弁理士は食えない資格なのか?年収や将来性、独立失敗のリスクまで徹底解説!

更新

弁理士ってきちんと収入を得られる資格なの?

長い目で見て自分の役に立つ資格なの?

弁理士という職に対し、このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?

弁理士は知的財産に関するスペシャリストで、その資格を有することで特許の申請などの仕事を請け負うことが可能です。その資格の取得は非常に難易度が高く、理系資格の中でもトップクラスの難関資格と言われています。

このように魅力的な資格であるにもかかわらず、一部では弁理士は食えないのではないかという噂も飛び交っています。

そこで今回は弁理士が食えないといわれている原因や将来活躍できる弁理士になるための方法について詳しく解説していきます。

この記事を読めば弁理士についての誤った認識をなくし、正しい理解を得られるはずです!

弁理士についてざっくり説明すると

  • 非常に難易度の高い資格で、独占業務が認められている
  • 年収は日本の平均年収を大幅に上周り、将来性がある
  • スキルを磨き、コネを作ることで独立開業を成功させることができる

このページにはプロモーションが含まれています

弁理士は食えないとされる原因

昔と違い、現在の弁理士は「食えない」と言われることが増えてきました。その理由としては、特許出願数の減少・弁理士の増加・AIの進化などが考えられます。

ここではそれぞれの理由について、弁理士の基本情報とともに詳しく解説していきましょう。

日本の特許出願件数の減少

弁理士とは、特許権・商標権などの知的財産に関する専門家のことを指し、その主な仕事は特許の出願です。

日本の特許出願数は近年減少傾向にあります。2019年に日本の特許庁に出願された件数は307,969件となっており、前年と比較すると5,000件以上も減少しています。

さらに、特許申請が最も多かった2001年は439,175件もの出願があり、この年と比較すると30%程度減少していることが分かります。

出願件数が減少した主な理由としては、出願する企業側が出願件数よりも出願の質を重要視するようになっているということが挙げられます。

このことは、特許出願数が減ったにも関わらず登録数が徐々に増加しているという傾向から考えられます。

このような状況だけを考慮すると、企業からの依頼数が減り、弁理士としての仕事がないため稼げないと考える人も多くなります。

弁理士の人数は徐々に増加している

平成21年度から見た弁理士の人数推移をまとめたものが下記の表です。

人数
平成21年度 8,183人
平成22年度 8,713人
平成23年度 9,146人
平成24年度 9,657人
平成25年度 10,171人
平成26年度 10,680人

表から分かるように、弁理士の人数は年々増加傾向にあります。最終合格者数は徐々に減っていますが、弁理士資格の受験には受験制限が設けられておらず資格取得者が毎年存在するため、このような結果になっています。

そのため、弁理士の人数が順調に増え飽和状態に陥り、仕事がないという考え方をする人もいます。

AIに仕事が奪われるという声も

進化する科学技術により、AIに仕事が奪われるため、弁理士は食えないのではと考える方もいます。

イギリスのオックスフォード大学が2013年に発表したレポートによると米国では将来労働人口の47%がAIに代替される可能性があると言われています。

また、同様の調査を野村総合研究所が日本に限定して行った結果では、AIの代替可能性は49%という結果となり、この調査の中では、弁理士の代替可能性は92%と、非常に高い数値が報告されています。

弁理士において必要な知識や熟練、期限やデータ管理などの業務というものはAIとの親和性が高いため、このように高い数値が出たと言われています。

実際にAIを利用した調査においても補助的な役割を果たせると考えられ、これは将来の弁理士業務に対する大きな不安にもつながっているのです。

廃業に追い込まれることも

弁理士として独立した後、失敗して廃業に追い込まれてしまう場合もあります。独立に失敗する理由として特に多い原因が次の3つです。

難関資格を取得することができても仕事を得られず廃業してしまうと意味がありませんよね。独立後、廃業に悩むことがないように失敗しやすい理由は事前に確認しておくことが大切です。

昔より独立開業の成功が難しくなった

まず一つ目に、昔よりも独立開業の成功が難しくなったという点が挙げられます。

顧客の多くは、担当の特許事務所を変更することがなく、一度契約している事務所を変更するというケースは非常に稀なのです。

そのため、設立が早い事務所の方が比較的成功しやすく、新しく立ち上げた事務所はなかなか取引先が見つかりません。

独立を考えている場合は、大手事務所との競争に勝ち、新規の案件を獲得することが必要になってきます。

この新規案件の獲得がうまく軌道に乗らないと、仕事がない・稼げないという状況に陥ってしまいます。

営業・マーケティングの能力が不足

2つ目の理由としては、営業・マーケティングの能力が不足しているという点が挙げられます。

独立開業する場合は当然、自らが営業することで新規顧客を獲得する必要があります。そのため、営業が苦手な人の場合収益を上げるのが難しくなってしまいます。

独立するには、競合にどんな事務所がいても自分の事務所の強みを見極めプレゼンするマーケティング能力が必要不可欠だと言えるでしょう。

他の事務所との差別化に失敗

3つ目の理由は、他の事務所との差別化に失敗してしまうという点が挙げられます。

弁理士は年々増加して、同じように新しい事務所も作られます。そんな中で仕事を獲得するには、自分の事務所と他の事務所の違いをはっきりとさせる必要があるでしょう。

手続きのスピードが速いなど他の事務所にはない強みが無ければ、既存の事務所に埋もれてしまい事務所を存続させることが難しくなってしまいます。

弁理士の仕事がなくなるって本当?

弁理士の仕事はなくなってしまう要素とそうならない要素が存在しています。弁理士の資格をとっても仕事が無ければ意味がないと考える人も少なくないでしょう。

ここでは弁理士の需要が今後どう変化していくのか、理由と共に解説していきます。

弁理士の仕事がなくならない理由

結論から述べると弁理士業務は今後も需要がある分野で、仕事がなくなることはありません。

主な理由として次の3つが考えられます。

技術の進歩により特許は引き続き重要

技術はこれからもどんどん進歩します。過去から現在に至り、人間の欲望を叶えるために開発が続けられているからです。

そしてその技術を守ろうとする働きもなくなりません。

特許の出願数だけを見ると年々減少しているように見えますが、技術の進歩が続く限り弁理士の仕事は重要なままで、なくなることはないでしょう。

官公庁と関わる独占業務の存在

弁理士の仕事は官公庁と関係しており、業務自体がなくなることはないとされています。

特に特許庁への出願は弁理士の独占業務となっているため、弁理士の仕事は今後も続くこと間違いなしです。

更に、官公庁に申請する際の提出書類はいまだに多く、作成には特別な権限・知識を必要とすることから、弁理士の需要は一定数あるといってよいでしょう。

企業知財の業務が多様化

近年、企業知財の業務が多様化していることも弁理士の需要に繋がります。

これまで企業知財では、

  • 知財の創出
  • 管理
  • 活用

などを基本的な業務としてきました。

しかし、現在では業務選定の際に情報を提示するなど、これまで以上に拡大した業務領域の中での業務が求められるようになってきています。

そうすると限られた時間で業務の質を下げない為に、専門家のサポートが必要になります。業務パートナーである特許事務所もそれに応じて仕事の領域が広がり、仕事が増えます。

海外では特許の需要が多い

海外では特許の需要が多いということも弁理士業務がなくならない理由の一つです。

アメリカでは特許が非常に重要視されており、特許事務所が活躍できる場が多く存在します。さらに中国においても、政府が意識の向上を目指すことにより知財保護への需要が高くなってきています。

知財への意識が低いとされる新興国においても、今後の発展とともに知財への意識が高まっていく可能性が期待されています。

AIが苦手なコンサルティング業務

AIの技術が進歩し、業務の代替可能性が高いと発表されましたが、AIのコミュニケーション能力はまだまだ人間に劣ります。

弁理士は、依頼者とコミュニケーションを図り、相互理解を深めた上で依頼者の意思を反映した出願書類を作成する必要があります。

また、どのような権利を取ればいいのか分からないという依頼者へのケアも必要です。依頼者の発明品やアイディアについて相談を受け、具体的な方向性を提示しなければなりません。

AIには上記のような高度なコミュニケーションはできないため、完全に弁理士の業務をAIに代替されるという心配はありません。

弁理士の平均年収は700~800万円

弁理士の平均年収は700万円~800万円です。

勤務する会社の規模によっても年収は大きく異なり、個人特許事務所・中堅以上の特許事務所・事業会社の3つの年収は次の表の通りです。

勤務先 平均年収
個人特許事務所 400万円~700万円
中堅以上の特許事務所 700万円~1,000万円
事業会社 500万円~1,000万円

表で分類している中堅以上の特許事務所は従業員数10名以上を指し、個人特許事務所は従業員数が10名以下の事務所を指しています。

この表を見て分かるように、弁理士の年収は勤務先によって差が生じます。

表を見ると、436万円と言われている日本の平均年収を大きく上回ることが分かります。

さらに、行政書士・社労士の平均年収がそれぞれ約600万円・約670万円であることを鑑みても弁理士の年収は非常に高いことが伺えます。

将来需要がある弁理士になるためには

ここまでまとめてきた内容から、弁理士は平均年収が高く、今後も需要がある仕事だと考えられます。

次は、知的財産に関する専門家としてクライアントから頼られる有望な弁理士になるためのポイントについてまとめていきましょう。

顧客の需要を柔軟に見極める

今後はAIに代替されることのないようなコンサルティング業務を行うことが重要です。そのためにも、顧客の需要を柔軟に見極め、潜在的なニーズをくみ取ったサービスを提供するというのが大切になってきます。

人間の弁理士にしかないコミュニケーション能力を活かし、依頼者が何を望んでいるのか・どうすれば満足してもらえるのかを常に頭に入れておく必要があるでしょう。

最新の技術を常にチェックする

前述したように人間が望む限り技術は進歩を続け、その進歩によって弁理士業務の需要がなくなることがありません。

ただし、弁理士の仕事は技術の進歩と共にあるものなので、自分も最新の技術について常に知っておく必要があります。

具体的には

  • 新商品をチェックする
  • トレンドにアンテナを張る
  • 進歩した技術に触れて学ぶ

など、最新のものには興味関心を持つようにしておくことが大切です。

グローバルに活躍できる人材に

特許の主な需要は外国に存在しています。そのため、国内だけでなく海外の市場に対してもアンテナを張り、グローバルに活躍できる力を身につけることが重要になってきます。

海外の技術や商品の動向だけではなく、法律についても知識が必要です。

特許法は国ごとに異なるため、知識が無ければ仕事の成果が出ない・コストが余計にかかるなどのリスクが発生してしまいます。

語学力の習得も必要

海外の法律や技術について学ぶことも重要ですが、「その土地の言語を話すことができる」というのも必須スキルの一つです。

言語の習得は、海外の特許庁や事務所のやりとりだけではなく正しい情報を収集することにもつながります。

また、言語を習得していない場合は国内での仕事に限定してしまうため獲得できる仕事数が大幅に減ってしまいます。

外国の特許庁や海外事務所では英語でのやり取りで通じますので、まずは英語力を身につけるようにすると良いでしょう。

豊富なコネが独立成功の秘訣

コネが豊富だとその分独立が成功する可能性が上がります。

独立前に繋がりがあるクライアントは、独立後も引き続き顧客となってくれるケースが多く、コネがあると独立後も安定した案件をゲットできるようになります。

さらに、その顧客からの紹介により新規のクライアントへとつながることも可能です。

大口顧客の場合は同じように大口顧客を紹介してくれる可能性も高く、「独立したけど仕事が無い」という状況に陥る心配もありません。

弁理士は将来性が十分にある仕事

昨今の日本の特許出願状況やAIの進歩・業務代替率を考えると、弁理士の仕事は厳しくなっていると考える人が多いのが現状です。

しかしこの記事で説明をしたように、弁理士の仕事がなくなる心配はありません。技術の進歩に伴い、弁理士の需要は今後も期待できるということが明確です。

同時に、弁理士として活躍するためにはコンサルティングスキルの向上・グローバルな視点が必要であることも分かりました。

弁理士は、自身のスキルを磨き環境を整えることで、十分将来性のある仕事だと言えるでしょう。

万が一独立に失敗したら

最後に、万が一独立に失敗してしまった場合の転職方法に関しておすすめの方法をお伝えします。

前職と関係の深い職場はNG

独立に失敗してしまった場合、その失敗がマイナスイメージとして定着してしまう可能性があります。そのため、前職と関係の深い職場は避けた方が良いでしょう。

同じように、前職の退職理由がネガティブなものの場合、似たような職場を志望すると同じ失敗を繰り返してしまう可能性があります。できるだけつながりのある職場は避けるようにしましょう。

転職エージェントの利用がおすすめ

転職活動を行う際には、 転職エージェントの利用がおすすめです。

転職エージェントを利用すると、書類や転職先の支援だけでなく面接対策も行ってくれます。

豊富な案件から自分に合った案件を見つけて紹介してくれるというのもおすすめのポイントで、それにより転職後のミスマッチを防ぐことが可能です。

特に独立に失敗した後は自信を無くしているケースも多く、自分に最適な仕事を探すことを難しく感じてしまうことがあります。

そんな中、様々なサポートが充実している転職エージェントなら安心して転職活動を行うことができるでしょう。

廃業後の再就職先におすすめの職場

廃業後におすすめな3つ職場を紹介します。

特許事務所に戻るのがやや簡単

独立した人は、弁理士として様々な経験を積んでいます。そのため、資格や経験を活かせる特許事務所に戻るというのが一番おすすめの方法です。

独立した経験から、経営者としての視点を持っているため、雇用する事務所からの需要も非常に高いでしょう。

安定を求めるならメーカーの知財部

他にも、経験を活かせる職場としてメーカーの知財部に入社するという方法があります。中でも大手企業の知財部であれば収入が安定しており、福利厚生も充実しています。

業務内容の幅としては特許事務所よりも狭くなりますが、他の社員やエンジニアとの連携が必要な重要ポジションで、新鮮さとやりがいを感じることができるでしょう。

将来性の高いコンテンツ制作会社

将来性が高いという点では、コンテンツ制作会社がおすすめです。近年成長が著しく、企業の成長次第ではかなりの高収入が期待できます。

ただしコンテンツ制作会社は競争が激しく、激務となる可能性が非常に高いでしょう。

弁理士についてまとめ

弁理士についてまとめ

  • 技術の進歩と共に需要が生まれる将来性のある仕事
  • 平均年収は700万円から800万円と高めの相場
  • 語学力やコンサルティングスキルなど自分の能力を高めることで他の事務所との差別化を図ることが可能

ここまで弁理士が食えないといわれている理由や、弁理士業務の将来性について解説してきました。

特許出願数が減っているとは言え、技術が進歩する限り確実に需要がある仕事のため、全く稼げないということにはならないでしょう。

自分のスキルを高めることにより他の事務所との差別化を図ることもでき、独立成功へと近づきます。

独立しなくても平均年収は高く、将来性もある非常に魅力的な職業ですので、資格の取得を検討している人は是非取得を検討してみてはいかがでしょうか?

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1