美術検定ってどんな資格?難易度・独学勉強法・試験概要まで全て解説!

更新

美術作品についてもっと詳しく知りたいけれど、何から手を付ければ良いかわからない、そんな方はいらっしゃいませんか?

美術検定は鑑賞者やアドバイザーという立場で美術を学びたい人におすすめの資格です。合格者には美術館入館料が安くなるなどの特典もあります。

ここでは美術検定について紹介します。合格率や勉強法、取得するメリットなどを紹介しているので、興味のある人はぜひ受験してみてください!

美術検定についてざっくりと説明すると

  • 美術から感動を得たい美術鑑賞者を応援する資格。
  • 美術の知識や教養を学びたい人におすすめ。
  • 級によって難易度や合格率は大きく変動する。
  • 一部の美術館で入館料が安くなるなどのメリットがある。

美術検定ってどんな資格?

クエスチョンマーク

美術検定とは

美術検定とは美術を通して豊かな人生を送る「成熟した美術鑑賞者」を応援する検定です。2003年に始まったアートディレクター検定から名称を変更する形で2007年より実施されています。

ここで述べられている「成熟した美術鑑賞者」とは美術作品から感動を得られる洞察力を持ち、社会に還元できる人のことです。美術作品の背後にある作者の意図や歴史的事情などの情報を引き出し、人々に伝えていくナビゲーターです。

また、2021年試験からはオンライン試験となりました。

美術検定の主催団体

美術検定は一般社団法人の美術検定協会が主催しています。美術検定協会は2018年9月に株式会社美術出版社から事業を引き継ぐ形で設立された組織です。

美術検定協会のは美術検定の役割を強化・普及させることを目的としています。主な活動は美術検定の実施・運営、統計分析及び試験の改良、美術検定応援館の設置などです。

美術検定の合格者特典

美術検定の合格者特典には以下のようなものがあります。

  • 応援館として登録されている美術館の値引き。
  • 合格者イベントへの参加。
  • メールマガジンの配信。
  • 美術出版社の書籍・雑誌の割引。

また、1級に合格した人は上記の内容に加えてさらに次の特典も受けられます。

  • 1級合格者限定のイベント・セミナーへの参加。
  • 1級合格者専用メーリングリストへの招待。

美術検定の難易度

表情

美術検定の出題形式

美術検定の試験は基本的にマーク式の選択問題で行われます。4級と3級は四肢択一式です。2級は四肢択一式に加えて多肢選択式の実践問題も出題されます。2018年より従来の穴埋め問題が実践問題に変更されています。

1級だけは例外で、記述式の試験が実施されます。記述式の試験が行われるようになったのは2013年の試験からです。

出題形式 問題数 解答時間
4級 選択式 約50問 45分
3級 選択式 約100問 60分
2級 選択式(美術史+実践) 約100問 120分
1級 選択式+記述式 - -

なお、問題数は出題内容の難易度によって毎年多少変わります。

美術検定の合格率

美術検定の合格率は級により異なります。最も難易度の低い4級では90%を超えていますが、最も難易度の高い1級では20%を下回ります

4級と3級は比較的合格しやすい試験と言えますが、2級からは難関試験となっています。特に1級は試験形式が記述式であることも相まってかなりの難易度と言えます。以下の表は2018年に実施された試験の合格率です。

合格率
4級 96.5%
3級 78.0%
2級 41.9%
1級 15.1%

美術検定の合格ライン

美術検定の合格ラインは厳密には決められていません。受験者全体の得点率によって変動します。また、1級と2級には問題全体の正答率以外の条件が存在します。

4級と3級はおおよそ60%程度の得点で合格できます。2級は美術史問題と実践問題に分かれており、それぞれの分野で60%正解する必要があります。自己採点では70%くらい正解できていれば安全です。

記述式問題の1級は一定の基準を満たすことで合格です。年度によって基準は異なり、2016年は70%、2017年は75%、2018年は80%でした。基準が上昇しているので、今後の試験では85%以上の得点が欲しいところです。

美術検定の出題内容・目的

4級では西洋美術および日本美術それぞれの分野で代表的な作品や作者について問われます。中学校レベルの歴史教科書や資料集に記載されている程度のレベルです。

3級では4級の内容に加えて歴史の流れも出題されます。美術技法の動向や歴史的背景など美術史の基本も覚えておく必要があります。

2級では西洋美術や日本美術の知識だけでなく、建築工芸や技法、写真映像、現代美術などが問われます。さらに、美術鑑賞の役割や機能、現状も出題されます。2級からは問題の難易度が急激に上昇します

1級では美術2級でも出題された美術鑑賞の役割に加えて作品鑑賞という観点での作品描写やアイデアが問われます。これまでの級に比べると実践的なレベルの問題と言えます。

美術検定を取ることをおすすめする人

美術検定は「成熟した美術鑑賞者」の育成や応援のためにある資格です。そのため、美術検定は美術について学びたい人や美術を役立てたい人におすすめの資格です。

純粋に鑑賞者としての知識や教養を身につけるために学ぶのも良いですし、美術館やアートイベントに参加するために学ぶのも良いでしょう。また、美術と社会をつなぐパイオニアにもおすすめとされています。

美術検定の勉強法

ノート

美術検定の勉強法は独学!

美術検定の勉強法は基本的に独学です。公式テキストが指定されているので、受験する級に対応するテキストを購入しましょう。公式テキストについては後から紹介します。

美術検定は試験範囲が広く、勉強しなければならない内容は膨大です。勉強し始める前は覚えることが多くて大変だと感じるかもしれません。

しかし、これから紹介するコツを抑えれば短い勉強時間でも合格できます。

何から手を付ければ良いか迷う人には…

まずは何から手を付ければ良いか迷う人には興味のある部分から勉強することをおすすめします。テキストをさらっと流し読みして、知っている作品や作者がいればしめたものです。そこから始めましょう。

美術の歴史は非常に長いので、どうしても最初のとっかかりを見つけるのが大変です。

歴史の古い方から学んでいっても良いのですが、馴染みあることから始めた方が理解しやすく、勉強時間も短縮できます。

暗記するものではない!

美術作品の勉強は暗記するものではありません。作品数が非常に多いので、一つ一つ暗記しようとしても覚えきれません。まして年代順に暗記しようとはしないでください。

興味のある作品や作者から始め、関係のある作品や芸術家、時代背景や文化へと広げていきましょう。徐々に輪を広げていくのが近道です。

日ごろから美術に敏感になろう!

美術検定を受験しようと思っているなら、日ごろから美術に関連するニュースに目を通すことをおすすめします。勉強のとっかかりにもなり、級によっては試験内容に直結するかもしれません。

特に、この先数年以内に起きる大きな展覧会や新設美術館、海外の大きな美術館の動きなどは押さえておきましょう。雑誌や新聞、テレビなどで取り上げられている内容だけでも十分な情報が集まります。

各級ごとのワンポイントアドバイス

3級と4級では写真問題が多く出題されています。過去問で繰り返し出題されている頻出問題や有名な作品については必ず抑えておきましょう。

2級で問われる美術史の問題では時間の流れや前後関係を意識しましょう。また、美術館関連の問題は指定テキストの一つ「アートの裏側を知るキーワード」で抑えられます。

1級は論述形式で1000文字以内で解答を作成する必要があります。過去問が公式webページに掲示されているので、制限時間内にポイントをまとめる練習をしておきましょう。文章の上手さなどは問われないので、美文や名文を意識しなくてもOKです。

出題範囲別公式テキスト

美術検定の公式テキストは以下の表で紹介している4冊です。いずれの書籍も美術出版社発行です。

タイトル 価格(税別)
4級 「この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門」 2200円
1-3級 「改訂版 西洋・日本美術史の基本」 2500円
1-2級 「アートの裏側を知るキーワード」 1600円
1-2級 「続 西洋・日本美術史の基本」 2200円
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門
2420円
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門
2420円
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト
2750円
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト
2750円

模擬問題にチャレンジ!

美術検定の公式webページでは模擬問題が公開されています。どの級を受験するか迷う人は腕試しをしてみるといいでしょう。交際されている問題から2問だけ紹介します。

設問1:セザンヌは同じ山をモチーフに絵を描いているがその山とは?(3級レベル)

  1. エトナ山

  2. サント・ヴィクトワール山

  3. シナイ山

  4. パルナッソス山

解答:②セント・ヴィクトワール山

設問2:水墨画は絵具を水で溶き、油絵は絵具を油で溶く。では日本画の絵具は何で溶くか?

  1. ゴム
  2. でんぷん糊
  3. 膠(にかわ)

解答:④膠(にかわ)

美術検定の勉強をするメリット

観葉植物

美術検定を取ることで趣味が広がる!

美術検定の主なメリットは趣味が広がることです。趣味を持ちたい人や増やしたい人にはぜひおすすめです。

美術検定を取得すると美術作品を鑑賞するための知識が身につき、美術館や博物館に行くのが楽しくなります。国内旅行や海外旅行でも美術館巡りを満喫できるようになります。

特に3級と4級は難易度が低いので、まとまった勉強時間が取れない主婦や会社員でも合格できます。興味のある人はぜひチャレンジしてみましょう。

美術館やイベントで活躍できる!

美術検定では美術作品や美術史の基本的な知識を身に付けられます。そのため、美術館や展覧会、美術イベントなどでスタッフやボランティアに転職したり参加したりする際に役立ちます。

さらに、アートイベントや展覧会のギャラリーガイドやアドバイザーという道もあります。美術検定で学んだ内容をさらに掘り下げていけば趣味以外でも就職や転職面でも役立つというメリットもあります。

町中にあふれる美術を再発見できる

意外なメリットとして、日常生活の中で目にする美術を再発見できるようになります。街中には有名な美術作品やそのオマージュ、パロデイがあふれています。美術の知識があればそういったものに気が付きやすくなるでしょう。

本やパンフレット、さらには映画やアニメーションなどにも美術作品の影響は見られます。今まで気にも留めていなかった作品からも作者や時代背景がわかるようになり、楽しめるでしょう。

美術検定の試験日程・会場・申し込み方法

試験日

美術検定の基本情報

美術検定は毎年1回、11月ごろに行われます。現在はオンライン受験となりました。

最後に会場受験が実施されていた年は2019年で、2019年度の開催都市は東京、大阪、札幌、名古屋、福岡の5都市です。ただし、1級は東京と大阪でしか受験できません。

試験会場は東海大学や中京大学、大阪情報コンピュータ専門学校など教育機関が中心です。試験会場の詳細は10月に送られる受験票で確認しましょう。なお、試験申し込み期日は試験日の40日前までです。

美術検定に受験資格はある?

美術検定の受験資格は級によっては制限されています。1級の試験は2級合格者のみ受験できます。2級から4級までは制限がないので誰でも受験することができます。

また、併願にも制限があります。併願は3級と4級、あるいは2級と3級という組み合わせのみ可能です。1級の併願や間を空けた併願は不可能ですのでご注意ください。

美術検定の受験料

美術検定の受験料は級によります。下の表を見てわかる通り、より難易度の高い級ほど受験料が高額になります。

受験料
4級 3970円(税込)
3級 6110円(税込)
2級 7950円(税込)
1級 9990円(税込)

受験料の割引もある!

受験料には学生割引制度と団体割引制度があります。どちらも受験料が10%割引になります。

学生割引は小学生、中学生、高校生、専門学校生、大学生(短大生や大学院生を含む)が対象です。試験申し込み時と試験当日に学生証を持参する必要があります。

団体割引は10名以上が受験する場合に適用されます。団体からの参加者が各級の合計で10名を超えていれば、それぞれの級で10名以上である必要はありません。また、2級以下に限っては団体内に準会場を設けることもできます。

関連する資格

ノートパソコン

日本文学検定

日本文学検定は日本の古典や近現代の文学を通して語彙力・表現力を向上させることを目的とした検定です。著名な研究者が監修を務めているというメリットがあります。

試験は古典と近現代の2分野に分かれています。古典分野では上代から近世までの日本文学が、近現代分野では明治以降の日本文学が出題されます。

現在はどちらの分野も2級と3級があります。3級では一般的な知識レベル、2級では専門的な知識レベルが求められます。3級は4択および2択の問題が80問、2級は4択の問題が50問、出題されます。

試験の合格率は公表されていません。なお、試験の合格基準はどの試験区分も80%です。

受験料は3級は1科目あたり4900円、2級は1科目あたり6400円です。学割制度もあり、3級は1科目につき300円、2級は1科目につき700円値引きされます。試験は併願することもできますが、併願による値引き制度はありません。

試験は8月に東京・大阪の2会場で実施されます。応募方法は郵送あるいはインターネットとなっています。

茶道文化検定

茶道文化検定は茶道を体系的に学ぶことで日本文化を学習・理解することを目的とした検定です。お点前の手順は出題されないため、流儀や経験に関係なく受験できます。

試験は1級から4級までの4段階あります。いずれの試験もマークシート式で行われます。

問題数 試験時間 合格率
4級 60問 60分 65.8%
3級 80問 70分 67.6%
2級 80問 80分 26.0%
1級 80問 100分 2%

4級と3級では茶の心や茶の歴史、茶道具などについて出題されます。1級と2級ではさらに禅との関係や茶菓子、茶業なども出題されます。

受験料は以下のようになっています。22歳以下および繰り返し受験者は500円安く受験できる値引き制度があります。なお、この制度は併用できます。

料金
4級 3000円
3級 4500円
2級 6000円
1級 7800円

4級および3級には受験資格の制限がないので誰でも受験可能です。2級は3級合格者か3級との併願時のみ受験できます。1級は2級合格者のみ受験可能で、併願も不可です。

試験は11月に実施されます。会場は札幌から沖縄まで全国各地にあります。

日本城郭検定

日本城郭検定は日本のお城を通して教育や文化の発展に寄与することを目的とした試験です。ロンドンブーツ1号・2号の田村淳さんが受験したことで一時話題になりました。

試験は5段階の難易度に分かれています。どの難易度も四択のマークシート式で制限時間は60分です。

以下の表に挙げたように準1級からは難易度が一気に上昇します。反面、2級までは比較的容易に合格できるでしょう。合格基準は全ての級で60%から70%であるとされています。

合格率 問題数
4級 96.7% 50問
3級 82.8% 100問
2級 73.6% 100問
準1級 35.8% 100問
1級 4.9% 100問

試験では城巡りに最低限抑えておきたい基礎知識や日本100名城、続日本100名城の知識が出題されます。さらに、高位の級では時事問題や試験ごとのテーマにあった問題も出題されます。

受験料は以下の通りです。申し込み受付開始直後の早い段階で申請した場合に受けられる値引き制度です。

級名 通常料金 早割料金 中学生以下
4級(入門・シロッぷ級) 4,000円 3,700円 3,700円
3級 4,700円 4,300円 3,700円
2級 6,000円 5,600円 3,700円
準1級(武者返級) 6,800円 6,400円 3,700円
1級 9,400円 8,900円 6,900円

日本城郭検定は毎年2回、6月と11月に実施されています。申し込みは郵送かインターネットのどちらかで、試験日の40日前が期日です。試験会場は仙台、東京、名古屋、大阪、姫路、福岡の6都市です。

美術検定のまとめ

美術検定のまとめ

  • 取得することで成熟した美術鑑賞者になれる。
  • 3級までは半数以上が合格するので取得しやすい。
  • 合格ラインは変動するが、2級までは60%が目安。
  • 合格者には特典がある。

ここでは美術検定について紹介してきました。いかがでしたか?美術検定で美術作品や作者について勉強すると、美術館での作品鑑賞が楽しくなります。

美術検定は比較的短い勉強時間で合格できるので、忙しい社会人や主婦でも合格できます。基本的に独学なので場所や時間に縛られずに勉強できるのもポイント。

美術館のイベントやボランティアに興味はあるけれど知識が不安だった方や美術を仕事や生活に取り入れたい人には特におすすめです。ぜひチャレンジしてみてください!

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1