中小企業診断士の経営法務の勉強法は?合格率が低い理由や試験重要ポイントまで解説!

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中小企業診断士

平井東

「中小企業診断士試験に経営法務ってどれくらい難しいの?」

「経営法務の効果的な勉強方法が知りたい!」

中小企業診断士試験を受けるにあたって、このような疑問や悩みをお持ちの受験生は多くいらっしゃいます。

そこでこの記事では、中小企業診断士試験の経営法務の難易度を合格率や平均点から分析しつつ、苦手意識を持つ受験生が多い理由や効率的な勉強法、試験当日の解答テクニックまでご紹介します。

この記事を読めば、経営法務を確実に突破するためのポイントが丸分かりです!

中小企業診断士試験の経営法務についてざっくり説明すると

  • 法律用語の独特な言い回しに苦労する受験生が多い
  • 平均点、合格率共に低く、特に平成30年度試験では最難関科目となった
  • 勉強時間は100時間を目安にし、あまり時間をかけ過ぎないようにする
  • 情報をビジュアル化して整理する勉強法が効果的である

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中小企業診断士試験の経営法務の概要

本

中小企業診断士の試験科目の中でも経営法務は苦手意識を持つ受験生が多い科目です

この科目では、企業経営に関係する法律や諸制度、手続きに関する問題が出題されます。

普段法律に馴染みのない人にとっては、法律関係の独特の言い回しや用語に難易度の高さを感じてしまいます。

経営法務で学べること

経営法務で出題される分野は以下の6つに分けられます。

経営法務出題範囲

  1. 事業開始、会社設立及び倒産に関する知識

  2. 知的財産権に関する法律

  3. 取引関係に関する法務知識

  4. 企業活動に関する法律

  5. 資本市場へのアクセスと手続き

  6. その他経営法務に関する事項

これらの出題範囲は次の4つの論点に分けられます。

  1. 会社法に関する法律
  2. 知的財産権に関する法律
  3. 民法に関する法律
  4. 資本市場に関する法律

まずはこれらの主要論点を整理して理解しましょう。

会社法に関する法律

ここでは事業開始に関わる各種手続きや定款、事業形態の選択や変更、会社の運営に関わる法律など会社の経営に関するルールを学びます。

中小企業診断士試験では、特に株式会社の組織の関わる部分については重要な論点となります。

知的財産権の関する法律

ここでは著作権や意匠権、特許法などの知的財産に関わる法律を学びます。企業の商品やパッケージデザインなどもこの知的財産権の対象となるため会社経営にも関わってくる重要な法律です。

民法に関する法律

民法は個人に関わる権利を定めた法律ですが、契約上での権利関係や土地や建物に関する規定が定められていることから会社経営にも関わってくる法律です。他の分野ほど頻出ではないものの一定の理解が必要です。

資本市場に関する法律

ここでは、金商法などの商取引や会社の合併(M&A)、事業継承のほか、会社の上場(IPO)に関する法律を学びます。

試験時間・配点

経営法務の科目別試験時間は以下の通りです。

試験日 試験科目 試験時間
1日目 経済学・経済政策 60分
財務・経営 60分
企業経営理論 90分
運営管理
(オペレーション・マネジメント)
90分
2日目 経営法務 60分
経営情報システム 60分
中小企業経営・中小企業政策 90分

また、ご存知の通り経営法務は1次試験科目の7科目あるうちの1つです。配点は、700満点中の100点になります。

問題数は全部で20問から25問程度となっているので一問あたりの配点が4点から5点と高めです

そのため、ケアレスミスは命取りになってしまうこともあります。これも平均点が低くなりやすい原因の一つです。

経営法務の難易度

勉強道具 冒頭でも述べたように、経営法務は中小企業診断士試験の科目の中でも難しいと感じる受験生が多いです。

ここでは実際に他の科目と比べて難易度がどれくらい高いのかについて、平均点や科目合格率などのデータに基づき見ていきます。

経営法務の合格率

経営法務の過去8年間の合格率は以下の通りです。

年度 合格率
H27年度 11.4%
H28年度 6.3%
H29年度 8.4%
H30年度 5.1%
R1年度 10.1%
R2年度 12.0%
R3年度 12.8%
R4年度 26.9%

令和2年度の経営法務の合格率は12%とここ数年と比べて回復の兆しが見えるものの、依然として低い数字が続いています。

他の科目合格率と比較しても低い数字になっていることから、経営法務が一つの難所であることがうかがえます。

経営法務が難しいと感じる理由

経営法務は、暗記科目であるにも関わらず難しいと感じる受験生がとても多い科目です。その主な理由は法律用語にあります。

経営法務ではたくさんの条文を覚えなければなりません。条文には、法律用語がたくさん含まれており、その用語を用いた独特の言い回しがあります。

普段から法律用語に触れている人であればすんなりと頭に入ってくるでしょうが、そういった方はあまり多くありません。

法律用語に慣れるのに時間がかかり、多くの受験生が内容を理解するのに苦戦してしまうのです。

経営法務向けのおすすめの勉強法

study

勉強時間の目安

中小企業診断士試験合格のために必要な勉強時間1000時間とすると、経営法務に費やす時間の目安は100時間くらいが望ましいです。

経営法務は暗記科目のため時間をかければかけた分、得点にはつながります。したがってある程度の学習時間の確保が必要ですが、この科目は2次試験の出題内容に直接関係がないので、時間をかけすぎず他の科目に時間的リソースを割けるようにする必要があります。

特に暗記系の科目は完璧を目指すといくらでも勉強時間を使ってしまうので、足切りさえ回避すれば良いと割り切って、枝葉の事象は捨てるくらいのつもりで勉強しましょう。

法律用語を用いた言い回しに慣れる

繰り返しになってしまいますが、経営法務の鍵を握るのは「法律用語」です。

普段聞き慣れていない用語や言い回しで長文を理解するのは難しいことです。そのため、法律用語へ慣れておくことが勉強のポイントとなります。

日常では使わないような言葉や覚えられない言葉は、自分なりの言葉に置き換えて理解を深めると暗記しやすくなるのでおすすめです。

過去問演習も有効

過去問を複数回解くことも、法律用語の言い回しや出題のされ方に慣れることに有効です。

ただし後述のように経営法務で扱う法律には法改正による内容の変更もあるので、過去問を活用する際には注意が必要だということを覚えておきましょう。

情報をビジュアル化して覚えよう!

経営法務は暗記科目ですが、暗記すべき事項はそこまで多くはありません。しかし、長文で書いてあるうえに、難しい法律用語がプラスされていることによって、ただ読んでいるだけだと解読に時間がかかり勉強効率も落ちてしまいがちです

そこで、覚えるべき重要な情報を図や表などにまとめてビジュアル化しイメージで暗記するのが効果的です

混乱しがちな複数の暗記事項を効果的に整理することができるほか、内容を視覚情報としても覚えられるので、試験の際に思い出しやすくなります。

自分なりの暗記法を確立しよう

図や表、メモリーツリーなどを活用した勉強法は多くの人に効果的な王道の暗記法ですが、やはり人それぞれで合っている暗記法は異なってくるものです。

中小企業診断士試験では経営法務以外にも経営情報システムなど暗記科目が多いです。そのため、できる限り早く自分にあった暗記法を確立できるように、様々な方法を試してみることをおすすめします。

頻出論点

経営法務は、出題範囲が広いですが毎年必ず出題される頻出論点があります。それは「会社法」と「特許法(知的財産権)」です。この2つの項目については、ほぼ完璧に仕上げて試験に臨む必要があります。

特に、難易度が高くなる年でも足切りを避けるためにはここで得点を稼ぐことが1つのポイントといえます。

一方、民法からは比較的難易度の高い問題が出題される傾向があります。高得点を狙うならばこちらの学習もある程度必要になりますが、基本的にコスパが良くないので頻出事項だけ得点できるようになったら、あとは時間をかけすぎないほうが良いです

英文問題も要チェック

経営法務の試験では、毎年必ず1問は英文で海外取引に関する問題が出題されます。一瞬身構えてしまいますが、内容自体の難易度は低いため英文さえ読めれば心配する必要はありません。

英語が不得意な人にとっては難しい問題となりますが、この問題だけのために英語の勉強に時間を割くのは非効率ですので、特段時間をとって対策する人は少ないです。

法改正に注意

経営法務は法律に関する問題が出題されるため法改正による影響を受けます。法改正は毎年行われる可能性があります。

試験直前に行われた法改正については、試験問題が試験のかなり前に作成されていることからその年は出題されませんが、試験の1年から2年前に行われた法改正については高い確率で出題される傾向があるのでチェックが必要です。

予備校や通信講座を利用されている方であれば、法改正対策は自動的に行えるので心配はありません。

一方で独学者の場合は、テキストは古いものではなく最新のものを使うことや、今年出題される可能性のある法改正事項のチェックなど各所で気を配る必要があります。

問題を解く時のテクニック

砂時計

分からない問題が出ても立ち止まって考えてみる

経営法務は、問題文が法律用語を使った複雑な長文で状況設定も複雑な設定が多くなっています。一度読んだだけでは、理解が追い付かず答えを選びきれないことも多くあります

しかし、この段階で分からないからと問題をたくさん飛ばしてしまうと、ほとんど未回答のまま終わってしまうことにもなりかねません。

一度飛ばして最後に戻ってもう一度解くという方法もありますが、この科目についてはあまり通用しません。分からない問題であっても飛ばさずに、第一問目から順番にじっくり解いていきましょう。

例外的に、先ほど言及した英文問題については、英語が不得意な人であれば後回しにして時間が最後余ったら戻って解いても良いでしょう。

経営法務は科目免除も可能

免除のイメージ

経営法務は中小企業診断士試験の科目免除の対象科目となっています。

そのため、一定の条件を満たした方であれば、経営法務の試験を一切受けることなく1次試験の合格を目指すことが可能です。

経営法務を免除するための条件は以下の2つのどちらかになります。

  1. 弁護士の有資格者、あるいは司法試験・旧司法試験第2次試験の合格者
  2. 中小企業診断士の1次試験を受験し、経営法務で科目合格をすること(100点満点中60点以上の得点が目安)

1つ目の資格保有或いは国家試験合格による免除は特に期限等設けられていないので、自由に免除を活用することができます。

一方、科目合格による免除は年数制限が存在し、免除できるのは科目合格をした年の翌2年間までとなっています。

経営法務を科目免除する際の注意点

科目免除を利用すると、免除科目は満点の60%、すなわち60点で総得点に加算されることになります。

そのため、経営法務が得意科目だという方の場合、科目免除をしない方が総得点が高くなり、一次試験の合格が目指しやすくなることがあるので注意が必要です。

ただし、経営法務は2次試験へと繋がる知識がほとんどない科目である上に、年度ごとの難易度のばらつきも大きいので、基本的には積極的に科目免除を利用してしまって良いでしょう。

科目合格を利用した学習スケジュールもおすすめ

上述のように、経営法務は科目免除をするのに適した科目と言えます。

そのため、中小企業診断士試験に効率よく合格するために、1年目の試験では経営法務やその他の2次試験に関連のない科目(経営情報システム)などに注力して科目合格を目指すのもおすすめです。

そうすることで翌年は2次試験に関連のある科目だけに集中できるので、2次試験合格を目指しやすくなるのです。

このように、科目免除を活用した2年計画はとても有効なので、1年でストレート合格が難しそうだという方は一度検討してみると良いでしょう。

経営法務対策におすすめのテキスト・問題集

中小企業診断士 最速合格のための スピードテキスト (6) 経営法務 2023年度
2860円
中小企業診断士 最速合格のための スピードテキスト (6) 経営法務 2023年度
2860円

中小企業診断士の経営法務対策には、科目別テキストが出版されている「最短合格のためのスピードテキスト」がおすすめです。

対応する問題集とセットで勉強することで経営法務の基本を完璧に抑えることができます。大手予備校のTACが出版しているので、テキスト・問題集ともに質は間違いありません。

経営法務に苦手意識のある方はこのテキストで重点的に学習を進めましょう。

独学で経営法務の学習を進めているものの伸び悩んでしまっている人は、通信講座を利用してプロの講義を聞くのも非常に効果的です。

スタディングの中小企業診断士講座は低価格でも高品質ということで特に人気を集めており、14,300円という破格の安さで経営法務対策講座を受講することができます。

難易度の高い中小企業診断士試験を独学だけで突破するのは正直かなり厳しいので、この機会に受講してみるのをおすすめします。

スタディングの公式サイトはこちら

経営法務を勉強する際に注意すべきこと

注意点のイメージ画像

経営法務の勉強をする際には、以下の点を意識して取り組むことも大事です。

経営法務ばかり勉強しない

初学者の方にとっては勉強しづらい経営法務ですが、学習を進めていく中で法学の面白さに気づく人も多くいらっしゃいます。

こういった人ほど、経営法務の勉強ばかりしてしまい、他の科目の勉強が不十分になってしまうことがあるため、注意です。

経営法務で高得点を取ることももちろん大事ですが、一番の目的は少ない受験回数で中小企業診断士に合格することですので、この点を忘れないようにしましょう。

丸暗記の方が効率的な場合も

経営法務の勉強をする際は、法律の考え方を理解することはもちろん大切です。

しかし無理に理解しようとせず、単純に丸暗記してしまった方が効率的な場合があることも事実です。

経営法務の勉強は暗記が中心になります。重要な考え方は理解する必要がありますが、やはり基本的には暗記で学習を進めることを心がけましょう。

英文問題は捨て問でもOK

上記のように、英文条約の問題は内容の難易度がそこまで高くなく、英語が読める方は簡単に特典を稼げます。

ですが、英語が得意でない方にとっては理解が難しいです。

こういった方の場合、英文問題はある程度「捨て問」として扱って問題ないでしょう。

試験勉強をする際だけでなく実際の試験でも、他の問題に時間を割いた方が合格の確率は高くなります。

経営法務の勉強法まとめ

経営法務の学習ポイント

  • 経営法務は、7つの試験科目の中でも合格率と平均点が特に低い
  • 苦手意識を持つ受験生が多い理由は「法律用語」に慣れていないため
  • 2次試験への直接的関与はないため、時間はかけすぎず効率的に勉強することが大切
  • 理解が難しい法律用語は自分なりの言葉や説明に置き換えて暗記する
  • 文章ではなく、図や表を使ってビジュアル化してイメージで覚える
  • 頻出論点は、完璧にして点数を稼ぐ
  • 試験当日は、分からない問題は簡単に飛ばさずに立ち止まりじっくり考える

経営法務は、法律に関わる問題が出題されているため法律用語に馴染みのない受験生にとってはどうしても難易度が高くなってしまいます。

経営法務自体は、暗記科目なので時間をかけるほど得点は伸びやすいですが、効率的に学習するためには法律用語に慣れることが一番重要なポイントになります

合格率や平均点だけを見てしまうと難しいそうと思ってしまいますが、頻出論点を中心に学習をすすめ基本的な問題を確実に得点していければ必要以上に恐れる必要はありません

実務では法律に関わる部分の手続きは法律のプロを使います。中小企業診断士は、企業にアドバイスをする中で弁護士や弁理士と話をし、企業からスムーズな橋渡しを行うことの出来るように法律に関する基本的な知識が必要なのです。

そのため、この科目を必要以上に深追いすることはなく、60点以上で科目合格すること、最低でも足切り対象とならないように40点以上とれるようにすることが重要です。

他の科目に勉強時間を割くためにも、必要最低限の知識を効率的につけるという意識を持って勉強を進めましょう!

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