保護司ってどんな資格なの?仕事内容・報酬制度・働くメリットまで全て解説!
「保護司ってどんな資格なの?報酬がないって本当?」
そんな疑問を抱く人は少なくないはずです。
保護司とは人の立ち直りをサポートするための資格ですが、具体的な仕事内容や報酬制度、働くメリットなど、気になる点がある人も多いでしょう。
そこでこの記事では、保護司についてあらゆる面から分かりやすく解説していきます。
記事を読み終わる頃には、保護司がどんな資格なのかを理解することができるはずです。
仕事内容や報酬制度、働くメリットなど、保護司にまつわる正確な情報を紹介します。
保護司についてざっくり説明すると
- 保護司とは人の立ち直りをサポートする資格
- 保護司は報酬がない
- 保護司として仕事をすると多彩なメリットがある
保護司ってどんな資格?
保護司とは人の立ち直りを支える資格です。日本には約5万人の保護司がいますが、保護司とはどんな資格なのか気になる方は少なくないでしょう。
そこで保護司について解説していきます。保護司について正しい知識を習得しましょう。
保護司とは
保護司とは犯罪をしてしまった人や非行少年の更生や社会復帰をサポートする資格です。社会的に非常に重要な役割を担っています。
保護士は国家公務員として知られていますが、職務を続けるために必要な費用以外は支給されないことが特徴です。ボランティアとして活動する保護司は、世界でも珍しいといわれています。
世界でも稀な制度である保護司ですが、保護司の歴史は明治21年から始まっており、昔から必要とされている資格の一つなのです。
保護司は法務省が管轄
保護司は法務省が中心となっておこなっており、法務大臣が組織をまとめて動かし管理しています。非常勤の一般国家公務員として知られている資格です。
保護司法に基づいて保護司選考会で法務大臣から認められることで保護司として活動することが可能です。
また、保護司になった場合、都道府県にある保護区のうち、いずれかに所属して活動します。
保護司を長年勤める人も
保護司はボランティアとして活動するため無償でおこなうことが一般的です。しかし長年保護司として活動する人は多いといわれています。
保護司として活動する人の職業はさまざまですが、保護司として数々の経験や知識を生かして更生や社会復帰をサポートし続けている人が多いことが現状です。
保護司として活動し続ける理由は、さまざまな人生経験を活かせるため、それからやりがいや喜びが感じられるためでしょう。
保護司の業務内容
保護司の業務内容は、犯罪や非行をしてしまった人の社会復帰や更生を支援することです。
犯罪や非行をしてしまった人のうち対象になる人は、少年事件を引き起こして保護観察処分を受けた人や少年院を仮退院している人、保護観察付の人、執行猶予付きの人などとなっています。
保護司は社会復帰や更生の支援対象となっている人の生活の実態や状況などをヒアリングして相談に乗ること、助言や指導をすることなど、さまざまなサポートをすることが主な役割です。
面談の結果は毎月の報告書で保護観察所に伝えなければなりません。
また保護司会において犯罪を予防するために積極的に活動することも保護司の仕事として挙げられます。
保護司の人数は?
現在全国各地で仕事をする保護司は約48,000人です。
保護司として仕事ができる人の人数は保護司法によって決められており、人数の上限は52,500人と定められています。
保護司の男女比率は男性が73.7パーセント、女性が26.3パーセントです。なお女性の比率は年々高くなっています。
保護司の難易度
保護司法に基づいて保護司選考会で認められた場合に限り仕事ができる保護司ですが、保護司の難易度が気になるという人も多いのではないでしょうか。
そこで保護司の難易度について解説します。保護司の試験や合格率、合格ライン、保護司の仕事に向いている人など、さまざまな情報をお届けします。
保護司の試験はあるの?
結論から言うと、保護司になるための試験はありません。
ただし保護司になるためには保護司法に基づいた保護司選考会で認められることが必須です。
また保護司になった場合、現場に出る前に基本的な知識を習得するための研修に参加しなければなりません。その後も経験年数に応じた研修を受講することが求められます。
研修は保護観察官がおこなうことが一般的です。なお研修では面接方法を学ぶことや報告書の作成方法を学ぶこと、関係法令を学ぶこと、事例を研究することなど、さまざまなことをおこないます。
保護司の合格率や合格ラインについて
上記のように、保護司の資格には試験がありません。そのため、合格率や明確な合格ラインも存在しないといえるでしょう。
ただし少年院や刑務所から出てきた人をサポートするため、必須となる条件は存在します。
保護観察所の推薦があり法務大臣から認められること、それから研修を受けることも欠かせません。
保護司には試験がありませんが、条件を満たせるように努力することは必要と言えるのです。
保護司に向いている人
保護司に向いている人は、下記の4つの事柄に当てはまる人です。
- 保護司はボランティアとして活動するので社会貢献に対しての気持ちが強いこと
- 他人をサポートできるほど精神的にゆとりがあること
- 時間を問わず対象となる人と面会する必要があるので時間的にゆとりがあること
- 健康的で行動力があり健全な生活を送っても体力のゆとりがあること
こちらの4点に該当する人については保護司の資格がおすすめです。
保護司の報酬制度とは
保護司は法務大臣から認められた非常勤の国家公務員なので給料は貰えません。
ただし給料の代わりに費用弁償が支給され、業務量に見合った金額が支給されます。
また仕事にかかわる実費は全額支給か一部支給されるなど、保護司の報酬は保護司実費弁償金支給規則に従って支払われます。
規則で定められている報酬
保護司に支給する報酬は保護司実費弁償金支給規則で定められており、5種類に分類されます。
1種類目は補導費、2種類目は生活環境調整費、3種類目は特殊事務処理費、4種類目はその他の費用、5種類目は旅行実費です。
補導費
保護司が対象者の相談を受けてアドバイスや指導などの保護観察に関する業務をした場合、補導費が支払われます。
保護司実費弁償金支給規則の第2条によると、担当した案件1件に対して1か月7,660円以内の報酬が支払われるとのことです。
生活環境調整費
保護観察所長から依頼され生活環境や保護観察にまつわる調査をした場合、その報告をしたときに生活環境調整費が支払われます。
保護司実費弁償金支給規則の第3条によると、報告をした案件1件につき3,440円以内の費用が支払われるとのことです。
また調査の場所が保護司の居住地から片道8キロメートル以上の場合、調査のために必要になった旅行実費も支払われます。
特殊事務処理費
裁判所や検察庁などの機関との連絡、またはその他の特殊な事務処理をするように任命を受けた場合、特殊事務処理費が支給されます。なお保護観察所長からあらかじめ任命されることが条件です。
保護司実費弁償金支給規則の第3条によると、処理をおこなったときに限り1日6,600円以内の費用であれば、支給を受けることが可能です。
その他の費用
保護司が保護司実費弁償金支給規則の1条から3条以外の職務をおこなう場合、その他の費用として職務をおこなうために必要となる実費が支払われます。
なお保護観察所長が必要だと認めており、職務を命じたときに限ります。
旅行実費の算出
保護司実費弁償金支給規則の1条から4条の旅行費の算出に関しては、国家公務員等の旅費に関する法律で定められている規則に従って支払われます。
なお職務の等級については一般職の職員の給与に関する法律で定められた行政職俸給表の2級から5級までのあいだになるとのことです。
等級は保護司ごとに異なり、法務大臣が決定する職務の等級で計算します。
保護司として働くメリットはあるの?
保護司として働いた場合、多彩なメリットがあるといわれています。
保護司として働くメリットのうち3つのメリットを解説します。
特別な経験を得ることができる
保護司の業務内容は、犯罪や非行をおこなってしまった人の更生や社会復帰を支えることです。少年院や刑務所の人と関わる保護司だからこその貴重な経験ができます。
また犯罪や非行を防止するための勉強ができること、それから社会活動のクリーンとはいえない部分をクリーンにしていくことなど、さまざまな経験ができる点もメリットの一つです。
保護司だからこそ味わえる特別な経験は、生きていくうえで役立つことに違いありません。
自分の人生経験を活かすことができる
保護司の業務では、自分の人生経験を活かせます。
犯罪や非行をしてしまった人に対して、今までの経験を踏まえたうえで更生や社会復帰のサポートをする、というように自身の経験を活用できます。
また、保護司として仕事をする人の職種は、サービス業や公務員、主婦、建築業など、幅広いです。退職後のライフワークとして続けている人も珍しくありません。
それぞれがそれぞれの経験を活かし、誰かのためや社会のために活動しています。
保護司は自分の人生経験を犯罪や非行をしてしまった人への理解やサポートに生かせる資格といえるでしょう。
保護司の将来性に期待
保護司の仕事は将来性に期待することができます。
人との関わりが減っている中、非行や犯罪をしてしまった人をサポートすることは非常に貴重な経験です。
また社会の役に立つことで充実感を感じられること、自身の成長にもつながることなど、自分自身に良い影響もあるでしょう。
人との関係性が希薄になっているからこそ密接な関わりは必要であり特別な経験として成長に結びつきます。
人と関わる仕事なので介護や医療など、人と密接に関わる仕事をしたときに資格や経験を活かすことも可能です。
保護司として働くデメリットはあるの?
保護司の職につくデメリットとして、人によっては身の危険を感じてしまうことが挙げられます。
しかし実際の現場を見てみると、危害を加えられることは極めて稀です。
以降では保護司として働くデメリットについて、詳しい情報をお伝えしていきます。
保護司は人によって身の危険を感じてしまうことがある
保護司の仕事は身の危険を感じるといった考えを持つ人は珍しくありません。
犯罪や非行をおこなった人に保護観察処分がくだった場合、保護観察官が一人ひとりを担当します。しかし見守り役については保護司の担当になることが一般的です。
こういった要因から、保護司として働くことに対して身の危険を感じてしまう人が一定数いるのが現状です。
また、保護司は犯罪や非行をおこなってしまった人を相手に仕事をするので、保護司として仕事をしない人よりはリスクが比較的大きいです。
そのため身の危険を感じてしまう人が多いといわれています。
保護司の身に危険が及ぶことは極めて稀
身の危険を感じる人もいる保護司の仕事ですが、保護司の身に危険が及ぶことは滅多にないといわれています。
保護司の身に危険が及ぶことが滅多にない理由は、犯罪や非行をおこなってしまった人のすべての責任や面倒をひとりで背負うことはなく、さらに地域によっては児童相談所や教育委員会と連携していて情報共有できるからです。
そのため逆恨みや怒りなど、さまざまな感情や衝動などで危ない思いをすることは極めて稀でしょう。
保護司の基本情報
保護司になるための基本情報を解説します。選考基準や申し込み方法、研修内容など、基本的な情報をお届けします。
保護司の選考基準
保護司になるために必要な資格はありません。
ただし保護司なるための条件を満たすこと、保護観察所の所長から推薦されること、法務大臣に任命されることは必須事項として挙げることができます。
なお、保護司になるために満たさなければならない条件は下記の4つです。
- 人格や行動などに関して社会的な信頼や人望があること
- 仕事をするときに精神的なゆとりや時間的なゆとりがあること
- 安定的でバランスのとれた生活を送っていること
- 健康面で問題がなく体力のゆとりがあること
保護司になるためには、こちらの4つの条件を満たさなければなりません。なお保護司になった場合の任期は2年間ですが継続可能です。
保護司になることのできない人
下記の3つのいずれかに当てはまる場合、保護司にはなれません。
- 成年被後見人や被保佐人になっていること
- 禁錮以上の制裁を受けた経験があること
- 日本国憲法の施行の日以降に日本国憲法や政府を暴力で打ち壊すと主張する政党や団体について結成した経験や加入した経験があること
申し込み方法
都道府県の保護観察所によって申し込み方法は異なります。そのため自分が仕事をしたいと希望する保護観察所に確認しなければなりません。
年齢制限は?
保護司には明確な年齢制限がありません。ただし初めて保護司になる場合、65歳以下であることが条件だといわれています。また任期は2年間で継続可能ですが、継続は76歳未満に限られているとのことです。
なお保護司は高齢化が進んでおり、対処策として平成31年3月に保護司の安定的確保に関する基本的指針の改訂版、それから保護司の安定的確保のための10のアクションプランが策定されています。
保護司の研修内容は?
保護司として認められた場合、基礎知識を習得するために研修を受けなければなりません。
また、研修は最初だけでなく、経験年数や適性によっても随時受ける必要があるという点に注意が必要です。
なお研修の種類は大きくわけて6つあります。6つの研修それぞれについて、詳しく解説します。
新任保護研修
新任保護研修の対象はすべての新任保護司です。
保護司としての使命や任務、身分、担わなければならない役割、保護司として必要不可欠な基本的知識、修得すべき心構えなど、保護司にまつわる初歩的なことを学びます。
処遇基礎力強化研修
処遇基礎力強化研修の対象は新任保護司です。
処遇基礎力強化研修では保護司として仕事を進めるうえで必要な事務手続きを学ぶこと、扱う実務の具体的なものに関して学習すること、保護司会でおこなっているものについて理解していくことなど、基礎的な力を強化します。
なお処遇基礎力強化研修は、新任保護研修の後におこなうことが一般的です。
指導力強化研修
指導力強化研修の対象は任期満了後に初めて継続をする保護司です。
指導力強化研修とは、保護観察や保護司会活動をおこなううえで必要不可欠な知識を習得することや技術を伸ばしていくことなど、指導力を高めるための勉強をメインとしておこなう研修です。
処遇や保護司会活動で中心的な存在となるためにおこないます。
地域別定例研修
地域別定例研修は保護司全員が対象の研修です。保護区ごとに年間を通して実施されるでしょう。
地域別定例研修は実務をするうえで必要になる知識や技術のレベルを高めることを目的としておこないます。
また知識や技術のレベルを高めるだけではなく、研修の効果をさらに高めることも目的のひとつです。
特別研修
処遇を踏まえたときに特別な気遣いが必要不可欠となる犯罪や非行をおこなった人の取り扱いについて学ぶ研修が特別研修です。
専門性の高い知識や技術を学ぶことを目的におこなわれます。また研修で得られた効果をより高めることも目的のひとつです。
自主研修
通常は保護観察所から主任官が来て研修をおこないますが、自主研修では主任官が来ないので先輩の保護司が説明をおこないます。
保護司として仕事をするうえでの情報交換ができること、それから疑問点や気になる点についての対処法を学べることなど、数々の有益な情報を手に入れられる研修です。
保護司と合わせて取りたいおすすめ資格
保護司と合わせて取りたいおすすめの資格を紹介します。スキルアップや高収入を目指せる資格、地域貢献に役立てる資格について情報をお届けします。
保護観察官
保護司は全国に約5万人いますが、保護観察官は全国に約1,000人のみです。
保護観察官は保護司と協力し合い、保護観察の効果をより高める役割を担っています。
保護観察官が持つ専門的な知識や技術、それから保護司の持つ地域独特の性質や民間性が融合することで効果を高められるのです。
保護監察官は無償の保護司とは異なり国家公務員です。保護司とあわせて取ることでより専門性を高めることができます。
また高収入を目指せる資格として知られており、スキルアップだけでなく高収入を目指したい人にもおすすめです。
人権擁護委員
人権擁護委員は保護司と似た性質を持つ資格です。
法務大臣に認められることで人権擁護委員として活動できること、地域に密着した取り組みをしていること、報酬はなくボランティアのような扱いであることなど、さまざまな点で似ているといえるでしょう。
人権擁護委員の主な活動内容は、人権相談や人権侵害の被害者の救済、人権啓発活動です。
地域のためにさらに役立ちたいといった熱意のある人におすすめします。
保護司についてまとめ
保護司についてまとめ
- 保護司とは犯罪や非行をおこなってしまった人の更生や社会復帰をサポートする資格
- 保護司は報酬がないものの業務に対してのお金は支払われる
- 保護司は人生経験を活かせるうえに特別な経験ができる将来性のある資格
保護司についてあらゆる側面から徹底解説しました。
仕事内容から報酬制度、働くメリットなど、保護司にまつわるさまざまな情報をお届けしています。
保護司は社会貢献に強い関心がある人や精神的なゆとりがある人、時間的なゆとりがある人、体力的にゆとりがある人におすすめの資格です。