介護事務の給料はどれくらい?仕事内容や職種別の平均年収を徹底調査!
「介護事務ってどんな仕事をするの?」
「介護事務の給料はどれくらい?」
こうした疑問を持っている人は多いようです。
世界に類を見ないスピードで高齢化が進むわが国において、介護事務は需要の高い職種と言えます。
そうした職種でありながら、一般事務や医療事務などとの違いや介護事務の資格については、意外と知られていません。
そこで ここでは、介護事務の給与事情や仕事内容などについて紹介します。
この記事は、介護事務を検討する際には必ずお役に立つはずです!
介護事務の給料についてざっくり説明すると
- 介護事務の平均年収:291万円で月収では約24万円
- 兼任すると給料は高い:ヘルパーを兼任300万~350万円程度・介護福祉士を兼任350万円程度
- 専業すると給料は安い:平均月収は18万~20万円程度
介護事務とは
介護サービス施設や事業所などに勤務して、介護保険や介護に関する事務業務のスペシャリストです。
以降の見出しでは、介護事務の仕事内容のほか、医療事務との違いについても解説します。
介護事務の仕事内容
介護事務の主な仕事内容は、一般的には次ぎのとおりです。
メインの仕事としては、「介護報酬の請求(レセプト作成)」と「利用者への請求書の作成」の介護に関する2つの手続きを挙げられます。
これら以外に、次のような仕事をするのが一般的です。
- 電話応対
- 来客応対
- ケアマネジャーのサポート
- 備品購入
介護報酬請求事務がメイン
介護サービスの利用料は、利用者が全額の1~2割を負担し、残りは保険者である国・都道府県・市町村が負担します。
月に一度、前月提供分の介護サービスの利用料を『国民健康保険連合会』を通して国などに請求するのが介護報酬請求業務(レセプト)で、介護事務の最も大切な仕事のひとつです。
兼任する業務も多い
介護事務員のメインの仕事は介護報酬請求事務ですが、それだけやっていれば良いのではありません。
近年は介護現場の人員が不足していることから、大規模施設や事業所の介護事務専任以外の介護事務は、多岐にわたる仕事を兼任することを求められます。
具体的には、介護福祉士・ヘルパー・ケアマネジャーといった現場職のフォロアーを兼任するのが一般的です。
無資格でも働くことができる
介護事務は、「特定の知識やスキルの必要な国家資格」ではありませんし、「特定の資格取得の必要な仕事」でもありません。
しかし、「介護保険や介護に関する専門知識と幅広い知識やスキルを取得した人材である」ということを証明してくれる民間資格は存在します。
具体的には『日本病院管理教育協会・日本能力開発推進協会・日本医療教育財団』などから提供されている次のような資格です。
- 介護事務管理士
- ケアクラーク
- 介護保険事務管理士
資格がなくても介護事務として働けますが、資格があれば採用にも仕事にも役立つことは間違いのないことですから、民間資格であっても資格は取得すべきでしょう。
医療事務との違い
医療事務とは、医療機関で患者の応対をするだけでなく医療費の計算をしたり保険者に診療料を請求したりする仕事です。
この医療事務と介護事務とをいくつかの項目で比較すると、次表のような違いがあります。
項 目 | 介護事務 | 医療事務 |
---|---|---|
勤務場所 | 主に介護サービス施設や事業所 | 主に医療機関 |
請求業務の種類 |介護報酬請求業務 |診療報酬請求業務| |作成書類 |介護給付費明細書・介護給付費請求書 |診療報酬明細書| |給料・待遇 |平均年収は250万〜300万円程度 |平均年収は300万〜400万円程度|
介護事務の年収はどれくらい?
介護関係の給与は一般に安いイメージを持たれてきましたが、介護事務の給料は、はたしてどうなのでしょうか?
ここでは、介護事務の給料に関し、さまざまな側面から解説していきます。
介護事務の平均年収は291万
介護事務の給料や年収は、就労形態や事業所所在の都道府県や勤続年数などによって異なりますが、平均年収は約291万円で月収では約24万円です。
『2020年版職業別年収ランキング(170選)』によれば、「介護事務」は単独では取り上げられていません。
しかし、「医療事務」が年収約300万円で153番目・「一般事務」が年収約250万〜350万円で149番目に位置付けられています。
介護事務の平均年収291万円は、事務系の仕事として一般的なレベルの収入と言えるでしょう。
兼任すると給料が高くなる
介護事務は、介護報酬請求業務だけに専任しているのではなく、「介護福祉士・ヘルパー・ケアマネジャー」といった別の現場職種を兼任している人が大半です。
近年の一般的な兼任パターンでの介護事務の年収は、兼任している職種の年収とほぼ同額と言えます。
例えば、ヘルパー兼任は300万~350万円程度、介護福祉士兼任は350万円程度、ケアマネジャー兼任は400万円程度です。
専業だと給料は安め
介護事務が他の介護職種を兼任すれば、年収はその職種とほぼ同額ですが、介護事務に専業する場合の収入はどの程度でしょう?
介護事務に専業の場合、一般的には夜勤や残業がないこともあり、給与の平均月額は18万~20万円程度です。
ただし、正規社員には資格手当やボーナスが支給されるケースが多いことから、介護事務に専業の場合の平均年収は250万~350万円前後(一般的には320万円程度)です。
専業での年収例
介護事務に専業する場合の雇用形態別の平均的な年収は、次のとおりです。
雇用形態 | 一般的な労働条件 | 年収 |
---|---|---|
正規・派遣 | 月収約20万円・各種手当とボーナスあり・シフト制・残業あり | 320万円前後 |
レセプト業務請負 | 月収約20万円・各種手当とボーナスなし・シフト制・残業あり | 200万~300万円 |
パートタイマー | 時給1000円~・各種手当とボーナスなし・フルタイム・残業なし | 185万円程度 |
非常勤で働く場合の給料
「非常勤」というのは雇用形態の違いだけであり、勤務日数や時間などは正規に準じたフルタイムでの勤務が求められるのが一般的と言えます。
それを前提に、公表されているパートの平均時間単価962円・派遣の平均時間単価1,250円を使って年収を計算すると、およそ次のとおりです。
●毎日8時間・月20日間勤務:パートの年収は185万円程度で派遣の年収は250万円程度
都道府県別の年収事情
都道府県別で介護事務の平均年収が高いのは、東京都の310万円です。
続いて年収が高いのは関東地域の大都市で、次に大阪・愛知・福岡など全国の大都市圏の介護事務の年収が上位を占めます。
介護事務で働くのであれば大都市が給与面で有利に見えますが、地価・家賃・物価などが高いことから、生活水準では大きな差はないと言えるでしょう。
介護事務の平均年収が最も低いのは252万円の広島県で、東京都とは50万円以上の差があります。
介護事務の就職・転職
ここでは、介護事務の就職や転職はどのようになっているのかを取りあげて、解説していきます。
介護事務の需要は高い
2000年にスタートした介護保険制度によって多くの事業者が介護業界に参入し、施設は急増してきました。
しかし、介護施設や介護サービス事業所で働く人員数は需要に間に合わず、施設や事業所は慢性的な人員不足に陥っているのが現状です。
介護要員は非常に需要の高い仕事であることから、国は、人員不足の解消に向けたさまざまな施策を講じていますが、解決できていません。
今後の高齢人口の増加を考えると、将来にわたって介護要員の需要は高いと言えるでしょう。
介護事務の雇用形態
介護業界は人員不足ですから、すでに紹介したとおり介護事務は売り手市場です。
正規・派遣・契約・パートなど、ライフスタイルに合わせた雇用形態で就労できる可能性があると言えるでしょう。
ただし、現在働いている職員のほとんどが正規と派遣であることから、「採用は正規か派遣・パートならフルタイム」での就労を条件にするケースが多いようです。
他職種と兼任するのが一般的
現在、「介護報酬請求業務」だけを担当する介護事務を雇用しているのは、大手の施設や事業所に限られます。
たいていの施設や事業所では人員不足が解消されていないことから、介護事務で採用されてもケアマネジャーや社会福祉士などを兼任するのが一般的です。
こうしたことから、施設や事業所の人員不足が解消されたり規模を拡大したりした場合には、介護事務は他の職種を兼任しないで介護事務専門の担当者に切り替わる可能性があります。
介護事務のやりがい
「仕事のやりがい」はそれぞれの人が感じるものですから、その仕事に従事する人の数だけあっても不思議ではありません。
ここでは、介護事務をする人が挙げる仕事のやりがいのうち、上位3つを紹介しておきましょう。
- 自分が行う請求作業で施設の経営が成り立っている、という仕事内容に対する充実感
- 頻度の高い介護保険改正に関し、経営陣やスタッフからの疑問や質問に答えられたときの達成感
- 兼任で担当する受付業務で、利用者や利用者家族から感謝されたときの満足感
介護事務の苦労する点
介護事務は「介護報酬請求業務」がメインの仕事ですが、他の職種の人員が恒常的に不足していることから、さまざまな現場作業の職種も兼任しなければなりません。
そうしたことから、次のような点で苦労があるようです。
- 介護事務の他にも、さまざまな仕事や雑用を頼まれることが多い
- 介護事務は、社会福祉士やケアマネジャーほどの昇給は望めない
- 多額の資金を取り扱う仕事なので、ミスが許されず緊張で疲れてしまう
介護事務は独学で取得できる?
以降の見出しでは、民間団体が実施している介護事務関連資格を、独学で取得できるかどうかを解説します。
介護事務の独学取得は難しい
次の理由から、独学だけでの取得は難しいと言えます。
- 介護事務資格試験の大半は、主催団体の指定講座を修了しなければ受験資格を得られないこと
- 介護事務のテキストや問題集はほとんど市販されていないこと
- 例えば「介護保険点数表」のような専門的なことを独学で理解するのは困難であること
こうしたことから、主催団体の「通信講座」などの受講がおすすめです。
介護事務に向いている人
介護事務員には、介護に関する幅広い知識とスキルを持ち、施設内の他の職種についても柔軟にこなす能力が求められています。
一般的に「どのような人が介護事務に向いている」と言われているを、ここに列挙しておきましょう。
- 福祉や介護の仕事に興味と熱意がある人
- 数字が苦手ではなく請求業務に抵抗がない人
- デスクワークが苦にならない人
- 期限を守って仕事を片付ける人
これらに加え、兼業をすることからさまざまな人とのコミュニケーションを求められる介護事務員には、「コミュニケーション能力の高い人」であることが必要です。
介護事務資格を取得するには
介護事務に関する資格はさまざまな運営団体が独自に民間資格を設定しているため、就活前にどれを取得すれば良いのか悩む人は多いでしょう。
ここでは、代表的な3つの資格試験について解説します。
介護事務管理士
「介護事務管理士」は、『JSMA技能認定振興協会』が運営している介護事務資格です。
試験は、介護保険制度や介護請求事務などに関するマークシート形式の「筆記試験」と、レセプト点検やレセプト作成の「実務試験」の2部で構成されています。
試験は年6回(奇数月)全国主要都市で実施されており、受験資格の制限がないので誰でもが受験が可能です。
なお、「ユーキャン」や「株式会社ソラスト」などの通信講座で勉強をすれば、自宅で受験できます。
ケアクラーク
「ケアクラーク」は、『日本医療教育財団』が運営している介護事務資格です。
試験は介護事務に必要な技術と知識以外にコミュニケーション技術や一般医学の知識も問われる出題範囲は広く、学科と実技それぞれで70%以上の正解率をクリアすれば合格が認められます。
試験は年6回(偶数月)各都道府県の公共施設などで実施されており、受験資格の制限はありません。
なお、資格取得のための勉強は、ニチイなどの介護事務講座や一部の専門学校でも可能です。
介護報酬請求事務技能検定
「介護報酬請求事務技能検定」は、『日本医療事務協会』が主催する資格試験です。
試験は主に介護報酬請求事務に関する知識や技術が出題・審査対象で、学科と実技があります。
試験の実施は偶数月の第3日曜日で、合格基準は総得点の70%程度(問題の難易度で補正)です。
受験資格と試験会場については複雑ですから、募集要項か協会に問い合わせて確認してください。
なお、検定試験の対策講座は、『日本医療事務協会』で通学と通信コース開講されています。
介護事務資格を取得したら
介護事務の関連資格を取得したのであれば、これからは就活を頑張らなければなりません。
以降では、介護事務資格を取得してからのことに関して解説します。
介護事務
ここでは、介護事務として働く代表的な施設と、そこでの仕事内容について解説します。
有料老人ホーム
「有料老人ホーム」は原則として65歳以上の高齢者が利用し、「健康型有料老人ホーム」は介護サービスの必要のない高齢者が利用する施設です。
この施設ではレクリエーションが行われることがあることから、人手が足りない時は、介護事務員にも支援や同行が求められます。
特別養護老人ホーム
「特別養護老人ホーム」とは、自宅での生活が困難になった要介護者が入居できる公的介護保険施設の1つで「特養」と呼ばれれる施設です。
介護事務が介護スタッフの勤務管理や給与計算を行っている施設の場合には、計算事務が発生します。
介護老人保健施設
「介護老人保健施設」とは、病気などで入院していた高齢者が退院後に在宅復帰できるよう支援し、リハビリ専門スタッフと1人以上の医師が常勤している施設です。
この施設の人員体制は介護・看護職員は入所者3人につき1人ですが、人員体制が十分に整っていない施設では、介護事務に医療機関との連絡などの仕事を求められることがあります.
訪問介護ステーション
ヘルパーや訪問看護師などが医師との連携のもとに自宅を訪問し、食事や入浴などの介助、掃除や買い物など必要なサービスを提供する施設です。
この施設では、介護事務はメインの仕事として訪問回数やサービス内容・時間などを計算し、レセプトを作成します。
デイサービス
デイサービスは通所介護ともいい、要介護認定者が自宅で生活できるよう、機能訓練や他者との交流を通じて社会的孤立感の解消や認知症予防を図る介護施設です。
また介護者家族の身体的・精神的負担の軽減も目的とされています。
この施設においては、通所する人の利用回数や利用内容を計算してレセプトを作成するのが介護事務です。
介護事務の待遇は良い
介護系の仕事は給与面で魅力がないと言われてきましたが、近年は一般職種並みに改善が進んでいるようです。
以降の見出しでは、介護事務の待遇について解説します。
労働環境は改善されている
かつて介護業界では、重労働の割に給与面で恵まれていなかったことなどから、人員不足が続いたという苦しい経験があります。
そうした問題解決のため、国は、繰り返し介護関連制度の改正や給与面の改善を進めてきました。
その結果、近年は給与面だけではなく労働時間や雇用形態なども大きく改善されてきています。
現時点では、一般企業並みの労働環境が実現しつつある、と言えるでしょう。
仕事が安定している
介護保険制度が運用されている限り、介護関係の施設や事業所は、国や制度利用者から確実に介護保険料を受け取れます。
介護保険料を受け取るには介護報酬請求事務が必要ですから、それを処理する介護事務が必要です。
ですから、介護保険制度が運用されている限り、介護事務の需要もなくなることはありません。
「介護事務の給料はどれくらい?」についてのまとめ
「介護事務の給料はどれくらい?」についてまとめ
- 介護事務の平均月収では約24万円(専業すると給料は安く、平均月収は18万~20万円程度)
- 兼任すると給料は高い:ヘルパーを兼任300万~350万円程度・介護福祉士を兼任350万円程度、
- 非常勤介護事務の平均年収:パートの年収は185万円程度で派遣の年収は250万円程度
介護事務の給料のアップは、ヘルパーやケアマネジャーといった別の現場職種を兼任できなければ期待できません。
つまり、介護事務で働く人に求められているのは、介護保険や介護に関する事務の専門家というだけではないということです。
そうした介護事務にはどのような知識やスキルが求められているかを知るためには、民間団体の通信講座で勉強するのがおすすめと言えます。
介護事務への就職や転職を目指す際には、ぜひ、民間資格を取得したうえで挑戦してください。