国家公務員の退職金の相場は?平均支給額から退職手当の計算方法まで徹底解説!

「国家公務員の退職金ってどのくらい?」

「平均支給額は?退職手当はどうやって計算する?」

などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。

国家公務員の退職金は一般の会社員よりも高くなることが普通ですが、具体的な金額は勤続年数や退職理由、在籍区分などによって異なります。

また早期退職者などを対象にした特例措置も存在し、対象者は退職手当の割増を受けることが可能です。

今回は国家公務員の退職金の相場について、平均支給額や退職手当の計算方法などと共に解説します。

これを読めば、国家公務員の退職金事情がよくわかるはずです。

国家公務員の退職金の相場についてざっくり説明すると

  • 退職金の平均額は約1,082万円
  • 退職日の俸給月額(月収)をベースに計算
  • 早期退職や減俸経験者には特例措置もある

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国家公務員の退職金の計算方法

こちらを見る女性 国家公務員の退職金(退職手当)は「退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額」で算出されるのが一般的です。

以下ではこの計算で用いる各要素について解説します。

国家公務員の退職手当と俸給表

一般的な国家公務員の月給(俸給月額)は、「俸給表の額+俸給の調整額」という式で算出されます。

俸給表には「行政職俸給表」や「税務職俸給表」など職種ごとに様々種類がありますが、基本的には「職務の級」及び「職員の号棒」によって支給額が決まる仕組みです。

また国家公務員には手厚い地域手当も支給されるため、月給は比較的高い水準だと言えます。よって「退職日の俸給月額」が計算式に含まれる退職手当の金額も、比較的高額です。

退職理由や勤続年数で支給率が決まる

国家公務員の退職手当は、上記で解説した俸給月額に「退職理由別・勤続年数別支給率」を乗じて算出されます。

退職理由別・勤続年数別支給率の具体的な数値は以下の通りです。なお、退職理由は「自己都合」「定年」「勧奨」「整理退職」の4つに分類されます。

勤続年数 自己都合 定年・勧奨 整理退職
1年 0.6 1.0 1.5
5年 3.0 5.0 7.5
10年 7.5 10.0 15.0
15年 12.4 15.5 23.25
19年 15.92 19.9 29.85
20年 21.0 28.875 34.65
24年 25.8 35.475 42.57
25年 33.75 44.55 44.55
30年 41.25 54.45 54.45
35年 47.5 62.7 62.7
45年 60.0 62.7 62.7

退職手当基本額の特例

退職手当基本額には以下2つの特例が設けられています。

定年前早期退職者への特例措置

定年前15年以内(定年前6月以内を除く)に、応募認定・公務上死亡・傷病等により退職する勤続期間20年以上の国会公務員は、退職手当の基本額の割増措置を受けることが可能です。

ただし、事務次官・外局長官クラスにこの割増は適用されず、局長クラス・審議官クラス・定年までの残年数が1年の者は割増の利率が小さくなります。詳細は以下の通りです。

  • 退職手当の基本額= 退職日俸給月額×{1+(3%〔*〕×定年までの残年数)}×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率

  • 〔*〕局長クラスは1%、審議官クラス・定年までの残年数が1年の者は1%

俸給月額が減額された場合の特例措置

基礎在職期間中に、降格や俸給表間異動など俸給月額の減額改定以外の理由で俸給月額が減額されたことがある国家公務員には、「減額前の俸給月額>退職日俸給月額」となる場合に以下の特例が適用されます。

  • 退職手当の基本額= 特定減額前俸給月額×減額日前日までの勤続期間に応じた支給率×調整率+退職日俸給月額×(退職日までの勤続期間に応じた支給率-減額日前日までの勤続期間に応じた支給率)×調整率

なお、基礎在職期間とは、「退職手当の支給の基礎とすべき採用から退職までの期間」を指します。

また先述した定年前早期退職者への特例措置の対象者については、「特定減額前俸給月額」と「退職日俸給月額」の両方が割増されます。

国家公務員区分と調整額

退職手当の金額を左右する調整額は、基礎在職期間に属していた職員の区分に応じて、以下のように定められています。

職員区分 該当する職員 調整金額
1 指定職(6号棒以上) 95,400円
2 指定職(5号俸以下) 78,750円
3 行(一)10級 70,400円
4 行(一)9級 65,000円
5 行(一)8級 59,550円
6 行(一)7級 54,150円
7 行(一)6級 43,350円
8 行(一)5級 32,500円
9 行(一)4級 27,100円
10 行(一)3級 21,700円
11 その他の職員 0円

国家公務員退職金の計算例

ここまで解説してきた内容を元に、実際に国会公務員の退職金を計算してみましょう。

例えば、「勤続年数:38年」「退職理由:定年退職」「職員区分:7級が36ヶ月、6級が24ヶ月」という条件の国家公務員の退職金は以下のようになります。

  • 基本額:23,854,500円
  • 調整額:2,989,800円
  • 退職金(合計):26,844,300円

なお、上記には「俸給月額が減額されたことがある場合の特例」は適用されていません。

国家公務員の平均退職金

豚の貯金箱 ここからは国家公務員の平均退職金額について解説します。

国家公務員の退職手当適用者

国家公務員の退職手当は「国家公務員退職手当法」を根拠に支給されています。

同法によると退職手当の支給対象は「司法・立法・行政全ての国家公務員のうち、常時勤務に服することを要する職員及びこれに準ずるもの」です。

なお、行政執行法人の役員や国会議員、国会議員の秘書などは、国家公務員退職手当の支給対象にはなりません。

ちなみに令和4年の時点では、国家公務員退職手当の支給対象者は約59万人です。

平均退職金額は約1082万円

内閣人事局が実施した「国家公務員退職手当実態調査(退職手当の支給状況)令和元年度」によると、同年度の退職者(常勤職員)32,575人の退職手当の平均額は1,082.2万円でした。

また常勤職員の半数以上を占める行政職俸給表(一)の職員だけを見ると、その退職手当の平均額は1,548.0万円です。なお、行政職俸給表(一)の退職者は7,113人で、これは退職者全員の約22%にあたります。

定年退職金額は約2090万円

同調査によると、令和元年度に定年退職した国家公務員(常勤職員)退職金額の平均は2,090.6万円でした。また行政職俸給表(一)だけを見ると、定年退職した職員の退職金額は平均2,140.8万円です。

なお、先述した「定年前早期退職者への特例措置」などがあることから、定年退職よりも「応募認定退職」の退職手当の方が高くなっています。

民間企業と退職金を比較

続いて、民間企業の社員と国家公務員の退職金を比較してみましょう。

民間企業の場合、退職金の金額は会社の規模によって異なります。詳細は以下の通りです。

  • 大企業:2,230.4万円(大卒)、2,017.6万円(高卒)
  • 中小企業:1,118.9万円(大卒)、1,031.4万円(高卒)

参考:令和3年賃金事情等総合調査

上記より、日本企業のほとんどは中小企業であるため、一般的な会社員と比較すれば、国家公務員の退職金は高額であると言えます。

しかし、大企業の総合職というエリートクラスになると、やはりそちらの方が退職金は良いと言えるでしょう。

地方公務員の退職金と比較

地方公務員と比べた場合はどうでしょうか。以下では総務省の「令和4年度給与・定員等の調査結果等」を参考に、地方公務員の退職金の平均額を自治体別に紹介します。なお、金額は定年退職時の全職種の平均です。

  • 都道府県:2,204万円
  • 指定都市:2,144万円
  • 市区町村:1,763万円

上記より、市区町村に勤務する地方公務員よりは国家公務員の方が退職金は高いことが分かります。

一方で都道府県や指定都市で働く上級の地方公務員になると、国家公務員よりも高い退職金がもらえるようです。

国家公務員の退職手当の支給状況

パソコンを見る二人 ここからは国家公務員の退職手当の支給状況について解説します。

退職理由別にみる平均退職手当

以下では「常勤職員」と「行政職俸給表(一)適用者」の退職者数及び平均退職手当を、退職理由別に紹介します。

ちなみにこれから紹介するデータは、全て総務省人事・恩給局が集計した平成11年度中の退職者のデータです。

  • 常勤職員
退職理由 退職者数 平均退職金手当
59,146人 12,971千円
定年 12,854人 26,582千円
勧奨 11,744人 29,510千円
自己都合 13,489人 2,388千円
その他 21,059人 2,219千円
  • 行政職俸給表(一)適用者
退職理由 退職者数 平均退職金手当
7,017人 21,857千円
定年 1,980人 26,938千円
勧奨 2,949人 30,803千円
自己都合 1,105人 3,242千円
その他 983人 5,708千円

なお、「常勤職員」には「行政職俸給表(一)適用者」のデータも含まれています。またそれは以下で紹介するデータに関しても同じです。

勤続年数別にみる平均退職手当

続いては「常勤職員」と「行政職俸給表(一)適用者 」の平均退職手当を、勤続年数別・退職理由別に見ていきましょう。

  • 常勤職員
勤続年数 定年(千円) 勧奨(千円) 自己都合(千円) その他(千円)
5年未満 1,695 3,052 311 873
5年〜9年 3,751 5,399 1,278 3,338
10年~14年 4,852 5,468 2,968 5,165
15年~19年 6,923 7,198 5,062 7,261
20年~24年 13,286 12,851 9,353 13,326
25年~29年 22,873 25,104 15,066 20,466
30年~34年 29,026 30,603 18,788 26,943
35年~39年 29,820 30,432 21,520 29,110
40年~44年 28,071 31,999 23,955 33,699
45年以上 33,688 33,315 29,430 56,080
平均勤続年数 34年6月 35年9月 7年5月 3年9月
  • 行政職俸給表(一)適用者
勤続年数 定年(千円) 勧奨(千円) 自己都合(千円) その他(千円)
5年未満 1,201 1,519 265 182
5年~9年 2,701 3,904 1,092 1,922
10年~14年 4,076 0 2,411 3,645
15年~19年 6,610 5,626 4,290 5,862
20年~24年 12,252 13,839 8,450 12,901
25年~29年 20,108 27,965 14,278 19,422
30年~34年 25,049 30,906 16,991 25,078
35年~39年 27,562 31,534 20,390 28,063
40年~44年 27,672 30,222 22,119 27,970
45年以上 27,263 0 0 0
平均勤続年数 38年10月 36年4月 10年2月 8年8月

年齢別退職者と平均退職手当

次は「常勤職員」と「行政職俸給表(一)適用者 」の平均退職手当を、年齢別・退職理由別に紹介します。

  • 常勤職員
年齢 定年(千円) 勧奨(千円) 自己都合(千円) その他(千円)
19歳未満 0 0 123 265
20歳〜24歳 0 0 287 942
25歳~29歳 0 0 653 810
30歳~34歳 0 0 1,197 983
35歳~39歳 0 9,192 1,924 2,092
40歳~44歳 0 13,983 3,694 4,886
45歳~49歳 0 18,786 8,219 10,999
50歳~54歳 26,552 28,757 11,827 17,694
55歳~59歳 34,470 29,978 15,647 22,461
60歳~64歳 25,060 33,173 15,792 14,757
65歳以上 34,785 35,857 2,487 15,456
退職時平均年齢 59.1歳 56.5歳 32.2歳 26.0歳
  • 行政職俸給表(一)適用者
年齢 定年(千円) 勧奨(千円) 自己都合(千円) その他(千円)
19歳未満 0 0 85 138
20歳~24歳 0 0 319 157
25歳~29歳 0 0 793 225
30歳~34歳 0 0 1,624 795
35歳~39歳 0 10,342 3,600 1,365
40歳~44歳 0 15,898 7,171 4,704
45歳~49歳 0 19,176 13,467 9,428
50歳~54歳 0 31,196 15,040 18,046
55歳~59歳 0 30,994 18,866 24,610
60歳~64歳 26,931 25,412 22,427 10,933
65 歳以上 32,048 13,018 300 231
退職時平均年齢 60.0歳 56.4歳 32.0歳 37.2歳

退職金額と支給額別退職者数

以下では、退職手当支給額別・退職理由別に「常勤職員」と「行政職俸給表(一)適用者」それぞれの退職者数を紹介します。

  • 常勤職員
退職手当支給額 定年(人) 勧奨(人) 自己都合(人) その他(人)
500万円未満 262 39 11,879 19,658
500~1,000万円未満 309 118 642 246
1,000~1,500万円未満 430 262 417 195
1,500~2,000万円未満 748 472 354 229
2,000~2,500万円未満 2,636 1,219 136 299
2,500~3,000万円未満 5,463 4,476 45 276
3,000~3,500万円未満 1,552 3,713 9 86
3,500~4,000万円未満 945 983 3 28
4,000~4,500万円未満 207 112 1 7
4,500~5,000万円未満 44 30 2 2
5,000~5,500万円未満 142 63 0 9
5,500~6,000万円未満 135 49 83 0
6,000~6,500万円未満 26 40 0 3
6,500~7,000万円未満 5 35 0 10
7,000~7,500万円未満 2 22 1 2
7,500~8,000万円未満 2 19 0 3
8,000万円以上 32 58 0 3
  • 行政職俸給表(一)適用者
退職手当支給額 定年(人) 勧奨(人) 自己都合(人) その他(人)
500万円未満 8 6 916 743
500~1,000万円未満 8 3 60 23
1,000~1,500万円未満 19 17 59 21
1,500~2,000万円未満 32 26 50 31
2,000~2,500万円未満 308 123 20 47
2,500~3,000万円未満 1,443 798 0 107
3,000~3,500万円未満 135 1,712 0 10
3,500~4,000万円未満 27 255 0 1
4,000~4,500万円未満 0 9 0 0
4,500万円〜 0 0 0 0

国家公務員の退職金は今後どうなる?

パソコンを見る女性 最後に国家公務員の退職金の今後について解説します。

国家公務員の退職手当は減少傾向

2012年に政府は国家公務員の退職金を400万円減らす方針を閣議決定し、これにより国家公務員の退職金は民間企業とそれほど変わらない約2,300万円程度に縮小してしまいました。

また2015年には共済年金が厚生年金に一元化され、これにより公務員の特権とされていた「職域加算」が廃止、代わりにできたのが「年金払い退職給付」です。

この制度ができたことで、公務員も保険料を支払わなくてはいけなくなりました。さらに「年金払い退職給付」の半分は終身年金であるため、もし早くに亡くなってしまうとその時点からもらえなくなります。

長生きした場合でも、長生きすればするほど金額は減少していきます。

よって公務員は昔ほど経済的に安定している職業ではなくなってきていると言えるでしょう。

国家公務員も老後資金を準備しよう

上記より、退職金や年金は昔に比べて減少しているため、国家公務員と言えども老後は安泰ではありません。

そのため、定年前から、もしくは若いうちから老後資金の計画を考えておくのが良いでしょう。

ちなみに老後資金を準備する方法としては、例えばiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどを使って資産運用をするという選択肢があります。

また民間の個人年金保険に加入するというのも良いでしょう。これらを使うと節税にもなるため、是非一度ご自身に合ったものがないか調べてみてください。

国家公務員の退職金の相場についてまとめ

国家公務員の退職金の相場についてまとめ

  • 定年退職金額は約2,090万円
  • 早期退職(応募認定退職)の場合は約2,650万円
  • 昔ほど退職金や年金はもらえない
  • iDecoやつみたてNISAなどで老後資金の準備をするのが良い

国家公務員の退職金の相場について解説しました。

国家公務員の退職手当の平均額は約1,082万円、定年退職に限ると約2,090万円です。これは一般的な会社員に比べると高い水準になります。

しかし、昔に比べると国家公務員の退職金は減っており、早期退職者への特例措置などはあるものの、その相場は民間企業と対して変わりません。

さらに年金に関しても昔ほどはもらえないため、iDecoやつみたてNISAなどを利用し、個人で老後資金を準備しておくのが賢明です。

以上を参考に、より良い職業選択、資産運用などについて考えてみてください。

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