二級建築士試験の合格点はどのくらい?難易度や合格率・勉強方法についても解説

「二級建築士の合格点ってどのくらい?」

「二級建築士ってどのくらい難しいの?」

二級建築士試験の受験を考えたことがある人は、このような疑問を持つのではないでしょうか。

この記事では、二級建築士試験の合格点、合格率、難易度などについて、具体的なデータを用いて解説しています。また、一級建築士や木造建築士との難易度の違いなどについても紹介します。

二級建築士試験の仕組みや合格点、合格率、難易度などを理解し、二級建築士試験の合格を目指しましょう!

二級建築士の合格点についてざっくり説明すると

  • 二級建築士試験の科目は4科目あり、合格点は各科目で13点以上、総得点では60点以上を取ることが基準となっている
  • 二級建築士試験の合格率は20%台で、難易度が高い試験であると言える
  • 学科試験で合格しても、製図試験でランクⅰを取得できなければ合格できない仕組みになっている

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二級建築士試験の概要

テストとペン

まずは、二級建築士試験がどのようなものなのか、基本情報を簡単に説明していきます。

二級建築士とは国家資格の一つで、試験に合格すると都道府県知事が免許を交付する建築系の資格です。

試験形式は、五肢択一式の学科試験が4科目と、実際に建築物のデザインを行う設計製図の試験の2つで構成されています。

学科試験は学科ⅰからⅳまでに分かれており、それぞれ「建築計画」「建築法規」」「建築構造」「建築施工」となっています。出題数はそれぞれ25問ずつで、試験時間は「建築計画」と「建築法規」で3時間、「建築構造」と「建築施工」で3時間かけて行います。

また、設計製図の試験は、一つの課題を5時間かけて行う試験です。

学科の試験と設計製図の試験は別日に行われ、学科の試験が終わってからおおよそ2か月後に設計製図の試験が開催されています。

二級建築士試験の合格点はどのくらい?

勉強する女性

二級建築士試験の合格点はどのくらいなのでしょうか。

ここからは、二級建築士試験に合格するための仕組みについて解説していきます。

学科試験と設計製図試験の両方に合格する

二級建築士試験は、五肢択一式の学科試験と設計製図試験の両方に合格しなければなりません。

学科試験に合格できないと設計製図試験には進めないため、まずは学科試験で合格点を取ることを目標に頑張りましょう。

試験形式では二つの科目を3時間かけて解くという点で、時間配分が難しいという特徴があります。

勉強する際には、実際の試験のように時間設定をして問題を解く練習を積み重ね、本番で困らないようにしておきましょう。

各学科試験で13点以上取る必要がある

学科試験では4科目がありますが、各科目の総得点と合格基準点は以下の通りです。

年度 科目 総得点
計画 法規 構造 施工
令和2年 13/25 13/25 13/25 13/25 60/100
令和元年 13/25 13/25 13/25 13/25 60/100
平成30年 13/25 13/25 13/25 13/25 60/100
平成29年 13/25 13/25 13/25 13/25 60/100
平成28年 13/25 13/25 13/25 13/25 60/100
平成27年 13/25 13/25 13/25 12/25 59/100

この表からわかるように、平成27年を除き、各科目の合格基準点は13点でした。

合格するためには、どの科目も合格基準点を満たすように、まんべんなく勉強していくことが大切です。

苦手科目があり、一つでも合格基準点を下回ってしまうと不合格となってしまいます。もし苦手科目がある場合は、重点的に勉強して苦手意識を克服し高得点を取れるようにしておかなければなりません。

合格基準点は60点以上

上記の表の一番左を見てください。こちらは総得点のデータです。平成27年を除き、総得点では60点が合格基準点になっています。

ここで気を付けなければならないのは、各科目を13点ずつとっても総得点では52点にとどまり、総得点の合格基準点60点には及ばないということです。

ですから、一科目13点取ればよいという姿勢で取り組んでいると総得点が60点まで行けず、合格できないということになります。13点はあくまでも合格基準点ですので、それ以上の点数を取ることができ、総得点が60点以上になるように勉強していきましょう。

製図試験では最上位ランクの評価が必須

製図試験では、制限時間5時間以内にテーマに沿った作図を行うことが求められます。

最近の製図のテーマは以下の通りです。

課題
令和2年 シェアハウスを併設した高齢者夫妻の住まい(木造2階建て)
令和元年 夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅(木造2階建て)
平成30年 地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅
平成29年 家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(木造2階建て)
平成28年 景勝地に建つ土間スペースのある週末住宅(木造2階建て)

また、以前までは製図試験では記述問題がありませんでしたが、平成24年からは記述問題も含まれるようになりました。

記述問題が含まれるようになり、試験時間が4時間半から5時間に変更されたため、記述問題は30分で解くことが前提とされていると考えられます。

製図試験対策はもちろんのこと、記述問題が出たときに焦らずに済むように、記述問題対策もしておくことがおすすめです。

なお、製図試験の結果にはⅰ~ⅳまでのランクが付けられます。ランクの一覧は以下の通りです。

ランク
ランクⅰ 「知識及び技能」を有するもの
ランクⅱ 「知識及び技能」が不足しているもの
ランクⅲ 「知識及び技能」が著しく不足しているもの
ランクⅳ 設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの

製図試験の結果はこのようにランク分けされ、ランクⅰの人しか合格できない仕組みになっているため、二級建築士試験の合格基準は厳しいと言えます。

建築に関する知識と技能が一定のレベルに達していなければ二級建築士としては認められないのです。学科試験対策はもちろんのこと、製図試験対策もしっかり行っていかなければ、二級建築士試験には合格できません。

二級建築士試験の合格率はなぜ低いの?

クエスチョンマークと黒板

二級建築士の合格率は20%程度であり、難易度は比較的高い試験だと言えます。

二級建築士試験の合格率はなぜ低いのでしょうか。まず、先ほども述べたように、合格基準が厳しいことが、合格率が低くなってしまうことの原因の一つです。

その他にも、合格率が低くなってしまう原因があります。ここでは、二級建築士の合格率の推移などを紹介しながら、二級建築士の難易度が高い理由について解説します。

二級建築士の合格率推移

受験者の中には、合格は難しいことをわかっていながら記念として受験するという「記念受験」をしている人も少なからずいることが、合格率が低くなっている原因の一つです。

しっかりと受験対策を行わないまま受験をする人たちが一定数おり、かつ、その人たちが合格しないと単純に合格率が下がってしまいます。

合格率を参考にするときには、このように、合格率の実態について注意する必要があります。

ここで、合格率の推移などをまとめたものを見てみましょう。

年度 学科試験 製図試験 総合
受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率 合格率
令和4年 18,893人 8,088人 42.8% 10,797人 5,670人 52.5% 25.0%
令和3年 19,596人 8,219人 41.9% 11,450人 5,559人 48.6% 23.6%
令和2年 18,258人 7,565人 41.4% 11,253人 5,979人 53.1% 26.4%
令和元年 19,389人 8,143人 42.0% 10,884人 5,073人 46.3% 22.2%
平成30年 19,557人 7,197人 37.7% 10,920人 5,997人 54.9% 25.5%
平成29年 19,649人 8,488人 36.6% 10,837人 5,763人 53.2% 24.3%
平成28年 20,057人 8,488人 42.3% 11,159人 5,920人 53.1% 25.4%
平成27年 19,940人 5,996人 30.1% 9,456人 5,103人 54.0% 21.5%

このように、学科試験では30~40%の人が合格しています。その後の製図試験には、学科試験に合格した人しか進めないため、建築に関しての知識がしっかり身に付いている人のみが受験していることになります。そのためか、製図試験の合格率は50%以上の合格率であることが多いのが特徴です。

しかし、総合での合格率は20%と、資格試験の中では合格率が低い試験であると言うことができます。

ただし、先ほども述べたように、この受験者の中にも記念受験をしている人がいるかもしれないため、合格率については参考程度に受け止めるようにしてください。

合格基準の厳しさが難易度を高めている

先ほども述べたように、二級建築士試験は合格基準が厳しいことが、難易度が高い原因の一つであると言えます。

また、二級建築士試験は受験資格を取得することも大変であり、それも資格取得の難易度を上げている可能性があります。

二級建築士の受験資格は以下の通りです。

建築に関する学歴又は資格等 実務経験年数(試験時)
大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者 最短0年
建築設備士 0年
その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等 所定の年数以上
建築に関する学歴なし 7年以上

このように、二級建築士試験を受けるためには、建築に関する学歴や建築設備士の資格が必要になります。

また、条件によっては実務経験も求められます。建築に関する学歴がある方は求められる実務経験が最短で0年、建築設備士の場合は求められる実務経験は0年です。

建築に関する学歴がない方の場合でも受験は可能ですが、試験までに実務経験を7年以上積んでおく必要がある点は注意が必要です。

このように、大学などを卒業している方や建築設備士の方でないと容易に試験を受けられないという点が、二級建築士試験の難易度を高めていると言えます。

建築に関する学歴がない方は、7年以上実務経験を積むよりは、大学などで建築を学び学歴を身に付けた方が、早く二級建築士試験に挑戦できます。

建築に関する学歴がないけれども二級建築士試験を受験したい方は、実務経験を7年積むよりも大学などに進むことを選んだ方が賢明でしょう。

一級・木造建築士との難易度比較

二級建築士の難易度は、似たような資格である木造建築士や、上位資格である一級建築士の難易度と比べるとどのくらいの難易度なのでしょうか。

【一級建築士の近年の合格率】

年度 学科 設計製図 総合
平成27年度 18.6% 40.5% 12.4%
平成28年度 16.1% 42.4% 12.0%
平成29年度 18.4% 37.7% 10.8%
平成30年度 18.3% 41.4% 12.5%
令和元年度 22.8% 35.2% 12.0%
令和2年度 20.7% 34.4% 10.6%
令和3年度 15.2% 35.9% 9.9%
令和4年度 21.0% 33.0% 9.9%

【木造建築士の近年の合格率】

年度 学科 設計製図 総合
平成27年度 54.7% 50.5% 27.3%
平成28年度 61.4% 56.4% 35.5%
平成29年度 48.1% 76.0% 40.1%
平成30年度 57.4% 64.9% 35.8%
令和元年度 56.1% 59.4% 33.3%
令和2年度 53.0% 72.1% 37.8%
令和3年度 49.9% 67.7% 33.0%
令和4年度 62.6% 59.0% 35.5%

二級建築士の合格率は20%台ですが、一級建築士の合格率は10%台であり、一級建築士の方が二級建築士よりも合格率がはるかに低いことがわかります。

一級建築士試験は、あらゆる資格試験の中でも難関資格のうちに入り、数年かけて合格を目指す人が多い試験です。

まずは二級建築士を取得し、建築士としての経験を積みながら一級建築士を目指す人も多くいます。

一方、木造建築士の合格率は二級建築士の合格率よりも高く、難易度でいうと二級建築士の方が木造建築士よりも難しい試験であると言えます。

木造建築士は二級建築士よりも扱える建築物が少なく、二級建築士を取得していれば木造建築士が扱える規模の建築物は設計することができます。そのため、二級建築士を目指すにあたって木造建築士を取得していないと困るということはありません。

しかし、木造建築士は木造建築のスペシャリストであるため、木造建築について専門的な知識を持ちたい方は、木造建築士を取得しておいてもよいでしょう。

建築の専門的知識が必要

二級建築士試験の合格率を下げる要因の一つとして「試験当日までに、建築の専門的な知識を合格基準にまで身に付けてくる必要がある」という点があります。

一級建築士試験や、工事の知識が必要な木造建築士試験と比べると、二級建築士試験は建築士の基礎的内容が出題される試験となります。

建築の基礎的内容ではあるものの、専門的な内容であることには変わりがありませんので、初学者は聞いたことがないような専門的な用語が頻出するでしょう。

二級だからといって簡単だというわけではなく、基礎的かつ専門的な知識をしっかり身に付けていなければ合格できないという点が、二級建築士試験の難しさだと言えます。

試験科目数が多い

二級建築士試験は試験科目が4科目あり、多くの分野を幅広く勉強する必要があるため、簡単に合格できる試験ではありません。

また、4科目それぞれ13点以上が合格点となります。総得点でも60点以上取らないと合格点とならないため、どの科目でも点数が取れるようにしておかなければなりません。苦手科目があると合格はしにくくなります。

そのような試験の仕組みが、二級建築士試験の合格率を下げている原因の一つになっていると言えます。

各科目の合格点を13点以上取るということを意識しながら受験勉強をしていく必要があります。過去問を解くときには、毎回合格点以上になるくらいまでに仕上げておくことをおすすめします。

二級建築士試験に合格するための勉強方法

スマホと黒板

難易度が比較的高いとされる二級建築士に合格するためには、どのように学習するのが効果的なのかご紹介していきます。

個人差はありますが、合格するために必要な勉強時間は学科試験で500時間以上、製図試験で150時間程度と言われていますので、参考にしてみてください。

合格点以上取るつもりで勉強する

どの試験でも言えることですが、合格点ギリギリを狙うよりも、それ以上の点数を取るつもりで勉強する方が合格できる確率が上がると言えます。

二級建築士試験の学科試験に合格するために必要な勉強時間は最低でも500時間と言われています。勉強する際には、確実に合格点以上を取ることを目標としながら、500時間をどのように効率よく使うのかあらかじめ考えて勉強スケジュールを組むなど、計画性を持つことがおすすめです。

法規は過去問と法令集で基礎知識を網羅

二級建築士の学科試験は、建築士になるために必要最低限の基礎知識が多く出題されます。

学科試験は、これまで出題された内容から問題が作られることがほとんどであるため、過去問に取り組み知識をインプットしておくことをおすすめします。

建築施工や建築構造の科目では初出題の問題が見られる可能性がありますが、過去問で得た知識を使って消去法で解くことも可能であるため、いずれにしてもどの科目でも過去問を解く勉強は必要です。

また、建築法規の勉強をする際には、試験当日に持ち込み利用する法令集も用いながら勉強すると内容を覚えやすくなります。

製図試験では作図力が必須

二級建築士の製図試験では、作図問題の割合が高く、5時間の時間制限以内に作図を完成させることが重要です。

作図が未完成の場合、その時点で不合格となってしまうため、まずは作図を完成させることが必須条件となります。

また、最近の課題の特色として、ただ住宅の作図をすればよいだけではなく、「シェアハウス」や「ライフステージに合わせた三世代住宅」など、現代社会の実態に合わせた課題が出題されます。その課題の出題意図を組みながら作図することが重要です。

一級建築士試験をモチベーションに学習する

二級建築士資格では携われる建築物に上限がありますが、一級建築士試験を持っていると携われる建築物に制限がなくなります。一級建築士は、二級建築士よりも業務の幅が広がるのです。

ただ、一級建築士の合格率は10%とかなり難易度が高い試験であるため、一級建築士試験を受けるためにもまずは二級建築士試験を受験し、必要な建築の基礎知識を勉強する人は一定数います。

一級建築士試験を目指す人にとっても、一級建築士に合格することをモチベーションや最終目標とし、まずは二級建築士試験を受験しておくことはおすすめできる方法です。

二級建築士の合格点についてまとめ

二級建築士の合格点についてまとめ

  • 二級建築士試験では、合格点の基準や受験資格が厳しいことが難易度を高めている要因であると言える
  • 二級建築士試験では建築に関する基礎的かつ専門的な知識が問われるため難易度が高くなっている
  • 試験科目が4科目あり、勉強しなければならない範囲が広いことに加えて、製図試験も合格しなければならないため合格率が低めになっている

二級建築士試験の合格点、難易度、合格率など二級建築士試験の基本情報について解説しました。

二級建築士試験は、ただ勉強すれば合格できる試験ではありません。まず、受験資格として建築に関する学歴があるか、建築設備士の資格がないと受験することが難しくなっています。

また、学科試験に合格しても、製図試験でランクⅰを取得しなければ最終合格はできません。建築士としてのスキルやセンスがなければ二級建築士にはなれないのです。

しかし、二級建築士になることができれば、戸建て住宅などを設計できるようになり、建築士として仕事ができるようになります。難易度は高い試験ですが、ぜひ合格を目指して勉強を始めてみましょう!

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