応用情報技術者と中小企業診断士の試験の違いは?ダブルライセンスのメリットまで解説

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中小企業診断士

平井東

「応用情報技術者と診断士のダブルライセンスっていいの?」

そんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

IT技術の社会へのさらなる浸透やコロナ禍による経済不況により応用情報技術者、診断士ともに近年需要が高まっています

どちらも国家資格の一つであるため取得すれば強みとしてアピールできることは間違いありません。

そこでここではそれらの資格を両方取得することのメリットや、勉強時間、試験内容まであらゆる面で徹底的に解説していきます

応用情報技術者と中小企業診断士について

  • ダブルライセンスの相性がいい
  • 試験内容の重複や一部試験科目の免除もある
  • 診断士試験の方が難しく合格率も低い
  • どちらも将来性が非常に高い

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応用情報技術者は診断士とダブルライセンスの相性がいい

試験が免除される

応用情報技術者試験合格後に中小企業診断士試験を受験することで、経営情報システムの試験科目が免除となります。 7科目ある1次試験の一つが免除されることとなるため、学習時の負担は大きく軽減されることになります。

ただし、上記のような免除を利用する場合、試験に合格するためには全ての科目で40点以上取ることと受験科目の平均が60点を超えることが必要となります。

得点源の科目はあえて免除せずに高得点を取り、全体の平均点を上げるといった戦略も選択肢に入れるとよいでしょう。

技術者側の知見が得られる

エンジニアやシステム開発に精通している人が、中小企業診断士の資格を得て企業を経営する側の視点を理解すれば、企業にとって非常に大きなメリットをもたらすことが可能になります。

クライアントの要望を実現する際に、情報技術者の知識を生かし、どのようなシステムが最適か検討することができます。

自身とクライアントおよびエンジニア間での意思疎通や情報伝達もよりスムーズにすすめることができるようになるでしょう。

つまりよりニーズにあった提案やコンサルタント業務が可能となります

セキュリティについての知識を習得

応用情報技術者試験では情報セキュリティの分野が唯一の必須科目となっており非常に重視されているといえます。

情報セキュリティの知識を学習することで個人情報の流出やシステム障害に対して技術的な対策を打てるようになるでしょう

応用情報技術者試験は中小企業診断士試験の経営情報システムの分野で多くの関連があるので効率よく資格を取得することでITを経営に生かす企業等にアピールできます。

試験範囲が重複している

応用情報技術者試験のストラテジ部門と中小企業診断士の試験の企業経営理論や財務会計の知識が一部重複しているため、一方の知識を流用することで試験の勉強時間を大幅に減らすことができます

中小企業診断士は情報システムの基本的知識を経営に活かす必要があります。そのため経営情報システムの分野は上記の知識が問われます。

例えばデータベース、システム計画、ソフトウェア等の知識は応用情報技術者試験の試験範囲に含まれるので効率よく点を取ることができます。

ビジネスマンとして差別化できる

応用情報技術者も中小企業診断士も企業の採用者の中で重要視され評価されている資格です。そのため、どちらかを取得している人は少なくないのが現状です。

応用情報技術者は技術系の内容を、中小企業診断士は法務やマネジメントをそれぞれ幅広く深く学習します。

両方の資格を取ることで、経営側とエンジニア双方の視点を持てるとともに、自分自身のアピールポイントとしての価値も高められます。

またできる仕事の幅が広がるため、転職をする際にも有利になることは確実でしょう。

中小企業診断士と応用情報技術者の難易度差

資格試験の特徴

中小企業診断士

中小企業診断士は中小企業に向けて経営に関する課題に関してのアドバイスやサポートを行う職業です。

中小企業は全国で約358万社あり、3220万人の従業員数を抱えています。全国の全従業員数の7割弱を占めています。

昨今のコロナ禍の影響により大きな打撃を受けた中小企業は多くあります。

この危機を脱し、成長を目指す中小企業へのサポートをする役割が求められています

応用情報技術者

応用情報技術者試験は経済産業大臣が認定する国家試験「情報処理技術試験」」の12ある区分の中の一つです。IT情報技術試験の上位に位置付けられています。

この試験はITエンジニアとして応用的な知識・技能を有することを国が証明している試験です。そのためこの資格は網羅性と専門性を兼ね備えています。

試験の対象者として主催機関であるIPAは「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能を持ち、高度IT人材としての方向性を確立した者」と定めています。

ある程度の実務経験を積み、IT技術や起業活動に関する深い知識を持つに至った者を対象としています。

受験者の平均年齢が29-30才であり、中堅プログラマーやシステムエンジニアが多く受けています。

診断士と応用情報技術者の合格率を比較

<応用情報技術者試験>

年度 受験者数 合格者数 合格率
30年秋期 33,932 7,948 23.4
31年春期 30,710 6,605 21.5
令和元年秋期 32,845 7,555 23.0
令和2年秋期 29,024 6,807 23.5
令和3年春期 26,185 6,287 24.0
令和3年秋期 33,513 7,719 23.0
令和4年春期 32,189 7,827 24.3
令和4年秋期 36,329 9,516 26.2

<中小企業診断士試験(第一次)>

年度 受験者数 合格者数 合格率
30年 13,773 3,236 23.5
31年(令和元年) 14,691 4,444 30.2
令和2年 11,785 5,005 42.5
令和3年 16,057 5,839 36.4
令和4年 17,345 5,019 28.9

<中小企業診断士試験(第二次)>

年度 受験者数 合格者数 合格率
30年 4,812 905 18.8
31年(令和元年) 5,954 1,088 18.3
令和2年 6,388 1,174 18.4
令和3年 8,757 1,600 18.3
令和4年 8,712 1,625 18.7

上記の表よりそれぞれの合格率を比べると応用情報技術者試験は中小企業診断士試験よりも高いことがわかります。

中小企業診断士試験は2回試験を受けることを考慮すると非常に厳しい試験であるといえるでしょう

応用情報技術者と診断士の勉強時間を比較

勉強時間は診断士の方が多い

中小企業診断士の勉強時間はおおよそ1000時間だと言われています。

全部で7科目あり、各試験で必要とされている勉強時間が異なるため時間配分に注意して学習する必要があります。

各科目の勉強時間は以下の通りとなります。

科目 勉強時間 難易度
財務・会計 220時間
経済学・経済政策 180時間
企業経営理論 140時間
経営法務 140時間
経営情報システム 120時間
運営管理 120時間
中小企業経営・政策 80時間

応用情報技術者の勉強時間は中小企業診断士の勉強時間よりは一般的に少ないといわれています。

ITの初心者はおよそ500時間以上の勉強が必要とされています。

基本情報技術者試験を合格した人であれば、およそ200時間の勉強が必要とされています。

両者ともにかなりの勉強時間を要する上に合格率が低い試験であることを念頭におく必要があるといえるでしょう。

合格基準を比較

中小企業診断士の合格基準は、マークシート方式の短答式による筆記方式で総点数の60%以上であることかつ満点の40%未満の科目が一つもないことが一つの目安となります。

一次試験の合格有効期間は2年間となり、第一次試験に合格した年とその翌年のみ2次試験を受験することができます。

応用情報技術者試験の合格基準は、午前の小問形式、午後の大問形式ともに100点満点中60点以上得点することです。

それぞれの試験概要を比較

受験資格

中小企業診断士の一次試験の受験資格はなく、誰でも受験することができます。

2次試験の受験資格は一次試験に合格してから2年以内であることです。

応用情報技術者は受験資格がなく、誰でも受験することができます。

試験内容

中小企業診断士

中小企業診断士には1次試験と2次試験があります。

1次試験は各科目100点満点でマークシート方式です。

以下は1次試験の試験科目となります。

日程 試験科目 時間
1日目午前 経済学・経済政策 60分
財務・会計 60分
1日目午後 企業経営理論 90分
運営管理 90分
2日目午前 経営法務 60分
経営情報システム 60分
2日目午後 中小企業経営・中小企業政策 90分

2次試験は筆記と口述の試験方式です。

筆記試験は各科目100点満点で制限時間は80分です。

以下は筆記試験の試験科目となります。

日程 試験科目
午前 組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
午前 マーケティング・流通を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
午後 生産・技術を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
午後 財務・会計を中心とした経営の戦略および管理に関する事例

応用情報技術者

午前試験(小問形式)と午後試験(大問形式)があります。

午前は四肢択一の選択式となります。

合計で80問あり、その内訳はテクノロジ系が50問、マネジメント系が10問、ストラテジ系が20問となっています。

午後は記述式 長文形式の問題が分野別で11問出題され、その中から5問のみ回答する方式です。

11問のうち問1である情報セキュリティの問題は回答が必須であるため、それ以外の10問から4問を自分で選択する必要があります。

各資格の勉強方法を比較

診断士は独学が難しい

中小企業診断士試験は試験範囲が広く、さらに二次試験では記述式が出題されることから一般的に独学が難しいといわれています。

経営に関する多面的な知識が求められるため、付け焼き刃の勉強法で合格することは非常に困難といえます。

基本的には、ベースを講座で固めて、基本知識をしっかりと身に着け、過去問演習を重ねる形で応用力を身に着けていく必要があります。

特に午前の選択式の問題については半数近くが過去の問題と全く同じであるため、直近の過去問を繰り返し演習し、問題と正答をしっかりと頭に入れる必要があります。

応用情報技術者の場合

午前試験と午後試験で出される問題の形式や傾向が異なるため、それぞれに合わせて対策する必要があります。

午前の試験は知識の暗記が最も重要です。テキストをしっかりと読み込み、過去問演習等でアウトプットして訓練していきましょう。

午後の試験では記述問題も含まれるため、過去問演習を通じて問題の解き方を身につける必要があります。過去問の解答・解説をしっかりと読み込みましょう

仕事内容の違い

応用情報技術者は、経験を積んだITエンジニアのさらなるレベルアップを目的とした資格です。

ITにまつわる仕事に必要な知識や技能を応用し自分自身で技術的問題を解決できる能力が求められています。

一方、診断士は、経営コンサルタントの唯一の国家資格です。

企業の経営を多面的に診断し経営改善計画書を作成したり、経営コンサルティングにより企業経営の課題を解決したり、セミナーなどで診断士になろうとしている人たちへの情報発信をしたりします。

経営全般に関する知識を持ち合わせているため企業の中で幅広い分野において活躍できます。

診断士と応用情報技術者の将来性

診断士の将来性

野村総研と英オックスフォード大との共同研究によると、「10~20年後に、AIによって自動化できるであろう技術的な可能性」のなかでAIによる代替可能性が診断士は0.2%でした。

同調査において10~20年後には、日本国内の職業の49%がAIに代替されると発表しました。つまり診断士はAIによる代替可能性が極めて低いことがわかります。

診断士は経営に関する視点に精通している専門性が高い仕事です。また、経営コンサルティング分野の需要は今後も伸びていくといわれています。

したがって診断士の需要は高まっていくと予測され、将来性が十分にあるといえます。

応用情報技術者の将来性

応用情報技術者の仕事の一部はAIによって代替されることが予測されています。

しかし、ビジネスの種を見つけてそれを商品やサービスとして開発するのは人間であることは変わりません。また、社会の様々な場面でのIT活用が進んでおり、ITエンジニアの需要は高まっています

またこの資格の学習を生かし、ITストラジテスト等のさらにレベルの高い資格を得て、キャリアアップすることも可能でしょう。

つまり将来においても応用情報技術者としての知識は存分に活かせるといえます。

資格取得のメリット・価値を比較

中小企業診断士の場合

多方面で資格の知識を活かせる

企業のコーポレート部門や会計事務所、税理士事務所などの士業などで診断士の資格の知識を生かして業務に当たることができます。

また資格を取得していることでコンサルティング会社内でのキャリアアップなどに活かすことも可能です。

いずれにしても経営全般に関する知識を習得しているため幅広い分野で活躍できます

アドバイスの信頼性が増す

中小企業診断士は独占業務は残念ながらありませんが、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格です。

そのためこの資格を取得すれば、企業の中で信用を得ることができ、社内で新しいプロジェクトや責任の重い仕事を任されるでしょう。

また事業開発や営業等の社外の人と接する業務に当たる際に初対面の人からより信頼されやすく、安心して接してもらえるでしょう。

経営知識の習得

中小企業診断士試験は経営政策に関する中小企業経営・中小企業政策などが出題されます。経営全体の視点から事業を多面的に診断し解決策を提示することが求められています。

また試験自体の出題範囲も非常に広いため、断片的な知識だけではなく経営にかかわる体系的な知識を得ることができます

中小企業診断士のスキルは、たとえ独立して働かなくても、企業内ですぐに活用できるので、経営に関する診断や改善を行う経験が積めて、経営ノウハウが十分に蓄積されることでしょう。

年収アップに繋がる

企業によっては特定の資格を取得することで資格手当が支給されることがあります。中小企業診断士も例外ではありません。

中小企業診断士を取得した場合の資格手当の相場は月1-3万円とされています。つまり資格を取得しているだけで年間12-36万円の収入増を見込むことができるということとなります。

具体的なケースを考えてみます。例えば現在30代の方は将来的に定年まで企業に勤めると仮定した場合、計700万円近く収入がアップするということになります。

また資格の取得によって社内の評価が上がり、昇進・昇給にも間接的に影響する可能性は非常に高いです。

応用情報技術者の場合

収入増に直結

多くのIT企業は従業員に情報関連のスキルの習得を奨励しています。資格の習得に対して資格手当やボーナスなどを支給するケースが増加しています。

企業によって多少異なるものの月額1万円程度が支給されているようです。 つまり年間で10万円以上もの収入アップが期待できます。

また資格取得によって昇任試験への加点等の優遇措置などを受けられ、社内でのキャリアアップに大いに役立つことがあります

転職に有利

応用情報技術者は情報系の国家資格として企業に幅広く認知されています。

またその試験はある特定の分野に特化しているわけではなく、IT情報ビジネスに関する網羅的な試験となっているため高く評価されています。

基本情報技術者資格と比べて取得するのが難しい資格となっているため、特にIT企業への就職や転職の際には大きなアドバンテージとなります。転職時には即戦力となることも可能でしょう。

例えば、その資格を持っていれば、システムエンジニアとして就職・転職する際に、実務に必要なスキルや能力を持っていると評価され、採用されやすくなるでしょう。

独立・開業の将来性を比較

応用情報技術者は、ITエンジニアとして一定水準以上のレベルを担保していることを示すための資格であり、この資格単体を通じて独立・開業などはあまりありません。

一方診断士は、独立して経営コンサルタントとなる人が多くいます。以下は独立した中小企業診断士の年間売上となります。

<独立開業する場合>

回答数 構成比割合
300万円以内 49 8.88%
301~400万円以内 46 8.33%
401~500万円以内 55 9.96%
501~800万円以内 110 19.93%
801~1,000万円以内 82 14.86%
1,001~1,500万円以内 104 18.84%
1,501~2,000万円以内 50 9.06%
2,001~2,500万円以内 20 3.62%
2,501~3,000万円以内 12 2.17%
3,001万円以上 24 4.35%
合計 552 100.00%

出典:データでみる診断士

上記の表より、最頻値は501~800万円以内であるので、平均年収もこの範囲付近にあることが予測されます。また数自体は少ないものの、上位10%近くになれば年収1500万円以上も狙えます

また診断士の資格を持っている人は他に自分が持っている資格やスキルを合わせて起業する人が多いです。

診断士の資格を活用し副業として研修・セミナーの講師としても活躍できます。その内容はコンサルティングのスキルアップや知識取得等多岐にわたります。

まとめとなる見出し 

応用情報技術者と診断士の比較まとめ

  • ダブルライセンスによってさらなるアピールにつながる
  • 試験科目の免除等を利用し合格への戦略をたてるとよい
  • 合格までに必要な勉強時間はそれぞれ1000時間と500時間
  • いずれも過去問演習を中心に対策するとよい
  • 将来性を含め資格取得のメリットは非常に大きい

今回は応用情報技術者と診断士について詳しく解説しました。

どちらの試験も相応の勉強時間を必要とし、難易度が高いため、過去問演習をしっかりとこなして傾向をつかんでいくことが大切といえます。

これをお読みになった皆様が応用情報技術者と診断士の試験に合格し、輝かしいキャリアを築いていただきたいと切に願っております。

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