オンラインでこころのケアを!|臨床心理士・公認心理師の田所俊作さんに直接取材しました!

2017年に初めての国家資格として公認心理師が誕生するなど、注目を集めている心理系資格。

今回は、臨床心理士と公認心理師のダブルライセンスを取得されこころのケア研究所SHINKA代表を務められている田所俊作(たどころしゅんさく)様にインタビューさせていただきました

YouTubeでの発信やオンラインでのカウンセリングなどでご活躍されている田所様に、心理カウンセラーを目指した経緯からこころのケア研究所SHINKAの今後の展望などについてお聞きしました!

心理カウンセラーを目指した経緯

田所様

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北川

お忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございます。

資格Timesを運営しております、株式会社ベンドの北川と申します。

どうぞよろしくお願いします。

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田所様

こころのケア研究所SHINKAで代表を務めている田所です。

よろしくお願いします。

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北川

早速ですが、臨床心理士・公認心理師に挑戦された経緯についてお伺いしたいです。

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田所様

実は、最初から心理カウンセラーとして働こうと考えていたわけではありませんでした。

元々は、MRという医薬品の営業職をしていました。 理系の大学院を卒業した後に、世の中に必要な薬を開発したり、広めたりすることで社会に貢献したいという思いを抱いていたからです。

しかし、厳しい職場環境の中で同僚が体調を崩して休職する姿を見たり、ギリギリのメンタルで働いている人たちを目にしたりして、世の中全体が心の病に蝕まれている現実を知りました。

私自身も、一時的に精神的に落ち込んでしまう経験をしました。その際、カウンセリングを受けると、たちどころに抑うつ症状が改善しました。

さらに、カウンセラーの方から「行動力やチャレンジ精神があるのだから、精神的に苦しんだ経験を活かして心理カウンセラーにならないか」と声をかけていただきました。

その時、まさに希望の光が差し込んできたような気がしました。

「こんなに希望を与える仕事はない、自分にもできることがあるかもしれない」そう感じて、心理カウンセラーになることを決意しました。

当時は20代後半でしたが「大学院に入り直す」という大きな決断をしました。

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北川

田所様のご経験と社会に貢献したいという思い、心理カウンセラーの方との出会いが現在の田所様に繋がっているのですね!

短期間で大学院入試へ挑戦

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北川

臨床心理士・公認心理師の資格を取得される上で最も苦労された点についてお伺いしたいです。

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田所様

臨床心理士の資格を取得するために心理系の大学院を卒業する必要があり、大学院入試に向けての勉強が大変でした。

私自身は元々、試験などのやらされる勉強が好きではありませんでした。

加えて、私自身は化学専攻だったので心理学を学部で4年間学んだ人と心理学の知識で競うことが大変でした。

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北川

大学院入試が最初の大きな壁となるのですね。

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田所様

そうですね。大学院の倍率も数倍〜10倍ほどありますし、大学院入試のために浪人をしている方もいらっしゃいました。

さらに、私の場合は、大学院入試に挑戦すると決意してから入試日まで5ヶ月程度しかなかったことが大学院入試への挑戦を厳しいものにしました。

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北川

試験まで非常に短期間しかなかった中で、その間どのように勉強されていたのでしょうか?

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田所様

すぐさま通信の予備校に申し込み、通常6ヶ月間でマスターする授業内容を3ヶ月間でマスターできるよう指導して欲しいとお願いしました。

当時は勤務を短時間にしてもらっていたのでフルタイムで働く人より時間を確保することができたからです。

正直5ヶ月間で合格することは難しく、もう一年勉強する必要があるかもしれないと考えていたのですが、なんとか合格することができました。

大学院入試では英語の読解問題が出題されるのですが、海外に2年間住んでいた経験があったために苦手意識がなかったことも有利に働いたと思います。

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北川

厳しい条件の中でも勉強を続けることができたのはどうしてだったのでしょうか?

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田所様

試験の勉強自体は好きではありませんでしたが、痛みを体験している人間として

「患者さんに寄り添えるカウンセラーになれるのではないか」という考えや心理カウンセラーになることへの思いが非常に強かったので勉強することができました。

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北川

資格取得への強い思いによって大学院への入学を掴み取ったのですね!

働きながらの資格取得

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北川

大学院での勉強はどのようなものだったのでしょうか?

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田所様

「こんなに勉強したことがない」と言えるぐらい勉強しました。大学生時代に心理系の学部に所属してから心理系の大学院に進学したわけではないので、学部生の授業の一部も履修し、単位を取得する必要がありました。

大学院と並行して学部の授業を履修していたため、通常の大学院生よりも少し忙しくしていたのではないかと思います。

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北川

大学院合格後、資格取得まではどのように勉強されていたのでしょうか?

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田所様

臨床心理士試験は大学院在学中に資格取得することはできません。そのため、大学院卒業後は心理士資格取得見込みという形で総合病院に勤務しながら試験の勉強をしていました。

しかし、仕事に追われ資格試験の勉強時間を確保することができず、大学院卒業後1年目の試験は不合格でした。

1年目の試験で不合格だった後に、その当時勤めていた病院を辞めて、かねてから希望していた精神科領域のお仕事ができる病院へ転職しました。

その病院に勤務しながら、臨床心理士の資格に挑戦し、合格することができました。

翌年、公認心理師の最初の試験が開催されたので挑戦し、1年で合格することができました。

心理士としての1〜3年目までは、資格に挑戦しなくてはならず、仕事と勉強の両立で浪人生のような生活をしていたのでとても大変でした。

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北川

大学院入学から臨床心理士・公認心理師までまさにノンストップで勉強を続けられたのですね。

メンタルケアに関する情報発信を始めた経緯

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北川

資格合格後から独立・開業に至るまでの経緯を教えていただきたいです。

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田所様

精神科の病棟の心理士として7年間ほど、臨床の経験をしていました。

元々は、「心理カウンセラーとして独立する」ことが目標だったのですが、いざ精神科の中に入って仕事すると一度その夢は打ち砕かれました。

この7年の間、経験や知識の不足、自分の力の至らなさを感じ「独立することはできないのではないか」と考えていた時期が長かったです。

同時に、子供や家庭のためにも現在の生活を守り続けることを優先しなくてはいけないと感じていました。

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北川

「独立する」という目標が達成できないかも知れないと考えられていた状況から、「こころのケア研究所SHINKA」として独立された経緯についてお伺いしたいです。

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田所様

スタンドFMという音声配信プラットフォームやTwitterなどでのSNSでの発信活動を始めたことが始まりでした。

というのも、当時勤めていた精神科の急性期病棟で見ていた方が、意識を失ったり暴力を振るったりするような重症の方で、「なんでこんなことになるまで誰にも助けてもらえなかったんだろう」と感じたからです。

重症化する前の段階の、メンタルが少し崩れた時に予防できるような情報を発信する必要があると考えました。

ただ、情報発信を始めてもTwitterのフォロワー数などは数百人ぐらいで、

「全体に伝えることは無理だし、自分自身が伝えていることが正しいのかもわからない」と考えていました。

発信をしても誰も見てくれない前提で、勉強したことを備忘録のように映像の形でメモをする目的でYouTubeを使い始めました。

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北川

YouTubeでの活動は、元々は田所様ご自身のために始められたのですね。

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田所様

当初は、動画を更新しても視聴回数が0回のこともありました。ただ、登録者が20人ぐらいの時に、突然一つの動画が1万回再生され、そこでチャンネル登録者が約300人に一気に増えました。

それ以降、精神科で日々学んでいることや経験していること、沢山の人がメンタルを崩してからボロボロになるまで医療機関に繋がることができない現状をお伝えしてきました。

加えて、メンタルを崩してしまう前に予防することが重要だという自分の考えを発信するようになりました。

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北川

YouTubeの活動の趣旨を、最初に目指していた心理学やメンタルケアに関する情報の発信に変化させていかれたのですね。

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田所様

登録者が1000人を超えたところで、収益化できることになり、副業申請をする必要が生じました。

病院への副業申請も認められたので、本格的にYouTubeでの発信を始めると、自分でも驚くほど、多くの方に見ていただけるようになりました。

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北川

現在では、再生回数が20万回を上回る動画もあり、非常に多くの方に田所様が発信されている情報が届く状態になっていますよね!

開業・独立された経緯

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北川

田所様は12月まで精神科病棟に勤められ、その間副業として「こころのケア研究所SHINKA」をされていたとお伺いしました。独立・開業に至った背景などがあれば教えていただきたいです。

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田所様

独立しようと考えたきっかけは、YouTubeの登録者が6000人ぐらいの時に、オンラインカウンセリングを開始した際に、担当しきれないほどのお申し込みをいただいたことでした。

以前は、少なくとも10年間は医療機関の中で働いて経験を積んでから独立しようと考えていたので、2・3年後に独立しようと考えていました。

しかし、今申し込んでいただいている方を、お待たせするわけにはいかないということで、独立するなら今ではないかと考えました。

これまで病院で担当させていただいた方には、丁寧にお話し、引き続きカウンセリングを希望される方には、独立してからも担当させていただくことになっています。

精神科病棟勤務の経験から独立へ

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北川

独立・開業される以前に勤められていた職場でのご経験は独立後の業務においてどのように役立っていますでしょうか?

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田所様

私が以前勤めていた精神科病棟は、他の医療施設ではたらい回しにされているような患者さんでも受け入れる病院でした。

そこで、患者さんから暴言や暴力をされたり、犯罪を犯した人の精神鑑定をしたりするなどの経験をさせていただいたことで、どんなクライアントさんが来ても受け入れるという心構えができました。

また、私のオンラインカウンセリングではなくて医療機関の助けを必要としている方が来られた場合は、自分の勤めていた医療機関などと連携して医療に導くことができると考えています。

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北川

前職で培われたご経験と、人脈や繋がりが独立後にも活かされているということですね。

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田所様

加えて、病院に勤めていたことで事例検討会という場で、医師、看護師、精神保健福祉士、栄養士の方など様々な方の専門的な知見をもとに、「どのようにその患者さんを支援するのか」を学ぶことができました。

医療の視点だけでなく、福祉の視点から考える視点も身につきました。

心理カウンセラーとして病院の中で勤務し、多職種連携をしながら患者さんを支援する中で、どの程度回復に導けるのか、逆に言えば自分の限界を理解することもできたと思います。

現在のお仕事について

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北川

現在の田所様のメインのお仕事についてお聞きしたいです。

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田所様

現在のメインの活動はオンラインカウンセリングです。

ただ、今後最も力を入れていきたいと考えているのは、情報発信です。

YouTubeをはじめとした講演活動や、勉強会の開催を行っていきたいと考えています。

なぜならそちらの方がより多くの人にメンタルヘルスに関する情報を届けることができるからです。

カウンセリングは1対1で行うために、1日に6〜7人の方とお会いするのが限界です。

しかし、勉強会を開催すれば100人の方に情報を伝えることができますし、YouTubeであれば何万人という方に見ていただくことができます。

これまでは心理士としての業務もあったのですが、独立したのでこれまで以上に情報発信への時間を確保できると思います。

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北川

オンラインカウンセリングではメンタルケアについての勉強会なども開催される予定であると伺いました。勉強会の内容についても少しお聞かせいただけますでしょうか?

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田所様

YouTubeで発信していない内容、心理学の真実や、病気との向き合い方についてお話したいと考えています。 YouTubeよりも長く時間が取れるので、2時間ほどの時間を使って普段お伝えできていないような細かい内容までお話ししたいと考えています。

また、どんな方にでも届くように、カウンセリングよりはお安い価格設定でお伝えできればと考えています。

安心できるカウンセリングを

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北川

カウンセリングをされる際にクライアントの方とのコミュニケーションの取り方について特に気をつけられていることがあれば教えていただきたいです。

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田所様

相手のペースを絶対に守ることには気をつけています。

心理学の専門用語を使わずにお話しするのはもちろんですが、こちらの考えを押し付けても、クライアントの方がついてこれなければ意味がありません。

クライアントの方の中には、虐待を長年受け続けられた方もいらっしゃいます。 まずは、関係性を作るためにも安心してもらえるように気をつけています。

多くの方が苦労されて、カウンセリングを受けに来てくださっています。まずは、「よく申し込んでいただきました」とお伝えしています。

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北川

カウンセリングをされる際に、SHINKA様として特に大事にされていることなどありましたら教えていただきたいです。

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田所様

こころのケア研究所SHINKAとしてのモットーは、その方の掘り出されていない長所や潜在的な能力に焦点を当てて、カウンセリングによって今まで以上に自分らしく生きられるようにすることです。

屋号にSHINKAとありますが、「上へ上へ」という進化ではなくても、それまでとは違う場所にクライアント様をお連れすることをモットーとしています。

今後の展望

田所様

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北川

最後に、田所様の今後の展望について教えていただきたいです。

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田所様

日本のメンタルケアの常識が変わってほしいと考えています。日本の場合だと具合が悪い時に病院を受診し、処方されたお薬をもらって安静にして休養を取ることがスタンダードになっています。

しかし、メンタルを崩していたとしても、必ずしも薬を飲まないといけないケースだけではないんです。

メンタルを崩して当たり前の環境にいる人の場合は環境調整が必要だったり、その方のトラウマの治療、カウンセリング的な治療やサポートが必要だったりします。

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北川

精神的な問題から病院で診察を受ける方以外にも、メンタルケアを必要とされている方はたくさんいらしゃるということですね

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田所様

はい。メンタルが落ち込んでしまう問題を抱えている人は人口の数%から10%程度いると思います。

ですが、そもそもメンタルの問題を抱えていなかったとしても、大多数の人が活き活きとして生活することはできていないのではないかと思います。

日本全体の活性化をするためには、個人個人が活き活きと生活することがその第一歩だと思います。

私一人の力では到底無理ですが、自分自身でメンタルケアができるスキルを身につけてもらうことで、微力ながら社会の活性化に貢献していきたいと考えています。

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北川

誰もが直面する精神的な問題に関して、玉石混交さまざまな情報がありますが、資格を持たれている専門家の方から適切な対処の仕方を学ぶ機会は少ないですよね。

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田所様

さらに、SHINKAの活動を通じて心理職の方の力になりたいとも考えています。

心理職の雇用の窓口が少なく、資格を持っているのに働けなかったりパートタイムの仕事しかなく安定した職につけなかったりする現状があります。

心理職はオンラインで行うことと対面で行うこととを比較してもサービスの質がほとんど変化せず劣化しない職種だと思います。

SHINKAの活動を通じて、オンラインカウンセリング自体を広め、SHINKA以外のカウンセラーの方も活躍しやすいようにしていきたいと考えています。

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北川

田所様、本日は貴重なお話をしていただきありがとうございました!!

田所様のこころのケア研究所SHINKAこちらをチェック

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