日本語能力試験と日本語検定の違いは?N1やN2のレベルについて解説!
「日本語能力試験と日本語検定は名前が似ているけど何が違うの?」
語学に関する検定試験には大きく分けて2種類あり、その言語を母語とする人向けの試験とそれ以外の外国人を対象とした試験があります。
日本語の検定試験で言えば日本語能力試験と日本語検定が該当しますが、両者を混同している人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は日本語能力試験について詳しく解説するとともに、日本語能力試験と日本語検定の違いについて紹介します。
この記事を読めば日本語能力試験の概要・難易度・受検するメリット・勉強法まですべて分かるので是非参考にして下さい。
日本語能力試験についてざっくり説明すると
- 日本語を母語としない人向けの試験なので日本人を対象とした日本語検定とは違う
- 日本語能力試験にはN1~N5の5つのレベルがあり最難関のN1は通訳ができるレベル
- 特にレベルの高いN1やN2に合格すれば日本企業への就職で有利になる
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日本語能力試験 JLPTって何?
日本語能力試験(Japanese Language Proficiency Test)は日本語を母語としない外国人が主な対象で、日本で生活したり働く際に必要な日本語のスキルを認定する試験です。
日本語検定のように日本人を受検対象としているわけではありません。
試験のレベルには5段階あり、最も易しいのがN5で最難関がN1です。N1ともなると幅広い日本語を理解する能力が求められ、日本の医師等国家試験や准看護師試験を外国人が受検するための条件の1つになっています。
これから日本で働いたり留学する予定の外国人はもちろんのこと、既に日本企業で働いている人が昇給や昇格を目指して受検するケースも見られ、毎年小学生から社会人まで幅広い年齢層が受検している試験です。
日本語能力試験の概要
日本国内だけでなく世界各国で実施されている日本語能力試験は一体どのような試験なのでしょうか?以下では試験の概要について紹介していきます。
試験日・試験地
日本語能力試験の試験日・試験地は次のようになっています。
試験日
以前は年1回でしたが近年は受検者数の増加に伴って年2回実施されています。
毎年7月と12月に試験が実施され、2023年の試験日は第1回試験が7月2日(日)、第2回試験が12月3日(日)です。
ただし海外の一部の都市では7月のみ又は12月のみの開催となります。
試験地
日本国内では47都道府県すべてで受検が可能です。
海外でも多くの都市で試験が実施されていて、アジア・北米・南米・欧州・アフリカの各都市で日本語能力試験を受けることができます。
2019年度の海外開催都市数は第1回147都市、第2回238都市でした。
日本語能力試験の試験内容
試験では言語知識として文字・語彙・文法の知識が問われ、読解や聴解の問題も出題されます。N1・N2・N3・N4・N5のレベルごとの試験時間は以下の通りです。
- N1:言語知識(文字・語彙・文法)・読解<110分> / 聴解<60分>
- N2:言語知識(文字・語彙・文法)・読解<105分> / 聴解<50分>
- N3:言語知識(文字・語彙)<30分> / 言語知識(文法)・読解<70分> / 聴解<40分>
- N4:言語知識(文字・語彙)<30分> / 言語知識(文法)・読解<60分> / 聴解<35分>
- N5:言語知識(文字・語彙)<25分> / 言語知識(文法)・読解<50分> / 聴解<30分>
日本語能力試験の例題
日本語能力試験では例えば次のような問題が出題されます。以下の例題はN1で出題されるもので、下線部の正しい読みを4つの選択肢から選ぶ問題です。
- 問題:「彼は今、新薬の研究開発に挑んでいる。」
- 選択肢:「1.はげんで」「2.のぞんで」「3.からんで」「4.いどんで」
試験の公式ウェブサイトにはN1~N5までの問題例が掲載されているので、自分の受検しようと考えているレベルの問題を確認してみると良いでしょう。
日本語能力試験の受検者内訳
続いて日本語能力試験の受検者数や受検者の属性を見てみましょう。
日本語能力試験の受検者数
1984年に第1回試験が実施されてから受検者数は着実に増え続け、2018年には遂に100万人を突破しました。
海外の日本語学習者が1984年の約58万人から2015年の約365万人に大きく増え、進学や就職のために日本語能力試験を受検する人も増えている状況です。
日本語能力試験の受検者の属性
2018年第2回試験の受検者の属性は次のようになっています。日本語能力試験は年齢に関係なく幅広い層が受検している試験です。
属性 | 割合 |
---|---|
大学・大学院生(高等教育) | 42.2% |
就業(会社員・公務員・教員・自営等) | 27.6% |
小・中・高校生 | 14.0% |
語学学校等の教育機関の学生 | 6.0% |
その他 | 10.1% |
[出典:日本語能力試験公式ウェブサイト「図で見る日本語能力試験」]
大学・大学院生が4割以上を占めていることから、大学在学中に日本に留学する際に受検したり日本企業への就職を考えている海外の学生が多く受検していることが読み取れます。
日本語能力試験の合格率
日本語能力試験の直近3年間の合格率(認定率)は以下の通りです。
N1 | N2 | N3 | N4 | N5 | |
---|---|---|---|---|---|
2022年12月 | 30.8% | 33.1% | 33.6% | 40.7% | 47.3% |
2022年7月 | 30.2% | 37.3% | 47.0% | 45.6% | 54.1% |
2021年12月 | 34.5% | 41.5% | 45.2% | 43.4% | 62.3% |
2021年7月 | 39.4% | 43.6% | 48.1% | 50.0% | 67.5% |
2020年12月 | 45.2% | 55.9% | 54.1% | 43.6% | 56.0% |
[出典:日本語能力試験公式ウェブサイト「過去の試験のデータ」]
最も簡単なN5レベルの合格率は40~50%で受検者のうち約半分は合格していますが、それ以外のN1~N4レベルの試験で合格できているのは約3人に1人です。
また近年の日本語能力試験はいずれのレベルも合格率が低下していて難化傾向にあることが分かります。
日本語能力試験の難易度
最も易しいN5から最難関のN1まで、日本語能力試験の難易度はレベル別に以下のようになっています。進学や就職など自分が必要とする日本語スキルのレベルに合わせた級を受検するようにしましょう。
【N1】
最高難度のN1では幅広い場面で使われる日本語を理解する能力が必要になります。論理的で複雑な文章やまとまりのある会話・ニュースを聞いても理解できるレベルです。
N1認定者は日本語の通訳が出来るレベルであり、ビジネス上の会話も問題なく理解できて日本語を使った仕事もスムーズに進めることができます。
【N2】
日常的な場面で使われる日本語を理解できるN3のスキルに加えて、より幅広い場面で使われる日本語を理解する能力が求められます。日本語で日常的な会話を滞りなくできてコミュニケーションを取ることができるレベルです。
【N3】
N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルです。日常会話をそれなりに理解できますが、ビジネス会話では理解できなかったり伝わらないこともあります。
製造業など1人で仕事をすることが多い業界であれば大きな問題はないレベルです。
【N4】
基本的な日本語を理解できるレベルがN4です。あくまで漢字の読み書きが出来るレベルなのでアウトプットまでは出来ない人もいます。日常的な会話は通常の話す速度ではなくややゆっくりと話せば理解できるレベルです。
【N5】
N5は基本的な日本語をある程度理解できるレベルです。
身の回りなど日常生活でよく出会う場面における短い会話をゆっくりとしたスピードならば理解でき、日本語で挨拶や自己紹介ができます。日本語で満足にコミュニケーションを取ることは難しいレベルです。
外国人人材を採用するのは難しい
日本での進学や就職を目指す外国人だけでなく、日本語能力試験は外国人人材を採用する日本企業にとっても大きな意味を持つ試験です。
日本語の能力が高い人材を採用できればコミュニケーションがスムーズにできて業務効率が上がることは間違いありません。
ただし高い日本語スキルを持つN1やN2の認定者は優秀な人材として他企業からも人気が高く、給料を上げないと採用できなくて寧ろコストが高くなるケースも出てきます。
そのためN1やN2よりも下のN3認定者を採用するというのも日本企業にとっては1つの選択肢です。仕事をする際の日本語力・コミュニケーション力の向上は採用後の社内教育で行えば採用コストを抑えることができます。
人材採用で日本語能力試験を活用する際の注意点
外国人の中には認定を受けていないのに「自称N2レベル」などと履歴書に記載してくる場合があるので、証明書の提出を求めて実際の認定状況を確認することが大切です。
また例えば同じN3レベルの人であっても日本語を使ったコミュニケーション力には差があることにも注意したほうが良いでしょう。
実際の日本語のスキルは日本国内での生活経験の有無などによっても左右されるので、試験の認定レベルはあくまで1つの目安として考えるようにして下さい。
実際の使用場面での能力を評価することが日本語のスキルを正しく評価する上で重要です。
日本語能力試験を受検するメリット
日本語能力試験を受検して認定を受けられると様々なメリットが得られます。
就職の際に必要・有利になる
日本語能力試験の認定があれば就職の際に有利になるので、日本で働いたり日本企業への就職を目指す外国人にとっては欠かせない試験です。
N1やN2を取得していれば実際に日本語を使いながら仕事をできることの証明にもなり、企業側も安心して採用できます。
また日本語能力試験のN1は外国人が日本の医師等国家試験や准看護師試験を受検するための条件の1つなので、これらの仕事に就きたいと考えている場合にも受検は必須です。
さらにN1やN2認定者は日本の出入国管理上の優遇措置を受けるためのポイントが付与され、日本の中学校卒業程度認定試験で一部の試験科目の免除も受けられます。
証明書を発行できる
日本に進学したり就職する際に日本語のスキルを証明できる書類の提出を求められることがあります。そのときに役に立つのが日本語能力試験の証明書です。
証明書は再発行ができて進学や就職で必要になった時に申請・発行して活用できます。証明書には合否結果や得点区分が記載されていて学校や会社に提出できる公的な書類です。
また、日本語能力試験の証明書は国際的にも認知されており、日本語の習得レベルを公正に評価する手段として高く評価されています。
日本語能力試験の勉強法
日本語能力試験に向けた勉強法としては予備校の試験対策講座を利用する方法もありますが、問題集を購入して独学で試験対策を行うことも可能です。
市販のテキストや問題集も販売されていますが、以下では日本語能力試験を主催している国際交流基金と日本国際教育支援協会が出版しているテキスト・参考書を紹介します。
おすすめテキスト・参考書
N1~N5のレベルごとに「日本語能力試験公式問題集第二集」が販売されています。各レベルの問題集とも試験1回分に相当する数の問題が掲載されていて、自分の受けたいレベルの学習ができるようになっています。価格は税別で700円です。
また「新しい「日本語能力試験」ガイドブック 概要版と問題例集」もおすすめで、これはN1・N2・N3編(税別900円)とN4・N5編(税別800円)の2種類があります。複数の級の勉強をまとめてできるテキストです。
勉強時間
ネット上では「日本語能力試験の勉強を○ヶ月前から始めたら合格できた」などの意見も散見されますが、語学の習得にかかる時間は人によって異なります。
「N1~N5のどのレベルだと何ヶ月の勉強期間で合格できる」などと一概に言えるわけではありません。
非漢字圏の国の出身の方はそもそも漢字の勉強に非常に時間がかかるので漢字圏の国の人よりも多くの学習が必要ですし、文法などの面で母国語と日本語にどれだけの違いがあるのかによっても日本語の勉強のしやすさが違ってきます。
日本語能力試験と日本語検定の違い
日本語の能力を測る試験には日本語能力試験以外に日本語検定もあります。ただしこの2つの試験はそもそも受検対象が異なる試験なので勘違いしないようにしましょう。
まず既に解説したように日本語能力試験は「日本語を母語としない人」を対象にした試験なので、受検するのは主に外国人であって日本人ではありません。
試験では読解だけでなく聴解の問題も出題されて日本語を聞き取る能力が試されます。
それに対して日本語検定は主に日本人が受検することを想定した試験です。
試験では日本語能力試験と同様に「文法」や「語彙」の問題が出題されますが、それ以外に「敬語」「仮名遣い」「送り仮名」の正しい使い方なども問われることになります。
社会人になった日本人がビジネスマナーを身に付けるために改めて日本語を勉強したい場合や日本の学生が教養・勉強の一環として受けるのが日本語検定です。
日本語能力試験まとめ
日本語能力試験まとめ
- 日本語能力試験は日本語を母語としない人を主な対象として世界で実施されている
- 試験レベルにはN1~N5の5段階ありN1やN2の認定を受ければ就職で有利になる
- 日本語能力試験の証明書は日本への進学や就職の際に提出を求められることがある
- 主に日本人を対象としている日本語検定とはそもそも受検対象者が異なる
今回は日本語能力試験について紹介しました。
日本語能力試験は日本に留学したり就職することを考えている人におすすめの検定試験です。N1~N5まで5段階に分かれていて自分に合ったレベルの試験を受けることができるので積極的にチャレンジしてみて下さい!