刑務官の階級はどうなっているの?組織構造や出世の実態・階級章まで詳しく解説!
「刑務官の仕事に興味があるけれど、仕組みや昇進はどうなっているの?」
そんな疑問をお持ちの方向けに、刑務官の階級や昇進の仕組みについてまとめました。
法務省管轄の施設で働く国家公務員である刑務官は、日本の治安を支えるという役割を担う重要な職業です。
この記事では、刑務官にはどのような階級があるのか?
どのような条件で階級が上がるのか?という情報をご紹介します。
この記事を読み終えた時、刑務官として働く上でのモチベーションやエリート刑務官を目指すための設計を作りやすくなるはずです!
刑務官についてざっくり説明すると
- 刑務官の階級は全部で9つある
- 階級昇進には勤務年数や勤務成績が条件となる
- 階級の中には試験をクリアする必要があるものも存在する
刑務官の階級は?
国家公務員である刑務官の階級は、大きく分けて次の9つです。
刑務官は細かく階級が分けられ、一目でわかるように階級章も異なっています。
一般企業における該当役職も記載しておきます。
- 看守(一般職 階級章:シルバーの台にシルバーの標章、両サイドに1本のシルバー線)
- 主任看守(一般職 階級章:シルバーの台にシルバーの標章、両サイドに2本のシルバー線)
- 看守部長(一般職 階級章:シルバーの台に円形シルバーの標章、両サイドに3本のシルバー線)
- 主任看守部長(一般職 階級章:シルバーの台にゴールドの標章、両サイドに1本のゴールド線)
- 副看守長(係長・主任クラス 階級章:ゴールドの台にゴールドの標章、両サイドに2本のゴールド線)
- 看守長(課長・課長補佐・支所長・支所長次長クラス 階級章:ゴールドの台にゴールドの標章、両サイドに3本のゴールド線)
- 矯正副長(部長・課長・支所長クラス 階級章:ゴールドの台にゴールドの桜花賞が1つ)
- 矯正長(所長・部長クラス 階級章:ゴールドの台にゴールドの桜花賞が2つ)
- 矯正監(区長・大規模所長クラス 階級章:ゴールドの台にゴールドの桜花賞が3つ)
内容参考:法務省 刑務官採用試験公式HP
一般職クラスの看守や主任看守では、昇進のハードルもそこまで高くありません。
着実に勤続年数と勤務成績を積み上げておけば、上官からの推薦も得やすく給料UPも実現可能です。
最初の階級・看守
刑務官採用試験に合格した人が初等科研修を修了すると、この「看守」という階級からスタートします。
刑務官にとって最初の階級であり、一部を除いて多くの職員が看守として働きます。
一般企業では新入社員や役職のついていない一般職員と同じ立ち位置です。
刑務所ないで一般職員として仕事を覚え、先輩や上司から教わりながら1人前を目指します。
ちなみに、シフト制で夜勤業務があるものの、看守クラスは国家公務員の中でも給料が高めに設定されています。
給与面での安定性というメリットがあります。
看守から主任看守へ
看守から昇進すると「主任看守」という階級に就きます。
主任看守へ昇進するための条件は
- 10年ほど看守として働き必要な知識と経験を身につけていること
- 勤務成績が評価され上官から推薦が得られること
この2点です。
看守から主任看守へ昇進すると、額はそれほどではないものの給料も上がります。
ただ、この階級UPは着実にキャリアアップしたという"名誉的な昇進"という意味合いの方が強めだといわれています。
2ルートからなれる看守部長
看守部長は、施設の中でも工場や舎房を担当する現場監督的立ち位置です。
看守部長へ昇進するには2ルートあります。
- 国家公務員2種採用試験に合格し刑務官を拝命された場合
- 勤続年数が20年前後で必要な知識と経験を積んでいる場合
以前は、必須条件として「中等科研修を修了することと」となっていました。
しかし、近年は勤務成績や勤続年数が考慮されるケースが増え、中等科研修修了が必須というわけでもなくなりました。
看守部長から主任看守部長へ
看守部長の次にある階級は「主任看守部長」です。
以前は、看守部長歴が10年前後になり勤務成績も好評だと、主任看守部長になれました。
しかし、近年はこの主任看守部長という階級自体が廃止状態となっています。
実質、看守部長の次の目指すのは「副看守長」という階級になります。
金の階級章の副看守長
副看守長へ任命されるための条件はこちらです。
- 勤続年数10年以上
- 中等科研修を修了
- 上官からの推薦
一般企業でいうところの主任クラスですが、小〜中規模施設になると区長同様の責任者クラスで仕事をすることもあります。
看守部長までは階級章のカラーがシルバーでしたが、副看守長からは階級章・帽子・袖のカラーがゴールドになります。
一目で階級が上の幹部クラスだと分かるようになり、刑務官の中ではゴールドカラー階級は金筋とも呼ばれています。
副看守長までは一般職員扱いとなるので管区内での異動・転勤があります。
ちなみに、高等科試験に合格し高等科研修修了した場合は副看守長からのキャリアスタートです。
これはいわゆるキャリア組と呼ばれ、刑務官の中でも出世コースと呼ばれています。
管理職クラスの看守長
副看守長の次は「看守長」という階級です。
看守長になる条件はこちらです。
- 高等科研修修了後、ある程度勤務年数を積んでいること
- 現場責任者としての勤務成績と管理者研修修了していること
副看守長を経て看守長へ昇進すると、管理職扱いとなりより責任の重い業務が増えてきます。
刑務官会議への出席や、小〜中規模刑務所(拘置所)では部長クラスの業務を担います。
大規模施設で勤務する場合、一般企業でいうところの課長クラス扱いなので、より責任ある仕事を任されます。
副看守長から看守長へ昇進するということは、一般職員から管理職へ昇進することと同等なので、ここまでくると大きなキャリアアップを果たしたことになります。
課長・部長クラスの矯正副長
看守長の次は「矯正副長」という階級です。
より高い階級となりますが、この矯正副長は高等科研修を修了しただけではなれないところがポイントです。
高等科研修を修了して、なおかつ選ばれた一部の人員しか矯正副長へ昇進できません。
一般企業でいうところの課長・部長クラスなので、矯正副長への昇進は狭き門となります。
矯正副長に任命されると、小規模施設では所長クラスとして、大規模施設では部長として働くようになります。
部長または所長相当の矯正長
矯正副長に昇進した刑務官のうち、矯正長へ昇進できるのはさらにごく一部です。
より責任が大きくなり、小規模施設では所長として1施設を任されることがあります。
大規模施設で矯正長として働く場合は、一般企業でいうところの所長クラスの業務を任されます。
勤続年数や勤務成績、管理者としての手腕が求められます。
刑務官の最高職・矯正監
多数いる刑務官の中でも矯正監は最高階級であり、キャリア組・実力派の中でも矯正監を目指している人は少なくありません。
しかし、最高職である矯正監はより狭き門となっています。
例えば、国家公務員総合職試験をクリアしたキャリア組の中でも、矯正監を目指すなら年齢や勤続年数や勤務成績など厳しい条件をクリアする必要があります。
矯正監は大規模刑務所上層部でもトップであり「最高階級」という名誉の極みともいえます。
ただし、矯正監は2〜3年ほどで全国各地の刑務所・拘置所へ異動というデメリットも抱えているので、非常に慌ただしい日々を送ることになります。
専門官
9つの階級がある刑務官は、階級制度の他に専門官制度も導入されています。
勤続年数・勤務成績から選ばれるもので、昇進制度も組み込まれています。
構造としては階級制度と非常に似ており、全国各地の刑務所・拘置所・喜連川社会復帰促進センターといった施設の矯正処遇部に配属されます。
専門官へと任命された場合、次のような階級に該当します。
- 矯正処遇官:副看守長や看守部長クラスの専門官
- 主任矯正処遇官:副看守長クラスの専門官
- 統括矯正処遇官:看守長クラスの専門官
- 上席統括矯正処遇官:看守長クラスの専門官
- 次席矯正処遇官:矯正副長クラスの専門官
- 首席矯正処遇官:矯正副長や看守長クラスの専門官
基本的に、矯正処遇官の仕事は処遇担当のサポートや所長指定関連の事務業務です。
ちなみに、専門知識や経験の足りない看守や主任看守の場合、専門官制度では対象に入りません。
刑務官に採用後の流れ
刑務官として採用されるには、刑務官採用試験の2次試験までクリアする必要があります。
2次試験までクリアすると、刑務官候補者名簿(人事院)へ登録され、意向調査として勤務希望する施設など回答します。
意向調査を通過すると、勤務希望を出した施設で最終面談が行われ、ここもクリアすると看守として任命され刑務官として働くこととなります。
看守デビューを果たした後、キャリアアップを目指すのであれば、勤務年数や勤務成績を着実に積みつつ必要となる研修を修了していきましょう。
刑務官として昇進するために、いくつかの研修修了が必要となります。
昇進に必要な研修は3つ存在します。
- 初等科研修
- 中等科研修
- 高等科研修
この3つの研修について、以下でご紹介します。
初等科研修
基本的に、刑務官を拝命した人全員が受ける研修です。
研修期間およそ8ヶ月。
研修の中でも長期期間学ぶことになりますが、基本知識・専門知識など業務をこなすために必要な知識とスキルを学ぶ重要なものです。
ちなみに、初等科研修も2種類あります。
- 初等科集合研修:矯正研修支所で行われるもの。研修期間はおよそ2ヶ月半
- 自庁研修:拝命施設で行われるもの。研修期間はおよそ5ヶ月半
初等科研修を修了すると、刑務官として働けるようになります。
中等科研修
刑務官としてキャリアアップする為に必要となるのが中等科研修です。
中等科研修は誰でも受講できるわけではありません。
基本的に、選抜されなければ受講資格が得られないのです。
中等科研修をクリアすると、昇進条件が1つ達成されたことになります。
現在、この中等科研修は刑務所や拘置所などの施設で積極的に受講するよう勧められています。
高等科研修
高等科研修も、中等科研修同様に受講できるのは選抜された人のみです。
選抜される条件や人数もかなり厳しくなっていますが、高等科研修受講資格を得て修了すれば、管理職クラス・幹部クラスへのキャリアアップがより近づきます。
研修では、憲法をより深く理解しているかどうかが最重要事項となります。
刑務官は国家公務員であり、刑務所や拘置所といった特殊な施設で働くためにも憲法への深い理解が求められます。
また、施設内での憲法違反や問題行為による訴訟といったリスクを回避しなければならない階級を目指すため、施設責任者や幹部クラスとして重大な判断を的確に下せる知識を持っているかどうかが重要視されるのです。
刑務官の組織はどのようになっている?
刑務官が勤務する場所は小中規模刑務所や大規模刑務所、拘置所があり組織図もそれぞれ異なります。
(例)中規模刑務所の場合
- 最高階級は所長
- その下は大きく分けて総務部、処遇部、医務部
- 総務部の中に庶務課、会計課、用度科がある
- 処遇部の中には処遇部門、作業部門、企画部門がある
大規模刑務所になると、より部門が細分化され勤務する刑務官の人数も増えます。
出世するためには?
刑務官として出世するためには、中等科研修や高等科研修は確実に修了しくのがポイントです。
また勤続年数や勤務成績も関わってくるので、知識とスキルを積み上官から推薦がもらえるよう努力の継続も必要です。
刑務官にも出世コースに乗りやすいキャリア組が存在しますが、高卒であっても努力と能力次第で階級を上げることは可能です。
刑務官の階級と昇進制度まとめ
刑務官の階級と昇進制度まとめ
- 刑務官の階級は9つあり、専門官制度もある
- 着実に 勤続年数・勤務成績・研修修了を積み重ねればキャリアアップは可能
- 条件をクリアすれば高卒でもエリートコースに乗ることは可能
刑務官には9つの階級があり、他に専門官制度があることもお分かりいただけたと思います。
階級が上がれば上がるほど昇進できる人数は減りますが、キャリア組でも高卒でも能力と努力次第でキャリアアップが可能です。
刑務官を目指す方は、ぜひ実績を積んでキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。