電気主任技術者には実務経験が必要?認定取得の方法や資格取得後の働き方も解説

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「電気主任技術者になるためには実務経験が必要なの?」

「電気主任技術者になるための実務経験ってどんなもの?」

電気主任技術者資格の取得を考えている方は、このような疑問を持つのではないでしょうか。

電気主任技術者の資格では、実務経験は大きなキーワードです。

この実務経験についてよくわからず、電気主任技術者の取得をしようか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。

この記事では、電気主任技術者になるには実務経験が必要なのか、資格取得のためにはどうすればよいのか、また資格取得後のキャリア形成などについても解説しています。

電気主任技術者の実務経験について知り、ぜひ電気主任技術者の合格を目指していきましょう。

電気主任技術者には実務経験が必要かについてざっくり説明すると

  • 電気主任技術者の試験に合格すれば実務経験は不問になる
  • 電気主任技術者の試験は非常に合格率が低いため、実務経験を利用した資格認定の方が早く資格を取得できる可能性がある
  • 学歴によって必要な実務経験の長さが変わってくる

実務経験が無くとも電気主任技術者になれる

指をさす男性

電気主任技術者になるには、通常の資格と同じように試験を受けて資格取得をする方法があります。試験に合格すると、実務経験がなくても電気主任技術者になれます。

ただ、電気主任技術者の試験は難易度が高い試験です。実務経験があることにより、試験を受けずとも資格を取得できる方法もあるため、試験を受けずにこちらの方法を選ぶ人もいます。

電気主任技術者の取得方法は2種類

電気主任技術者の資格の取得方法には、次の2種類があります。

  • 試験に合格する
  • 学歴と実務経験の条件を満たして認定取得をする

試験の難易度は高いため、試験を受けずに実務経験を積むことによって資格認定をもらう方法を選ぶ人もいます。

一方、試験に受かりさえすれば実務経験を積まずに資格がもらえるわけですから、試験に自信のある方は試験を受けることを選択することもあります。

試験に合格すれば実務経験はなしで良い

試験には受験資格がないことや、試験に合格すると実務経験が不問になることから、より短期間で資格を取得するためには、試験に合格する方法の方がよいと言えます。

ただ、電気主任技術者試験(電験)は第1種、第2種、第3種がありますが、第3種でも合格率が非常に低く長期間の勉強時間を必要とするケースがほとんどです。

そのため、ある程度の学歴がある方は、試験に合格するよりも認定取得の方が楽である場合もあります。

認定取得に必要な学歴とは、経済産業省が認めた大学、短期大学、高等専門学校、高等学校などの認定校において、電気に関する4つの分野を履修しているというものです。

それぞれの分野と履修内容は以下のとおりです。

  • 理論:電気理論、電子理論、電気計測など
  • 電力:発電所や変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路、電気材料など
  • 電気機器:パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱など
  • 法規:電気法規や電気施設管理に関する法規など

学歴によって必要な実務経験も変わる

認定取得の際には、学歴だけでなく在学していた年数と実務経験の年数の合計によって資格取得が可能かどうかが決まります。

例えば、短期大学卒業の場合はより長い実務経験が必要になってしまいます。

早期に就職すると長期間の実務経験が得られる反面、資格取得の点から言えば、大学を卒業しておいた方が実務経験の年数が少なくてよいというメリットもあります。

つまり、大学を卒業しておき、条件を満たして資格認定を目指す方が、より短期で資格取得をすることができる場合もあるということです。

資格認定の際には面接も必要

実務経験や学歴といった資格取得への条件を満たすと、経済産業省管下の各地方にある保安監督部で審査されます。

しかし、審査だけで資格認定がされるわけではありません。その後経済産業省経済産業局による面接があります。面接は、電気に関する深い知識が問われる難易度が高いものです。

面接の合格基準は公開されていません。そのため、何回も面接に落ちてしまう人もいます。合格基準が公開されていない以上、試験対策をすることもできないため、この面接が認定取得の難易度を高めていると言ってもいいでしょう。

電気主任技術者の実務経験の詳細

女性とパソコン

電気主任技術者に必要な実務経験とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

実務経験にカウントされる業務

実務経験にカウントされる業務には、発電設備、変電設備、送配電設備、遠隔制御設備などの取扱い、監督指導業務などが含まれます。

監督指導に含まれる業務としては、配線工事、機器調整、検査業務、保安管理業務などがあります。

電気主任技術者は第1種、第2種、第3種とありますが、どの種の実務経験となるかは、設備が放電する電圧次第です。

そのため、例えば自分が第2種の実務経験にしたい仕事でも、設備の電圧が条件を満たさなかったために、第2種の実務経験にできない可能性もあります。

実務経験に含まれない業務もある

電気設備に関する業務であっても、受電する電圧が100Vや200Vなどの小さい場合は実務経験としてみなしてもらえない場合もあります。

また、電気工作物に関する専門知識がいらないような監視、記録、実験設備や試験設備における業務などは、実務経験としてカウントされないため注意が必要です。

実務経験を積みたい場合は、あらかじめ応募する企業で実務経験が詰めるのかどうか、確認しておきましょう。

第1種・第2種に必要な実務経験は5年

第1種、第2種の認定に必要となる実務経験の年数は5年以上です。

ただし、第2種の必要年数は学歴によって短くなることもあります。例えば、認定校の大学を卒業している場合は、本来は5年のところ、3年以上の実務経験で十分です。

実務経験を長く積み、より知識とスキルがある電気主任技術者を目指したいという方もいますが、なるべく短期間の実務経験で済ませて資格を取得したいという方もいます。

後者の場合、実務経験が3年で済むというメリットを生かし、大学を卒業して3年の実務経験後、第2種を取得するという人もいます。

第3種に必要な学歴は最大3年

第3種電気主任技術者の認定に必要となる学歴は3年です。しかし、以下のように学歴によって実務経験の年数が大きく変わります。

  • 大学卒業:実務経験1年以上
  • 短期大学・専門学校卒業:実務経験2年以上
  • 工業高校卒業:実務経験3年以上

このように、学歴によって必要な実務経験が異なってくるのが電気主任技術者の特徴です。

電気主任技術者として働いていくにあたって、長期間の実務経験を積んでから資格を取得したいのか、学歴を利用して短期間の実務経験ののちに資格を取得したいのか、人によって考え方が違うところです。

中学生、高校生のうちから電気主任技術者を目指す人は、このように学歴によって必要な実務経験が違うという点に気を付けて進路を決めるべきでしょう。

交付申請の際に詳細な記入が必要

資格取得認定の交付申請の際には、実務経験について具体的に記入をしないと申請が通らない場合もあります。

具体的には、以下のような内容を細かく記入する必要があります。

  • 業務や設備工事ごとに「いつ」「どこで」「何を」「どのように」行ったのか、自身が担当した業務とともに項目に記入する
  • 自身が取扱いを担当した電気工作物の内容を詳細に記入する

以上の点に注意して詳細な内容を記入しないと、本当は実務経験として条件を満たしていたのに申請が通らなかったなどということになりかねません。

記入の際には細心の注意を払う必要があります。例えば、あらかじめ文章を完成させておき、同僚などに読んでもらいわかりやすい文章になっているかチェックしてもらうなどの工夫が必要です。

電気主任技術者の実務経験の積み方

笑顔の男性

実際に電気主任技術者がどのように実務経験の積み方をすればよいのか解説します。

特別高圧受変電設備で働く

6000V以上の受電をする高圧受電設備や、60000V以上の特別高圧受変電設備などの取扱いができる施設で働けば、実務経験として問題ありません。

具体的には、工場、ショッピングセンターなどの商業施設、オフィスビル、複合施設、病院、ホテルなどで働くことがおすすめです。

電気主任技術者選任の義務のある施設

電気主任技術者の選任が義務付けられている施設では、電圧の高い変電設備を用いている場合が多いので、仕事を通して実務経験を積むことが可能です。

こういった施設にはキュービクル式高圧受電設備があることがほとんどです。職場選びの一つの目安にしてみてください。

試験と認定取得はどっちがおすすめ?

現在、電気主任技術者の認定取得は試験と比べて難易度が低く取得しやすいという状況にあります。

すでにある程度の学歴や実務経験を持っている場合は、認定取得を目指す方がよいでしょう。

ただ、最近では認定取得も難しくなっているため、今後もずっとこの傾向が続くとは限りません。

また、面接時に実務経験を面接官がなかなかカウントしてくれない場合もあります。その場合、面接官に認めてもらうための新たな実務経験を積まなければなりません。

実務経験の積み方に注意しないと、認定取得に何年もかかってしまいますので、結果的に試験を受験した方が良かったというケースになってしまうことも少なからずあります。実務経験の積み方は非常に難しい問題なのです。

電気主任技術者の資格取得後のキャリア

握手する男性

電気主任技術者の資格を取得すると、どのようなキャリアを積めるのでしょうか。

仕事の仕方、年収などさまざまな面からご紹介します。

様々な分野で仕事ができる

電気主任技術者の資格があれば、先ほど述べたような特別高圧・変電設備のある施設だけではなく、ビル管理会社、電気工事会社、電力会社、電気機器製造会社、建設会社などさまざまな業界で需要のある人材になれます。

実際に求人情報を見ると、ホテルの設備管理、官公庁、病院の設備管理など、さまざまな種類の仕事内容があります。

電気主任技術者は、さまざまな業界で働ける仕事、さまざまな業界から必要とされる仕事なのです。

継続的な学習と専門知識の深化によって、新たな技術や規制にも適切に対応することができるでしょう。

電験所有者の平均年収や資格手当

電験3種取得者の場合、平均年収は400~550万円程度で、一般的な職業の平均年収よりも高い給与が望める職業です。

電験3種でも推定年収600万円程度の求人も多くあることから、より上位資格の第2種、第1種の資格を取得すると、給料アップが狙いやすいと言えます。

高収入を目指したい場合は、第3種取得で満足せず、第2種、第1種とキャリアアップを目指していきましょう。

電気主任技術者の労働の実態

電気主任技術者は就職先がさまざまであることから、労働のパターンも多い職種です。

ただ、全体的に言える共通点としては、そこまできつい労働をしなければならない職種ではないということが言えます。

早朝出勤や宿直が数回はありますが、残業は多くなく、休日は平均的な日数を取ることが可能な職種です。

先ほども述べたように、電気主任技術者の平均給与は一般的なものよりも高めです。このように労働環境が厳しくない上に給与が高めであるということは、電気主任技術者の魅力の一つであると言えるでしょう。

電気主任技術者の仕事の一例

電気主任技術者はどのような働き方をしているのでしょうか。ここで、ある電気主任技術者の一日をご紹介します。

9時:出社します。電気に関するプロジェクトを進めるチームのメンバーで集まり、今日の予定を確認します。確認したら現場に異動します。

10時:現場での仕事を開始します。日によって現場は異なりますが、仕事内容としては、工場やビル等で電流値・電圧値・電力メーター・ソーラーパネルなどの点検にあたります。

12時:休憩時間です。昼食をとったり、同僚と話したりします。

13時:午前中の業務の続きにあたります。

15時:会社に戻り、機械の導入に関して電力会社との打ち合わせをします。

17時:翌月に使う計画書をまとめます。

18時:退社します。

以上のように、電気主任技術者は現場での業務とオフィスでのデスクワーク両方をこなさなければなりません。

しかし、それぞれに慣れることができれば、バランスのよいワークスタイルを維持することができるようになります。

先ほども述べたように、電気主任技術者は特にハードな仕事ではありません。現場業務とデスクワークに慣れさえすれば、働きやすい職業です。

年代別の働き方・就職先

チェックリストと女性

ここからは、電験を取得する時期や年齢ごとの働き方・求人の種類などを紹介していきます。資格取得後のキャリア形成の参考にしてください。

取得直後は経験を積むことを優先

資格取得直後は、まず初心者であることを脱するのが最優先事項であり、未経験歓迎の求人に応募をして経験を積むことが先決です。

例えば、電気工事や設備管理などの仕事で十分な経験を積むことができれば、以降のキャリアでも高く評価してもらえる可能性が高くなります。

この段階では給与よりも経験とスキルの獲得に注力することが、将来のキャリアに役立ちます。

まずは、経験を積むことに専念しましょう。

20代〜30代では将来性を買われやすい

20代から30代になったころには、すでに実務経験をある程度積み、即戦力として活躍できるレベルになっていることが理想です。

しかし、電気主任技術者の平均年齢を考えると、20代から30代で未経験である人も少なくありません。

一方で、若手は経験が少なくとも将来性を買われて雇用される場合も非常に多くあります。そのため、20代、30代で未経験の人は、未経験歓迎の求人にどんどん応募するのがよいでしょう。

未経験歓迎の会社は大手企業であったり、教育体制がしっかりしている会社であったりする場合が多いため、働きながら自身の能力を高めていくには最適です。

経験不足を感じている人は、このような企業を選び、働きながら教育してもらい、実務経験を積んでいきましょう。

40代以上では実務経験が必須

40代から50代で電気主任技術者を取得した場合、未経験での転職は難しくなってしまうという現状があります。

一方で、電気主任技術者は高齢化が進んでるため、実務経験がある有資格者であれば、年齢問わず積極的に採用したいという企業もあります。

このような企業に採用されるためには、30代までにしっかりと実務経験を積んでおくことが必要です。

実務経験があれば、40代から50代でも転職することは可能なのです。

電気主任技術者には実務経験が必要かについてまとめ

電気主任技術者には実務経験が必要かについてまとめ

  • 実務経験は何でもよいわけではなく、発電設備、変電設備などの取扱いや監督指導業務などと定められている
  • 資格取得のための面接の際や、資格交付申請の際、過去の仕事が実務経験として認めてもらえないこともある
  • 20代、30代では未経験でも将来性を買われ採用されやすいが、40代以上の場合、採用されるためには実務経験が必須となる

電気主任技術者には実務経験が必要なのかについて解説しました。

試験に合格すれば実務経験は不要ですが、試験に合格するよりも、これまでの学歴と実務経験で要件を満たし、認定を受ける方が早く資格取得できることがあります。

しかし、実務経験として認められる要件があるため、場合によっては実務経験として認められないこともありますので、確実に実務経験として認められる仕事を選ぶことが大切です。

電気主任技術者は今後も需要が高い魅力的な職業ですので、興味がある方はぜひ資格取得を目指してみましょう。

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