弁理士試験合格後は何をする?弁理士の登録方法・費用や就職・転職について解説!

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「弁理士試験に合格したけれどこの後どうしたらよいの?」

「就職先はどうやって見つけるの?」

難関資格の弁理士資格ですが、合格した後の登録の仕方や働き方がわからずに悩んでいる人もいるでしょう。

試験合格後の手続きや費用、それに仕事探しなど、合格後の対応をしっかりできなければ、せっかく取った資格を活かすことはできません。

今回は弁理士試験合格後に何をすべきかについて、弁理士登録方法や費用、さらに就職・転職の仕方を詳しく解説します。

この記事をご覧になれば、弁理士試験合格後にすべきことがよくわかり資格を活用できます。

弁理士試験合格後にすることについてざっくり説明すると

  • まず実務修習を受講する
  • 弁理士に登録する
  • 開業するなど様々な形で働く

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弁理士試験に合格したら

合格

弁理士試験に合格したら何をすべきなのでしょうか。弁理士試験は合格率10%以下の難関資格です。資格をしっかり活用できるように、弁理士試験合格後の動き方を見ていきます。

実務修習を終える必要がある

弁理士試験合格後に最初にすべきことは、経済産業大臣が指定した実務修習の受講です。実務修習で、弁理士登録後にすぐ働けるように実践的なことを学びます。

実務では、試験勉強で学ばなかったことにも対応しなければいけません。そのため、必要な技能や専門的応用能力をしっかり身に付けておくのです。実務修習は弁理士登録を行う前に必ず受講しなければなりません。

実務修習の受講申請

実務修習を受講するために、まず受講申請をしなければなりません。受付期間は、11月中旬前後の1週間です。

受付期間が短いですが、期間を過ぎるとその年は実務修習を受講できません。ですから、あらかじめ申請期間をしっかり確認しておき、忘れずに申請するようにしましょう。

申請期間や申請方法は、日本弁理士会のHPをご覧ください。

集合研修

実務修習は2つあり、まず集合研修です。講師と対面授業を行います。学習内容は、弁理士法・職業倫理、特許・実用新案に関する理論と実務など5課程36科目です。

事前に出された課題をテーマにする授業で、答案も事前に提出します。再提出を求められたり、単位を落とすこともあります。

全単位を修得したら修了です。全単位を取れなければ、取った単位は次回に持ち越せません。その期間で必ず修得する必要があるので、しっかり取り組まなければなりません。

e-ラーニング研修

もう1つはe-ラーニング研修です。インターネットで配信される講義映像を視聴します。途中で学習効果確認のための問題が出されます。

正解率8割を超えなければ動画の続きを視聴できません。しかも5つの講義のすべての単位を取得する必要があります。真剣に集中して取り組まなければなりません。

配信期間は例年12月上旬から2月末です。この期間を過ぎると単位修得できませんので、注意が必要です。

実務修習の大変さ

必須の実務修習ですが、生半可ではありません。難関試験に合格しても、しっかり勉強しなければ弁理士登録はできないのです。

また、まとまった時間が必要な点でも大変です。集合研修の開催地は東京・大阪・名古屋だけで、1~2月に5~9日間・約27時間必要です。移動や日程調整もそう簡単ではないでしょう。

e-ラーニング研修は視聴中に逐次問題が出され、正解を求められるので、動画を飛ばさずにしっかり見続けるので、この点にも集中力が求められます。

免除制度

実務修習には免除制度があります。一定の条件を満たす人は一部科目の受講を免除してもらえます。

具体的には、知的財産系の書類作成業務を一定年数行った経験がある人、弁護士資格を持つ人、特許庁での勤務経験がある人などが対象です。

免除制度の適用は任意です。条件を満たしていても実習を受けたいという場合は、免除を申請する必要はありません。

受講にかかる費用

実務修習の受講には118,000円がかかります。指定修習機関である日本弁理士会に納付します。

それなりの高額ですが、弁理士法施行令4条で決められている必要経費です。

弁理士に登録する

登録

弁理士試験に合格し、実務修習を滞りなく終了したら弁理士登録しましょう。必要書類が多いので間違えないように注意が必要です。

弁理士の登録方法

登録は、必要書類を日本弁理士会に提出して行います。日本弁理士会が正式に受理すれば登録完了です。

必要書類の提出方法は、持参する方法と郵送があります。持参する場合は、提出書類に押印した印鑑も一緒に持参しましょう。

郵送する場合は、書留で封筒の表に「弁理士登録申請書類」と朱書きします。ミスがないようにしっかりチェックしてから提出しましょう。

登録に必要な書類

登録申請に必要な書類を見ておきましょう。自分で作成する書類と取り寄せなければならない書類があります。

自分で作成する書類

自分で作成する書類は次の6種類です。

  • 弁理士登録申請書・届出書
  • 勤務証明書
  • 履歴書
  • 誓約書
  • 登録後の会費納付方法について
  • 銀行振り込み等の写し貼付(振り込みの場合)

書類には同じ印鑑を押さなければなりません。スタンプ式印は使えません。誓約書の内容が令和元年12月に一部変更されていますので、注意しましょう。

必要書類の書式は、すべて日本弁理士会のHPからダウンロードできます。

取り寄せる書類

市役所などから取り寄せる書類は、次の3種類です。

  • 住民票(マイナンバーの記載が入っていないもの)
  • 身分証明書(本籍地で発行)
  • 弁理士となる資格を証する書面

なお、現在では令和元年12月以前まで提出が求められていた「登記されていないことの証明書」は、提出不要です。

登録にかかる費用

弁理士の登録をするためには、次の費用が必要です。

  • 登録免許税:60,000円
  • 登録料:35,800円
  • 会費:15,000円(登録月分)

登録免許税は、登録申請前に麹町税務署に納め(国税を収納する銀行などでも納付可)、領収証書原本を登録申請書に貼付します。

また、登録料と会費は、現金で払うか、事前に指定銀行口座に振り込みます。現金で払う場合は、書類持参時に日本弁理士会に持っていきましょう。

実務修習費などを含めると20万円ほどの初期費用が必要です。所要資金を準備しておきましょう。

登録後の維持費

登録後の維持費も頭に入れておく必要があります。弁理士登録後には、会費として月額15,000円を日本弁理士会に納めなければなりません。年間180,000円です。

弁理士として実質的な活動を始めるまでは大きい額です。

弁理士登録ができない人

弁理士試験に合格して弁理士になる条件を満たしている場合でも、弁理士登録ができない人もいます。下記のどれかに該当する人です。

  • 刑事処分を受けた人
  • 業務上の処分を受けた人
  • 制限行為能力者など

詳しい内容は以下の日本弁理士協会のHPを確認してください。

弁理士に登録したら

登録後

弁理士登録がすんだら、いよいよ弁理士として働けます。ここでは、その説明に入る前に弁護士の業務・継続研修・弁理士の登録抹消についてまとめておきます。

弁理士の業務

弁理士の主な業務は、知的財産権の取得と活用をサポートすることです。知的財産権とは特許実用新案権です。発明や考案した商標・意匠などの権利化が可能かどうかを調べて、有効なものは出願書類を作成し、特許庁に申請します。

申請までの作業は複雑で大変です。特許庁から拒絶理由通知が送られてきたときは、補正書や意見書を提出します。権利化のために適切に対応し、確実に業務を進める必要があります。

依頼人との打ち合わせを繰り返し、技術的経験・法律的知識を駆使して取り組むので、専門的知識のある弁理士が行う必要があるのです。

継続研修

弁理士には5年に一度の継続研修が義務付けられています。弁理士になった後も研修に参加し、1単位1時間の講義を5年間で70単位以上受講する必要があるのです。

例えば、eラーニング5時間+集合研修5時間の倫理研修や、特許法の改正など弁理士として知っておかなければならないことの会員研修などは、すべての弁理士が受講しなければならない必修単位です。

他にも受講は任意の様々な研修メニューがあり、任意単位として選択して受講できます。

弁理士の登録抹消

弁理士登録をしても、次のような行為・事実があった場合は、登録を抹消されます。

  • 弁理士会の会費を滞納
  • 不誠実行為などの違法行為
  • 本人が死亡した場合

まず会費を滞納すると退会処分になります。また、弁理士登録できない条件に該当する刑事罰を受けた場合など、弁理士の信頼性を損ねるような違法行為も抹消理由です。

登録抹消されると弁理士として働けません。場合によっては再登録できないこともありますので、注意が必要です。

弁理士の就職・転職

就職

弁理士登録を問題なく完了させた後は、いよいよ資格を活かすことができます。働き場所は、特許事務所や企業内弁理士、特許庁、独立開業など様々な形があります。

特許事務所

弁理士の就職先で一番多いのが特許事務所です。特許事務所では企業などの依頼により特許などの出願を代行します。さらに特許に関する調査など広範な業務を行っています。

事務所の規模は様々です。100人以上の弁理士が所属する大規模事務所では、特許に関する業務全般に加え、意匠や商標など幅広い業務を行っています。

一方、100人未満の中規模事務所は、特色ある専門分野を活かした業務を行うことが多いです。数人だけの小規模事務所は、個人の発明家などを顧客とすることが多く、料金は低めです。

企業内弁理士

企業内弁理士は、サラリーマンとして企業の法務部や知的財産部などに所属して活躍します。外部の顧客対応ではなく、自分の勤務先の会社が開発した製品に関する特許などを申請します。

勤務先は大手メーカーが多いですが、商品開発が盛んな小売業など対象業種・企業が増えてきています。

企業内弁理士を抱える企業は、福利厚生が充実しており、弁理士資格取得費用や研修費用などを企業で負担するケースも多いです。弁理士や志望者にとってメリットのある職場と言えます。

特許庁

特許庁は特許の審査をするのがメインの業務です。特許・意匠登録・商標登録などの出願の審査をします。弁理士の仕事は特許の出願ですが、審査側の仕事も弁理士の仕事になり得るのです。

ただし、特許庁の審査官は国家公務員ですので、弁理士資格だけでなく、国家公務員採用試験に合格する必要があります。そのためには時間と費用も余分にかかります。

国家公務員の年収はおよそ500万円です。知的財産業務経験などがある人は任期付特許審査官というポジションに応募することもできます。

独立開業

自ら事務所を設けて独立開業して弁理士をしている人もいます。弁理士としての開業については、年齢や経験などの制限や決まりはありません。自分が独立したいと考えればいつでも独立できます。

ただし、弁理士事務所間の案件獲得競争は厳しいです。弁理士資格があるからと言って、いきなり開業しても案件の受注など事務所の経営面でも難しい点はあり、そう簡単に仕事ができるわけではありません。

まずは既存の弁理士事務所などで経験を積み、営業ノウハウも身に付けてから独立するのが良いでしょう。

転職するには

弁理士資格があるからと言って弁理士への転職が有利になるわけではありません。弁理士資格があることは弁理士の仕事をする上で必須の前提だからです。

それでも20代~30代の若手であれば将来期待で転職できる可能性も大きいです。しかし、中高年になると実務経験が重視されます。

転職活動をするタイミングは、実務修習を受けている時期が良いです。特許事務所は実務修習が行われる時期から採用活動を始めるので、弁理士登録をする前から準備を始めましょう

求人を探す

ここでは、弁理士としての就職・転職先を探すためのおすすめの方法を具体的に紹介します。

転職サイトを利用する

まず転職サイトの利用です。マイナビやリクナビNEXT、ビズリーチなど様々な転職サイトがあります。

これら転職サイトでは、民間企業の知的財産部や研究機関などのさまざまな求人情報が掲載されています。その中から自分の弁理士資格を活かせる採用情報を探して、転職活動をすることです

知人に紹介してもらう

知人に転職先を紹介してもらうのも良い方法です。双方の希望がうまくマッチすれば、通常よりも早く簡単に転職できる可能性も高いです。

しかも、知人の紹介であれば、事前に社内の雰囲気などもわかるというメリットもあります。一方、せっかくの知人の紹介なので断りづらい、転職後も辞めづらいことなどのデメリットもあります

転職エージェントを利用する

転職エージェントの利用も有効な方法です。転職エージェントは、転職に関するノウハウ・実績が豊富で、転職先探しをしっかりサポートしてくれます。

希望に沿った求人を見つけて情報提供してくれるだけでなく、選考通過のためのアドバイスや給与交渉もしてくれます。自分に会わない転職などを避け、入社後のミスマッチも防げます

一人前の弁理士になるためには

一人前

ここでは、一人前の弁理士になるために求められる資質について解説します。知的財産権などを扱い幅広く活躍するために必要な力や、成功の秘訣を見ておきましょう。

弁理士に求められる資質

弁理士の仕事をやっていくうえで必要なことは、弁理士としての専門的技術と法律に関する知識です。新しい技術に対する興味・関心を持ち続けて、広範な知識を身に付けていく勤勉さが求められます。

また、専門性の高い難しい業務ですので経験が必須です。実務経験を繰り返し積んでいくことにより仕事の手順や臨機応変の対処の仕方が身に付くだけでなく、専門知識も深まります。

英語力が求められる

弁理士も英語力が求められます。国内のクライアントが海外での権利化を希望するケースと、海外のクライアントが日本での権利化を希望するケースが、ともに増えているからです。

英文書類の読み込みや外国のクライアントとの面談をスムーズに進めるために、英語力は必須です。英会話力も必要ですが、特に重要なのは英文レターの正確な理解で、高い読解力が求められます。

弁理士の将来性

将来性

ここでは弁理士の将来性を見ておきます。まず現状の弁理士の年齢構成をみると、全体のほぼ半数が50歳以上です。20~30代の方は15%程度に過ぎず、中高年が中心の業界になっています。

一方、特許出願件数は減少傾向にあり、また、書類作成などの作業はAIの利用が進んでいます。弁理士の仕事がAIに取って代わられると危惧する向きもあるでしょう。

しかし、特許をめぐる交渉や最終的な判断はあくまでも人が行うものです。しかも、国際間の競争が高まる中で、弁理士の国際関係業務のニーズ・重要性はさらに高まるものと見られます。

現に国際出願件数は増加しています。重点分野が変わることがあっても、弁理士の将来性は前向きにとらえてもよいでしょう。若い世代の参入を促すことも大事です。

弁理士試験合格後にすることについてまとめ

弁理士試験合格後にすることについてまとめ

  • 実務修習は期間内に必ず修習を終わらせる
  • 弁理士登録の前後には約20万円必要なので準備しておく
  • 弁理士登録をする前から転職活動の準備を始める

弁理士試験合格後に何をすべきかについて、弁理士の登録方法や費用、さらに就職・転職方法などを解説してきました。

弁理士の仕事は幅広い知識と経験が重要です。国際関係業務のニーズが高まる中、弁理士の活躍する舞台は広がる可能性もあります。

弁理士試験に合格した人はまず弁理士会への登録をすませて業務開始に備えましょう。弁理士資格取得を目指す人も、しっかり勉強して試験合格を目指してください。

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