保育士の配置基準の詳しい内容は?各基準の詳しい人数配分から規制緩和まで解説!

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「保育士の配置基準って何?」

「認可保育園の設置基準や規制緩和について知りたい」

こんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

昨今は保育士が不足しているという話題が多く取り上げられますが、なぜ不足しているのか、配置基準がどうなっているかなどはあまり知られていません。

そこでこの記事では保育士の配置基準を中心に、人数配分の方法や認可保育園の設置基準など、保育士に関する色々な情報をまとめました。

これから保育士を目指す方もそうでない方も、保育士について知るきっかけにしてください

保育士の配置基準についてざっくり説明すると

  • 保育士の配置基準は、国としての土台だけでなく自治体や事業所ごとにも細かく決まっている
  • 基準があることで保育所を運営する時の最低限の人数を把握しやすい
  • 配置基準ギリギリの人数で回すことが難しい場合に備えて、規制緩和も導入されている

保育士の配置基準ってどんなもの?

考える赤ちゃん

保育士の配置基準」は、保育施設運営にあたって満たすべき基準のひとつです。具体的には「子供一人あたりに何人の保育士が必要か」の最低限の基準を表しています。

これは厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第三十三条」によって定められたもので、違反した形での保育活動は禁止されています

配置基準の果たす役割

保育士に配置基準が必要な理由として最も大きいのは、保育の質の維持です。

保育士の配置基準として定められた内容は、子供の安全を確保する上で最低限の基準になっています

この基準に沿って保育園を運営することで、保育士の目が行き届く範囲で丁寧に保育を実施することが可能となるのです。

また、保育士の配置基準があることは、保育園などの保育施設の側にもメリットがあります。

基準があることで職員の人数を決める目安になりますし、クラス分けをする時の参考にもなるでしょう。

単に保育の質を保つ以外にも、色々なメリットが考えられるというわけですね。

配置基準の人数は実際どう計算している?

ここからは「保育士の配置基準」をどのように計算するのか、その具体的な方法を解説します。

自分の保育園の定員人数を確認

保育士の配置基準を満たした保育士の数を算出するには、まず「自身の保育園の年齢別の定員人数」を確認してください。(ここでの「保育園」とは、一般的な認可保育所を表します。)

例えば以下のような定員の構成にするとします。

園児の年齢 人数
0歳児 6人
1歳児 18人
2歳児 12人
3歳児 20人
4歳児 30人
5歳児 30人
合計 116人

以上の年齢分布で、「116人が定員の認可保育所」という想定で計算を進めます。

保育園職員の定員を配置基準の人数で割る

保育園の年齢分布と合計人数がわかったら、次は「国による保育士の配置基準」を確認します。

保育士は以下のような基準で配置する必要があります

園児の年齢 配置基準
0歳児 子供3人に対して保育士1人
1~2歳児 子供6人に対して保育士1人
3歳児 子供20人に対して保育士1人
4歳児以上 子供30人に対して保育士1人

ここに先ほどの「保育園の年齢別の定員」を当てはめて計算すると、必要な保育士の数は以下のようになります。

園児の年齢(人数) 必要な保育士の人数
0歳児(6人) 2人
1歳児(18人) 3人
2歳児(12人) 2人
3歳児(20人) 1人
4歳児(30人) 1人
5歳児(30人) 1人

この人数の保育士を年齢別に割り当てていきます。すると合計で10人の保育士が、日中の職員として最低限必要ということになりますね。

保育士が開園時間で常に2人いるか確認

ここまでは日中の時間帯の保育士の配置基準をご説明しました。

もし朝や夕方のようないわゆる「追加保育」のサービスを実施する場合は、上記とは別に「2人」の保育士を確保する必要があります。(開園時間に保育士が常に2人以上いなくてはならないため。)

つまり追加保育を実施するなら、先ほど例示した定員の保育園の場合ですと「合計12人」の保育士を毎日配置しなくてはなりません。

延長保育」をする場合はさらに保育士を追加する必要があります。ご自身の保育園がどこまでの保育をカバーするかによって、必要な保育士の人数は変化するというわけです。

園長は別枠で考える

保育園には必ずいる「園長先生」ですが、園長については保育士とは別枠で考えてください。

園長先生が保育士の資格を持っていたとしても、保育の現場で働くより管理者としての役割を果たさなくてはなりません。先ほど計算した保育士の人数には入れずに考えましょう。

ただし、園長先生が現場に入ってはいけないというわけではありません。保育士の指導などを目的として子供たちと触れ合うことは禁止されていませんので、臨機応変に対応してください

配置基準は場合によって変化

考える子供

実は保育士の配置基準は国、自治体、施設によって異なります

適切な保育園の運営を行うためには、それぞれの配置基準をしっかりおさえることが大切です。

この段落では国や自治体など、各種の保育士配置基準についてを解説します。

国の配置基準

国が定める「保育士の配置基準」は、先ほどご紹介したとおりです。

園児の年齢 配置基準
0歳児 子供3人に対して保育士1人
1~2歳児 子供6人に対して保育士1人
3歳児 子供20人に対して保育士1人
4歳児以上 子供30人に対して保育士1人

この内容を見ますと、子供が大きくなるにつれて必要な保育士の人数は少なくなっていくことがわかります。

ただし、この規定以外に「開園時間は常に2人以上の保育士が必要である」ことも忘れないでください。

例えば0歳児を2人しか預からない保育園であっても、保育士は1人ではなく最低2人が必要となります。この点は注意しましょう。

自治体の配置基準は国より厳しい

保育士の配置基準は、国だけでなく自治体でも定めています。

自治体の保育士配置基準は地域によって異なりますが、どこも国の配置基準を満たした上で、自治体それぞれの基準を追加したものになっています。そのため必然的に、国の基準よりも厳しい内容となっているのです。

保育士の配置基準が自治体ごとに設定されている理由は、地域事情に則した内容にするためです

保育の実態は大都市と地方によって大きく異なります。自治体ごとに基準を定めることによって余裕をもった保育が実現でき、保護者の安心感にもつながるというわけですね。

例えば、横浜市の保育士配置基準は以下のようになっています。

園児の年齢 必要な保育士の人数
0歳児 子供3人に対して保育士1人以上
1歳児 子供4人に対して保育士1人以上
2歳児 子供5人に対して保育士1人以上
3歳児 子供15人に対して保育士1人以上
4歳児以上 子供24人に対して保育士1人以上

国の基準に対して、全体的に余裕をもった保育ができる配置基準になっていることがわかります。

地域型保育事業の配置基準は種類ごとに異なる

保育士の配置基準は、国や自治体だけでなく、地域型保育事業の施設によっても細かく基準が異なることがあります

地域型保育事業は以下の4種類です。

  • 小規模保育事業
  • 家庭的保育事業
  • 事業所内保育事業
  • 居宅訪問型保育事業

それぞれの保育士配置基準を解説します。

小規模保育事業

小規模保育事業は、0~2歳児までの子供を対象に、6~19人まで保育することができる施設を表します。

小規模保育事業はさらにA、B、Cの3つに分かれています。

A型の小規模保育事業の保育士配置基準は以下のとおりです。

  • 国の保育士の配置基準で算出した保育士数+1の保育士が必要
  • 0~2歳児を4人以上受け入れる場合、保健師もしくは看護師を1人に限り、保育士としてカウントすることが可能
  • 開業中は常に保育士を2人以上配置する必要がある(国の基準と同様)

B型の小規模保育事業の保育士配置基準は以下のとおりです。

  • 国の保育士の配置基準で算出した保育士数+1の保育士が必要
  • A型は全員が保育士の有資格者でなければならないが、B型は2分の1以上の有資格者が必要となる
  • 保育士資格を持っていない人には研修必須
  • 常に2人の保育従事者が必要で、うち1人は必ず保育士資格を持っていること

C型の小規模保育事業の保育士配置基準は以下のとおりです。

  • 0~2歳児3人に対して「家庭的保育者」1人が必要
  • 補助者を置く場合は5人以下を2人の職員で担当可能

なお「家庭的保育者」とは市町村などの自治体が実施する研修を終了した保育士、もしくは相応の知識や技術があると認められた者を指します。

家庭的保育事業

家庭的保育事業は、保育園よりも家庭的な雰囲気で行われる保育事業を表します。少人数の子供を対象にした保育を行うため、きめ細やかな対応が可能です

家庭的保育事業の保育士配置基準は以下の通りです。

  • 0~2歳児3人に対して「家庭的保育者」1人を配置する
  • 補助者がいる場合は、0~2歳児5人に対して2人の職員を配置すること

なお家庭的保育事業は小規模の運営が前提ですので、定員は5人以下となっています。

事業所内保育事業

事業所内保育事業は、事業所、つまり会社などの保育施設を表します。

近年の保育園不足を受けて、会社に保育園を併設する動きは増えてきています。従業員の子供だけでなく地域の子供を受け入れることも可能で、人気がある保育事業のひとつです。

事業所内保育事業は定員の人数によって保育士の配置基準が異なります

具体的には、定員が20名以上の事業所内保育事業の保育士配置基準は国が定める保育士配置基準と同じ基準となっています。

しかし、定員が19名以下の事業所内保育事業の保育士配置基準の場合は小規模保育事業A型・B型の配置基準と同じ基準です。

つまり、20人に満たない定員の保育所の場合は、国の配置基準+1人の保育士が必要となるわけです。

居宅訪問型保育事業

居宅訪問型保育事業は、障害や疾患によって個別ケアが必要な子供や、保育施設がない地域での保育維持を目的として行われる保育事業です。

保護者の自宅に保育士が出向き1対1での保育を行うことが特徴で、ここまでご紹介した保育施設とは大きく形式が異なります。

保育士の配置基準としては、「0~2歳児1人に対して1人」が原則です。保育士の資格がなくても、保育士と同等以上の知識、経験、技術があると市町村が認めた場合は、居宅訪問型保育事業で保育を行うことができます。

幼保連携型認定こども園

幼保連携型認定こども園は2015年4月から新設された「子ども・子育て支援新制度」の施行によって生まれた事業形態です。それまでは「認定こども園」と呼ばれていましたが、「幼保連携型こども園」と改称されました。

未就学児が対象の教育・保育一体型の施設で、幼稚園と保育園、両者の良い所が合わさった施設と言えるでしょう

幼保連携型こども園」の保育士配置基準は以下のとおりです。

  • 乳児3人に対して保育士1人
  • 1~2歳児6人に対して保育士1人
  • 3歳児0人に対して保育士1人
  • 4~5歳児30人に対して保育士1人

なお満3歳児以上の子どもの教育時間では、学級(クラス)を編成して専任の保育教諭を1人配置することが原則として定められています。

認可外保育施設の基準は比較的甘い

認可外保育施設は、認可保育園に比べると保育士の配置基準が緩やかに設定された保育施設を表します。

それでも最低限の基準は守る必要があり、保育時間の長さによって保育士配置基準が2つに分かれています

保育時間が11時間以内の場合の保育士配置基準の場合の基準は以下のとおりです。

  • 0歳児3人に対して保育士1人
  • 1~2歳児6人に対して保育士1人
  • 3歳児20人に対して保育士1人
  • 4歳以上の子供30人に対して保育士1人

また、認可外保育施設:保育時間が11時間を超える場合の保育士配置基準は以下のとおりです。

  • 常に2人以上の職員を置くこと(保育されている児童が1人の場合を除く)

なお上記の「職員」のうち、3分の1が保育士もしくは看護師の資格を持っている必要があります

以上の基準を満たしていれば、認可外保育施設としての設置基準がクリアされていることになります。認可外保育園にお子さんを預ける時には、ぜひ確認してみてください。

企業主導型保育事業とは

企業主導型保育事業とは、待機児童解消のために企業が行う保育事業のことを指します。

認可施設と同じくらいの金額設定がされていることもありますが、法律上は認可外保育施設です。

配置基準は以下のようになっています。

園児の年齢 配置基準
0歳児 子供3人に対して保育従事者1人
1~2歳児 子供6人に対して保育従事者1人
3歳児 子供20人に対して保育従事者1人
4歳児以上 子供30人に対して保育従事者1人

企業主導型保育事業は内閣府からの補助を受けており、保育士の人数を多くするほど補助が手厚くなるという制度です。

実際は基準以上の保育士を配置する必要がある

ここまでにご紹介した保育士の配置基準は、あくまても「最低でもクリアすべき基準」です。

保育事業を行う中では、職員が突然休むこともあるでしょう。ギリギリの人数で運営するのは困難ですから、常に余裕を持った保育士の配置が必要になります

保育所の開所時間は、一般的には13時間とされています。かなり長時間の運営となりますので、職員全員がフルタイムで働くわけにはいかないでしょう。

このような理由からも1日あたりに導入する保育士は、基準よりも多い人数を想定しておく必要があるというわけですね

配置基準の規制緩和も押さえよう

お迎えに喜ぶ子供

保育士の配置基準は、昭和23年に策定されてから約70年以上、変化せずに運用が続いてきました。

しかし近年は女性が社会に出る動きが強くなったことで、待機児童の問題が深刻になってきています

保育の受け皿拡大については長年強く訴えられており、平成28年4月から保育所における保育士配置が見直されるようになりました。

以下では保育士の規制緩和に関する施策を詳しく紹介していきます。

朝夕など児童が少数となる時間帯における保育士配置に係る特例

これまでの保育士配置基準は、「開園時間には最低でも2人以上の保育士配置が必要」となっていました。

しかし場合によっては常に2人以上の保育士を配置することは難しく、保育所にとっては負担が大きいと言われています。

こうした背景から「朝や夕方などの子供が少ない時間帯」に限って、必ずしも「保育士2人」の配置にしなくても良いという特例ができました。

特例措置により、朝や夕方といった「子供が少ない」時間帯に限っては、2人配置すべき保育士のうち、1人は「子育て支援員」を配置しても良いことになりました。

子育て支援員とは、「子育て支援研修」を終了した人、もしくは保育士と同等の知識や技術があることが市町村に認められた人を表します。

必ずしも保育士の資格を持っていなくても良いことから、人材の確保の負担が軽くなったというわけですね。

幼稚園教諭及び小学校教諭等の活用に係る特例

「幼稚園教諭及び小学校教諭等の活用に係る特例」は、保育士の資格ではなく「子供とかかわりがある職種」であれば保育士の代わりの業務を行えるという内容です。

子供とかかわりがある職種」の一例は以下のとおりです。

  • 幼稚園教諭
  • 小学校教諭
  • 養護教諭

とは言え、この場合でも「子育て支援研修」などの研修を受け、保育ならではの知識を習得しておく必要があります。

さらに全体の3分の2以上は、保育士資格を持つ職員を配置しなくてはなりません

しかし必ずしも全員を保育士としなくても良くなったことで、より広い人材の確保ができるようになりました。

保育所等に置ける保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例

「保育所等に置ける保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例」では、長時間の保育所運営で追加の職員が必要な場合について、必ずしも保育士を追加しなくても良いという特例を定めています。

配置基準に則った保育士の人数は確保する必要がありますが、そこに追加して職員を雇う場合は、保育士の資格を持っていなくても良いという主旨の特例です。

延長保育を引き受ける場合などは、保育所を運営するための最低限の保育士人数では保育が難しくなることもありますよね。

しかし追加で保育士を募集しても、有資格者からの応募がないのが現状です。

この時に、保育士ではなく「子育て支援員」など、保育士と同等の知識や技術を持つ者でも代替可能としているのが、この特例の内容となります。

規制緩和には大きな課題も

ここまで紹介した特例は、主に待機児童問題を解消する目的で始まりました。

しかし2019年10月から始まった「保育、幼児教育の無償化」の政策により、問題も出てきていると言われています。

「保育、幼児教育の無償化」は、少子化対策の一環で始まった政策です。

近年の20代~30代の若者たちは子育てにお金がかかりすぎることを嫌厭して、子供を持たない選択をすることが増えてきていると言われています。

また、子供を持ったとしても理想の人数産むことをためらう場面もあるようです

これを緩和するために、保育や幼児教育にかかる費用の個人負担を減らそうというのが「保育、幼児教育の無償化」の主な狙いです。

この無償化政策によって、近年はますます保育士の需要が増しています。保育士の人材確保は以前にも増して難しくなり、保育士不足を解消するための課題が大きくなってしまったとされているのです。

よって、今後は待機児童の数を減らしながら同時に保育士不足も解消して質を担保していくという難しい課題の解決に挑まなければいけないといえるでしょう。

保育士の配置基準まとめ

保育士の配置基準まとめ

  • 保育士の配置基準は保育所ごとに異なるので運営の際はしっかり確認すること
  • 配置基準はあくまでも最低限の人数なので、延長保育などにそなえて余裕を持った運営をしよう
  • 人材確保が難しい場合に備えて規制緩和も設けられている
  • 基準を守った上での適正な保育が求められる

保育士の配置基準は、国が決めた内容を土台に、自治体や事業所などでも細かく基準が異なっています。

ご自身が働く保育所がどれに当てはまるかを確認しながら、適正な運営をしていくようにしましょう!

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