公務員の定年は何歳?65歳に延長するのはいつから?
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「公務員の定年って引き上げられるの?」
「具体的な引き上げのタイミングはいつから?何歳まで?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
民間企業は従業員が希望した場合、65歳まで雇うよう法律で義務づけられています。
しかし、公務員は現状の定年は60歳となっています。
そこで、公務員の定年引き上げが議論されていますが、引き上げのタイミングや年齢の上限はどうなるのでしょうか?
こちらの記事では、公務員の定年に関して解説します!
公務員の定年についてざっくり説明すると
- 今後65歳に引き上げられる可能性が高い
- 民間では既に65歳までの雇用延長が義務づけられている
- 海外では定年は既に引き上げられている
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公務員の定年は原則60歳
現在の公務員の定年は何歳と規定されているのでしょうか?
公務員は60歳が定年
今現在、公務員の定年は60歳です。
国家公務員の定年は国家公務員法第81条の2第2項で規定されており、そこでは現行の定年を原則60歳としています。また60歳に達した日以後における最初の3月31日を定年退職日とする旨が明記されています。
民間企業には労働者が希望した場合は65歳までの雇用継続を義務付けており、それに合わせる形でここ数年、公務員の引き上げが議論されています。
なお、60歳以後も公務員として働いている人もいますが、定年後の再雇用として勤務している人であるため既に定年は迎えています。
定年の例外もある
現状では国家公務員の定年は60歳と定められているものの、例外の仕事があります。
職種 | 定年 |
---|---|
病院、療養所、診療所等に勤務する医師、歯科医師等 | 65歳 |
守衛、巡視、用務員、労務作業員等 | 63歳 |
事務次官等 | 62歳 |
これら3つの職員はそれぞれの職務内容と必要とされる体力・能力を考えて通常の事務職とは違う定年が設定されています。
少子高齢化が急速に進展しているため、民間企業だけでなく公務員においても定年の引上げの必要性が高まっており、これらの業種も例外ではありません。
2018年に人事院から「定年を段階的に65歳に引き上げることが必要である」とする意見の申出が行われています。
民間企業の定年は?
公務員の定年が60歳である一方で、現在の民間企業の定年は何歳になっているのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
定年にできる年齢は60歳から
民間企業の定年は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の第8条の規定によって、原則60歳を下回ることができないようになっていいます。
そのため現在では、民間企業の8割が60歳を定年としています。
以下は平成29年度の民間企業の定年年齢の割合を示した表です。
定年年齢 | 割合 |
---|---|
60歳 | 79.3% |
61~64歳 | 2.9% |
65歳 | 16.4% |
66歳以上 | 1.4% |
65歳を定年に定めている企業も16%ほどありますが、今後はますます増えていくと予想されています。
希望すれば65歳まで働ける
最近では、65歳までの安定した雇用を創出するために政府は「高年齢者雇用確保措置」として、民間企業に対して、
- 定年の年齢を65歳以上まで引き上げる
- 働きたい希望者全員に対して、65歳まで継続して働ける制度を導入する
- 定年を廃止する
のどれかを実施することを義務付けています。
これは、高齢化の進展と将来の働き手不足に備えて、保険料の払い手を少しでも増やそうという政府の方針です。
また、60歳以上でも働く意欲が高い方も増えており、そのような人たちのニーズに応えるための法律でもあります。
これにより、シニアの方々も安心して就労することができているのです。
法改正の機運が高まる
さらに最近では、高齢者の雇用可能年齢を現在の65歳から70歳まで引き上げようという世論もあります。
そのために安倍内閣では「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」を改正して、現行の「高年齢者雇用確保措置」に追加して、企業に対して
- 65歳以上の社員の他企業への再就職支援
- 65歳以上の社員のフリーランス契約への資金提供
- 65歳以上の社員の起業支援
- 65歳以上の社員の社会貢献活動を行う際の資金提供
を努力義務として課していくという案が出ています。
今後の深刻な少子高齢化に備えて元気なシニア層に少しでも長く働いてもらいたいという政府の思惑がわかります。
なお、これらの改正案はまだ決定しておらず、いつから施行されるかなどはまだ決まっておりません。
公務員にも定年延長の流れが
民間企業と同様に、国家公務員も60歳定年から65歳定年へと段階的にシフトしようという案が出ていています。
高齢者の経験・労働力を活用したい
国家公務員でも民間企業と同じように65歳までの定年の段階的な延長が検討されています。
その理由として、少子高齢化が猛スピードで進行するなかで意欲と能力のある高齢者を積極的に活用しないと人材が不足してしまうことや、的確で質の高い行政サービスの提供を行うためには60歳を越える職員の業務経験が非常に役立つと考えられているからです。
また、国家公務員の採用枠は年々減っている傾向にあり、労働力を確保するためにも60歳以上の人たちの力が必要になってきているのです。
60歳以上の方は行政経験も豊富で、どこの部署に配属されてもすんなりと業務に入ることができるため、今後重宝されるでしょう。
ドイツ・フランスは日本以上に引き上げ
国家公務員の定年引き上げは世界的な流れになってきていおり、例えばドイツとフランスはもともと国家公務員公的年金の定年が65歳と定められていたのですが、これを67歳まで延長する予定です。
具体的には、ドイツは2012年から段階的に上げ始め2031年に67歳、フランスは2016年から上げ始め、2022年に67歳にする方針のようです。
日本は欧米などと比べると少子高齢化が進むスピードが非常に速いため、いずれは70歳定年になるのではないかと予想されています。
公務員の定年を伸ばした場合、人件費の負担が増えることなどが課題になりますが、今後の動向に注目です。
アメリカ・イギリスは定年がない
一方、アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドでは採用に当たって年齢での差別を設けるのは良くないという信条から、定年を廃止しました。
イギリスでは年金支給年齢を引き上げるため2010年に定年が廃止されています。
定年が廃止されたことで退職を望まない限りは働くことができるため、体調も良く就労意欲が高いシニア層にとってはありがたい制度なのです。
オーストラリアでは、「70歳まで元気に働ける人は多くない」と反対の声も上がったようですが、今後の日本はどうなっていくか、注視する必要があります。
それでも海外では60歳退職が多い
定年が日本よりも高めに設定されているドイツやフランス、イギリス・アメリカでも定年ぎりぎりまで働く人は多くなく、だいたい60歳前後で退職してしまう人が多いようです。
この理由としては、海外では年金や恩給など老後にもらえる給付金の額が日本よりも高いため働かなくても豊かに暮らしていける高齢者が多いためです。
欧米は日本ほど少子高齢化が進んでおらず、年金の給付水準も安定しており、無理に働く必要は無いのです。
医療費や年金などの財政面が日本と決定的に違う点であり、今後の日本は課題が山積みであることがわかります。
公務員の定年の延長でできること
公務員の定年が段階的に引き上げられようとしていますが、具体的にはどのような形になるのでしょうか?
ポスト別定年制の導入
現段階の政府案としては、組織の新陳代謝を維持するため公務員のなかでも管理職などは60歳で非管理職へと降任・転任する方針です。
その一方で、専門性が高いため後任が見つかりにくく、転任によって行政サービスに大きな支障が出てしまうような役職は例外的に60歳以降もその役職にとどまり給与も下げないようにすることが検討されています。
これがいわゆるポスト別定年制です。
一般的な事務職の公務員のケースであれば、60歳近くなると体力的な衰えなどもあることから責任が重い管理職から外れ若い世代にポストを譲るということです。
60歳近い世代がいつまでも管理職に就いていると組織も硬直してしまい、若手のマネジメント能力の育成が妨げられてしまうため、このような案が出されているのです。
時短勤務の導入
政府は多様な働き方を実現するために、60歳以上の職員に対しては時短勤務(常勤なら週38時間45分だが時短なら週15時間30分~31時間)を認める方針です。
定年を延長しても、全員が65歳まで働く気があるとは限らず、中には時短勤務で気楽に働きたいと考えている人もいるでしょう。
そういった人たちのために、労働時間を柔軟に決められるようにして、自分の希望する時間だけ働けるようにすることでシニア層の就労を促進する思惑があります。
また、介護などの家庭の都合でフルタイム勤務ができない人もいる可能性があるため、シニア層にとってはありがたい制度と言えるでしょう。
給与の算定
政府は、給与の算定に際して民間企業を参考にした上で、60歳以降の給与を60歳前の7割に引き下げ、さらに60歳未満の給与も上げ幅を抑えていくことを考えているようです。
民間企業でも、一般的に役職定年を導入している企業が多く、50代の半ばで役職を外れることで年収が下がる傾向にあります。
それに合わせるような形で、公務員の60歳以降の給与を7割程度に抑えることで人件費を抑制する効果があります。
しかし、「7割の水準は高すぎる」「公務員優遇がひどい」などと反対の声も多くあるのが現状です。
「7割」は優遇措置か?
前述した通り、公務員の定年後の給与については現在議論の的になっています。
民間では定年後の職員の給与を定年前の「6割未満」としているところが25.8%存在し、公務員の定年後の給与が「定年前の7割程度」というのは公務員の優遇だと批判されているのです。
この法改正はまだ不確定な要素があるため、本当に「定年前の7割程度」になるかはわかりません。
しかし、公務員はただでさえ身分が法律により手厚く保障されているため、このようなバッシングを受けてもやむを得ないでしょう。
国としては、「1億総活躍社会」を掲げているため、60歳以降の賃金水準を上げるためにまず公務員から上げて民間企業へと波及させたい考えです。
そのため、実際に7割の水準で進んでいくことが濃厚といえるでしょう。
年金と定年のビミョーな関係
定年の引き上げで議論しなければいけないのは退職後の給与だけでなく、公的年金の支給タイミングや支給額の問題です。
支給年齢も引き上げか
国家公務員や民間企業での定年の引き上げが行われるのと同時に検討されているのが公的年金の受給年齢引き上げです。
現在は繰り下げ受給や繰り上げ受給として、受給開始年齢を原則65歳とし60~70歳までの間で受給時期や年金額を選べるような制度になっています。
受給開始年齢を原則65歳とするのは変えずに75歳からの受給(その分月々もらえる額は多くなる)も可能にしようという案が出ています。
近年は平均寿命の伸びの影響もあり、繰り下げ受給をして自身の年金額をアップさせる人が増えています。
しかし、死亡すると当然ながら年金はもらえなくなるため、どちらが得なのかという議論が絶えずありますが、今後の年金財政を考えると近い内に75歳からの受給を選べるようになるでしょう。
在職老齢年金制度廃止か
現在では、働きながら年金を受給する場合、受給額と給与の合計が一定額を超えると年金の支給が一部または全部停止してしまう「在職老齢年金制度」があります。
この制度は、以前から「高齢者の就労意欲を阻害する」と度々議論の的になってきました。
実際、これが障壁となって働くことをためらう高齢者が多く出ているため、「在職老齢年金制度」自体が廃止される可能性があります。
確かに、「せっかく働いたのにその分年金がカットされるなら、働きたくない」と考えるのは自然なことです。
そのため、在職老齢年金制度についても、近い内に廃止される可能性が非常に高いです。
在職老齢年金制度の廃止に伴って、短時間でも単発の仕事であっても働く高齢者が増えることが期待されています。
結局いつから変わるの?
国家公務員の定年が引き上げられることにより、それと連動して地方公務員やその他の民間企業などの定年引き上げといった波及効果が期待できます。
しかし一方で、60歳以降の職員の賃金問題や公的年金の受給開始年齢の問題なども併せて議論しなければならず、課題は山積みと言えるでしょう。
政府は、2020年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正案を国会に提出するとしていますが、実現するかは不透明です。
定年の引き上げペースは2年に1歳ずつとする案と、3年に1歳ずつとする案があり、与党の意見などを踏まえて最終的に判断される見通しです。
今後の少子高齢化の進展に伴う保険料の払い手不足は早急に手を打たなければならず、現在公務員の方や公務員を目指している方は、定年に関するニュースには敏感になっておきましょう。
公務員の定年に関するまとめ
公務員の定年に関するまとめ
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近い内に定年の延長が決まると推測される
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年金受給開始年齢の引き上げも有り得る
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60歳以降の給与は60歳以前の給与の7割程度となる見込み
公務員の定年の延長は近い内に正式決定となるでしょう。
公務員は雇用が非常に安定しており、長期にわたって安定的に働きたいと考えている方は公務員を目指すのがオススメです!