リーディングスキルテスト(RST)とは?試験の実施背景からおすすめの人まで解説!
「リーディングスキルテスト(RST)とはどのような試験なんだろう?」
「難易度や試験内容がわからないと対策がしづらくて…」
こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
リーディングスキルテスト(RST)はあまり有名な試験ではありませんが、子供から大人まで幅広く受験できるテストです。そうは言っても内容がわからないと受けるのをためらってしまいますよね。
そこでこの記事ではリーディングスキルテスト(RST)について、問題の内容や難易度、どのような人を対象にしているのかなど、気になる情報を詳しく解説します。
読み終わった頃にはリーディングスキルテスト(RST)の概要がしっかり理解できているはずですよ。ぜひ参考にしてください!
リーディングスキルテスト(RST)についてざっくり説明すると
- リーディングスキルテスト(RST)は読解力を測定するテスト
- リーディングスキルテストの対象は小6~社会人までと幅広い
- 合格・不合格という基準ではなく読解スキルを測定するのが目的である
リーディングスキルテスト(RST)ってどんな試験?
まずはリーディングスキルテスト(RST)がどのような試験なのかを解説いたします。
リーディングスキルテスト(RST)とは
リーディングスキルテストは、「骨太の読解力」を測定し、診断するテストです。
新しい知識を身に付けるには、文章の意味を正しく理解する力が必要不可欠です。リーディングスキルテストでは主に学校の教科書のような基本的な文章の読み取り問題が出題され、どのくらの読解力があるかを測定します。
また図やグラフといったデータを見ながら、情報を正しく把握する力も問われます。
リーディングスキルテスト(RST)の主催団体
リーディングスキルテストは「一般社会法人 教育のための科学研究所」が主催しています。
試験は代々木ゼミナールを経由して実施されており、年に3回代ゼミの校舎で試験が行われます。
一般社会法人 教育のための科学研究所とは?
「一般社会法人 教育のための科学研究所」は学力の一番の基礎である「読解力」を科学的に研究している団体です。
これからAIが発展していく世の中において、次世代の子供たちの読解力や教育の向上に取り組むために設立されました。
代表理事兼所長である新井紀子さんを筆頭に、読解力に関する多くの研究が進められています。
リーディングスキルテスト(RST)とは?その実施背景は?
リーディングスキルテストは、人工知能(AI)の研究から生まれました。
その研究とは「AIが大学入試を突破できるかどうか」を検証するというものです。
研究の過程で生まれた仮説がリーディングスキルテストの元になった
「AIが大学入試を突破できるかどうか」の研究を進めていく中で、「日本語のルールに沿って教科書を読むことができない生徒がいる」可能性が指摘されるようになりました。
この仮説をはっきりさせなければ次に進めないということで、仮説を検証するためのプログラム開発も同時に行われたのです。そしてこれが、リーディングスキルテスト発祥のきっかけになりました。
勉強ができない=読む力が足りない?
先生や保護者の方は経験があると思いますが、問題が解けない子供に対して「よく問題を読んでみてね」と声をかけることがありますよね。
しかしそもそも「教科書を読み解く能力」がないとしたら、問題を読んでも意味を理解することができないでしょう。
こうした子供を早期に発見して読解力を養うことができれば、効率良く学力が向上できる可能性があります。読解力の適切な指導を行うための効果的なツールとして、リーディングスキルテストが開発されたのです。
RSTの結果は高校・大学の進路と関係がある⁉
これまでの研究によって、リーディングスキルテストで測った読解能力の値は、高校や大学の偏差値と相関関係があることが証明されています。
つまりより偏差値の高い大学に合格するためには、基礎的な読解力をつけることが必要不可欠というわけですね。
なかなか学力が上がらない場合は、難しい問題を解くよりも、まず「読解力」を付けてみてください。それだけで進路が大きく左右されるほど、読解力は非常に大切な要素なのです。
リーディングスキルテスト(RST)はどんな人が受けるの?
リーディングスキルテストは学校でまとめて申し込む「団体受験」が多く行われていますが、個人でも受けることができます。
どのような方にリーディングスキルテストがおすすめなのかを解説いたします。
リーディングスキルテスト(RST)の対象者
リーディングスキルテストは、小学6年生以上を対象としています。ある程度読解力が備わってきた子供、さらには社会人の方にもおすすめできるテストになっています。
お子さんに読解力をつけさせたいと考える親御さんはもちろんのこと、自分自身の読解力を試したい大人の方にとっても有用なテストと言えるでしょう。
社会人の受験も推奨されている
リーディングスキルテストは、近年では企業の採用選考に大きな役割を果たしています。また、入社後の研修で用いられることもあります。
これから就職を目指す学生さんだけでなく、既に社会に出ている方にとっても読解力は非常に重要なものです。ぜひ一度リーディングスキルテストの受験を検討してみてください。
先生や教育関係者の方もにもおすすめ
リーディングスキルテストは、教育関係者の方にも非常におすすめできるテストです。
先生や教育委員会の方も受けてみることで、子供たちが養うべき読解力の基本がどういうものか、肌で感じることができるでしょう。
またご自身の専門分野の文章表現についても、理解を深めることができます。
問題を作る立場の方は特におすすめ
リーディングスキルテストの根本的な意味は「問題文を読み解くための力を身に付けること」です。
これは問題を解く側だけでなく、出題者にとっても必須のスキルと言えます。どのような問題を作成すれば意図が正確に伝わるかを把握しなくては、的確な試験問題の作成はできないでしょう。
高校や大学の入学試験を作成する立場の方にも、リーディングスキルテストはおすすめです。読解力を磨いた上で問題作成に当たってください。
良質な学生の確保にもつながる
入試問題を作成する際、真に読解力を測定する試験を作ることができれば、レベルの高い学生を確保できます。
自身の読解力向上だけでなく、良い学生を集めるためにもリーディングスキルテストが役立ちます。教育者の側からもリーディングスキルテストをどんどん活用していきましょう。
企業の人事・研修担当者も是非
企業での採用活動の際にも、受験と同じく新入社員の能力を正確に見極めることが必要です。この際にもリーディングスキルテストが利用できます。
上司からの指示や資料を理解できるかが測定できる
リーディングスキルテストで読解力を測定すれば、その社員が上司からの指示や資料の内容を読み解く力があるかどうかを判断することができます。
もし読解力が不足している新人が見つかれば、その部分を強化するきっかけにもなるでしょう。
つまりリーディングスキルテストは、企業の人事や研修担当者の方にもおすすめできます。既に多くの企業でリーディングスキルテストが実施されていますので、ぜひ導入を検討してみてください。
リーディングスキルテスト受験のために対策するものではない
通常の資格試験ではテストを受ける前に問題集を使って対策を行いますよね。
しかしリーディングスキルテストの場合、事前の対策は必要ありません。
リーディングスキルテストは視力検査のようなもの
リーディングスキルテストは、「今の自分にどのくらいの読解能力があるか」を想定するテストです。
いわば視力検査のようなものですから、特別な対策をしてテストに臨むことは望ましくないのです。
もし読解力の不足が見つかった場合は、リーディングスキルテストの結果が出た後に対策をしていきましょう。
リーディングスキルテスト(RST)の出題内容・試験概要
この段落では、リーディングスキルテストの試験概要や出題内容などをご紹介します。
リーディングスキルテスト(RST)は年に3回実施されている
リーディングスキルテストは年に3回、6月・10月・2月に行われます。
試験会場は東京、札幌、新潟、名古屋、大阪、福岡の6ヵ所で、代々木ゼミナールの校舎での実施となります。
結果は試験終了後にすぐに通知されますが、正式な試験結果や偏差値は試験当日から2~3週間後に郵送されます。
受験対象および受験料
リーディングスキルテストは小学6年生~社会人が対象です。
受験料は4,400円(税込)です。支払い方法はインターネット決済、払込票、もしくは代ゼミ校舎での直接支払いの3通りから選ぶことができます。
詳しくはリーディングスキルテスト(RST)の公式サイトからご確認ください。
試験は50分間のCBT方式
リーディングスキルテストは、50分間の「CBT方式」で行われます。(試験前に10分間のガイダンスあり。)
「CBT方式」はパソコンやタブレットを使った試験です。つまり鉛筆や消しゴムといった筆記用具は必要ありません。当日は受験票のみ持参すればテストを受けることができます。
形式は「多肢選択式」
リーディングスキルテストの試験形式は「多肢選択式」です。選択問題ですので、比較的答えやすい内容になっています。落ち着いて一問ずつ解いていってください。
なおCBT方式の試験は基本的に「テストセンター」での実施となりますが、リーディングスキルテストはテストセンターではなく代ゼミ校舎で開催されます。
リーディングスキルテスト(RST)の出題内容は6分野7パターン
リーディングスキルテストの問題構成は、以下のようになっています。
- 係り受け解析:文の構造である主語、述語、修飾語、被修飾語の関係などを正しく把握し、読解力の基礎となる力
- 照応解決:代名詞が指す内容を正しく認識する力
- 同義文判定:二つの文を読み比べ、同義か判定する力
- 推論:既存の知識と新しく得た知識から、論理的に判断する力
- イメージ同定:文と図表などの非言語情報を対応づける力
- 具体例同定(辞書):辞書的な定義を用いて新しい語彙と用法を獲得する力
- 具体例同定(理数):理数的な定義を理解して、用法を獲得する力
テスト後は、上記の各項目ごとにテストの結果が出ます。結果のデータを見ながら、ご自身にどの分野が不足しているかを確認していきましょう。
問題は教科書・新聞記事・辞書などから出題
リーディングスキルテストの問題は、「教科書」「新聞記事」「辞書」「事典」などから出題されます。
つまり「実際の文書」「事実に関わる文書」からの出題になるというわけですね。
実際の文書から出題することでより読解力を正確に測定できる
実在する文書から出題することで、文章そのものの読解力だけでなく、何らかの物事に対しての知識があるかどうかも測ることができます。
また分野ごとの得意、不得意もわかりますし、親密度に関わらず読解力を測定することにもつながるでしょう。
なおリーディングスキルテストは、受験者の平均値を測ることを目的としていません。あくまでも個々の「読む力」が測定されます。
これにより、自分の強みと弱点を正確に把握し、必要な分野に特化した訓練や学習を行うことができるため、より効率的に読解力を高めることが可能です。
試験の模擬問題に挑戦!
ここでリーディングスキルテストの模擬問題に挑戦してみましょう。力試しやテストの予行演習に活用してください。
例題1(係り受け解析)
以下の文を読みなさい。
「天の川銀河の中心には、太陽の400万倍程度の質量を持つブラックホールがあると推定されている。」
この文章のうち、以下の文中の空欄に当てはまる最も適切なものを選べ
- 天の川銀河の中心にあると推定されているのは( )である
- 太陽
- 天の川
- ブラックホール
- 銀河
正解:1. ブラックホール
例題2(推論)
以下の文を読みなさい。
「エベレストは世界で最も高い山である」
上記の文が正しいとき、以下の文に書かれていることは「正しい」か「間違っている」か「判断できない」か答えなさい
「エルブルス山はエベレストより低い」
- 正しい
- 間違っている
- 判断できない
正解:1. 正しい
例題4(具体例同定:理数)
以下の文を読みなさい。
「2で割り切れる数を偶数という。そうでない数を奇数という。」
以下から偶数を全て選びなさい。
- 13
- 0
- 340
- 6
正解:2. 0 3. 340 4. 6
リーディングスキルテストについてもっと知りたい方へ
ここまでの内容を読んで、リーディングスキルテストについてもっと知りたいと思った方も多いことでしょう。
リーディングスキルテストに興味を持った方は、ぜひ「教育のための科学研究所」の代表理事兼所長である、新井紀子さんの著書を読んでみてください。
ここでは新井紀子さんの著書の中から2冊をご紹介いたします。
AI vs. 教科書が読めない子どもたち
「教育のための科学研究所」の新井紀子さんの著書として、1冊目にご紹介したいのがこちらです。
- 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 」東洋経済新報社 1,650円
こちらの本は「2019年ビジネス大賞 大賞」にも選ばれており、テレビなどのメディアでも多数取り上げられるなど多方面から高い評価を受けている本です。
AIは東京大学の入試に合格できなかった?
「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 」は、リーディングスキルテスト発祥の礎になった「AIによる大学入試突破」の研究を軸に書かれています。
新井紀子さんが行っていたAI研究の結果、AIは東京大学の入試に合格することができませんでした。
この結果を元にして、AIの未来や限界についての考察が述べられています。
全国のリーディングスキルテストの結果にも言及
「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 」では、全国で行われたリーディングスキルテストの結果についても言及されています。
全国2.5万人に向けて実施されたリーディングスキルテストからは、現在の日本人の読解力をデータとして抽出することができました。
ここからどのようなことが語られているかは、ぜひ実際の書籍でお確かめください。非常に読み応えのある内容になっています。
AIに負けない子どもを育てる
新井紀子さんの著書として2冊目におすすめなのがこちらです。
- 「AIに負けない子どもを育てる」東洋経済新報社 1,760円
こちらは、先ほどご紹介した「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の続編です。
「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」が非常に好評だったことから、非常に待ち望まれていた一冊です。
AIが実現できなかった「読解力の向上」
「AIに負けない子どもを育てる」では、AIが到達することのできなかった「真の読解力」を、人間が身に付けるための方法についてが語られています。
AIが東大の入試に合格できなかったことから人間の読解力は現状、AIを越えていることが証明されました。
AIが会得できない部分での読解力を、人間が身に付けるためにはどうすれば良いのか。読解力向上のために、親や学校、そして個人には何ができるのか。
こうしたことが新井さんの視点から記されています。
実際の取り組みも紹介されている
「AIに負けない子どもを育てる」では、小中学校で実際に行われている、読解力向上のための授業や取り組みも紹介されています。
現在どのような教育が行われているかを知ることができますので、教育関係者の方にも参考になることでしょう。
また、親子で共に学ぶことができる内容も盛り込まれており、家庭での読書習慣やコミュニケーションの取り方などについてのヒントを得ることができるため、親子の絆を深めながら教育に取り組みたいと考える親御さんにもお勧めの内容となっています。
リーディングスキルテストも体験できる
「AIに負けない子どもを育てる」では、子供だけでなく大人が読解力を身に付けるための方法も紹介されています。
体験版のリーディングスキルテストも収録されていますので、まずはこちらの本を読んでご自身の読解力を測定してみてください。
読解力を測定した結果を基に、本書内で紹介されている具体的な訓練法や読書のアプローチ方法などを実践することで、自分に合ったレベルアップの途を見つけることができるでしょう。
リーディングスキルテスト(RST)まとめ
リーディングスキルテスト(RST)まとめ
- リーディングスキルテスト(RST)は読解力を数値で表すことができるテスト
- 事前の対策は特に必要ないので、ありのままの読解力を測定してみよう
- 企業もリーディングスキルテストを導入するなど非常に注目されている
- 人間の読解力の可能性を引き出すためにも、多くの人におすすめ
リーディングスキルテスト(RST)は一般にはあまり知られていないテストですが、非常に意義のある内容になっています。
読解力を強化すればあらゆる学習能力につながりますので、ぜひ一度リーディングスキルテスト(RST)を受験してみてはいかがでしょうか。
的確な読解力を身に付けて、AIに負けない能力を獲得しましょう!