保育士試験の合格率は低い?実際の難易度や科目別の試験内容・勉強方法も詳しく解説!

更新

「保育士試験は、どのくらい難しいの?」

「保育士試験の合格率は、実際どれくらいなの?」

そんな疑問をお持ちの人は多いのではないでしょうか。

保育士の資格試験は合格率が低く難易度の高い資格だと言われていますが、一体どの程度の合格率でどの程度の偏差値の試験かと言ったことはあまり知られていません。

この記事では保育士試験の難易度をさまざまな視点から分析するとともに、合格のための勉強法も解説します。

保育士試験に向けた何らかのアクションにつながれば幸いです。

保育士の難易度をざっくり説明すると

  • 合格率は低いが、しっかり準備すれば合格出来る試験
  • 合格率は約20%前後で、この10年以上推移
  • 保育士試験の偏差値は、58の判定

過去13年間の保育士試験の合格率

分析

保育士試験は年2回、厚生労働省令にもとづいて各都道府県で行われる国家資格の試験です。

この保育士試験の実施に関する全ての事務は、全都道府県から保育士試験の指定試験機関として指定を受けた一般社団法人『全国保育士養成協議会』が行っています。

試験内容や日程は全国統一されており、一次の筆記試験合格者のみ二次の実技試験の受験が可能です。

2009~2021年の間の13年間の保育士試験の合格率は以下のとおりです。

この試験の合格率は現在約20%ですが、平成20年度の10.57%から令和3年度の19.74%までに約2倍も上昇しています。

保育士関連の資格の合格率はどのくらい?

現役保育士が、次に取得を目指している保育士関連資格が何で、その資格の合格率はどの程度なのでしょう。

都内の保育士を対象に実施したアンケートによれば、上位の4資格とその合格率は次のとおりです。

①幼稚園教諭:非公開だが20数%と言われている。

②社会福祉士:27%程度

③介護福祉士:70%程度

④チャイルドマインダー: 70~90%(民間資格)

これら4つの資格の合格率は保育士の20%前後よりも高いことから、合格率だけで言えば保育士の難易度が一番高いと言えます。

保育士資格の難易度について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてください。

薬剤師の合格率

薬剤師資格の合格率は約70%ですから、合格率だけで判断すると薬剤師資格は保育士資格より簡単に取得できそうです。

しかし、現実にはそうではありません。

薬剤師試験には受験資格が設定されており、「6年制薬学課程を修めて卒業した者」しか受験できないのです。

このことから難易度が高いのは薬剤師資格で、国家資格ランキングでの保育士の偏差値は58で、薬剤師の偏差値は68と判定されています。

看護師の合格率

保育士資格と看護師資格の難易度を合格率で比較すると、看護師の合格率は約90%ですから保育士よりもはるかに合格しやすいと言えます。

しかも、国家資格ランキングでは保育士の偏差値58に対し看護師の偏差値は41と判定されていますので、保育士資格の方が難易度は高いと言えるでしょう。

保育士試験の合格率はなぜ低いのか

?

保育士試験の合格率は、国家試験としては低い言われている20%前後で、令和3年度におけるそれは20.0%です。

この合格率の低さは、保育士が子どもを預かる仕事の資格であるだけに、厳格な合格基準が設定されていることに因るものであろうと言われています。

以降の見出しでは、保育士試験の合格率はなぜ低いのかについて解説しましょう

そもそも保育士試験の試験内容は?

保育士試験は、年に2回行われる試験です。

受験資格は原則としては最終学歴によって異なりますが、最終学歴に関係なく在学中や中退の場合でも受験できるので詳細は各都道府県の指定試験機関で確認してください。

受験申請方法は申請に必要な書類を全国保育士協議会から取り寄せ、受験手数料を支払ってから受験申請書と必要書類を郵送します。

筆記試験の学科は保育原理・教育原理・社会的養護・子ども家庭福祉・社会福祉・保育の心理学・子どもの保健・子どもの食と栄養・保育実習理論の9科目です。

この9科目のそれぞれで6割以上の得点を取った受験者だけが、二次の実技試験を受けられます。

なお、実技試験は「音楽に関する技術」「造形に関する技術」「言語に関する技術」の3科目から、2科目を選択しなければなりません。

筆記試験が難しい

合格率が低い要因の1つは、『筆記試験の難しさ』でしょう。

筆記試験の合格点は、一科目10〜20問で出題される9科目の全てで、6割以上の得点です。

もし1科目でも得点が6割を下回った場合、筆記試験は不合格で実技試験を受けられません。

トータル点数で合否を判断する試験であれば、仮に苦手な科目や難しい科目があっても、他の得意科目や簡単な科目で苦手な科目分のカバーが可能です。

しかし、9科目のすべてで6割以上の点数を取るとなると、そうした方法では対処できません。

保育士の筆記試験では、全科目満遍なく準備しなければならないという難しさがあるのです。

筆記試験の合格率は低い

筆記試験の合格率は低く、保育士試験の合格率とほぼ同じ25%程度です。

この合格率は、総受験者の内、9科目のすべてで6割以上の合格点を取った受験者だけの割合を表わしています。

実技試験の合格率が約90%ですから、筆記試験の合格率は保育士試験のそれとほぼ同率になるのです。

実技試験の合格率は高い

保育士試験の実技試験は、9割近い高い合格率で推移しています。

つまり、筆記試験に合格すれば、実技試験でよほどの大失敗でもしない限り、保育士試験に合格できるのです。

実技試験の合格基準は非公開ですが、1分野50点満点の6割(30点)以上と言われています。

保育士の実技試験の対策について深く知りたい方は以下の記事をご覧ください。

幅広い学習範囲

保育士試験の筆記試験は全部で9科目もあることや、出題範囲幅が広いことも合格率が低くなる要因の1つです。

筆記試験では、不得意科目があったのでは合格は望めません。

出題範囲のすべてにわたって、十分な受験の準備が必要です。

しかも、筆記試験に合格するための条件にはそれぞれの科目で合格点をとる以外に、「社会的養護」と「教育原理」は同じ受験機会に合格点を取る必要があります。

いずれにしても、筆記試験に合格するには9科目の幅広い学習範囲のすべてを満遍なく学習し、6割以上正解できるように準備をしなければならないのです。

なお、年度により難化したり易化したりする科目があることから、合格点にギリギリの点数しか取れないような準備では合格の可能性は低いと言えます。

科目合格制度は存在する

保育士試験の筆記試験には「科目合格制度」が導入されており、合格した科目については、3年間にわたって合格したとみなされます。

そのことで、筆記試験を再度受験する際には、すでに合格した科目の受験は免除されるのです。

保育士試験の筆記試験は、全科目合格を1回の試験で実現できなくても、3年間のうちに全科目合格をすれば合格できます。

ですから、一度試験に落ちたからといって、全科目を受け直す必要がありません。

また、筆記試験に合格して実技試験で不合格になった場合は、再受験では実技試験だけを受ければいいのです。

近年の保育士試験合格率は増加傾向にある

増加

平成20年度の保育士試験の合格率は10.57%で、令和3年度の合格率は20.0%です。

具体的な推移は、平成26年度までは10%台の厳しさながら増加傾向が続き、平成27年度からは20%台まで増加しています。

このように、平成20年度に約10%台であった合格率は10%も上昇し、現在は約2倍の20%前後まで増加しました。

以降では、保育士の合格率を具体的に解説していきましょう。

一次試験の合格率

保育士試験の一次(筆記)試験の合格率は、保育士試験の合格率よりも少しだけ高い程度です。

これは、保育士試験の二次(実技)試験の合格率が一次試験合格の90%前後であることに因ります。

厚生労働省は平成28年度以降、一次試験の合格率は公表していません。

そこでここでは、平成23年度から平成27年度までの一次試験と保育士試験の2つの合格率を紹介しておきます。

年 度 一次試験合格率 保育士試験合格率
平成23年度 16.2% 14.1%
平成24年度 21.0% 18.6%
平成25年度 19.3% 17.4%
平成26年度 21.3% 19.3%
平成27年度 25.2% 22.8%

科目別の試験合格率

厚生労働省や全国保育士養成協議会は、筆記試験の科目別合格率を公表していません。

しかし、保育士試験対策講座などを提供している『キャリア・ステーション』では、次表のような、受講生の合格率を独自に算出した「キャリア・ステーション科目別成績」を発表しています。

科 目 H28年 H28年 H29年 H29年 H30年 H30年
前期・% 後期・% 前期・% 後期・% 前期・% 後期・%
子どもの食と栄養 43.30 90.00 67.40 58.10 74.40 80.40
教育原理 82.00 78.90 59.70 79.20 79.60 34.70
社会的養護 60.70 66.40 72.30 73.30 89.00 55.60
社会福祉 71.40 85.50 66.30 50.90 63.90 52.64
児童家庭福祉 84.90 77.80 43.80 59.80 69.00 49.20
保育の心理学 78.30 78.70 92.70 78.10 85.30 54.30
子どもの保健 91.30 83.80 92.60 77.40 83.80 81.70
保育実習理論 84.90 94.50 63.80 94.00 85.50 87.60
保育原理 89.90 93.60 82.00 88.80 78.10 81.50

平成30年後期の合格率が低い科目は「教育原理」の34.7%、「児童家庭福祉」の49.2%ですが、平成28年前期にはそれぞれ82.0%と84.9%に変化しています。

また、「子どもの食と栄養」の合格率は、平成28年前期が43.3%で平成30年後期が80.4%です。

このように科目別の難易度は、毎年大きく変化するものと理解しておいてください。

二次試験の合格率

保育士試験では、筆記試験で9科目全てに合格したら、次は実技試験に挑戦です。

わずか20%程度の合格率である筆記試験に比べると実技試験の難易度は低く、約90%の受験者が合格します。

実技試験は3分野から自分の得意なもの2分野を選べるうえにうえに合格率は約90%ですが、油断しないでしっかりと準備をしてください。

筆記試験・実技試験・保育士試験全体の合格率の推移は、次表のとおりです。

年  度 筆記試験・% 実技試験・% 全体・%
平成23年度 16.2 84.7 14.1
平成24年度 21.0 86.1 18.6
平成25年度 19.3 89.3 17.4
平成26年度 21.3 88.7 19.3
平成27年度 25.2 89.1 22.8
平成28年度 25.78
平成29年度 21.60
平成30年度 19.74
令和元年度 23.78
令和2年度 24.25
令和3年度 20.0

試験内容自体は難しい

2021年度までの過去12年間、保育士試験の「試験内容」の大きな変更は行われていません。

つまり、試験は筆記試験と実技試験の2つ・筆記試験は9科目で択一式のマークシート方式・全科目で6割以上の点数を取れば実技試験に進める、といった内容で実施されています。

試験内容の大きな変更が行われなかったことから、試験内容自体の難しさにも変化はありません。

この保育士の試験内容に、2020年度から次のような一部変更が行われました。

●科目名の変更

変 更 前 変 更 後
児童家庭福祉 子ども家庭福祉
音楽表現に関する技術 音楽に関する技術
造形表現に関する技術 造形に関する技術
言語表現に関する技術 言語に関する技術

●出題範囲の変更

出題範囲が変わる科目 変 更 点
保育原理 乳児保育の内容が充実
社会福祉 相談援助に関する内容を削除
保育の心理学 子ども家庭支援の心理学・子どもの理解と援助などの内容追加
保育実習理論 保育者論や保育の計画と評価などを追加

この変更に伴いほかの内容にも変更が行われる可能性があるので、変更の有無についてこまめに全国保育士養成協議会に確認をすることをおすすめします。

試験回数が2回に増加

厚生労働省は2015年、通常の保育士試験に加えて特定地域で「地域限定保育士試験」を初めて実施したのに加え、2016年からは年1回実施の保育士試験を年2回実施に変更しました。

これらの保育士試験制度運用ルールの変更は、待機児童増加に対応して保育所などの整備を急ぐとともに、都市部を中心に深刻化する保育士不足を解消するために行われたものです。

年1回しか実施されていなかった保育士試験が前期(4月)試験と後期(10月)試験の2回実施に変更されたことで、保育士を目指す人には受験機会が2倍に増えました。

また、一度に9科目全部で合格点を取らなければ受験年度内に合格できなかった大きな壁がなくなり、2回で9科目に合格すればよくなったのです。

保育士試験の実際の難易度

試験会場

『資格の取り方・資格難易度偏差値ランキング』では、保育士資格の難易度を「普通」・偏差値を「58」と判定しています。

保育士と同じ偏差値58で難易度が「普通」の資格は、管理業務主任者・建築設備士・電気主任技術者第3種・ガス主任技術者甲種などです。

以降の見出しでは、保育士試験の実際の難易度について解説します。

依然として保育士の合格率は低い

保育士資格を取得するには、2つのルートがあります。

1つは厚生労働大臣が指定する保育士養成のための大学・短大・専門学校で2~4年学び、所定の科目・課程を履修すれば卒業時に保育士資格を得られるルートです。

もう1つは、年2回実施される保育士試験に合格することで資格を取得するルートで、受験者数は毎年6万人を超えています。

この2つのルートで誕生する保育士の知識やスキルのレベルに差があっては、保育士資格そのものの信頼性を失い兼ねません。

そのことから、保育士試験受験者には、保育士養成の大学や専門学校などを卒業して資格を得た保育士と同程度の知識やスキルを身に付けていることが求められるのです。

保育士資格試験の難易度が高く合格率が低いのは、このような要因があるためとも言えるでしょう。

勉強時間を十分確保する

保育士の多くは、一般的には厚生労働大臣が指定する大学や専門学校などで2~4年学び、所定の科目・課程を履修することで卒業時に資格を得ます。

しかし、学校に通わないで保育士資格を取得するには、保育士資格試験に合格することが必要です。

表現を換えると、大学や専門学校などで2~4年かけて履修する知識やスキルを、厚生労働大臣指定の学校に通わないで身に付ける必要があるということでもあります。

したがって十分な勉強時間を確保しなければ、保育士資格の取得など不可能です。

モチベーションを保つのが大変

保育士試験は定員制ではなく合格基準をクリアした受験者全員が合格できることは、『勉強を頑張れば、合格の可能性を高める』というモチベーションにつながります。

とはいえ、9科目全部で合格点を取るための受験勉強には、多くの時間と強い自己管理が必要です。

その間、とくに独学の場合はモチベーションの維持が難しいので、それを維持できる方法で勉強に取り組まなければなりません。

保育士試験に受かるための勉強方法

お勉強

保育士資格取得のための勉強に、長期間・長期間にわたってモチベーションを維持することは、簡単ではありません。

しかし、決して不可能なことではないのです。

以下の見出しでは、モチベーションを維持できる、保育士資格取得のための勉強法を解説します。

保育士資格のメリット

保育士になるためには、合格率の低い保育士資格試験に合格しなければなりません。

この難しい試験に合格して保育士資格を取得することでどのようなメリットがあることが、勉強をするモチベーションにつながっているのでしょう。

一般的にいわれている保育士資格取得によるメリットは、次のとおりです。

  • 試験勉強を進めることで、自身の子育てに役立つ知識を身につけられる。
  • 国家資格であることから、どの都道府県でも保育士として働ける。
  • 転職の際の有利な申告ができ、正社員で採用される可能性が高い。
  • 一度取得すれば、更新手続きなどを行わずに生涯資格として役立てられる。

子育て経験者は勉強しやすい?

保育士試験の9科目の試験内容の多くは、「子育て」に関連したものです。

したがって、実際に子育てをしたことのある人に有利だといわれます。

確かに子育て経験者には有利と言えますが、きちんと理論を勉強しないと試験には対応できません。

独学が困難な場合の対策方法

独学は「費用が安い・自分のペースでできる」といったメリットがある反面、「モチベーションが続かない」として独学を出来ない人は多いようです。

以降では、独学ではモチベーションの維持が出来ない人におすすめの対策法を解説します。

保育士専門学校に通う

チベーションを維持出来ない人へのおすすめの1つは、コストがかかりますが「専門学校に通うこと」です。

2~3年間学校に通い、同じ目標に挑戦する仲間と一緒に勉強することで、大勢の人が保育士に合格しています。

ただし定期的な通学が必要なので、主婦や社会人など忙しい人には難しい方法です。

独学をする

独学そのものが苦ではない人には、過去問を繰り返し解く勉強法がおすすめです。

コストを抑えられるうえに、繰り返し解くたびに目に見えて高得点を得られることで、モチベーションを維持できます。

なお、試験内容に変更が行われることがあることから、常に最新の試験情報に注意が必要です。

通学講座を利用する

チベーションを維持出来ない人には、通学講座を利用した半年間の集中的な勉強もおすすめです。

保育士の試験は半年のサイクルで実施されることから、それにあわせて通学講座で集中的な受験勉強をします。

なお、費用は5~30万円とさまざまですから、自分にあった講座の選択が必要です。

通信講座を受講する

通信講座の一番の魅力は、通学講座と違って価格を抑えられる点です。

よって、金銭面で講座の受講をためらっていた人も気軽に講座を受講できる点は大きなメリットであるといえるでしょう。

また、講座も合格に向けて各社が練りに練った充実の内容である場合が多く、安い価格で質の高い対策ができること間違いなしです。

通信講座を受講する際は、特にユーキャンの保育士講座を受講するとよいでしょう

実績抜群である点が一番の魅力であり、2018年試験では合格者の10人に1人はユーキャンの受講生でした。

また、初心者でも合格できるようにわかりやすいテキスト設計となっており、多くの人が実力を効果的に付けられるでしょう。

ぜひ、ユーキャンの保育士講座で合格を勝ち取ってみてはいかがでしょうか?

保育士の難易度まとめ

保育士の難易度についてまとめ

  • 勉強時間確保とモチベーション維持ができれば、独学合格が可能
  • 合格率は約20%前後で、この10年間で約10%上昇
  • 合格率は低いが、偏差値は「58」で難易度は「普通」

保育士の難易度についてさまざまな側面から解説してきました。

保育士資格のように合格率の低い資格を取得するのは、決して楽な道のりではありません。

しかし、少しだけ長い時間をかけて準備すれば、それほど取得が難しい資格ではないのです。

あなたも、ぜひ、保育士資格の取得に挑戦してください!

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1