臨床発達心理士ってどんな資格?資格概要・難易度・受験資格まで全て解説!

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医師

安藤広真

「臨床発達心理士とは?」

「臨床発達心理士の資格取得は難しいの?」

臨床発達心理士についてのこのような疑問を持っているひとは多いのではないでしょうか?

「臨床心理士」は国家資格であることもあって情報はネット上に多数提供されていますが、民間資格の臨床発達心理士の情報は意外と少ないのが現状です。

そこでこの記事では、臨床発達心理士についてさまざまな側面から徹底解説します。

心理系資格の取得を目指している人にとっては、必ずお役に立てる記事です。

「臨床発達心理士はどのような資格か?」についてざっくり説明すると

  • 臨床発達心理士は、あらゆる年代層の発達上の悩みに特化して心理学的支援を行う資格
  • 受験資格が厳しく、「大学院修了」か「大学卒業後と実務経験」が必要
  • 合格率は公表されていないが、65~70%程度と推測

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臨床発達心理士とは?

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臨床発達心理士とは、発達心理学をもとに人の発達・成長・加齢に寄り添って「人の健やかな育ち」を支援する専門性の高い心理系の民間資格です。

ここでは、臨床発達心理士の主催団体や「仕事内容」などについて紹介します。

臨床発達心理士の主催団体

臨床発達心理士は、日本発達心理学会・日本教育心理学会・日本コミュニケーション障害学会の3学会で協力運営されている『一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構』が認定している資格です。

この機構は「発達的観点にもとづいて人の健やかな育ちを支援する」を理念に2001年12月に設立され、それ以降、臨床発達心理士の資格認定を行ってきました。

臨床発達心理士認定運営機構の主な業務は資格認定ですが、認定希望者が申請条件を整えられるよう「指定科目取得講習会」の開催や資格保有者の「資格更新認定」も行っています。

臨床心理士との違い

臨床発達心理士と臨床心理士は似かよった資格ですが、3項目で次のような違いがあります。

項 目 臨床発達心理士 臨床心理士
認定団体 (一般)臨床発達心理士認定運営機構 (公財)日本臨床心理士資格認定協会
仕事内容 発達上の悩みに特化した心理学的支援 医療に関わる心の病の心理支援
活動領域 教育・医療・福祉・司法・産業など 教育や医療がメイン

なお、活動領域に違いがあるように、具体的な活動場所についても一部で重なるものの大きな違いがあります。

臨床発達心理士の仕事内容

臨床発達心理士の仕事内容は、発達に関する問題を見極め対象者や家族へ面接や心理テストなどを行い、心理面から支援を行うことです。

活動領域も対象者の年齢も幅が広いことから仕事内容はさまざまですが、人々の健やかで豊かな生活の実現を目指した支援が行われています。

具体的には、育児不安・虐待・不登校・引きこもり・自閉症・知的障害・学習障害・注意欠陥多動性障害などが、臨床発達心理士が担うテーマです。

なお、働く場所によっては、次のような仕事も行っています。

  • 子育て相談と支援:母子支援施設、児童相談所、子育て支援センターなど
  • 教育現場での相談と支援:小中学校、特別支援学級、学童保育など
  • 就職の相談と支援:心身障害、障害者職業センターなど
  • 介護や福祉の相談と支援:独居老人家庭、老人ホームなど

以下では、臨床発達心理士は仕事支援対象者の年代層ごとに、どのような職場で活動しているかを紹介します。

乳幼児期

乳幼児期が支援対象の職場は次のとおりです。

  1. 保健所

  2. 保育園・幼稚園

  3. 子育て支援センター

  4. 通園施設

  5. リハビリテーションセンター

  6. 児童相談所など

学生期

学生期が支援対象の職場は次のとおりです。

  1. 特別支援学校

  2. 特別支援学級

  3. 通級指導教室

  4. 教育相談

  5. 適応指導教室

  6. 学童保育など

成人老人期

成人老人期が支援対象の職場は次のとおりです。

  1. 障害者施設

  2. 作業所

  3. 老人病院

  4. 老人保健施設

  5. 老人ホームなど

生涯発達

生涯発達が支援対象の職場は次のとおりです。

  1. 母子生活支援施設

  2. 発達クリニック

  3. 障害者職業センターなど

臨床発達心理士になるには

教室

臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで、年1回実施される審査に合格しなければなりません。

ここでは、臨床発達心理士資格の取得について解説します。

臨床発達心理士には受験資格がある

臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで資格試験に合格する必要があります。

主な受験資格は次の5つで、各タイプによって試験の内容が異なるので注意が必要です。

  1. 院修了タイプ:発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中、または修了後3年未満

  2. 現職者院修了タイプ:臨床経験3年以上で発達心理学隣接諸科学の大学院修了

  3. 現職者学部卒タイプ:臨床経験3年以上で発達心理学隣接諸科学の学部を卒業

  4. 研究者タイプ:大学や研究機関で5年以上研究職として勤務

  5. 心理師タイプ:公認心理師資格(臨床心理分野の国家資格)を取得

この受験資格以外にも特別な基準が設定されていることから、事前に主催団体に確認してください。

通信制の大学でもいいの?

通信制大学であっても、発達心理学隣接諸科学の範囲に含まれる名称の学部(教育学部・福祉学部・社会学部など)の卒業者は、発達心理学隣接諸科学の学部(4年制)卒業者とみなされます。

したがって、臨床の実務を3年以上経験すれば受験資格を満たすので、その時点で受験が可能です。

卒業した学部が発達心理学隣接諸科学の範囲に該当するかどうか分からない場合は、試験の主催団体に確認してください。

臨床発達心理士の受験料

臨床発達心理士の資格審査は年1回行われており、受験料(認定審査料)は33,220円です。

ここでは、受験料だけでなく受験までの手順や費用などについても紹介しておきましょう。

①申請書類を購入する。

  • 「臨床発達心理士認定申請ガイド」を、認定運営機構から2,420円(税込)で購入
  • このガイドは「認定申請ガイド、認定申請書類、資格申請書類説明会案内(申込書)」の3点セット

②申請手続きをする。

  • 期日内に受験料の33,220円を払い込み、指定された申請書類を送付
  • 2020年度の受験料払込期間は8月1日~8月25日
  • 申請書類受付期間は8月8日~8月25日

臨床発達心理士の難易度

時間制限

臨床発達心理士の受験資格を満たすためには、発達心理学系大学院を修了するか大学の発達心理学隣接諸科学に属する学部を卒業して3年以上の臨床経験が必要です。

しかも、審査は一次と二次があり、両方ともクリアしなければ合格できません。

ここでは、臨床発達心理士の難易度に関わる事項について解説します。

臨床発達心理士の試験概要

臨床発達心理士の2020年度の試験概要は次のとおりです。

項 目 実施内容
申請期間 認定審査料払込受付期間:8月1日~ 8月25日
申請書類受付期間   :8月8日~ 8月25日
審査日程 一次審査:9月27日  二次審査:12月6日
審査内容 ・審査は一次と二次で構成
一次審査の実施内容は、受験資格の申請タイプによって次のように異なる。
 タイプⅠ 書類審査・筆記試験・臨床実習内容報告書審査
 タイプⅡ 書類審査・筆記試験または事例報告書審査
 タイプⅢ 書類審査・業績審査
 タイプⅣ 書類審査
・一次審査の筆記試験は、試験Ⅰ(多肢選択式)と試験Ⅱ(論述式)の二部構成
・二次審査は、複数の審査者による個別面接(口述審査)
試験範囲 ①心理学と発達心理学の基礎
②認知発達とその支援
③社会・情動の発達とその支援
④言語発達とその支援
⑤育児・保育現場での発達とその支援
⑥臨床発達心理学の基礎
結果通知 一次審査:11月中旬  二次審査:12月下旬

臨床発達心理士に必要な知識は?

臨床発達心理士に必要と言われる知識は、次の3つです。

  1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的、理論的な知識

  2. 人間が実際に発達する場に関する社会的、実践的な知識

  3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な技能と知識

これらが習得できる学問領域は、「発達心理学」や「発達心理学隣接諸科学」と言えます。

そのことから、臨床発達心理士の受験資格に、発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程や学部の卒業や研究機関などでの臨床経験が設定されているのです。

臨床発達心理士の合格率

臨床発達心理士の資格は、高いハードルの受験資格を満たしたうえで、一次・二次審査をクリアしなければ取得できません。

この合格の基準だけを考えると、簡単に取得できる資格とは言えないでしょう。

臨床発達心理士の合格率は公表されていませんが、審査内容や基準がよく似た心理系資格の「臨床心理士」の合格率は、60~65%程度で推移のです。

試験の難易度について、一般的には「臨床発達心理士より臨床心理士の方がかなり高い」と言われていることから、臨床発達心理士の合格率は65~70%程度と推測できます。

したがって厳しい受験資格さえクリアすれば、試験の難易度はそれほど高くないと言えるでしょう。

臨床発達心理士は更新が必要

臨床発達心理士の資格は一生モノではなく、運転免許のように一定年数ごとの更新が義務付けられています。

資格更新には、臨床発達心理士資格認定運営機構が提示する研修会へ参加することで、一定以上のポイントを取得しなければなりません。

資格更新までには12ポイントの取得が必要で、そのうち4ポイントは「臨床発達心理士のための資格更新研修会」で取得することが条件です。

なお、この研修会は、日本臨床発達心理士会・日本臨床発達心理士会支部、または臨床発達心理士認定運営機構が実施します。

なお、更新には更新審査料(20,020円)の払い込みが必要です。

臨床発達心理士の勉強法

テキスト

 臨床発達心理士の試験範囲は大学や大学院、実務経験を通して学んだことですから、それらを履修する際に使用した教科書やテキストも受験勉強の際の重要な教材です。

そうした教材に加え、過去問・テキスト・参考書をつかって勉強をすすめます。

ここでは、臨床発達心理士の勉強法について解説しましょう。

おすすめのテキスト

臨床発達心理士の資格取得に向けた勉強におすすめのテキストは次の1冊です。

項 目 内 容
テキスト名 臨床発達心理士わかりやすい資格案内
著者・編集 一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構
出版社 金子書房
特徴 学習内容と資格取得者の活動の場、過去問の一部も紹介
資格取得のためのプロセスから資格取得者の活動内容までを詳しく解説

なお、大学・大学院時代に使用した心理学関連のテキストを持っていない人には、次の参考書をおすすめします。

項 目 内 容
テキスト名 臨床発達心理学の基礎(講座・臨床発達心理学)
著者・編集 山崎 晃(編著)・藤崎春代(編著)
出版社 ミネルヴァ書房

類似問題を解く

勉強法で最も重視しなければならないのは、過去問や類似問題を繰り返し解くことです。

インプットしている知識を過去問や類似問題を解く(アウトプットする)ことで、不足している知識や誤った知識を確認できます。

それらを、テキストや参考書であらためてインプットするのです。

このインプットとアウトプットを繰り返すことで十分な受験勉強ができ、しっかり学習すべき頻出テーマも分ります。

臨床発達心理士の勉強をするメリット

メリット

ここでは、臨床発達心理士の勉強をすることで得られる代表的なメリットについて紹介します。

発達心理の知識を得られる

臨床発達心理士資格取得に向けた勉強のプロセスにおいて、発達心理学の知識を身につけられます。

たとえば、子どものメンタルケアをするときなどに、心理学的に適切な方法でカウンセリングできる人はほとんどいません。

しかし、発達心理学の知識を身につけているとそれが大きな武器になり、発達心理学に基づいたカウンセリングができるのです。

キャリアアップにつながる

発達心理学はすべての年代層を対象にした学問で、その知識を身に付けた臨床発達心理士は、さまざまな職場から求められています。

そうしたこともあり、キャリアアップにつながるとしてダブルライセンスを目指す資格取得も多いようです。

ダブルライセンスが実現すれば、保育士資格で仕事を続けながら、臨床発達心理士資格の取得でキャリアの幅を広げるといったことができます。

地域内の様々な情報を得ることができる

臨床発達心理士は、地域に根差した支援を行っています。

地域のクリニックや専門機関、保育所や幼稚園、小・中・高等学校、児童養護施設や高齢者施設のような社会福祉施設などで、人々の健やかで豊かな生活の実現を目指す支援です。

こうしたことから、臨床発達心理士は日常的に地域内のさまざまな情報を得られます。

とは言え、臨床発達心理士は、受動的ではなく自らが能動的に地域情報を収集することが重要です。

子育て支援など時代に合わせた活躍ができる

臨床発達心理士の資格を持っていると、次に列挙するような社会問題化していることの解決やサポートに携われます。

  • 育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題
  • 「気になる子」のような健常と障害との境界の問題
  • 自閉症、知的障害、LD(学習障害)、AD/HD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害
  • 社会適応や成人期・老年期などの問題
  • 子育て支援、次世代健全育成

臨床発達心理士の次にとるべきおすすめ資格

道

ここでは、臨床発達心理士が次に取得するべき代表的なおすすめ資格を3つ紹介します。

公認心理師

公認心理師とは、公認心理師の名称で保健医療・福祉・教育その他の分野において、『公認心理師法』に定める行為を仕事として行う者をいう心理系初の国家資格です。

次に、2019年度の公認心理師国家試験の概要を紹介しておきましょう。

項 目 内 容
受験資格 4年制大学で「指定の科目」履修、かつ、大学院で「指定の科目」を履修
4年制大学で「指定の科目」履修、卒業後「特定の施設」で2年以上の実務経験
外国の大学で心理に関する科目を修め、かつ、外国の大学院で心理に関する科目を修了
試験日 2019年8月4日
試験方式 マークシート方式・150~200問程度
合格基準 正答率60%以上
合格率 46.4%(2018年度)

なお、公認心理師資格は更新不要であることから、心理系資格のダブルライセンスとして資格取得する人が多くなると考えられます。

心理カウンセラー

心理カウンセラーとは学校や病院、企業などさまざまな場所においてストレスに耐えられなくなった人の相談に乗り、相談者の心理的な問題解決をサポートする職種です。

心理カウンセラーというのは職種名ですから、資格がなくても心理カウンセラーを名乗って仕事をできます。

とは言え、プロの心理カウンセラーとして活躍している人のほとんどは、心理系の何らかの資格を取得していると言えるでしょう。

プロの心理カウンセラーになるのに最も確実な方法は、大学の心理学科・臨床心理学科・カウンセリングコースなどで学び、さらに大学院でカウンセラーとしての専門性を高めることです。

しかし、プロを目指さないのであれば、数カ月の通信講座でメンタル心理カウンセラーや産業心理カウンセラーなどに必要な心理学関連の知識やスキルを効率よく学ぶのが良いです。

臨床心理士

臨床心理士とは、『(公財)日本臨床心理士資格認定協会』が認定する民間資格です。

臨床心理士は、心の問題を抱えた人に対してカウンセリングなどを行い、専門的技法を用いて問題解決のためのサポートをする仕事で、心の専門家と呼ばれています。

臨床心理士試験の2020年度の概要は次のとおりです。

項 目 内 容
受験資格 指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後国内での心理臨床経験2年以上の者
医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者 など
試験日 一次試験:10月17日  二次試験:11月7日・8日・9日
試験方式 一次試験:多肢選択方式(マークシート)+論述記述  二次試験:面接
合格基準 マークシート問題:60%以上の得点  小論文:1,001字以上1,200字以内
合格率 62.7%(令和元年度)

臨床発達心理士と合わせて取得することで、「発達」の知識まで包括した幅広い知識を持った存在になれるため、活躍の場が広がります。

「臨床発達心理士はどのような資格か?」についてのまとめ

「臨床発達心理士はどのような資格か?」のまとめ

  • あらゆる年代層の人に寄り添い、「健やかな育ち」を支援する専門性の高い民間資格
  • 医療に特化した臨床心理士と違い、教育・福祉・司法・産業など幅広い領域でも活動
  • 受験資格は非常に厳しいが最終的な合格率は65~70%と高く、低難易度の資格試験

臨床発達心理士の受験資格を満たすのは簡単ではありませんが、それを満たせば、資格試験の合格率としては一般的ですから、資格取得はそれほど難しくありません。

心理系資格を目指す人は、是非一度、臨床発達心理士の資格取得を検討してみてはいかがでしょう!

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