交流分析士ってどんな資格?資格の説明や種類・難易度まで全て解説!
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医師
安藤広真
「交流分析士になるにはどうすれば良いの?」
「交流分析士ってどういう資格なの?」
このような疑問を抱えている方はいませんか?そこで今回は交流分析士がどういう資格なのか、どうしたら資格を取得できるのかについて詳しく解説していきます。
心理カウンセラーとの違いや交流分析士と合わせて取得するのがおすすめな資格も紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
交流分析士についてざっくり説明すると
- NPO法人日本交流分析協会が主催している
- 日本交流分析学会交流分析士とは異なり、自己分析が中心
- 受験資格は不要だが、上位資格を取得するときは下位資格の取得が必要
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交流分析士ってどんな資格?
交流分析士は人の心理や行動を心理学の観点から分析できるようになることを目標としている資格です。
自己分析することで、自立性を高めつつ本来の自分の能力の可能性を実現して、悔いのない楽しい人生を謳歌できることを目指しています。
心理の視点を今の仕事や人間関係に生かして、より良くしたいと考えている人にぜひ取得してほしい資格です。
交流分析士の主催団体
交流分析士を主催しているのはNPO法人日本交流分析協会で、心理支援課資格として評価もされている資格です。
カナダ出身の精神科医であるエリック・バーンが開発した交流分析(TA(Transactional Analysis)とも呼ばれる)の哲学を基盤としていて、日本における交流分析の発展を目指して発足しました。
そもそも交流分析とは
交流分析は精神分析と人間心理学を合わせた観点を持つ分析方法を用いて、人の心と行動の関係性を分析することで、より良い人間関係を作ることを目指しています。
交流分析は7つのジャンルで構成されています。それぞれのジャンルの特徴を以下の表にまとめます。
ジャンル | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
ストローク | ふれあい | 相手の存在を認めるすべての言動。肯定的なもの(あいさつするなど)と否定的なもの(怒るなど)がある。人の幸せや不幸せの原点はこのストロークの出し方や受けとめ方によると考えられる。 |
自我状態 | 心の成り立ち・エゴグラム | 人の心は親の心、成人の心、子供の心の3つの心(自我)から形成されているという考え。エゴグラムを用いて自分の特性や心のくせを知ることで、改善点も把握できる。人間関係のトラブル防止にも役立つ。 |
対話分析 | コミュニケーション | 自分だけでなく相手にも3つの心があることや対話分析を理解することで、スムーズなコミュニケーションや相手の気持ちに寄り添った対応が可能になる。 |
人生態度 | 人生の基本的立場 | 自分と他人に対しての基本的な立場を4つのタイプに当てはめて考えながら「自分も相手もOK」という相互理解のタイプに近づくことを目指す。 |
心理ゲーム | いつものトラブルパターン | 自分が人間関係において同じように繰り返すトラブルパターンに気づくことで、回避できるようになることを目指す。 |
時間の構造化 | 時間の過ごし方 | 生き方のパターンを分析をすることで、生きがいある人生にするために時間の使い方を探求する。 |
人生脚本 | 自分で描いたシナリオ | 知らず知らずのうちに植え付けられて自分の行動を制限する原因となっている価値観や常識に気づいて解放される。 |
日本交流分析学会交流分析士との違いは?
交流分析士の資格には「日本交流分析学会」が主催しているものもありますが、上記で紹介した「日本交流分析協会」が実施しているものとは主催団体も内容もまったく異なります。
協会が実施している交流分析士は自己分析を中心に、心理学や交流分析を学んだことがない方を対象にしています。
一方の学会が主催している交流分析士はカウンセリングの意味合いが増すうえに、医療従事者や臨床心理士を目指す方などを対象にしています。
心理カウンセラーとの違いは?
交流分析士は心理カウンセラーとも異なります。心理カウンセラーは対話や心理テストなどを用いて心の悩みやストレスを抱えた方の相談に乗るのがメインです。
そのため交流分析士は心理カウンセラーを目指す方よりも、今の仕事や生活の中に心理学の知識を取り入れたい方や、心理カウンセラーに興味があり、第一歩の挑戦を考えている方におすすめです。
交流分析士の種類・難易度
交流分析士の資格にはいくつかの種類があります。ここではそれぞれの資格の内容や難易度について見ていきましょう。
交流分析士の資格取得方法
交流分析士には初級やインストラクターなどのさまざまな種類があります。資格を取得するためにはそれぞれに定められた講座を受講し、認定試験に合格しなければいけません。
交流分析士初級
主に学生に向けた講座で、2級資格の前段階に位置付けられています。心理系だけでなく、福祉系やコミュニケーション系のカリキュラムにも対応しています。
3日間にわたって計20時間の講座を受講し、交流分析を日常生活に生かせるようになることを目指します。講座受講後に1日で終わる試験に合格すれば取得できます。初級の資格取得後に希望して申請すれば、2級講座への編入が可能です。
交流分析士2級
ワークショップ形式で交流分析の基礎理論を学びます。初めて交流分析を学ぶ方を対象としていて、自己への気づきや自己実現ができるようになることを目指します。
6日間にわたる計40時間の講座の受講後、2日間の試験に合格して資格取得手続きをすれば交流分析士2級が取得できます。
交流分析士1級
交流分析士1級は2級の資格を持っていないと申し込めません。交流分析の応用理論を6日間、計42時間のワークショップ形式の講座で学びます。
家庭や職場などの身近な環境や人間関係で、交流分析を実践的に活用できるようになることを目標としています。
講座を受講した後、2日間ある試験に合格して資格取得手続きをすると取得できます。
交流分析士インストラクター
指導会員として「交流分析士2級」の講座を実施したり、指導普及を目指すための資格で、資格取得後に指導経験を積めば協会認定の学習拠点である「TAカレッジ」の講師を担当する道も開かれます。
交流分析インストラクターを取得するにはまず交流分析士1級を取得し、インストラクター養成講座を受講するための「インストラクター養成講座受講資格試験(合格後1年半有効)」を受験します。
その後理論と実技指導を学ぶために6日間で計38時間にわたるインストラクター養成講座の受講後、面接を含む2日間の試験に合格して資格取得手続きをすれば認定されます。
交流分析協会は上級資格をより効果的に取得できるように、交流分析士1級取得者に対してインストラクター養成講座受講資格試験を無料で実施しています。
交流分析士准教授、教授
交流分析の学習や実践を深めることで、交流分析士准教授や教授を目指せます。准教授や教授になると協会の幹部指導員となり、交流分析士2級と1級、さらにインストラクターなどへの指導や普及活動ができるようになります。
准教授になるためには交流分析士インストラクターを取得後にTA実践研究論文集に投稿し、2年以上経っていなければいけません。教授になるためには准教授になってからさらに3年以上経過していることが求められます。
TA心理カウンセラー
交流分析士インストラクターを取得後1年が経過すると、TA心理カウンセラー養成講座が受講できます。10日間にわたる講座を受講した後に、2日間の学科と実技のテストを受けます。
主な対象はすでにカウンセラーとして活躍している方や、カウンセラーを目指して研修をしている方などです。試験に合格すれば交流分析を活用しながらクライアントの心の発達を支援するTA心理カウンセラーに認定されます。
TA子育て支援士
交流分析士2級以上の資格を取得している会員なら受講できます。ただし2級と1級取得者はTA子育て支援士(補)で、TA子育て支援士になるためにはインストラクター以上の資格が必要です。
交流分析と発達心理学の両方の知見を取り入れることで、ゆとりを持って子育ち支援ができる人材や子育てサークルなどの学び合う場づくりを促進できる力の養成を目指しています。
交流分析士の合格率、合格ライン
交流分析士の難易度は高めですが、2級と1級の合格率は90%以上です。難易度がさらに上がるインストラクターでも80%以上の方が合格します。ちなみにインストラクターよりも上の資格の合格率は公開されていません。
合格率が高い理由は不合格者を出すために行う試験ではないことだと考えられます。交流分析士の試験は2級以上から2日間の受験日が設けられますが、そのうちの1日半を受験のための徹底的な復習時間として使います。
交流分析士の試験は年に3回しか実施されません。貴重な機会の中でたくさんの方に合格してほしいと考えるがゆえの対処と言えます。
交流分析士の学習することをおすすめする人
交流分析士は自己分析をしながらコミュニケーション能力を向上させることを目標としているため、下記のような人と接することが多い方のほかに、人間関係で悩んでいる方などにもおすすめです。
- 看護師や介護士など、人をサポートする仕事をしている方
- 弁護士やカウンセラーなど、人に寄り添う仕事をしている方
- 保育士や子育て中の方のように幼児教育に関わる方
交流分析で学べる人間として生きていくためにあると便利な知識は、人間関係の改善だけでなく、子育てにも活用できるはずです。
交流分析士の勉強法
交流分析士はどんなに勉強しても所定の講座を受講しなければ試験を受けられません。 まずは資格取得に必要な講座を受講しましょう。
講座として確保されている時間の中にも復習の時間が用意されていること、合格率が高いことなどから見ても、それほど心配する必要はないと言えます。
過去問は公開されていない
資格試験の勉強と言えば過去問を使って対策するのが王道ですが、交流分析士は過去問が公開されていないため、基本的にテキストや講座の受講中に学んだことを中心に対策するしかありません。
しかし試験の内容は講座内の内容で完結するうえに、復習時間も設けられています。先ほどもお伝えした通り、それほど心配する必要はありません。
交流分析士の勉強をするメリット
交流分析士の勉強をすると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
心理学的に人間関係をみられるようになる
交流分析を学ぶと自己理解だけでなく、他者理解も深まります。周りの人とうまくコミュニケーションが取れない方にとって、他人の言動の根本的な心理を理解できることは安心材料になるはずです。
自分の長所や短所、直すべき点が把握できることも、円滑な人間関係を築いていくのに生かせるでしょう。他者の長所と短所にも気づきやすくなるため、人材育成などにも生かせます。
高いレベルを目指す向上心が生まれる
先ほど紹介した通り、交流分析にはいろいろな種類があり段階的にレベルアップしていきます。そのため交流分析を学んでいく中で、「もっと学びたい」「交流分析を仕事にしたい」と思えば上を目指すこともできます。
インストラクターや教授として交流分析士を目指す人の指導をしたり、カウンセラーとして困っている人に寄り添ったり、子育て支援士として子育てや養育者の支援に生かしたりと、自分が進みたい道を選べるので意欲的に学習に取り組めます。
交流分析士の講座日程・会場・申し込み方法
交流分析士の講座は東京本部、各支部(仙台市、浜松市、富山市、名古屋市、大阪市、広島市、松山市、福岡市)、各地域にあるTAカレッジで実施しています。
協会のホームページから申し込みができますが、現在は実施予定がありません。しかし資格によってはTAカレッジで実施していることがあるので、協会のホームページからお近くのTAカレッジを確認してみましょう。
交流分析士の資格取得までに必要な費用は以下の通りです。
講座 | 認定試験 | 登録料 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
初級 | 26,950円 | 17,600円 | 13,200円 | 98,550円 |
2級 | 58,850円 | 33,000円 | 22,000円 | 113,850円 |
1級 | 65,560円 | 38,500円 | 33,000円 | 137,060円 |
インストラクター | 64,900円 | 33,000円 | 33,000円 | 130,900円 |
准教授 | 0円 | 33,000円 | 77,000円 | 110,000円 |
教授 | 0円 | 55,000円 | 110,000円 | 165,000円 |
TA心理カウンセラー | 132,000円 | 22,000円 | 33,000円 | 187,000円 |
TA子育て支援士 | 36,300円 | 11,000円 | 17,600円 | 64,900円 |
25歳以下の学生はTA奨学金制度を利用してお得に受講できる可能性があります。確認してみましょう。
交流分析士に受験資格はある?
交流分析士には年齢や職歴などの受験資格はないため、入会金と年会費を払っていれば誰でも講座や試験を受けられます。できれば「心理学の勉強がしたい」という熱意があると望ましいです。
それぞれの資格の項目で紹介しましたが、高いレベルの資格取得を目指す場合は、他の資格を取得している必要があるため注意しましょう。
交流分析士と合わせて取りたいおすすめ資格
交流分析士は基本的に自己分析を行います。心理カウンセラーの勉強もしたい方は、ほかの資格と併せて取得するのがおすすすめです。
メンタル心理カウンセラー
心理学やカウンセリングの基礎知識やカウンセリングの実践事例などをしっかりと学び、医療や福祉など幅広い場所で求められるカウンセリング能力を身につけます。
大学で学ぶようなレベルの高いカリキュラムで勉強するため、資格を取得することでカウンセリング業務に従事するために必要な知識や技能が身につくだけでなく、カウンセリング能力を証明できます。
認定カウンセラー
心理カウンセラーとしての資質を向上させたい方には、認定カウンセラーがおすすめです。日本カウンセリング学会による認定を受けられる資格ですが、受験条件があるため興味がある方はまず受験条件を確認しましょう。
資格取得後もお互いの研究を発表したり、研修を受けたりとカウンセリングについて学び続けられるため、心理カウンセラーとしてのスキルアップができます。
交流分析士についてまとめ
交流分析士についてまとめ
- 自己分析と他者理解を行うことで、より良い人間関係を築くことを目指す
- さまざまな種類の資格があるため、学びたい内容や身につけたいスキルに合わせて取得を目指せる
- 心理カウンセラーの資格と併せて取得するのもおすすめ
交流分析士は精神分析と心理学の観点から自己分析を行うことで自己と他者を理解し、より良い人間関係を築けるようになることを目指す資格です。
自分のことだけでなく相手の言動の根本的な心理が学べるため、人と接することが多い方や人間関係に悩んでいる方などに特におすすめです。
ぜひ交流分析士の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか?