ビアテイスターってどんな資格?難易度・過去問・独学勉強法まで全て解説!
ビアテイスターという資格をご存じでしょうか?
日本だけでも多種多様なビールが存在する昨今において、注目されている資格です。
この記事では、ビアテイスターとはどんな資格?ということから、試験の内容や難易度・勉強方法、資格取得のメリットや就職・転職まで全ての情報を解説しています。
ビアテイスターに興味があり、ビールに関わるお仕事がしたい、ビールのことをもっと知りたいという方に、最初に読んでいただきたい内容です。
ビアテイスターについてざっくり説明すると
- ビールの出来の良し悪しを客観的に鑑定し、その理由を理論的に説明できる人
- 日本各地の地ビールブームで注目を集めている資格
- ビールが好きな方から専門家を目指す方まで、取得する理由は様々
- ビール関連の仕事のキャリアアップにもおすすめ
ビアテイスターってどんな資格?
ビールに関わるお仕事をしている方だけでなく、ビール好きの方からも注目を集めている「ビアテイスター」。
名称からは「ビールの味に詳しい人」といった印象を受けますが、はたしてどんな資格なのでしょうか。
ビアテイスターとは
ビアテイスターとは、「官能評価(テイスティング)によってビールの出来の良し悪しを客観的に鑑定し、その理由を理論的に説明できる人」に与えられる資格とされています。
かつてビールは、大規模な製造ができる企業にしか生産が認められていませんでしたが、1994年の規制緩和以降、日本各地で個性的な小規模醸造のビール(クラフトビール)や地ビールが作られるようになりました。
これにより多様なビールの出来や味を客観的に評価し、日本の地ビール普及のための専門家を育成するために誕生したのが、ビアテイスターという資格です。
ビアスタイルとは
ビアスタイルとは、ビールの分類やグループ分けのようなものであり、世界には80種類以上のビアスタイルが存在します。
大きくは酵母の種類や発酵方法で分けられ(ラガー系、エール系、その他)、さらに作られた地域や原料などにより、80種類以上のビアスタイルに細かく分類されています。
ビアテイスターの主催団体
ビアテイスターの認定試験は、日本地ビール協会の主催で行われています。
日本地ビール協会は、「日本および世界のビール、地ビール(クラフトビア)の文化の普及と振興及びビールが醸す人々との交歓」を目的として、1994年に発足されています。
日本地ビール協会では、日本のビールの品質向上および消費者に本当のビールの魅力や楽しみを伝えることを目的として、ビアテイスターやビアジャッジ、ビア・コーディネイターといったビールに関する資格を運営しています。
ビアテイスターは地ビールブームで注目を集めている
1994年のビールの小規模醸造の規制が緩和され、1995年に日本の地ビールが誕生して以来、日本に地ビールブームが起こりました。
今では、全国に255ヶ所もの地ビール・地発泡酒の醸造所があり(2017年4月時点)、様々な風味の地ビールが造られています。
そのため、ビアテイスターがビールの専門家として必要とされることはもちろんですが、ビール好きの主婦やサラリーマンの方が趣味としてビアテイスター資格を取得するケースも増えています。
2020年時点ですでに7,000人を越える方がビアテイスター、ビアジャッジ、ビア・コーディネイターといったビール関連の資格を取得しています。
ビアテイスターの難易度
ビアテイスターを目指すとしたら、難易度はどのくらいなのでしょうか。
気になるビアテイスター試験の出題範囲や合格ラインを見ていきましょう。
ビアテイスターの試験範囲と出題形式
ビアテイスターの認定試験では、55問の筆記試験と6問の官能評価(テイスティング)試験が行われます。試験時間は45分間です。
試験範囲は、日本地ビール協会主催の「ビアテイスター認定セミナー」で学ぶ内容です。
認定セミナーでは、ビールの色度数・アルコール度数・原料や醸造による香り・味・コク・オフフレーバー(あってはならない匂いと味)などについて詳しく学びます。筆記試験はここから出題されます。
さらに約40種類のビールを試飲しながら、主要なビアスタイルの概要(色と泡もち、香りと風味、ビール全体のバランスと後味、鮮度と状態、コクと口当たり、等)が、ビアスタイルによってどのように違うかを体験して学びます。これらが官能評価試験の出題範囲です。
全ての講義終了後に認定試験が行われます。認定試験に合格者すると資格認定証書が授与され、「ビアテイスター」として名乗ることが認められます。
オフフレーバーとは
オフフレーバーとは、ビールが劣化することで発生する異臭や余計な味のことであり、オフフレーバーの原因には、ビールの醸造工程や保存方法が良くないことや、細菌の混入などがあります。
代表的なオフフレーバーとしては、スイートコーン臭(臭化ジメチル:仕込みまたは発酵過程で起こる)、バター臭(ジアセチル:発酵過程で起こる)、段ボール臭(酸化臭:高温が原因)、日光臭(動物臭:紫外線が原因)などがあります。
ビアテイスター認定セミナーには、これらの匂いによるビールの劣化判定の講義もあります。
官能評価試験は利き酒?
ビアテイスター認定試験の官能評価試験は、出題されたビールが該当するビアスタイル等を判定する形式です。
ビールの出来の善し悪し等を判定する、本来の官能評価(テイスティング)と言うよりは、「利き酒」に近いことが認定試験では行われます。
ビアテイスターの合格率、合格ライン
ビアテイスターの合格率は約80%、筆記試験と官能評価試験共に75点以上が合格ラインです。
認定セミナーの直後に認定試験が行われることや、合格率から見て難易度は高くないと言えるでしょう。
筆記試験と官能評価試験のいずれかが75点未満の場合は、残念ながら不合格となります。
試験結果の通知は2~3週間の内に郵送で行われ、合格者には認定証が発行されます。
ビアテイスターを取ることをおすすめする人
- ビールに関するお仕事をしている方
多種類のビールを提供する飲食店にお勤めしている、または販売しているという方にとって、取得するメリットは大きい資格です。
- ビールの専門家を目指している方
ビアテイスターは、ビールのプロフェッショナルへの入門としてもおすすめの資格です。さらに上位資格や関連する資格へと幅を広げていくのもよいでしょう。
- ビアフェスティバルをもっと楽しみたい方
日本地ビール協会主催の有料試飲イベントが「ジャパン・ビアフェスティバル」です。日本や世界の地ビールの試飲をより楽しみたい方には、ビアテイスターの知識が役立ちますね。
- ビールが趣味になるほど好きな方
趣味と実益を兼ねて、ビアテイスターを取得するメリットは十分にあるでしょう。
ビアテイスターの勉強法
ビアテイスターになるためには、どのような勉強法があるのでしょうか。どれだけ勉強時間を取ればよいのかも気になりますね。
ビアテイスターは独学できない
日本地ビール協会のビアテイスター認定セミナーでは、講義終了後に認定試験を行います。日本地ビール協会会員の方は、講義を受講せずに認定試験のみ受けることも可能です。
認定試験を受けるためには、日本地ビール協会の会員になる必要があります。非会員でも講義は受講できますが、認定試験に合格しないとビアテイスターの資格呼称が認められないので注意が必要です。
いずれにしても、認定試験はセミナーの内容から出題されるので、独学でビアテイスターになることはできないことになります。
ビアテイスターセミナーのタイムスケジュール
ビアテイスターセミナーは、おおよそ次のような時間割で行われ、1日かけてビールの理論やビアスタイルなどをしっかり学びます。
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9:30~10:30分開始(15分前~受付) ※
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午前講義(ビアテイスターの役割、ビールの基礎知識、官能評価の方法と手順、オフフレーバー)
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午後講義(ドイツ・チェコ・オーストリア発祥のビアスタイル、イギリス・アイルランド発祥のビアスタイル、ベルギー発祥のビアスタイル、アメリカ発祥のビアスタイル、他)
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講義終了後、認定試験
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18:00~18:45終了 ※
※会場により異なる
1日の講義は長く感じるかもしれませんが、自主的な勉強時間を多く取れない方にも心強い内容ですね。
おすすめテキスト・問題集
ビアテイスターセミナーの受講料には、セミナー用テキスト/ビアテイスター(2020年改訂版)と、ビアスタイルガイドライン2204が含まれています(認定試験のみの方にはテキスト類は付きません)。
セミナー用テキストやビアスタイルガイドラインは、郵送またはセミナー当日に受け取りますが、日本地ビール協会のオンラインショップ(CBAオンラインショップ)等で事前に購入することもできます。
過去問は存在する
日本地ビール協会公式ホームページでは、ビアテイスター認定試験の例題の一部が公開されています。以下に一部を抜粋してご紹介します。
例題1)一般に苦味は舌のどの部分で感じるか。
a)舌の先
b)舌の横
c)舌の奥
d)舌の裏
例題2)最も苦味の強いビアスタイルを下記の中から選びなさい。
a)シュヴァルツビール
b)南ドイツスタイル ヘーフェヴァイツェン
c)インディア・ペールエール
d)ミュンヒナー・デュンケル
e)ドルトムンダー/エクスポート
回答は記載されていませんが、出題の形式や傾向を知るための参考になりますね。
ビアテイスターの勉強をするメリット
ビアテイスターの資格をとることにはどんなメリットがあるのでしょうか。具体的な例を見ていきましょう。
ビールの良し悪しがわかる
ビアテイスターの勉強をすることで、ビールの官能評価やオフフレーバーの知識をもって、ビールの出来の善し悪しや劣化の進行具合・原因等を客観的に判断することができます。
ビアテイスターの知識は仕事に活かすだけでなく、ご家庭でもビールを適切に保管し、より美味しく味わうために役立ち、まさに一石二鳥となるでしょう。
就職や転職、独立にも
バーテンダーやビールバーなど、お酒を扱う仕事の就職・転職にビアテイスターの資格を活かすことができます。
バーテンダーやビールバーにお勤めの方の平均年収は300~400万円と言われていますが、ビアテイスターの資格を持っていることでキャリアアップにつながります。
独立してお店を始める場合もぜひ持っておきたい資格です。
今後の伸びに期待
日本でも多種多様なビールが存在する時代において、ビアテイスターにはそれぞれの場所で活躍し、社会的地位を確立していくことが期待されます。
ビアテイスター資格保持者は右肩上がりに増えて来ていて、ビールを扱う業界でもビアテイスターを求める声が上がりつつあります。
近い将来のビアテイスターの躍進に大いに期待したいところです。
ビアテイスターの試験日程・会場・申し込み方法
ビアテイスター認定試験の具体的な日程や会場を確認していきましょう。
ビアテイスターの試験日程・会場は?
ビアテイスターセミナーは毎月開催されています。会場は東京・大阪・札幌の3ヶ所です(2022年時点)。
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東京会場:東京(新宿)・レアルセミナールーム 7階
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大阪会場:大阪・市民活動スクエア CANVAS谷町 大会議室
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札幌会場:札幌・カタオカビル 6階6B会議室
日本地ビール協会公式ホームページの「セミナー申込フォーム」から、受講を希望する日程や、受講者情報などの必要事項を入力・送信することで申込みができます。
ビアテイスターに受験資格はある?
ビアテイスター認定試験の受験資格として、日本地ビール協会の会員になる必要があります。個人入会の場合、次の2種類のいずれかの会員になることができます。
〈個人正会員〉
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入会金20,000円 年会費18,000円
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ビールの専門家としての知識と技術を高めていく意志のある方、 ビールの上位資格取得を目指す方を対象とする
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日本地ビール協会のメールアドレスを利用できる
〈研究会員〉
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入会金10,000円 年会費12,000円
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認定資格の取得のみを目的とする方を対象とする
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日本地ビール協会のメールアドレスは利用できない
ビアテイスターの受験料
ビアテイスターのセミナー受講料や認定試験料は、会員の種類により異なります。
〈新規入会の方〉
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新規研究会員の受講料・認定試験料の合計金額・・・39、000円
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新規個人正会員の受講料・認定試験料の合計金額・・・55,000円
〈既に会員の方〉
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受講料・認定試験料・・・17,000円
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認定試験のみ・・・5,000円
※合格時の認定料・認定書を含む
※合格発表後のビアテイスター資格呼称認定バッジ代は別途3,000円(送料別)
〈非会員の方〉
- 受講料・・・26,000円(受講のみ可)
受験料の割引もある!
ビアテイスターセミナーのテキスト類を、CBAオンラインショップ等で事前購入して当日持参できる場合、セミナー受講料の割引があります。
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「セミナー用テキスト/ビアテイスター(2015年1月改訂版)」を事前購入・・・受講料から1,500円引き
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「ビアスタイルガイドライン1804」を事前購入・・・受講料から1,000円引き
ビアテイスター試験の口コミ情報
実際にビアテイスターセミナーに参加し、認定試験を受けた方の感想や、当日のレポートをまとめてみました。一般的な情報では分からない「口コミ」として参考にしてください。
- 40種類ものビール試飲は貴重な体験
会場に試飲用のビールがずらりと並べられた風景はやはり壮観。普段からいろいろな種類のビールを飲んでいる方も多いですが、これだけのビアスタイルを一度に比較できる体験は、とても勉強になるそうです。
- オフフレーバーの講義は興味深く勉強になる
特に印象に残った講義内容として挙げる方が多いのがオフフレーバーでした。オフフレーバーの発生などについて教えてもらえるだけでなく、試薬で作り出したオフフレーバーを実際に味わう試飲もあるそうです。
- 認定試験中はほろ酔い?
数口ずつとは言え40種類ものビールを試飲した後なので、「認定試験中はちょっと酔っていたかな?」という口コミも見られました。
- 筆記問題と同時に官能評価試験も行われる
2つの試験の時間は分けられておらず、筆記問題を解きながら次々と配られるビールの官能評価試験もこなす形式とのこと。認定試験はかなり忙しかった、という方もおられました。
ビアテイスターと合わせて取りたいおすすめ資格
ビアテイスターと類似した資格や、さらに知識を深めたい方におすすめの資格をご紹介します。
ビアコーディネーター
ビア・コーディネーターとは、「適切なビールと料理の組み合わせ方を指導・アドバイスできる人」ということです。
日本地ビール協会のビア・コーディネーターセミナーでは、ビールと料理を合わせることで生まれる第3の風味(マリアージュ)について学び、体験することができます。
ビアレストラン等で働いている方のキャリアアップはもちろん、日常のビールがある食事をより楽しむためにも役立つ資格です。
ビアジャッジ
ビアジャッジはビアテイスターの上位資格にあたり、こちらも日本地ビール協会の主催です。
「ビール審査会等において、ビールの審査をする知識と官能評価能力があると認められた方」に与えられる資格とされています。
ビアジャッジセミナーでは、ビールの評価ポイントについての知識や、ビールの審査方法を学びます。模擬審査による学習も行います。
認定試験に合格すると、ビアジャッジの資格呼称が認定されますが、点数により3段階の呼称があるのも面白いところです。
日本ビール検定
日本ビール検定は、ビールが好きでもっとビールのことを知りたい方のための検定です。受験資格はなく、どなたでもチャレンジできます。
日本ビール文化研究会の主催で、「びあけん」とも呼ばれています。
1~3級のレベルがあり、ビールに関する基本的なことからビール文化を発信できるような幅広い分野まで、楽しみながら知識を身につけられる検定です。
ビアテイスターのまとめ
ビアテイスターのまとめ
- ビアテイスター試験はセミナーと認定試験で行われ独学は不可能
- 合格率80%と難易度は高くない
- 講義内容が充実していて、勉強時間が多くとれなくても心配ない
- 仕事にまたは趣味としてもメリットが多い資格
ビアテイスターは、ビール好きの方にとって興味深く、魅力ある資格ということが分かりました。
セミナーをしっかり受講すれば、自主的な勉強時間があまりとれなくても知識が身につくのも嬉しいポイントですね。
ビールを仕事や趣味にしたいなら、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。