国家公務員の総合職とは?試験の内容や一般職との違い・内定を得るための対策法も紹介
「国家公務員総合職って一般職とどう違うの?」
「国家公務員総合職試験はどれくらい難しいの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
毎年多くの方が受験する国家公務員試験ですが、総合職と一般職に大別されます。
総合職は「国家総合職」とも呼ばれており、公務員試験の中でも難易度はトップクラスです。
こちらの記事では、国家公務員総合職試験の難易度や一般職との違い、試験日程などについて詳しく解説していきます!
国家公務員総合職についてざっくり説明すると
- 公務員試験の中でも最高レベルの難易度
- 以前までは「国家一種」と呼ばれていた
- 総合職は幹部としての活躍が期待されている
- 仕事は忙しいが、出世は早く金銭的なメリットは大きい
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国家公務員総合職の試験概要
まず、国家公務員総合職の試験とはどういうものなのか、基本的な情報を押さえましょう。
受験資格は院卒または大卒程度
国家公務員試験総合職は「院卒試験」と「大卒程度試験」の2種類が設けられています。
受験資格については年齢制限があり、具体的に以下のように定められています。
- 院卒試験
1990(平成2)年4月2日以降生まれの者で、
(1) 大学院修士課程又は専門職大学院の課程を修了した者及び2021(令和3)年3月までに大学院修士課程又は専門職大学院の課程を修了する見込みの者
(2) 人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者
- 大卒程度試験
(1) 1990(平成2)年4月2日~1999(平成11)年4月1日生まれの者
(2) 1999(平成11)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
ア 大学(短期大学を除く)を卒業した者及び2021(令和3)年3月までに大学を卒業する見込みの者
イ 人事院がアに掲げる者と同等の資格があると認める者
かつては「国家一種」と呼ばれていた
国家公務員総合職は、以前まで国家一種と呼ばれていました。
ベテラン国家公務員は昔の名残で「一種」「二種」と呼んでいる方もいます。
一種は大卒程度試験しか行われていませんでしたが、新たに院卒者の学歴区分が加えられ、対象者が大きく広がりました。
これによって、試験区分の再編と同時に法務・教養区分が新設され試験内容にも変更が加えられました。
国家公務員総合職試験の難易度は?
総合職の試験は司法試験と並んで、国内では有数の難易度を誇っています。
また、公務員は人気の職業であるがゆえに倍率も高く、大卒程度試験の最終合格倍率は15.1倍、院卒試験の最終合格倍率は3.4倍でした。
このように、試験が難しいことに加えて倍率も高いため、国家公務員総合職に合格するのは非常に難しいのです。
合格者の主な出身大学
2019年度試験の国家公務員総合職試験の出身学校別合格者数は、国立大学が70.9%、私立大学が26.0%という結果でした。
なお、合格者の出身学校は全体で130校となっており、多くの大学から国家公務員総合職を輩出していることが分かります。
なお、2019年度公務員採用総合職試験の出身大学別合格者数をランキングで見てみると、以下のようになります。
- 1位「東京大学」307人
- 2位「京都大学」126人
- 3位「早稲田大学」97人
- 4位「北海道大学」81人
- 5位「東北大学」「慶應義塾大学」各75人
- 7位「九州大学」66人
- 8位「中央大学」59人
- 9位「大阪大学」58人
- 10位「岡山大学」55人
このように、出身大学ランキングでは東京大学がトップとなっています。
採用・試験区分は多岐にわたる
国家公務員総合職の採用区分や試験区分は多岐に渡っており、法律や経済、工学などの様々な専門区分に加えて、教養区分が存在します。
- 院卒者試験試験区分
行政、人間科学、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境、法務
- 大卒程度試験の試験区分
政治・国際、法律、経済、人間科学、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境、教養
なお、2020年度の採用予定数は以下の表のようになっています。
区分 | 人数 |
---|---|
行政 | 約60名 |
政治・国際 | 約45名 |
法律 | 約140名 |
経済 | 約65名 |
人間科学 | 約30名 |
工学 | 約175名 |
数理科学・物理・地球科学 | 約30名 |
化学・生物・薬学 | 約50名 |
農業科学・水産 | 約60名 |
農業農村・工学 | 約20名 |
森林・自然環境 | 約30名 |
試験科目と合格点・配点率
国家公務員総合職の試験を構成する1次・2次試験の内容は以下の通りです。
それぞれの試験で問われるものが違うため、しっかりと対応策を考えておく必要があります。
- 1次試験
全試験区分共通で課される「基礎能力試験」と各区分で設けられている「専門試験」の2つの試験が行われ、共に多岐選択式の試験
- 2次試験
記述式の「専門試験」と「政策論文試験」、個別面接の「人物試験」が行われる
公務員試験は素点でなく標準点できまる
国家公務員試験の評価方法は独特で、単に素点で評価するのではなく素点を基にして標準点を算出し、その点数を元にして評価を行っています。
なお、標準点を数式で表すと以下のようになります。
標準点=10×試験の配点比率×{15×(素点-平均点/標準偏差)+50 }
この数式は分かりにくいため、試験に臨む上では「配点比率が総合得点に大きく影響しているんだな」程度に考えておけば十分です。
それでは、その気になる配点比率はどうなっているのか、以下の見出しで見てみましょう。
1次試験の配点比率と合格点
1次試験と2次試験の配点や合格点、平均点は次のようになります。
1次試験の配点はは全体の1/3程度であり、試験の各設問の点数配分は明らかにされていませんが基礎能力試験と専門試験で各40題出題され、素点では40点満点となっています。
合格点はどの試験区分でも200点前後で推移しています。
具体的な平均な目安を挙げると、基礎能力試験が15点、専門試験がどの試験区分によって異なりますが16~20点となります。
つまり、一次試験では40問のうち半分程度を解くことができれば十分なのです。
2次試験の配点比率は全体の2/3
2次試験は全体の2/3程度の配点になっており、1次試験よりも重い配点となっています。
2次試験で行われる政策論文試験は統一して10点満点なのに対し、専門試験(記述式)はそれぞれの区分によって満点は異なります。
ただし、配点比率が1次に比べて大きいことはどの試験区分でも共通しているため、重点的な対策が必要であると言えるでしょう。
なお、最終的な合格点は試験区分によってまちまちですが、概ね500~580点で分布しています。
以上のことを踏まえて全体としてみると、試験対策としては1次試験をまず通過するためにも1次試験対策が外せません。
しかし、最終合格するためには配点が大きい2次試験対策がかなり重要となってくるため、1次試験が終わったら間髪入れずに2次試験対策に着手するべきでしょう。
内定には試験合格後の官庁訪問が必須
試験に合格することで安心してしまう方がいますが、合格することが採用に直結するわけではありません。
試験の実施主体は人事院ですが、実際に内定を出し採用をするのは各省庁であるため、自分をアピールするために官庁訪問をしなければなりません。
筆記試験や面接を通じてある程度の学力や思考力は証明できているため、最終的に内定をもらうためには官庁訪問での現場における対応力や人柄の良さが求められるでしょう。
国家公務員総合職試験の日程
試験日程と合格発表日
まず、国家公務員総合職試験の一般的な受験から合格発表までの日程を見てみましょう。
名称 | 日程 | 対象者(院卒/大卒) |
---|---|---|
申込受け付け | 3月の第四金曜日~4月の第二月曜日 | 大卒・院卒共通 |
1次試験 | 4月の第四日曜日(2020年は延期され7月5日) | 大卒・院卒共通 |
1次試験合格発表 | 試験日の約2週間後(2020年は7月17日) | 大卒・院卒共通 |
2次試験(筆記試験) | 5月の第四日曜日(2020年は延期され7月26日) | 大卒・院卒共通 |
2次試験(人物試験) | 6月上旬(2020年は8月3日(月)~8月11日(火)) | 大卒 |
2次試験(政策課題討議・人物試験) | 5月末~6月上旬(2020年は8月Ⅲ日(月)~8月11日(火)) | 院卒 |
合格発表 | 6月下旬(2020年は8月21日) | 大卒・院卒共通 |
ただし、教養区分(大卒)と法務区分(院卒)の試験に関しては秋に試験が実施される点に注意が必要です。
また、受験の申込受付期間が1週間しかないため、うっかりしていると出願をし忘れてしまう事態になってしまいます。
そのため、受験申込期間が近づいてきたら必要書類をしっかりと揃えておきましょう。
官庁訪問の日程
試験に合格すると、「採用候補者名簿(3年間有効)」に指名が載り省庁がその中から採用面接を行うことになります。
これを「官庁訪問」と呼んでおり、この官庁訪問を経て内定を得ることで、晴れて国家公務員になることができます。
通常のスケジュールであれば、6月末に2次試験の合格発表がされた後の7月上旬から官庁訪問が始まります。
官庁訪問を受け入れる日程は省庁や出先機関のよって違うため、人事院のホムページなどでしっかりと確認しておくと良いでしょう。
なお。官庁訪問は一般的な就職活動と同じような雰囲気で行われます。
自分の長所やなぜその省庁を志望したのか、学生時代はどのような活動をしていたのか、公務員としてどのような貢献をしていきたいのかなど、しっかりとアピール材料を準備しておきましょう。
国家公務員一般職と総合職はどう違う?
そもそも国家公務員の仕事とは
国家公務員は国家の職員として、行政府・司法府・立法府で業務を行うことになります。
それぞれの具体的な活躍の場は、以下のようになります。
- 行政府
内閣府、法務省、厚生労働省、経済産業省、農林水産省などの府省庁や税関・労働局などの地方機関で勤務します。
国家公務員総合職・国家公務員一般職・国家公務員専門職(国税専門官、財務専門官、労働基準監督官など)が該当します。
- 司法府
裁判所(最高裁判所、地方裁判所、家庭裁判所など)で勤務し、裁判所事務官・裁判所書記官・家庭裁判所調査官などが該当します。
- 立法府
国会の各機関(衆議院、参議院、国立国会図書館等)で勤務し、衆議院事務局職員総合職と一般職・参議院事務局総合職・国立国会図書館職員などが該当します。
なお、前述したように国家公務員は総合職・一般職・専門職の3つに大別され、専門職は「食品衛生監視員」や「国税調査官」など、専門知識を必要とする職種なので仕事のイメージが付きやすいです。
一方で、総合職と一般職の違いはなかなか分かりづらいため、以下で総合職と一般職の違いについて解説していきます。
総合職と一般職の仕事内容を比較すると
国家総合職の試験の趣旨は
「政策の企画立案等の高度の知識、技術または経験等を必要とする業務に従事する職員」
です。
一方で、国家一般職の試験の趣旨は
「定型的な事務をその職務とする係員の採用試験」
です。
このように、試験の概要からの国家総合職は高いレベルの知識と技能が求められていることが分かります。
勤務先の違い
国家総合職の勤務先は基本的に霞が関となりますが、省庁によっては2~3年程度のスパンで地方の部局への出向が有り得ます。
また、省庁によっては海外の大使館や総領事館での勤務を経験する可能性もあります。
一般職はの勤務地は基本的に東京都内となり、地方出先機関で採用された場合は関東甲信越地域や東北地域などの「ブロック採用」となります。
総合職と一般職の年収比較
次に、気になる年収について見てみましょう。
初任給は国家総合職(院卒)の場合は213,000円、国家総合職(大卒)の場合で186,700円、国家一般職(大卒) の場合で182,000円となっています。
また、これら初任給に加えて住居手当や地域手当などの諸手当が加算されます。
公務員は年功序列なので、採用後は勤続年数や役職が上がることで昇給していきます。
キャリアとして幹部になることが期待される国家総合職は昇任スピードが速いのに対して、一般職は年功序列に従いゆるやかに昇進してきます。
なお、霞が関の本省の課長級以上は総合職からなり、残念ながら一般職は課長補佐どまりとなります。
これら役職の差が給与に反映されるため、国家総合職は必然的に高給取りとなるのです。
受験者ごとの区分とそのレベル
国家総合職の試験は「大卒程度試験」「院卒試験」区分のみであるのに対し、国家一般職は「大卒程度」「高卒者」「社会人試験(係員級)」などの枠が用意されています。
国家一般職の大卒程度試験の場合、対策するべき科目と勉強量自体は総合職試験とさほど変わりませんが、総合職の試験問題はやはり難易度が非常に高いです。
必要なスキルの違い
国家総合職も国家一般職のどちらも、試験の受験にあたって特別なスキルや資格は要求されません。
試験に合格することで「一定以上の知識と知能を身に着けていること」は証明できるため、採用されるためにはその後のアピールが重要になります。
つまり、志望理由書や面接の場において自分の持っているスキルや強みをアピールすることが求められるので、しっかりと準備しておく必要があります。
学生時代に頑張ったことやこれまでの経験で身に着けたことなどを、「国家公務員としてどのように働きたいか」という点とリンクさせながら魅力的なアピールを考えると良いでしょう。
国家公務員総合職採用に向けた対策方法
受験する試験区分の選び方が重要
前述したように国家公務員総合職の試験区分は様々ありますが、法律区分の採用枠が最も多くどの省庁でもほぼ採用があるため、狙い目と言えるでしょう。
人事院のホームページで見ることができますが、各試験区分の採用実績を見ると法律区分で多く採用されています。
具体的な数字を見てみると、2016の実績だと全省庁を合計した法律区分の採用実績が155、経済区分が67、政治・国際区分が2、教養区分が58という結果でした。
このように、法律区分が最も採用されやすいのです。
数的処理がポイント
公務員試験では試験科目が多岐に渡るため、非常に対策が難しいという特徴があります。
浅く広く勉強しなければならず、試験全体でいかに合格点を越えるかがポイントとなります。
配点の高い専門科目に加えて、重点的に対策するべき試験科目は「数的処理」です。
この科目は、問題に慣れない内は非常に苦労してしまいますが、解法パターンを体得し、問題演習を反復すれば必ず得点できるようになります。
問題に慣れることで得点源にすることも可能なので、早い段階から勉強に着手し多くの訓練を積むことが重要です。
この科目で高得点を叩き出すことができれば合格に大きく近づくことができるので、時間をかけてじっくりと対策するようにしましょう。
人物試験・官庁訪問も要注意
近年の選考過程において、人物試験と官庁訪問の評価のウエイトがとても大きくなっているため、学科試験を突破した後はしっかりと自己アピールを考える必要があります。
試験を通過する上で筆記試験で高得点をマークすることも当然重要ですが、職場においては学力のみならず人柄の良さやコミュニケーション能力も必須です。
そのため、人物試験や官庁訪問自分の魅力をで魅力的にアピールできなければ採用されないでしょう。
「自分」という商品を魅力的にアピールするためには事前の準備がとても重要です。
希望している省庁の管轄している業務や政策を事前に研究しておき、一般の就職活動と同様に自身の経験や思考、公務員としてどのように活躍していきたいかを考えておきましょう。
教養区分は大学3年生から受けられる
教養区分は少し特殊で、受験資格の年齢要件が他の試験よりも1歳若く設定されています。
試験が秋に実施されることから、大学3年生から受験できる国家総合職試験として注目されています。
教養区分の試験内容は、専門性を磨くという視点ではなく行政官としての基礎的知識を試すことに主眼が置かれているため、別区分の試験の対策にも繋がります。
そのため、大学3年生の時から教養区分の試験勉強をしておくと、後々役に立つ可能性が高いです。
合格には併願受験がおすすめ
公務員を目指す上で併願はスタンダードであり、実際に多くの合格者が併願受験をしています。
多くの公務員試験は別日程で行われているため、併願しやすいのです。
また、公務員試験の試験科目は他の試験でも共通しており、勉強した内容のほとんどは他の公務員試験でも流用することができます。
最も難関試験である総合職試験対策をしておくことで、自分の可能性を大きく広げることができるでしょう。
対策に不安を抱える人は通信講座がおすすめ
国家総合職試験は、高い難易度を誇ることから、多くの受験生が対策に不安を抱えているでしょう。
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国家総合職の受験を検討している方は、ぜひアガルートの講座の受講を検討してみてください!
国家総合職に向く人
国家総合職は幹部としての活躍が期待されていることから、仕事が忙しくても苦にならずバリバリ働きたいと考えている方が向いています。
リーダーになることが期待され、若手の頃から異動を繰り返して多様やスキルを身に着けることができるため、国家規模の仕事をこなしたい方はぴったりな職種と言えるでしょう。
責任が重い仕事を任される機会が多い分、プレッシャーを感じながらときには夜中まで仕事をしなくてはならない日がありますが、それが苦にならないような方でなければ国家総合職は務まりません。
また、前述したように国家総合職は国家一般職と比べると出世が早く年収もかなり上がるため、安定した身分を得ながらしっかりと稼ぎたいと思っている方も国家総合職に向くでしょう。
ワークライフバランスを求めるのか、また仕事のやりがいを求めるのかなど、自分のキャリアをイメージしながら受ける試験を決めると良いでしょう。
国家総合職のまとめ
国家公務員総合職のまとめ
- 非常に難易度が高いため、入念な対策が必要
- 学科試験の後は人物試験と官庁訪問対策が必須
- キャリアを積めば高い年収が期待できる
- 様々な試験区分があるため、自分のキャリアを考えて決めよう
国家総合職試験の難易度は非常に高いですが、試験をパスできれば非常に恵まれた待遇を得ることができます。
一般職よりも重要な役割を任せられ、責任のある仕事をこなさなければならないため、非常に大きなやりがいを感じることもできるでしょう。
スケールの大きい仕事を希望していて、国民に貢献したいと考えている方はぜひ国家総合職を目指してみてください!