製菓衛生師ってどんな資格?資格の取得法からパティシエの実情まで大公開!
「製菓衛生士ってどんな資格なの?」
「製菓衛生士の試験には受験資格ってあるの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
製菓衛生士は菓子衛生士とも呼ばれている、お菓子作りやパン作りをする際に必要となる資格で、パティシエを目指す人にとって必須と言えます。
この業界に興味がある人にとって、製菓衛生士の試験内容や受験資格は気になりますよね。
こちらの記事では、製菓衛生士の免許や試験に関する基本的な情報や仕事の実情について解説していきます!
製菓衛生士についてざっくり説明すると
- お菓子作りに携わりたい人や、パティシエを目指す人には必須の資格
- お菓子作りのプロではなく、衛生管理のプロ資格である
- 学校に通って取得するルートと、独学で目指すルートがある
- パティシエは離職率が高い世界である
製菓衛生師ってどんな資格?
製菓衛生師はパティシエとなるための資格
製菓衛生師は「製菓」という言葉があるように、菓子製造業に従事する人の資質を向上させ、公衆衛生の向上を目的として始まった国家試験です。
お菓子作りやパン作りを仕事としたい人や、その世界に興味がある人にとっては必須の資格です。
また、製菓衛生師はパティシエになるための資格と言っても差し支えないでしょう。
パティシエとはフランス語でお菓子を作る人の職業の名称であり、製菓衛生士はパティシエになるための資格の名称です。
製菓衛生士は国家資格
製菓衛生師は、各都道府県の知事が交付しており厚生労働省が管轄する国家資格です。
国家資格であるため社会的な信用は非常に高いです。
各都道府県の福祉保健所ごとに試験が実施されており、各自治体ごとで試験の内容や実施時期は異なるため、しっかりと情報収集は行いましょう。
製菓衛生師は食の安全を守る
製菓衛生士は「衛生」という言葉が含まれているように、お菓子を上手に美味しく作ることが役割ではありません。
食の安全を守り、消費者が安心して食べられるように製菓を作ることが求められています。
最近の食料品には保存料や着色料が多く含まれており、これらは適量であれば何も問題ないのですが、使用方法や用量を誤って使用してしまうと身体に害が及んでしまうため注意が必要です。
また、アレルギーや遺伝子組み換えなどに関して消費者の関心は高まっており、こうした食品添加物のチェックを学ぶことができます。
製菓衛生師となる方法
製菓衛生師になるためには、製菓衛生師試験に合格しなければなりません。
試験を受けることができる受験資格は主に2種類で、受験方法や試験の概要は各都道府県ごとで異なっています。
なお、受験資格は以下の通りです。
- 学校・専門学校で1年以上学ぶ
- 現場で実務経験を2年以上積む(中学校卒業以上)
このどちらかをクリアしていれば、製菓衛生師試験を受験することができます。
①学校から製菓衛生師を目指す
学校や専門学校で学ぶにあたって、まずメリットとデメリットを把握しておきましょう。
<学校で学ぶメリット>
- 製菓の作業が未経験であっても、洋菓子・和菓子・パン作りの基礎から応用まで学ぶことができる
- 菓子作りの実習だけではなく、製菓理論や販売実習なども学ぶことができる
- 進路指導などが充実しており就職・転職のサポートがある
- 同じ目標を持つ友達と頑張ることができ、勉強のモチベーションを維持しやすい
- 合格率が90%以上あるため、カリキュラム通りに勉強すればOK
- 昼間学校・夜間学校共にあり自分の都合に合わせて選択することが可能
- 疑問点があってもすぐに解決できる
<学校で学ぶデメリット>
- 安くはない学費が必要になる
- 学校がどこにでもあるわけではないため、遠方の場合は一人暮らしなどをする必要がある
②独学で仕事をしながら製菓衛生師を目指す
もう一つのルートである、実務経験を積んで受験資格をクリアするメリットとデメリットは以下のようになっています。
<実務経験を積みながら学ぶメリット>
- 自分でお金を稼ぎながら、学ぶことができる
- 実務経験を積むことでいち早く現場慣れができるため、資格を取って即戦力となれる
- 学校では学ぶことのできない細かい実務を学べる
<実務経験を積みながら学ぶ悪いメリット>
- 幅広い知識を身に着けることは難しく、就職先で扱う分野しか学ぶことができない
- 仕事と勉強の両立が必要で、なかなか勉強時間の確保が難しい
- 自分で就職先を探さなければならず、かなり大変
製菓衛生師の実用性
製菓衛生師を目指すメリット
お菓子作りや衛生面の専門家である「製菓衛生師」ですが、実はこの資格を保持していなくてもパティスリーや菓子製造工場などで働くことができます。
ただし、お菓子作りだけではなく栄養や衛生などの様々な知識を持つ製菓衛生師を取得することで、具体的に以下のような多くのメリットを享受できます。
- パティシエやパン職人、和菓子職人などのお菓子を扱う職場への就職・転職に有利となる
- 食の安全を守りながらお菓子を作りことができる証明となるため、自分の価値が上がる
- 海外で修行したり働くための就労ビザ取得に有利に働く
- お店の開業時に必要な「食品衛生責任者」の試験を受けることなく、申請のみで取得できる
- 更新の費用だけで済むため、資格の維持に多大な費用がかからない
製菓衛生師(パティシエ)の就職先
製菓衛生士の資格を取得したパティシエの主な就職先は、ホテルや洋菓子店が大半を占めています。
その他にも和菓子店・パン屋・カフェ・レストランなど菓子を製造・提供する施設へ就職する人が多く、活躍できる職場は幅広いと言えます。
パティシエとして活躍するために最も重要なことは、知識やスキルを持ち、いかにお客さんを喜ばすことができるかどうかです。
お菓子作りを通してやりがいを感じたい人は、向いている世界と言えます。
実際に、製菓衛生師の資格は無くてもパティシエとして働くことができますが、有名なお店であればあるほど製菓衛生師の資格は採用の基準となります。
万が一、衛生状態に問題があり不祥事などが起こってしまうと信頼が大きく落ちてしまうからです。
離職率が高いパティシエの現実
パティシエの世界は、離職率がかなり高いです。
パティシエの1年目で7割、3年目で9割、10年目で9.9割の人が離職すると言われています。
新米のパティシエに最も必要なのは体力であり、パティシエのイメージにある繊細で芸術的なお菓子を作る作業をするのはベテランで実績のある熟練パティシエに限った話なのです。
新米のパティシエはいわゆる雑用などを任されることが多く、大量の小麦粉や砂糖などを何度も運ぶことがあったり、かなり重労働が課せられることが多いのです。
また、繁忙期と閑散期の差はあるものの、通常の労働時間で12~13時間となることもザラで、労働環境は良好であるとは言えません。
テレビなどの世界で見ると輝かしいイメージがあるパティシエですが、実際にはこのように厳しい業界なのです。
開業の第一歩となる
製菓衛生士の資格を持っていることで、お店の開業時に必要な「食品衛生責任者」の資格を申請するだけで取得することができます。
食品衛生責任者はお店の安全を守るために必要な資格であり、食品衛生責任者の資格と営業許可があれば飲食店を経営できるようになります。
パティシエとしての実務経験を積んで、これらの諸手続きを踏むことで独立してケーキ屋・洋菓子屋・パン屋などを開業することも可能となります。
大変な下積み時代を経て自分のお店を開店できた時の喜びは何事にも代えられません。
料理教室やクッキングスタジオの講師としても活躍
店舗で働く以外にも、お母さんや子供向けの料理教室やクッキングスタジオの講師としても活躍できるようになるでしょう。
最近は料理教室に通う人が増えているため、このような講師の需要は高まっています。
また、自分でこのような教室を開くのももちろん可能なので、働き方や資格の活かし方は多様と言えるでしょう。
製菓衛生師の年収は?
パティシエを含むパン・洋生菓子製造の平均年収はボーナス込みで340.7万円となっています。
なお、男女別の年収や月収は以下の様の通りです。
平均年収 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
平均年収 | 389.0万円 | 282.1万円 |
平均月収 | 28.1万円 | 21.3万円 |
平均年齢 | 40.3歳 | 40.2歳 |
このように、平均年収は一般的なサラリーマンとほぼ同じ水準か、若干下回る程度となっています。
純粋に仕事を楽しめる人であればいいですが、ちょっと物足りないと感じる人も多いです。
製菓衛生師試験 国家試験の試験概要・難易度
製菓衛生師の試験範囲と出題形式
製菓衛生師の試験科目は7種類あり、出題形式は四肢択一式のマークシート形式で出題されます。
設問問数は合計で60問とされていますが、都道府県ごとで異なる可能性があるため各都道府県ごとの試験情報はチェックしておきましょう。
なお、出題される科目と出題数は以下のようになっています。
- 衛生法規(3問)
- 公衆衛生学(9問)
- 栄養学(6問)
- 食品学(6問)
- 食品衛生学(12問)
- 製菓理論(18問)
- 製菓実技(選択6問)※製菓実技は和菓子・洋菓子・製パンから一つ選択する
食品衛生学、製菓理論のウェイトが重いため、重点的に勉強して苦手科目にしないように対策しましょう。
なお、もし菓子製造技能士1級または2級の資格を持っていれば、製菓理論と製菓実技の科目は免除されます。
製菓衛生師の合格率、合格ライン
製菓衛生師の合格ラインは全体で6割以上を取る必要があり、なおかつ0点の科目があると不合格となってしまいます。
そのため、極端な苦手科目を作らないようにしましょう。
製菓衛生師の合格率は、専門の学校卒業生であれば90%前後、独学の場合であれば70%前後となっており、難易度はそこまで高くありません。
社会人の人はなかなか勉強時間の確保に苦労するかと思いますが、しっかりと勉強をこなしていれば合格できる試験です。
製菓衛生師の勉強のコツ
製菓衛生師の独学の勉強は大変
製菓衛生師試験の合格率は高く難易度はそこまで高くありませんが、範囲が広いため対策には少々骨が折れる面があります。
ハードルは低いとはいえ足切り制度もあるため、満遍なく勉強しなければなりません。
また、社会人で独学で勉強に臨む場合は仕事との両立も必要なため、学生の人よりも難易度は上がります。
学校に通う場合は、勉強仲間ができるだけでなく勉強に集中できる環境に身を置くことができ、試験対策に沿ったカリキュラムが組まれているため効率よく勉強することができるのです。
おすすめテキスト・問題集
製菓衛生師を独学する場合のおすすめテキストは、柴田書店の 「改訂版 解いてわかる製菓衛生師試験の手引き」 です。
このテキストは全部で7科目で構成されており、試験も出題範囲に沿っているため本番をイメージしながら勉強しやすい構成となっています。
また、テキスト兼問題集としても役立つため、このテキスト1冊で試験対策は十分というレビューもあるほどです。
練習問題や演習問題が多く収録されているため、解きながらどんどん知識が深めることができます。
とはいえ、勉強量に不安を感じた場合は弱点を補強するテキストを追加で購入することを検討しても良いでしょう。
勉強をする際に最も効率の良い方法は、問題を多く解き見直しを多くすることです。
間違えた問題に関してはしっかりと見直し、解説を丁寧に読み込んで納得できるまで理解できるように心がけましょう。
過去問は存在する
製菓衛生師の過去問は、 全国の書店やインターネット上で手に入れることができます。
例えば、学研プラスから 「これで合格 製菓衛生師試験問題集」 が出版されているため、この過去問を使って勉強するのもよいでしょう。
このテキストは各都道府県の過去の試験問題を分析し、各科目の出題割合に合わせて構成されている問題集であるため、効率的なアウトプットが可能です。
テキストや問題集選びで迷った場合は、こちらで紹介した教材をぜひ検討してみてください。
製菓衛生師の試験日程・会場・申し込み方法
製菓衛生師の基本情報
製菓衛生師試験は年に1回実施されるため、しっかりと準備して臨むようにしましょう。
製菓衛生師の受験は各都道府県の管轄で実施されるため、試験の詳細は各都道府県に確認してください。
ただし、受験地は住所や勤務地とは関係なく受験することができます。
試験日は全国一律ではなく各都道府県でバラつきがあるため、受験日が重複していなければ複数の都道府県で受験することも可能です。
製菓衛生師の受験料
製菓衛生師の受験料は各都道府県で異なりますが、10,000円前後が相場です。
試験合格後に正式に製菓衛生師を名乗るためには登録が必要となり、この免許の登録手数料に5,600円前後が必要となります。
なお、試験の受験料や日程の一例をご紹介します。
- 東京都
受験料は9,500円で、試験は6月に行われています。
- 大阪府(関西広域連合)
受験料は9,400円で、試験は7月に行われています。
※ちなみに、関西広域連合とは滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県で構成されたグループです。
- 神奈川県
受験料は9,430円で、試験は8月に行われています。
製菓衛生師と合わせて取りたいおすすめ資格
調理師
調理師は食品の「栄養」「衛生」「適切な調理法」などの知識を持ち、安全な料理を作ることができる調理のプロフェッショナル資格です。
調理の経験と知識を示す国家資格飲食店を経営したり、飲食店で勤める場合は不可欠な資格です。
製菓衛生師と調理師をダブル取得することで、調理・製菓・製パンの3つの技術が身に着きキャリアの幅が広がります。
製菓衛生師はお菓子に特化しているとはいえ、同じく飲食に関わる資格なので調理師と併せて取得するとより専門的な知識を学ぶことができるでしょう。
管理栄養士/栄養士
管理栄養士と栄養士はどちらも医療現場、老人福祉施設、介護保険施設、児童福祉施設、小中学校、行政機関、企業、管理栄養士・栄養士養成施設、試験研究機関など非常に幅広い世界で活躍しています。
管理栄養士は栄養士の上位資格にあたり、管理栄養士の方が専門性が高いのでより重宝されます。
どちらも国家資格で社会的な信用度も高いため、製菓衛生師と併せて取得すると自分の可能性を広げることができるでしょう。
菓子製造技能士検定
製菓衛生師と同じく必ずしもパティシエになるために必須の資格ではありませんが、菓子製造技能士の資格も取得してておくと有利になります。
菓子製造技能士は、一定レベル以上の菓子作りの技術と知識を身に着けていることの証明となります。
製菓衛生師は衛生面に特化しているのに対して、菓子製造技能士は製菓に関する高い技術を持つ証明となるため、製菓衛生師と製菓製造技能士をダブル取得しておくと就職や転職を目指すときの選考で有利に働くでしょう。
製菓衛生師に向いている人
以下のどれかに当てはまる人であれば、製菓衛生師に向いていると言えるでしょう。
とにかくお菓子作りが好き
製菓衛生師は、前述した通りテレビなどで見る華やかな世界とは違い、下積み時代は地味な仕事が多く、ほとんど雑用を任されるということも有り得ます。
そのため、理想と現実のギャップにショックを受けてしまう人も少なくありません。
しかし「それでもお菓子作りに携わるのが好きだから」と、高いモチベーションを持続できる人であれば長く辛い下積み時代を乗り越えることができるでしょう。
製菓衛生師の最大のやりがいは、やはりお客さんの喜んでいる姿を直接見ることができる点です。
自分の仕事が人々の喜びに直結することは、何事にも代えがたいやりがいと言えます。
体力や精神力のある人
実際、製菓衛生師は立ち仕事が多く、華やかなイメージとは異なり体力が求められる仕事です。
大量の小麦粉やその他材料などを運ぶ場面もあるため、女性の多い職場とはいえある程度の体力は必須です。
また、下積み時代はなかなか思い通りに休みを取ることも難しいので、休日出勤にも耐えられる肉体的な強さと精神的な強さも求められます。
製菓衛生師のまとめ
製菓衛生士のまとめ
- お菓子作りの現場の衛生面を管理するためには必須の資格である
- 離職率は高いが、お客さんが喜ぶ様子を間近で見ることができる
- 諸手続きを踏めば独立開業することも可能
- 試験の難易度は低く、独学でも取得を目指せる
製菓衛生師の国家試験に合格して、免許を取得できればお菓子作りに関わる様々な職場で活躍できるようになるでしょう。
とにかくお菓子作りが好きで、そのような現場に携わりたい人はぜひ取得をオススメします。
また、試験はそこまで難しくないため、しっかりテキストと参考書を使えば自然と合格できる学力を身に着けることができます。
人を喜ばせることが好きな人は、ぜひ製菓衛生師の取得を検討してみてください!