個人情報保護士試験の合格率・難易度は?勉強時間・資格取得のメリットまで徹底解説!
個人情報保護は現代の企業活動において不可欠のものであり、今や個人情報保護士は、企業の個人情報保護に関する基本的な資格となっています。
そんな個人情報保護士の資格に興味を持っている方へ、試験の概要や難易度・合格率・資格取得のメリットなどをご紹介します。個人情報保護士試験のお役に立つ内容ですので、ぜひ一通り目を通していただきたいと思います。
個人情報保護士試験についてざっくり説明すると
- 個人情報保護に不可欠な知識を身につけるための認定試験
- 全150問がマークシート方式で実施される
- 受験資格は特になく、社会人が受験するケースが多い
個人情報保護士試験の難易度は高いの?
個人情報保護士は、一般財団法人 全日本情報学習振興協会(以下、協会とする)の開催する認定試験に合格することで認定されます。
試験項目が個人情報保護に特化していることから、他の法律系資格と比べれば難易度は低めと言えるでしょう。きちんと対策をして臨めば十分合格は可能です。
そのためには個人情報保護士試験について知り、しっかりと準備することが大切です。次項より順番に、試験の内容等を確認していきましょう。
試験科目は?
個人情報保護士の試験問題は、個人情報保護の総論(課題Ⅰ)と個人情報保護の対策と情報セキュリティ(課題Ⅱ)の、大きく2つに分けられます。課題Ⅰ、Ⅱともに50問ずつ出題されます。
公開されている試験内容は以下の通りです(2020年4月現在)。ただし、これらは目安であり、実際の試験では内容が一部異なる場合があります。
また、出題項目が変更になる場合もありますので、協会ホームページで最新の情報をご確認ください。
課題Ⅰ「個人情報保護の総論」の出題内容
個人情報保護の総論の出題内容については以下の通りです。
1.個人情報保護法の理解(40問)
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個人情報保護法の歴史(わが国の取り組み、個人情報保護法の成立と施行等)
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個人情報に関連する事件・事故(個人情報が漏洩する原因、被害・損失、事件・事故におけるケーススタディ等)
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各種認定制度(プライバシーマーク、JIS Q 15001等)
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個人情報の定義と分類(個人情報の定義、個人情報の分類等)
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個人情報取扱事業者(個人情報取扱事業者に求められる義務、個人情報取得の手段と利用目的の通知・公開等)
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条文に対する知識と理解(関連法の概要、安全管理措置、民法の不法行為・刑法、ガイドライン等)
2.マイナンバー法の理解(10問)
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番号法の背景・概要(番号法成立の経緯・背景、メリット、今後の課題・留意点等)
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条文に対する知識と理解(総則、個人番号・個人番号カード、法人番号、罰則等)
課題Ⅱ「個人情報保護の対策と情報セキュリティ」の出題内容
次に個人情報保護の対策と情報セキュリティの出題内容は以下の通りです。
1.脅威と対策
- 脅威と脆弱性に対する理解(リスク分析、脅威への認識、脆弱性に対する認識等)
2.組織的・人的セキュリティ
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組織体制の整備(プライバシーポリシーの策定、責任・管理規定、監査・改善等)
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人的管理の実務知識(機密保持に関する契約・誓約、外部委託業者の管理、違反・事故・苦情への対応等)
3.オフィスセキュリティ
- 物理的管理の実務知識(外部からの入退館管理、オフィス内の入退出管理、情報システム設備のガイドライン等)
4.情報システムセキュリティ
- 技術的管理の実務知識(暗号化と認証システム、不正アクセスに対する防御策、ネットワーク・ウイルスに対する防御策等)
※上記1~4より、合計50問出題
全問題マークシート方式
個人情報保護士試験の問題数は、上記の通り課題Ⅰ・課題Ⅱ合計で100問、制限時間は150分です。
出題項目が多く難しそうですが全問マークシート方式、四肢択一なので、要点をしっかり押さえておけば回答しやすいですね。
学ぶ内容の多さから考えると、試験の難易度はやや低く感じるでしょう。
個人情報保護士試験の受験資格
個人情報保護士試験は、国籍や年齢などの制限はなく誰でも受験できます。数ある法律系資格の中では受験のハードルが低く、個人情報保護資格のスタンダードとして挑戦しやすい資格です。
なお試験に合格して個人情報保護士に認定されると、「上級個人情報保護士」や「個人情報保護監査人」等の、上級資格に認定されるための講習会の受講資格を得ることができます。
個人情報保護士の上級資格については、後ほどご説明します。
現在は免除制度はない
平成28年度個人情報保護士試験より、マイナンバーに関する課題が追加され、マイナンバーに関する知識を持つことが個人情報保護士の必須条件と考えられるようになりました。
この新試験制度に移行直後は、マイナンバー実務検定1級または2級の合格者は課題Ⅰの「マイナンバー法の条文に対する知識と理解」が免除されていましたが、その後廃止になったようで令和2年度現在の試験には適用されていませんのでご注意ください。
試験問題は難しいの?
前述の通り、試験問題の回答は全てマークシート方式です。法律系資格の試験問題によくある記述問題が存在しないことは、それだけでも受験者にとって大きなメリットとなります。
さらに、出題される項目が「個人情報保護」と「マイナンバー」に関する2分野に限定されるため、他の法律系資格の試験に比べて勉強する範囲が絞られ、試験準備の計画も立てやすいでしょう。
ビジネス経験者は優位になる
社会人であれば、個人情報保護や情報セキュリティ等に全く関係がないという方はごく少数ではないでしょうか。日頃から馴染みがあれば知識のインプットにも抵抗が少なく、試験勉強を優位に進められます。
また、昨今では学校や地域でも名簿や連絡網を作らない風潮があるなど、個人情報は日常生活にも深く関わっています。そのため、相続など人生の一時期のみに関わる法律よりも取り組みやすいと言えます。
個人情報保護士試験の合格率
次に、個人情報保護士試験の合格率や目安となる合格点・必要な勉強時間について、また日程や受験料など試験の基本情報についても確認していきましょう。
個人情報保護士の合格率は約37.3%
協会の公式発表によると、個人情報保護士試験の過去平均合格率は37.3%と言われています。
ここに、これまで実施された個人情報保護士試験の合格率を過去5年分紹介しておきます。
実施年 | 応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成30年秋期 | 19,692人 | 15,579人 | 7,220人 | 46.3% |
平成31年春期 | 18,129人 | 13,761人 | 7,148人 | 51.9% |
令和元年秋期 | 18,550人 | 14,355人 | 6,754人 | 47.0% |
令和2年秋期 | 9,694人 | 9,121人 | 6,071人 | 66.6% |
令和3年春期 | 15,441人 | 14,089人 | 7,376人 | 52.4% |
令和3年秋期 | 16,231人 | 14,738人 | 7,949人 | 53.9% |
令和4年春期 | 14,253人 | 13,131人 | 8,033人 | 61.2% |
令和4年秋期 | 17,609人 | 15,420人 | 8,018人 | 52.0% |
令和5年4月 | 2,941人 | 2,770人 | 2,111人 | 76.2% |
令和5年5月 | 2,662人 | 2,438人 | 1,906人 | 78.2% |
合格者の平均年齢は37歳であることから、社会人として仕事をする上で、必要性を感じて受験する方が多いと考えられます。
参考として、個人情報保護士試験と同等の合格率である資格試験には、ビジネス実務法務検定2級、日商簿記3級などがあげられます。
個人情報保護士試験の合格点
個人情報保護士試験の合格基準は、課題Ⅰ・課題Ⅱそれぞれ70%以上の正答です。合格点は「基準」ですので、試験ごとの正答率によって調整される場合もあります。
したがって、合格基準よりもある程度高い正答率を保てるように勉強しておくと安心です。協会開催の講習会や公開模試、発行書籍類等を活用することが、効率的な学習におすすめです。
学習方法については後述します。
個人情報保護士合格までに必要な勉強時間
個人情報保護士試験の受験者のうち、過半数の方は試験前の学習時間が10~20時間程度であると言われています。十分に学習時間のとれない社会人の実情を反映した数字と言えるでしょう。
人にもよりますが、仮に10~20時間を最低限必要な学習時間とすれば1~3ヶ月くらいの試験準備期間が必要、というのが一つの目安になります。
仕事をしながら勉強をする方が多いので、時間の有効活用は重視すべきポイントですね。
隙間時間の活用
実際、社会人の方が勉強に活用する時間帯は「通勤中」と「帰宅後の深夜」が合わせて6割以上にも及ぶそうです。早起きして通勤前に勉強している方もいることでしょう。
無理なく集中できる学習スタイルを見つけることが大切です。
試験日程
個人情報保護士の試験日程は、年4回(3、6、9、12月)です。申込期間は、各試験日のおおよその4ヶ月前~5週間前となっています。
試験の開催頻度が高いので、焦らず自分のペースで勉強しながら、受験計画を立てることをおすすめします。
もし不合格でも、またすぐに挑戦できるので、モチベーションが維持しやすいこともメリットです。
受験料は?
個人情報保護士試験の受験料は10,000円(税抜)です。なお、不合格や欠席等の理由で2回連続で受験する方は、10%引きの9,000円(税抜、要申込)で受験できます。
受験料以外の費用としては次のようなものがあります。
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試験対策講習会を受講する場合、受講料15,000円(税抜、試験と同時申込で割引あり)。別途公認テキストの購入(2,200円、税抜)が必要となります。
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公開模試(本番同様の模試と重要問題の回答・解説)に参加する場合、受講料15,000円(税抜、試験と同時申込で割引あり)です。
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試験合格者に発行される認定カードの有効期限は2年間。更新にかかる費用は、更新講習会受講による更新は7,000円、更新テスト実施による更新は3,000円(ともに税抜)です。※個人情報保護士会会員は無料です。
個人情報保護士を取得するメリットは?
個人情報保護士は民間資格であり独占業務は存在しませんが、資格を取得するとどのようなメリットがあるかをご紹介します。
個人情報保護法について正しく理解できる
個人情報保護法は身近なものであるが故に、かえって誤った認識を持っている方も多くいます。勉強することで正確に理解できるようになることが、個人情報保護士資格取得の最大のメリットです。
例えば、個人情報保護士の試験科目である「個人情報保護法」と「マイナンバー法」ですが、それらの関係は個人情報保護法が「一般法」であり、マイナンバー法はその「特別法」に当たります。
細かい説明は割愛しますが、特別法は一般法に優先して適用されるというルールがありますので、マイナンバーを全ての個人情報保護法に当てはめて取り扱うと誤りが生じてしまう、ということになります。
このように特別法まで勉強することは、一般法そのものの理解を深めるために、非常に重要なことと言えます。
就職に有利になるの?
残念ながら、個人情報保護士の資格を取得すること自体が、転職・就職に有利になると断言できるわけではありません。
ただし資格取得により、企業活動に必要不可欠である個人情報保護法について、正しい知識や理解があると証明されることが、何らかのプラスになる可能性はあります。
したがって、必ずしも業務上必要ではなくても、興味がある方は取得をおすすめできる資格であると言えるでしょう。
個人情報保護士は独学合格可能
合格率が高いとは言えない個人情報保護士ですが、独学で合格する道はあります。試験対策の勉強法やおすすめの書籍について解説します。
独学が一般的
個人情報保護士試験の勉強法には、主に次の3つがあります。
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通信講座・・・オンラインで公認テキストに沿った各試験項目の解説や、過去問解説などの講義が受けられ、試験対策として効率が良いです。費用は数万円とやや高額となっています。
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独学・・・公認テキストや公式問題集などを購入し自分で勉強することになります。費用が数千円とあまりかからないのがメリットです。講座視聴時間等に縛られない分、勉強時間の設定は自由ですが、情報は自分で集める必要があります。過去問はインターネット上でもあまり出回っていません。
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講習会受講・・・協会開催の講習会を受講します。個人情報保護士試験のための要点を5時間程度で学べるので、時間がない方や独学の補完にもおすすめと言えるでしょう。費用は一般の方の個人受講で15,000円です。
それぞれにメリットはありますが、独学で合格を目指すスタイルが多いようです。独学では不安な方や、勉強を続ける自信がないという方には通信講座や講習会を活用するのがおすすめです。
公式テキスト・参考テキスト
一般財団法人全日本情報学習振興協会が出版する「個人情報保護士認定試験公式精選過去問題集」をお勧めします。
こちらのテキストは、試験実施団体が認定する公式過去問題集です。
出題範囲や出題傾向と共に、過去3年分の試験問題から重要度の高いものを精選し、項目別に整理した全300問の問題集です。
問題のすぐ後に詳しい解説を載せることで、効率よく学習ができる内容となっています。
この一冊で十分な演習量と知識量を確保できるので、合格のためには必須のテキストであると言えるでしょう。
個人情報保護士の上級資格
個人情報保護士の資格取得後、さらに専門性を高めたい方におすすめの資格です。協会の公式ホームページでは、その他の情報保護やセキュリティーに関する資格も紹介されているので、参考にしてください。
上級個人情報保護士
上級個人情報保護士とは、個人情報保護士の法的部分の知識を深め、より正確かつ深い理解と実践力を身につけた者として認定される資格です。
個人情報保護士合格者(マイナンバー対応個人情報保護士のみ)を対象とする協会の認定講習会を受講することで認定されます。
認定講習会では弁護士を講師として、個人情報保護法の実務に不可欠な条文や基本書の徹底理解・活用法などを学び、実践力を養います。
受講料は一般の方で45,000円、協会の資格者部会会員で36,000円(ともに税抜)と高額ですが、非常に専門的な内容の濃い講義を受けることができます。
個人情報保護監査人
個人情報保護のための仕組みが、効果的・効率的に機能しているかを評価するために、個人情報監査が行われます。個人情報漏洩等の事故を防ぐために、内部監査の手法を充分に習得した人材として育成し、認定されるのが個人情報保護監査人です。
個人情報保護士合格者を対象とした、協会の認定講習会(オンライン受講)を受講することで認定されます。
講習会では、個人情報保護を行う目的や実施の方法についての講義を行います。監査を初めて実施する、または始めて間もない組織に役立つ内容です。
受講料は一般の方で38,000円、協会の資格者部会会員で30,400円(ともに税抜、テキスト代込)です。
個人情報保護士試験についてまとめ
個人情報保護士試験についてまとめ
- 出題項目が限定されているので、他の法律資格よりは難易度低め
- 合格率平均は37.3%であり、合格するには十分な準備が必要
- 独学のケースが多いが、講習会等で効率よく勉強するのもおすすめ
個人情報保護については身近である一方で、知っているようで深く知らない部分が多いのが一般的です。そのため、個人情報保護士の知識の専門性が重要であることがよく分かりました。
個人情報保護士の仕事は独占業務ではないとはいえ、やりがいのある資格ですね。必要や興味がある方は、ぜひ挑戦して合格していただきたいと思います。