刑務官採用試験の難易度・倍率は高い?募集年齢などの受験資格までわかりやすく解説!
「刑務官試験って採用倍率どのくらいなんだろう?」
「刑務官の受験資格ってどんな条件を満たせばいいのだろう?」
この記事を読まれているあなたは、きっと上記のような疑問をお持ちなのではないでしょうか。
刑務官とは、刑務所や拘置所などの刑事施設に勤務する国家公務員のことです。収容されている受刑者の生活管理や教育指導を行い、受刑者の社会復帰・更生を手伝う仕事をしています。
刑務官は国家公務員なので、倍率も物凄く高いと思われている方も多いのではないでしょうか?
給与についてや仕事のやりがいについて気になっている方もいらっしゃると思います。
この記事では、刑務官採用試験の倍率や試験難易度及び受験資格、刑務官という仕事のやりがいについて解説していきます。刑務官について詳しく知りたい方は是非ご一読ください!
刑務官採用試験についてざっくり説明すると
- 刑務官採用試験の倍率は約5倍。2019年には9.5倍と応募数が急増。
- 基本的には他高卒程度国家試験と比較しても倍率は低め。
- 受験資格は年齢制限のみ。筆記試験も高卒程度と難易度低め。
刑務官採用試験の倍率は平均すると約5倍
刑務官の採用試験は社会人枠採用を除いて刑務A・刑務B・刑務A(武道)・刑務B(武道) と分かれています。
その上に地域ごとで採用試験も分かれているため、それらの組み合わせとなるとかなりのパターンが存在することになります。
よって一概に刑務官採用試験の倍率がいくらであるとは表現しづらくなっています。
ですが一般的な行政国家公務員に比べると、刑務官は給与体系が高い水準で組まれていることなどの理由から競争倍率は高めの傾向となります。平均的に見てみると、刑務官の倍率は約5倍ほどとなっています。
※しかし2019年度における全体の倍率としては約9.5倍となっています。
採用人数の推移
刑務官の採用予定人数についての推移を見てみると、毎年そこまでおおきな変化はありません。
最も採用予定数の多い刑務A・関東甲信越静エリアで年別の採用予定人数を比較してみると、平成28年で135人、平成29年で105人、平成30年で180人となっています。
ここから、刑務官は毎年安定的な募集計画を立てていることが分かります。
刑務官は収容した受刑者の監視が主業務になりますので、受刑者の数に対して刑務官の人数もある程度備えておく必要があります。
中には素行の悪い受刑者もいますので、そういった受刑者を取り押さえるためにも若くて力のある刑務官を毎年採用し続ける必要があります。
倍率の推移
2017〜2019年度における刑務官の申込者、最終合格者及び倍率について表にまとめましたのでご覧ください。2017〜2018年度においては特に大きな変化はないものの、2018〜2019年度では刑務官Aの倍率が大きく伸びています。これは申込者数が急増したことが影響しています。
2017年度 | 申込者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
刑務官A | 3,501人 | 549人 | 6.4倍 |
刑務官B | 844人 | 198人 | 4.3倍 |
刑務官A社会人 | 419人 | 63人 | 6.7倍 |
刑務官B社会人 | 57人 | 14人 | 4.1倍 |
刑務官A武道 | 370人 | 132人 | 2.8倍 |
刑務官B武道 | 72人 | 36人 | 2.0倍 |
2018年度 | 申込者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
刑務官A | 3,134人 | 610人 | 5.1倍 |
刑務官B | 1,029人 | 189人 | 5.4倍 |
刑務官A社会人 | 394人 | 65人 | 6.1倍 |
刑務官B社会人 | 52人 | 8人 | 6.5倍 |
刑務官A武道 | 353人 | 112人 | 3.2倍 |
刑務官B武道 | 65人 | 25人 | 2.6倍 |
2019年度 | 申込者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
刑務官A | 7,805人 | 597人 | 13.1倍 |
刑務官B | 2,720人 | 350人 | 7.8倍 |
刑務官A社会人 | 373人 | 72人 | 5.2倍 |
刑務官B社会人 | 52人 | 8人 | 6.5倍 |
刑務官A武道 | 486人 | 148人 | 3.3倍 |
刑務官B武道 | 89人 | 35人 | 2.5倍 |
申し込み急増の事態
2017・2018年度の刑務官採用試験においては総申込者数は約5,000人ほどでしたが、2019年度においては総申込者数が10,000人を超えました。特に刑務官A・ Bに人気が集中していることが分かります。
刑務官は受験資格が年齢制限のみで、申込者数・倍率共に減少傾向だったので公務員資格の中でも穴場の資格と言われていました。
ところが、一転申込者数が急増した形になります。刑務官が穴場の資格であると同じように考えて応募した人が増えたことが要因と考えられます。
下記でも説明しますが、刑務官は条件面や仕事のやりがいも大きい仕事ですので、そこの魅力を感じる人が増えてきているのではないでしょうか。
他の国家資格と比較すると?
刑務官と他の国家資格(高卒程度)で倍率比較をしてみます。2018年度までは刑務官は倍率の低い部類に入り、狙い目の資格だと言われていました。
ただ刑務官の倍率が2019年度において急増した背景を考慮すると、高卒程度の試験においては税務職員・航空保安大学校などの試験の方が倍率の点で考えた場合は魅力的であると言えます。
ですが倍率の高さで受験する試験を決めるというのも本来の趣旨とずれています。
あなたがなりたい職業、やりたい仕事は何かということにフォーカスを置いて受験する試験を決めていくのが本筋ですので、やりたいことが決まっているのであれば倍率はあまり気にするところではないでしょう。
2018年度 | 合格者数 | 倍率 |
---|---|---|
刑務官 | 222人 | 5.0倍 |
税務職員 | 576人 | 5.4倍 |
航空保安大学校 | 34人 | 6.3倍 |
刑務官試験の難易度は高いの?
刑務官になるためには、一般的には刑務官採用試験に合格する必要があります。採用試験には一次試験・二次試験に分かれています。武道の区分で受験する場合には加えて実技試験が課されています。
1次試験
1次試験の試験内容は、まず基礎能力試験として多肢選択式の筆記試験が行われます。知能分野20問、知識分野20問の計40問を1時間半で解答します。
配点比率4/7と半分以上の点数割合を占めていますので重要な項目となります。筆記試験の出来が合否を分けるといっても過言ではないでしょう。
次に作文試験です。文章の表現力や課題の理解を確認するための試験で、1題を50分で行われます。配点比率は1/7となります。
武道を選択している人は、加えて柔道または剣道の実技試験が行われます。
2次試験
2次試験の試験内容は、まず人物試験として個別面接が行われます。人柄やコミュニケーション能力を確認するためのもので、配点比率も2/7を占めています。
他には、業務に支障が無いかを判断するための身体検査及び身体測定が行われます。これについては合否判定のみとなっており、試験の得点には関係ありません。
筆記試験、作文試験、個別面接が合否を分けることになります。特に配点の高い筆記試験を攻略することが合格の鍵となります。
体力検査
一般区分の受験者は体力検査が実施されます。検査内容としては、立ち幅跳び、反復横跳び、上体起こしなどで筋持久力を図るための内容です。身体検査同様これについても合否のみの判定となります。
筆記試験や作文対策を取ることも重要ではありますが、試験にクリアできる程度の体力は日々つけておくようにしましょう。
刑務官採用試験の受験資格は主に年齢
刑務官採用試験には、刑務・刑務(武道)・刑務(社会人)の3区分が存在します。それぞれに受験資格が設けられていますが、その条件は年齢となります。
学歴などの縛りはありませんので年齢条件さえ満たせば誰でも受験することができます。
数ある国家公務員試験の中でも受験資格条件はかなり緩い部類に入ります。誰でも国家公務員になれる可能性のあるという点で、魅力的な職業であると言えるでしょう。
区分 | 受験資格 |
---|---|
刑務 | 17歳以上29歳未満の男女 |
刑務(武道) | 17歳以上29歳未満の男女 |
刑務(社会人) | 29歳以上40歳未満の男女 |
※年齢は受験年の4/1時点とする
刑務官試験の内容・難易度
刑務官採用試験の難易度は公務員試験区分の「高校卒業」程度となります。そのため、他の行政国家公務員に比べれば試験難易度は低めの部類に入ります。
しかしながら刑務官の倍率は2019年度には10倍近くまで向上しています。
刑務官の採用予定人数は決まっているので、申込者数は増加している背景を考慮すると、誰でも簡単に受かる試験であるとは言えません。
また受験する地域によっても差が大きく出てきます。関東東海エリアですと100人以上の安定した採用人数が確保されていますが、地方になると採用人数が若干名程度のところもあります。
そういったエリアでの受験は倍率がかなり高くなることが予想できます。
刑務官の試験難易度自体は高くありませんが、上記理由により倍率を考慮すると、受験者の中でも上位に食い込んでいく必要があります。
女性の募集もある
刑務官は男性だけでなく女性も募集されています。ですが、男性に比べると女性の採用枠自体は少なくなっています。
実際には2018年度における採用試験合格者のうち、女性は2割程度でした。女性の採用枠も一定数は設けられていますが、男性に比べると狭き門であると言えます。
女性刑務官にも需要があります。試験においても女性同士で競うことになりますので、性別の点はあまり気にする必要はないでしょう。
刑務官試験の合格率
刑務官の合格率は約2割
刑務官の合格率は区分によって多少ばらつきはありますが、例年約2割ほどとなっています。
このあたりの合格率で落ち着いていましたが、2019年度については受験者数が大幅に増加した影響により、1割程度にまで減少しました。
高校卒業程度の国家資格である税務職員や航空・気象・海上保安大学よりも倍率の低い刑務官でしたが、2019年度では逆転の減少が起きています。
刑務官試験の合格基準点
刑務官試験では合格基準点が設定されています。基準点は、刑務A・Bおよび刑務刑務A・B(社会人)と刑務A・B(武道)に分けて設定されています。
通常の試験においては?
筆記試験の科目においては、満点中30%に満たない試験種目が一つも存在しないこと、とあります。
30%未満の場合足切りとして不合格となりますので、偏りが無いように満遍なく勉強していくことがポイントです。
人物試験においても五段階評価のうちC評価以上であった場合に、一次試験を突破することができます。
基本的な応対ができれば十分突破できるレベルにはなりますので、事前に模擬面接やシミュレーションをして対策を練るようにしましょう。
体力検査にも基準が設けられており、規定数値に達しなければ不合格となってしまいます。下記条件を満たせるだけの体力は最低限つけておきましょう。
- 上体起こし・・・30秒間のうち、男21回以上、女13回以上
- 立ち幅跳び・・・男205cm以上、女147cm以上
- 反復横跳び・・・20秒間のうち、男44回以上、女37回以上
身体検査・身体測定・体力検査全てを受験し、何も問題がなければ最終的に合格となります。
武道枠の場合は?
刑務官採用試験を武道枠で受験する場合、上記の内容の試験に加えて実技試験が課されることになります。実技試験は剣道または柔道で実施されます。
A~Cの3段階評価となっており、B評価以上であれば基礎能力試験の点数に実技試験の加算点を合計することができます。
それ以外に関しては通常の試験の合格基準が採用されています。
武道枠で受験する方は勉強だけでなく実技の訓練にも励みましょう。一般枠よりも武道枠の方が採用倍率が低いため、これらの経験者は受験することをオススメします。
刑務官が人気な理由
刑務官に人気が集まる理由は何なのでしょうか?刑務官として働く魅力について解説していきます。
給与面でも魅力的な国家公務員
刑務官の給料は、国家公務員法に従い公安職俸給表であらかじめ設定されています。刑務官全体の平均年収は610万~630万円前後と言われています。
これは一般行政で働く公務員よりも12%程多い金額になっています。勤続年数・昇進が進んでいくと、800万円を超えることもあります。
さらにボーナスや扶養手当・住宅手当、福利厚生や年金についても充実しています。
基本リストラもありませんので、刑務官になれれば安心して生活を築いていくことができます。
社会貢献度が高い
刑務官としてのやりがいとも言える最大の魅力は、社会貢献度が高いところです。
刑務官は服役している受刑者を一番近くで見ることになります。
犯罪を犯してしまった受刑者が、刑務所内の生活において更生し社会復帰して活躍するまでの過程を間近で見ることができるので、社会的にかなり大きな意義のある仕事であると言えます。
当然刑務所内では受刑者のトラブルも対処していかなくてはならないので、日々緊張感を持って業務に望まなくてはなりません。
刑務官採用試験の難易度まとめ
刑務官採用試験の難易度・倍率まとめ
- 他の国家資格と比較しても倍率は低いため今後人気が出てくる可能性あり。
- 受験資格は年齢制限だけなので、誰でも受験することができる
- 刑務官は給与も安定しており、社会貢献度の高い仕事
刑務官採用試験の倍率や受験資格、人気の理由について解説してきました。
刑務官は国家資格試験の中でも倍率は低く穴場の資格試験だと言われてきましたが、2019年に応募人数が急増していることから、同じ狙いで応募してきている人が増えてきていると読み取ることができます。
受験資格が年齢制限のみ、筆記試験も高卒程度なので受験をする敷居が低いことも要因の一つであると言えるでしょう。
何よりも国家公務員であること、給与面も平均水準以上であること、社会貢献度の高い仕事であることが、刑務官という仕事の大きな魅力なのではないでしょうか。
将来やりたいことが具体的に決まっていない方は、刑務官という選択肢を増やしてみるのもありかもしれません。刑務官試験について一度検討してみてください。