使って105問を解き、午後に2時間25分を使って95問を解くスケジュールになっています。

かなり長丁場の試験であるため、高い集中力を長時間保つ体力も求められます。

なお、試験の合格ラインは200点中6割にあたる120点以上となっているため、4割は間違えても大丈夫です。

こんな問題が出題される

それでは、実際にどのような問題が出されているのか見てみましょう。

〈設問1〉

疾病対策と一次・二次・三次予防の組み合わせとして正しいものを選べ。

1)子宮がん検診 :一次予防

  1. 腎不全患者に対する人工透析:二次予防

  2. BCGの接種:三次予防

  3. 野外活動前の虫よけ剤の使用:二次予防

  4. 粉じん作業における保護服の着用:一次予防

正解:5) 粉じん作業における保護服の着用:一次予防

〈解説〉

一次予防とは、病気となる前の健康者に対して病気の原因となるものを防ぐ予防法のことです。

二次予防とは、病気になった人をできるだけ早く発見し、早期治療を行って病気の進行を抑え、病気が重篤にならないように努めることを指します。

三次予防とは、病気が進行した後の後遺症治療、再発防止、残存機能の回復・維持、リハビリテーション、社会復帰などの対策を立て、実行することを指します。

よって、正しい選択肢は5となります。

〈設問2〉

次の保健対策に必要な根拠(エビデンス)の構築・活用に関する記述の中で、誤っているものはどれか?

  1. 保健対策の優先順位を決める際は、疾病負担の大きさを考慮する

  2. エビデンスの質は、コホート研究より横断研究の方が高い

  3. 介入研究では、介入群・対照群の割付を行う

  4. 関連文献を収集する際は、偏りを小さくする

  5. メタアナリシスでは、複数の研究データを数量的に合成する

正解:2) エビデンスの質は、コホート研究より横断研究の方が高い

〈解説〉

エビデンスの質にはレベルが決められており、低い順からエビデンス1a 、エビデンス1b、エビデンス2a、エビデンス2b、エビデンス3、エビデンス4、エビデンス5となっています。

コホート研究はエビデンス2bに該当し、横断的研究はエビデンス4に該当するため、正解の選択肢は2となります。

コホート研究とは、ある病気にかかる危険性の高い集団と、そうではない集団を長期間観察して病気の発症率や進行の程度、死亡率などを調べることにより病気の原因を明らかにするための研究手法です。

未来に向かって観察してデータをとることがほとんどですが、カルテなどの過去の医療記録などに基づいて実施されることもあります。

一方、横断的研究とは、同時期に多くの人々を対象として、健康状態などの特性を比較検討する方法です。

時間の経過による症状の進行状況や予後を調べることはできないものの、病気にかかっている人の割合などを調べることができます。

管理栄養士の受験資格を満たしているか確認

管理栄養士国家資格を受験する受験資格は、以下の2種類存在します。

  1. 4年制の管理栄養士養成校(大学又は専門学校)を卒業者または卒業見込み者

  2. 大学・短大・専門などの栄養士養成施設を卒業して栄養士資格を取得後1~3年の実務経験を積んだ者

栄養士養成施設卒業後に積まなければならない実務経験として認められるものは、以下の通りです。

  • 寄宿舎、学校、病院等で、特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの

  • 食品の製造、加工、調理または販売を業ろするもの

  • 学校、専修学校、各種学校、幼保連携型認定こども園など

  • 栄養に関する研究所および保健所などの行政機関

  • 上記のほか、栄養に関する知識の普及・指導の業務が行われるもの

また、受験資格をクリアするために必要な実務経験年数は、以下の通りです。

  • 2年制の栄養士養成施設を卒業して栄養士の免許取得者であれば、3年以上の実務経験

  • 2年制の栄養士養成施設を卒業して栄養士の免許取得者であれば、2年以上の実務経験

  • 4年制の栄養士養成施設を卒業して栄養士の免許取得者であれば、1年以上の実務経験

このように、管理栄養士養成校ルートで資格取得を目指した方が実務経験を積む必要がないため、手間と時間がかかりません。

実際、多くの管理栄養士が管理栄養士養成校ルートで合格を掴み取っています。

管理栄養士の勉強のポイント

以下では管理栄養士試験対策のポイントを紹介します。

暗記ではなく、理解を求めよう

管理栄養士国家試験の問題科目は9科目に応用力問題を加えた10科目で、問題数は200問あります。

試験合格のためには膨大な出題範囲を効率よく学習する必要があるため、メリハリをつけながら上手に勉強しなければなりません。

特に、試験は暗記しただけでは通用しない、応用力を問う問題を解けるかどうかが合否を分けます。

そのため、日頃の勉強から暗記よりも理解することを重点的に意識するべきです。

過去問や応用問題をたくさん解くことで、得た知識を自然とインプットできるようになるため、うまく過去問などを活用して実践力を身に着けていきましょう。

過去問をやりこむのが大切

過去の試験の傾向を掴む上、過去問題の演習はで欠かせません。

過去問集は全国の書店やインターネット通販で手に入れることが可能なので、必ず手元に準備しておきましょう。

過去問題を繰り返し行うことで本番レベルの学力が自然と身に着き、テキストを読んだだけではわからなかった論点も理解できるようになります。

また、長い年度遡って数多くの問題に触れることにより、重要論点や逆にあまり出題されることがない論点などが分かってきます。

過去問をうまく活用できるかどうかが合否を分けるため、重点的に取り組みましょう。

出題範囲の多い問題を対策しよう

管理栄養士の試験問題で出題数が多い重要科目は、「人体の構造と機能および疾病の成り立ち」と「臨床栄養学」の2つです。

出題問題数は試験回によって異なりますが、例年これらの論点は出題数が多いため、これらの科目をしっかり押さえて得点源にできるかどうかが合格のカギとなります。

また、食・栄養に関わる時事問題や管理栄養士に関わる法律対策も必要となるため、意識的に時事にも関心を払うようにしましょう。

また、上記の論点以外では、「国民衛生の動向」「国民健康・栄養調査」「日本人の食事摂取量基準」などは、統計データや国の施策を調べておくと良いでしょう。

細かい数字は覚えずに、「なんとなくこんな傾向なんだな」と大まかに押さえておくだけでも得点につながります。

主要試験科目の対策ポイント

こちらのトピックで、試験科目で押さえておくべきポイントを解説します。

  • 「基礎栄養学」

接種した栄養成分が体内で栄養素に変換され、臓器間で栄養素の変換が行われる過程や、ビタミンや無機質を過剰摂取する危険性については頻出です。

  • 「応用栄養学」

栄養教育のためのカリキュラムの立案・実施・モニタリング・評価・フィードバックや、行動科学とカウンセリングの論点は必ず押さえましょう。

  • 「臨床栄養学」

出題数が多いため、多くの勉強時間を割くようにしましょう。

傷病者の心身や医療従事者としての心構え、医療制度の理解を中心に勉強を進めていきましょう。

  • 「公衆栄養学」

公衆栄養マネジメントの概念や、理論的枠組みの組み立て、コミュニケーション理論の理解が出題の中心です。

  • 「給食経営管理論」

この科目は、大きく「栄養・食事管理」と「経営管理」に分けられていて、「経営管理」の方が出題のウェイトが重いです。

そのため、経営管理に重点を置いて勉強しましょう。

  • 「栄養・食事管理」

給食施設利用者の身体の栄養状況、給食管理方法などの栄養指導を行うための知識と技能が問われます。

実務上で最も重要な科目と言えるでしょう。

  • 「応用力問題」

年齢や性別、疾患や検査値を踏まえつつ、その患者にふさわしい栄養管理や栄養指導について問われます。

管理栄養士として実際の現場で必要とする観察力・判断力・予測力が試されており、かなり実務的な試験となっています。

応用力問題は暗記では解くことができないため、知識の活用力が最も問われる科目と言えるでしょう。

管理栄養士資格を活かせるフィールド

それでは、栄養管理士として活躍できる職場を具体的に見てみましょう。

病院などの医療機関

管理栄養士の就職先で、最も多いのが病院などの医療機関です。

特に大規模な医療機関は多くの病床があるため、入院している患者の数も多いです。

そこで、患者一人一人の状況などに合わせて看護師や医師と連携しながら管理栄養士が活躍しています。

具体的には、患者の病状を踏まえて上で減塩食、流動食などの献立を作成しています。

また、病院内での栄養指導は管理栄養士でなければ診療報酬を請求できないため、管理栄養士は多くの医療機関から重宝されています。

介護施設や福祉施設

管理栄養士資格は、介護施設や障害者向けの福祉施設でも活用できます。

介護福祉施設でお年寄り向けの食事メニューを考えたり、障害者施設施設などで入居者の要介護レベルに合わせた食事を提供したりしています。

献立を作成するにあたっては、お年寄りの中には飲み込む力が弱っている人もいるため、嚥下障害を考慮した食事を考えなければなりません。

そのため、あまり噛まなくても栄養が摂取できるような食事メニューの提供なども求められます。

また、食べやすく栄養のある食事を提供するだけではなく、飽きずに食事を楽しめるような工夫も必要になります。

学校や保育園など

育ち盛りの子供がしっかりと栄養を摂取できるように、学校や幼稚園・保育園などの現場で給食を通して子供の成長や健康をサポートすることもできます。

なお、子供はアレルギーを持っているケースが多いため、アレルギーに関する知識が必要不可欠となります。

ただ健康的な献立を作るだけではなく、食材発注の調理まで行い子供の元まで提供しています。

子供に栄養価の高い食事を摂取させるだけでく、食事に関心を持たせて食に関する教育をしている役割も果たしています。

また、保育園や小学校だけでなく中学や高校の食堂などでも管理栄養士は活躍しています。

中学生や高校生は食生活が乱れてくる年頃でもあるため、美味しく食べられることに加えてしっかりと栄養を摂取できるように配慮しなければなりません。

また、学食なので「安く、早く、十分な量で美味しく食べられる」食事メニューを考えなければならず、様々な工夫をこらす必要があります。

このように、年齢に合わせたふさわしい食事を提供することで子供の成長をサポートしているのです。

オフィスや官公庁

社員食堂や官公庁の食堂などでは、働き盛りの会社員や職員に合わせた食事を用意する必要があります。

また、中年以降の人は高血圧や高血糖など、様々な病気を抱えている人が増えるため、減塩メニューなどを作成する必要があります。

一般的な定食と、減塩してある定食など、日々バリエーション豊かに食事を提供する必要があるため、管理栄養士の腕の見せ所と言えるでしょう。

管理栄養士のまとめ

管理栄養士のまとめ

  • 合格率は60%程度と比較的高いので、しっかり勉強すれば合格できる
  • 過去問を有効活用してこれまでの頻出論点などを把握することが合格の近道
  • ただ暗記するだけでは得点できないため、理解することを心掛けると良い
  • 学校や老人ホームなど、様々な場所で活躍できるため、常に高い需要がある

管理栄養士の受験資格をクリアするためにはかなり複雑な決まりがありますが、試験は6割の合格率なので国家試験にしては受かりやすいです。

取得できれば多くの職場で活用することができる、非常に使い勝手の良い資格なのでぜひ積極的に取得を目指してみましょう。

社会人の人が目指す場合はなかなか勉強時間が確保できずに苦労することもありますが、隙間時間などを活用してぜひ合格を掴み取ってください!

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1