衛生管理者の合格基準は?第一種・第二種の合格点や一発合格のポイントも紹介
「衛生管理者試験を受けたいけど、合格ラインや合格率はどれくらいなの?」
と言った疑問を持っている人は多いのではないでしょうか?
衛生管理者は国家資格としては取得し易いと言われていますが、どのような勉強をすれば合格できるのかなどは意外と知られていないようです。
この記事では、衛生管理者試験をさまざまな面から分析して、解説していきます。
衛生管理者試験の合格基準や合格率をざっくり説明すると
- 「合格点」は、第一種が240点以上で第二種が180点以上
- 「合格率」は、第一種が45%前後で第二種が50%前後
- 「偏差値」は、第一種が45~49で第二種が40~45
衛生管理者試験の特徴
国家資格である衛生管理者の資格を取得するためには、衛生管理者試験に合格し、都道府県知事から許可を受けなければなりません。
衛生管理者は企業からの雇用ニーズが高いこともあり、非常に人気が高く、令和4年度には10万人を超える人が受験しました(合格者は約5万人)。
衛生管理者試験は「第一種と第二種」に分かれており、どのような業種の衛生管理者になれるかによって区分されます。
具体的には第一種合格者は有害業務を含むすべての業種の会社や職場の衛生管理者になれ、第二種合格者は有害業務を除く業種の衛生管理者になれるのです。
衛生管理者試験の形式は五肢択一式・マークシート方式で同じですが、試験範囲や難易度などは異なります。
なお、衛生管理者試験の最大の特徴は、国家資格でありながら難易度がそれほど高くないことと、年に1~5回実施されることで受験機会が多いことと言えるでしょう。
これらの特徴から、衛生管理者試験は多くの人々にとって挑戦しやすい資格であることがわかります。
受験資格がある点に注意
第二種衛生管理者試験には受験資格が設定されていないので、申し込めばだれでも受験できます。
しかし、第一種衛生管理者試験には「学歴と労働衛生の実務経験」についての受験資格が設定されていますから、申し込めばだれでも受験が認められるということではありません。
第一種衛生管理者試験の「学歴と労働衛生の実務経験」の具体的な受験資格は、次のとおりです。
- 大学または高等専門学校(専修・各種学校などを除く)を卒業し、その後1年以上労働衛生の実務経験がある者
- 防衛大学校や防衛医科大学校などの省庁大学校を卒業し、その後1年以上労働衛生の実務経験がある者
- 学校教育法による高等学校または中高一貫教育学校を卒業し、その後3年以上労働衛生の実務経験がある者
- 高等学校卒業程度認定試験合格者で、その後3年以上労働衛生の実務経験がある者
なお、労働衛生の実務経験が10年以上ある者については、最終学歴に関係なく受験資格を満たしていると見なされます。
このように、学歴によって労働衛生の実務経験も変わるので、自分がどれに当てはまるかをしっかりと確認をする必要があります。
また、労働衛生の実務経験としてカウントできるのは、13種類の業務に限られていますので注意が必要です。
衛生管理者試験の合格基準と配点は?
衛生管理者の資格試験には、第一種・第二種ともに「科目ごとに40%以上の正解率かつ全体で60%以上の正解率」との基準が定められており、これが衛生管理者試験の合格基準です。
この記事では、この衛生管理者試験の合格基準や配点などについて解説します。
第一種衛生管理者の合格点は240点以上
第一種衛生管理者の出題範囲・出題数・配点・合格ラインは下表のとおりです。
出題範囲 | 出題数(問) | 配点(点) | 合格ライン(点) |
---|---|---|---|
労働衛生(有害業務に係るもの) | 10 | 80 | 32以上 |
労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの) | 7 | 70 | 28以上 |
関係法令(有害業務に係るもの) | 10 | 80 | 32以上 |
関係法令(有害業務に係るもの以外のもの) | 7 | 70 | 28以上 |
労働生理 | 10 | 100 | 40以上 |
合計 | 44 | 400 | 240以上 |
なお、第一種衛生管理者の試験形式は五肢択一のマークシート方式で、試験時間は13:30~16:30の3時間です。
第二種衛生管理者の合格点は180点以上
第二種衛生管理者の出題範囲・出題数・配点・合格ラインは下表のとおりです。
出題範囲 | 出題数(問) | 配点(点) | 合格ライン(点) |
---|---|---|---|
労働衛生:有害業務に係るものを除く。 | 10 | 100 | 40以上 |
関係法令:有害業務に係るものを除く。 | 10 | 100 | 40以上 |
労働生理 | 10 | 100 | 40以上 |
合計 | 30 | 300 | 180以上 |
第二種衛生管理者は商業、サービス業などの業種での選任に限定されるため、有害業務に係る問題が出されることはありません。
しかし、回答の形式や試験時間、合格ラインなどは第一種の試験と全く同じです。
なお、第二種衛生管理者試験の試験範囲や出題数などは第一種衛生管理者試験よりも狭く少ないのですが、試験時間は第一種衛生管理者試験と同じ3時間に設定されています。
科目ごとの正答率で足切りが存在
衛生管理者の資格試験の出題範囲・出題数・配点・合格ラインについては上に解説したとおりですが、注意すべきことは、科目ごとの正答率で足切りが行われることです。
具体的には第一種・第二種衛生管理者とも、「正答率が40%以下の科目が一つでもある場合は、その時点で不合格」と判定されます。
そのため、勉強をする際には幅広く学習して、苦手な科目をなくしておくことが必要です。
しかも、合格するためには「合計点が60%以上の正解率」が条件ですから、各科目のそれぞれの正答率が40%を超えていても、全科目の合計点が60%以上の正解率でなければ合格できません。
そのことを考えれば、単に幅広く学習して苦手をなくすことは重要ですが、各科目とも正解率が60%を超えるような勉強がより必要であると言えるでしょう。
衛生管理者の合格率は比較的高め
衛生管理者の資格試験は、第一種・第二種とも国家資格の試験としては合格率が高く、表現を換えれば難易度が低い試験です。
この記事では、2つの衛生管理者資格試験の合格率に関して解説します。
第一種の合格率は45%程度
第一種衛生管理者試験における過去5年の受験者数、合格率、合格者数のデータは下表のとおりです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 68,066人 | 31,207人 | 45.8% |
2021年 | 68,210人 | 29,113人 | 42.7% |
2020年 | 43,157人 | 18,916人 | 43.8% |
2019年 | 68,498人 | 32,026人 | 46.8% |
2018年 | 67,080人 | 29,631人 | 44.2% |
第一種衛生管理者の資格試験の合格率は2016年度に大幅に下がりましたが、近年は45%前後で推移しています。
この合格率は国家資格にしてはそれほど高いとは言えず、偏差値は「45~49」ですから難易度としては「簡単」の判定です。
第二種の合格率は50%前後
次に第二種試験の合格率の推移を見ていきましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 35,199人 | 18,089人 | 51.4% |
2021年 | 36,057人 | 17,922人 | 49.7% |
2020年 | 22,220人 | 11,729人 | 52.8% |
2019年 | 33,559人 | 18,511人 | 55.2% |
2018年 | 32,985人 | 17,271人 | 52.4% |
第二種は第一種よりも合格率が高く、さらに合格しやすい試験であることが分かりますね。
衛生管理者の難易度は高くなっている
衛生管理者の資格試験の合格率は、第一種・第二種とも2018年度まで下がり続けており、難易度は高くなる傾向にあります。
合格率は、とくに2016年に10%を超えて大幅に低下し、その後も下がり続けているのです。
現時点では、厚生労働省などによる合格率上昇に向けた制度的な見直しといった動きはみられないことから、合格率の低下傾向は今後も続くものと思われます。
常時50人以上の雇用者を抱える企業や事業場への選任が義務づけられている衛生管理者資格所有者数は、不足しているのが現状です。
衛生管理者の選任義務は強制法規ですから、選任できないと罰則を科せられます。
そうした点を考慮すれば、いつまでも合格率の低下を続けることにはならないでしょう。
したがって、衛生管理者の難易度は高くなる(合格率が低下する)傾向には、近いうちにある程度の歯止めがかかるものと思われます。
合格基準に達する勉強のポイント
衛生管理者資格試験は、合格基準をクリアすれば誰でも合格する「絶対評価」の試験です。
ですから、受験者数などまったく気にしないで、設定されている合格基準を超える点数を取れるよう勉強しなければなりません。
この記事では、衛生管理者資格試験に合格するための勉強法を解説していきます。
頻出項目・要点を重点的に
衛生管理者試験の出題傾向は、過去から繰り返し出題される頻出問題と頻度の少ない分野から出題される問題の割合は、およそ8:2と言いわれています。
そのため、どの試験科目とも効率よく合格基準をクリアできる点をとるための勉強法としては、過去問を徹底的に解くことです。
過去問を解く際に注意したいことは、各年度の3科目の過去問を全部解くことを繰り返すのではなく、1つの試験科目の過去問に絞って解きます。
つまり、「労働衛生」であれば、何年分もの過去問に出題されている「労働衛生の問題ばかり」を、一気に解く勉強法です。
このように特定の科目を集中的に勉強すれば、当該科目で暗記すべき頻出項目や重要項目を確実に把握できます。
この過去問による勉強法を受験する3科目で実践することで、得意・不得意といった問題の解決も可能です。
なお、試験範囲には暗記の必要な項目が数多くあります。
これらについては、ネット上に「語呂合わせ」による暗記法などが紹介されていますので、それらの利用をおすすめします。
関係法令は労働環境をイメージする
関係法令は覚えにくい分野ですが、衛生管理者の職務に関連する内容ですから、仕事をしている状況をイメージしながら勉強すれば覚えやすいでしょう。
関係法令の勉強では、問題に頻出する次のようなキーワードを理解しておくことが必要です。
有害業務以外のキーワード:選任の手続き・届け出・衛生委員会・健康診断・衛生基準規則・安全衛生教育・衛生管理者・面接指導など
さらに、次のようなポイントを押さえておきます。
- 衛生管理者の選任基準や職務内容、衛生管理者選任が必要かどうか -産業医、衛生推進者と衛生管理者の違いについて
- 設備面では、トイレや休憩室の気積の計算
有害業務分野でのキーワード:衛生管理体制、衛生基準、特別教育、作業環境測定、作業主任者、定期自主検査、特殊健康診断など
さらに、次のようなポイントを押さえておきます。
- 職業性疾病から有害化学物質の性状について覚えておくこと
- 健康障害の金属、ガス、酸欠、有機溶剤、高低温、異常気圧、騒音におついて
労働衛生は暗記中心
試験科目の「労働衛生」は、一般的に言われる「暗記科目」です。
ネット上には「語呂合わせ」などの暗記法が紹介されていますので、それらの活用をおすすめします。
労働衛生の勉強では、問題に頻出する次のようなキーワードを理解しておくことが必要です。
有害業務以外のキーワード:有害化学物質の性状、職業性疾病、ガス、酸欠、有機溶剤、高低温、異常気圧など
さらに、次のようなポイントを押さえておきます。
- 職業性疾病から有害化学物質の性状
- 有害物質が常温では固体、液体、気体の何で存在するのかといった問題
- 作業環境に関しては、測定方法や換気設備
- 空気清浄機を置く位置
- 保護具を使ってよい条件や使い方
- 熱中症の種類と対処法
有害業務分野でのキーワード:作業環境管理、健康管理、労働衛生疾病統計、救急処置、食中毒など
労働衛生は、衛生管理者として快適な職場環境づくりの中心となる分野です。
「予防」の分野での衛生管理者の役割やメンタルヘルスに対する理解、身体面だと重量物の取り扱いなどが出題されます。
また、「対応」の分野で頻出されるのは食中毒、心肺蘇生法、止血法、骨折に関する用語の意味や基本的な対応のなどの問題です。
なお、食中毒の原因菌と症状、火傷の程度と対応方法、生命に危険が及ぶ火傷の程度、熱中症の種類と対処法なども押さえておきましょう。
労働生理は過去問で理解
労働生理では「ここがよく出題される」という頻出される分野が特定されておらず、試験範囲全体のさまざまな分野から出題される傾向があります。
身近で理解しやすい範囲なので、確実に理解して得点源にしたいものです。
人体の各臓器や血液の基本的な機能・ストレスなどが、覚えておきたいポイントと言えます。
それぞれの機能では、次のような言葉と意味をしっかりと記憶しておくことが必要です。
- 血液循環:体循環、肺循環、赤血球、白血球
- 神経細胞:中枢神経、末梢神経
- 呼吸:肋間筋、横隔膜
- 消化:糖質、ブドウ糖、アミノ酸、脂肪
- 排泄:腎臓、尿
なお、人体の組織・機能・調整・疲労・睡眠・健康測定などについてもしっかりと記憶してください。
苦手を作らない対策が大切
衛生管理者資格試験には合格基準が設定されており、この基準をクリアしなければ合格できません。
この基準は2つの基準があり、1つは試験科目ごとに40%以上の正解率であることで、他の1つは合計点で60%以上の正解率であることです。
衛生管理者試験を受ける場合は、この2つの基準を同時に満たせるような準備をする必要があります。
そのための最大のポイントは、科目ごとに満遍なく取り組むことで、苦手な分野を作らないことに注意しながら勉強をすることです。
学習計画を立てるときには、各科目の正解率の目標を40%ではなく最低でも60%以上に設定して作ることが何よりも重要と言えます。
このように、全体的なバランスを取りつつ各科目に対して高い目標を設定することで、合格基準をしっかりとクリアすることが可能となります。最終的には、自分の弱点を強化し、各科目を均等にマスターする努力が試験成功への鍵となるでしょう。
通信講座で効率よく合格
短期間で確実に衛生管理者の資格を取得したい場合は、通信講座を利用すると良いでしょう。
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仕事や育児で忙しい中で衛生管理者の取得を考えている方や、初めて衛生管理者の試験を受けるという方は是非チェックしてみてください。
衛生管理者試験の合格基準や合格率まとめ
衛生管理者試験の合格基準や合格率まとめ
- 合格点は、第一種が240点(満点400点)以上で第二種が180点(満点300点)以上
- 合格率は、第一種が45%前後で第二種が50%前後
- 偏差値は、第一種が45~49で第二種が40~45
- 難易度は、「簡単」の判定
衛生管理者試験の合格基準や合格率などについて、さまざまな側面から解説してきました。
衛生管理者の雇用需要は多いのですが、資格所有者の不足は続いています。
衛生管理者は、国家資格としては簡単な難易度と判定されている試験です。
この資格取得へのあなたの挑戦を期待しております!