国家資格のキャリアコンサルタントとは?試験日や受験資格・将来性まで解説
更新
「キャリアコンサルタントって何をする人なの?」
「そもそもキャリアコンサルティングってなに?」
こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
政府による「働き方改革」が推進され、「ワークライフバランス」が求められている現代において、個人のキャリアの在り方は多様になっており、その分、選択に悩んだり道に躓いたりすることも多くなっていると言えます。
その様に、自らのキャリアについて悩む個人に寄り添い、問題の解決やより良い選択を行うサポートをしていく役割を担うのがキャリアコンサルタントです。
この記事では、国家資格の「キャリアコンサルタント」について、資格の設立の背景から試験、難易度、勉強に必要な時間や将来性について解説しています。キャリアコンサルタントに興味がある、受験を考えている人は、是非ご一読ください。
キャリアコンサルタントについてざっくり説明すると
- 出来て数年の新しい国家資格
- キャリアコンサルティングができる人材育成を目的として始まった
- 受験資格を満たさないと受けられない
- 現状の待遇は高くないが将来性はある
このページにはプロモーションが含まれています
キャリアコンサルタント資格の難易度や合格率
キャリアコンサルタントは2016年に制定された、まだ新しい国家資格です。まずは、どんな資格なのかを説明していきます。
キャリアコンサルタントとは
ある個人にとって望ましい職業選択やキャリア開発を支援するプロセスをキャリアコンサルティングと言います。
単純に個人と職業をマッチングして仕事を見つける、といった就職への支援だけではなく、人生で遭遇する様々な経験を積極的に受け止め、その人がより幸福を感じられるような選択が出来るように支援していくことが重要な任務です。
キャリアコンサルタントとは、そのようなキャリアコンサルティングが出来る人材の育成を目的として始まった資格です。
2016年4月より国家資格となり、「特定非営利活動法人キャリアコンサルテイング協議会」と「日本キャリア開発協会(JDCA)」の二つの団体により運営されています。後述しますが、試験はこの二団体によってそれぞれ実施されており、多少傾向が異なります。
キャリアコンサルタントが国家資格となった背景
現在、国を挙げて「働き方改革」が推進されており、厚生労働省はキャリアコンサルタントの各企業への導入を積極的に勧めています。
背景には、終身雇用制度や年功序列といった日本特有の雇用慣行が崩壊し、能力重視制度やワークライフバランスによる勤務スタイルの変化など、日本人を取り巻く雇用環境が大きく変化したことがあります。
厚労省による「自らの職業能力の棚卸しに基づきキャリアアップ・キャリアチェンジを考える機会を全国民に提供する」政策が本格化し、その一環として「キャリアコンサルタント」が国家資格化しました。
国家資格となったことでキャリアコンサルタントは名称独占資格となり、キャリアコンサルタントの国家資格を持たない人は「キャリアコンサルタント」という肩書きを使ってキャリアコンサルティングの仕事は出来ないようになりました。(「キャリアアドバイザー」や「キャリア相談員」などと名乗ることは可能)
キャリアコンサルタントの試験制度と費用
試験の出題形式は、学科と実技(論述・面接)の二つです。学科試験は、4肢択一の50問で試験時間は100分間、実技試験は論述試験が50分間と、面接試験が20分間です。
論述試験は、逐語記録を読んでその後の設問に解答していく形式です。面接試験は20分の割り当ての中で、最初の15分でロールプレイングを行い、残りの5分間で面接官による口頭試問が行われます。
ロールプレイングでは、面接官とは別にクライアント役の人がおり、実際のキャリアコンサルティング場面を想定して、面談開始からの15分という設定で行います。
受験者は、キャリアコンサルタントとして相談者を尊重する態度や姿勢(身だしなみも含む)で、相談者との関係を築き、問題を捉え、相談者が自分で気付き、成長するような応答・プロセスを意識します。
口頭試問では、ロールプレイング中に行った自らのキャリアコンサルティングについて、面接官からの質問に答えます。
試験費用は、学科試験が8,900円、実技試験(論述・面接)は29,900円です。
尚、学科試験と実技試験(論述・面接)に分かれていますが、実際の試験では学科試験と実技(論述)が同日に行われ、実技(面接)が別日で設定されます。
2回目以降の受験の際に、一部合格でどちらかの試験が免除になる場合、実技試験が免除の場合は学科試験の一日だけですが、学科試験が免除で実技試験のみを受ける場合は、論述の試験日と面接の試験日が別日なので二日を要することになります。
キャリアコンサルタントの次回の試験日程
キャリアコンサルタントの次回学科・実技論述試験日は、2020年の11月1日(日)、となっています。実技面接試験は2020年11月7日、11月8日、11月15日の三日間です(いずれかの日が割り当てられる)。
応募期間は2020年8月17日(月)~2020年9月1日(火)となっているので、今現在受験を検討している人は日程に注意しましょう。
合格発表は2020年12月15日(火)です。
ちなみに、次々回の学科・論述試験日は20201年3月7日、申込期間は2020年12月16日~2021年1月7日です。
キャリアコンサルタント試験の受験資格
キャリアコンサルタント試験は、以下の4つのいずれかに該当しなければ受けることが出来ません。
-
厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した方
-
労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する方
-
技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した方
-
キャリアコンサルティング養成講座を修了した方
実際に業務などで他者のキャリア形成支援・職業相談などを行っている方は実務経験により受験が可能ですが、そうでない場合、実際にはほとんどの方が受験のためにキャリアコンサルタント養成講座を受講することになります。
キャリアコンサルタント試験が免除になる人
以前の試験で学科試験又は実技試験のどちらか一方の合格者は、その合格している試験が免除になります。免除となる期間は合格した日から3年間です。
技能検定キャリアコンサルティング職種の1級又は2級の学科試験、実技試験のどちらか一方の合格者は、キャリアコンサルタント試験の対応する試験が免除になります。
キャリアコンサルタント資格を生かすには登録が必要
キャリアコンサルタントとして活動するためには、試験に合格しただけでは不十分です。試験に受かった後に、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会に登録することが必要です。
登録には、法令に基づいて、登録免許税9,000円と登録手数料8,000円(非課税)を納付する必要があります。
ちなみに、罰金以上の刑を受けてから2年以上経過しない人や、重度の精神障害でコミュニケーションが取れない場合は、欠格事由に該当するため、試験に合格していても登録することはできません。
尚、登録後も5年ごとに講習を受けて更新をする必要があります。
キャリアコンサルタントの勉強時間や勉強法
試験合格に必要な勉強時間は200時間
合格のために必要な勉強時間は大体100~200時間と言われています。
働きながら合格を目指すのであれば、一日2時間と考えても最低でも3ヶ月は勉強する必要があると言えます。
試験範囲は比較的広く、人名とその人物の代表的な理論や用語など暗記物も多いです。また、法令関係などは最新の情報にアップデートして把握しておく必要があります。
難易度としては、合格率から考えてもそこそこ高い(3人に2人は落ちる)ので、しっかりとした対策が必要です。
養成講座を受ける人が多い
キャリアコンサルタント試験は事件資格を満たしていないと受験できません。
受験資格の一つに、「厚生労働大臣認可のキャリアコンサルタント養成講座を修了すること」とあり、多くの人がこれを受講して受験資格を得ています。この場合、受験資格が得られるのと同時に受験対策を行う事になるので一石二鳥とも言えます。
この養成講座は、LECやリクルートなど様々な企業が開講しているので、いくつかを比較検討した上で自分に一番適していると思える講座を選べば良いでしょう。
講座の内容は、3ヶ月間の通信講座と10日間のスクーリングが一般的で、合計140時間程度です。スクーリングは夜間や土日開催のものもあるので、社会人でも無理なく受けられます。
養成講座を受講すると、同じ講座の仲間と一緒に練習することになるので、面接などの実技はしっかり点が取れるようになります。
一方で、学科試験は対策は行われるもののそれ以外での学習をどれだけ頑張れるかというところになるので、人によって点数が取れる・取れないが分かれると言えます。
試験合格に必要な勉強スケジュール
キャリアコンサルタント試験の勉強スケジュールとしては、まずは受けようとしている試験の半年前を目処に申し込むと良いでしょう。
試験は年に3回程度、3月・6月・12月あたりにあるので、仕事の繁忙期やライフイベントなどを考慮してしっかりと余裕を持って日程を組みましょう。
半年前からコツコツを学科の勉強を積み重ねていき、本番の2~3ヶ月前からスクーリングを行って面接対策を完成させていきます。
スクーリングは一日8時間かかるので、スクーリング期間の学科試験対策の勉強は主にそれ以外の日にすることになります。一日およそ2~3時間の勉強が必要です。
受ける養成講座のスケジュールによって、対策方法は異なるので、自分にとってより効率的な学習スケジュールを立てましょう。
学科試験は過去問を使って勉強しよう
先ほども述べたように、面接試験については養成講座で講習を受けることでカバーすることができます。しかし、学科試験については基本的には自分で学習していくことになります。
キャリアコンサルタントの学科試験対策は、他の多くの資格試験と同様に、過去問を使うのが王道の方法です。キャリアコンサルタント試験の過去問は、日本キャリア開発協会のホームページから確認することができます。
過去問を少なくとも2~3周する学習をすることで、本番の形式に慣れておくことができます。
以下に問題例を示します。
【問題】
キャリアコンサルタントの職業倫理に関する次の記述の内、最も適切なものはどれか。
-
キャリアコンサルタント自身が育児休暇を取る予定があったが、相談者に心配をかけると良くないので、休暇に入ってから、後任のキャリアコンサルタントに説明してもらった。
-
面談の課程で、相談者の上司に問題があることがわかったので、相談者の利益を考え、相談者には断らずに人事部に報告した。
-
外国人社員に対して、英語によるキャリアコンサルティングを依頼されたが、十分に意思疎通できるだけの語学力が無いため、相談者の同意を得て、英語力の高いキャリアコンサルタントを紹介することにした。
-
大学生に対するキャリアコンサルティングの課程で、相談者がなかなか決断しないので、「この方向で進めましょう」と指導し、時間内で結論を出すようにした。
正解:3
試験運営団体による傾向の違い
キャリアコンサルタントの試験は「キャリアコンサルティング協議会」と「日本キャリア開発協会(JDCA)」の二つの団体によって実施されます。冒頭の章でも触れましたが、二つの団体で多少試験の内容に違いがあります。
学科試験は、両団体で共通なので違いは何もありません。実技試験(論述・面接)で多少内容に違いがあり、評価項目が異なっています。
まず論述では、問題文中の逐語録を読んで、CLの主訴を理解し、そのうえCLの問題点を把握しているかということが問われます。その後、自分はCCとしてどのように対応するか、というようなことを回答していきます。
その際、協議会の方は自由に回答を書いていく形式なのに対し、JDCAの場合は指定語句があり、それを使って回答していく形になり、この点で多少違いがあります。
また、実技の方ではそれぞれ公表していますが、評価項目に違いがあります。協議会では「態度・展開・自己評価」が評価項目であるのに対し、JDCAは「主訴/問題把握・具体的展開・傾聴」が評価項目となっています。
評価項目が異なるということは、試験対策も変わってくるということになります。
どちらの団体で受けるかは、受験申請の際に自分で選択することになります。両方の傾向や特徴などもよく調べて検討し、自分に合っていそうな方を選ぶようにしましょう。
なお、二つの団体の試験に上位下位はなく、どちらを受けて合格してもキャリアコンサルタントとしての評価は同じです。
キャリアコンサルタントの将来性
では、試験に合格し、登録を済ませた後のキャリアコンサルタントの将来性はどのようになっているのでしょうか。
主な職場は企業や学校
キャリアコンサルタントの主な職場は、企業の人事部や学校の進路相談室、公共機関や民間の職業相談所などです。
これらのどこで働くかによっても微妙に内容は異なってきますが、こういった職場でキャリアコンサルティングを行う事が主な仕事となります。
個人からの相談を受ける形の中で、相談者の目指すキャリアを明確にし、「この仕事(職務)ならあなたの経験を活かせる」「その仕事に就きたいならこんなスキルや経験が必要となる」ということを伝えていきます。
相談者の自己理解を深め、前向きな気持ちを啓発し、仕事への意識を向上させていくのがキャリアコンサルタントに課される任務です。
待遇はまだまだ
厚生労働省の後押しもあって知名度はそれなりに高まっている感のあるキャリアコンサルタントですが、現実的にその待遇は決してまだまだ良いものではないというのが実情です。
キャリアコンサルタントの求人自体は増えているものの、非正規やパート・アルバイトでの雇用が多く、多くのキャリアコンサルタントがいくつかの職場を掛け持ちしてキャリアコンサルタントとしての仕事を行っています。
そういった状況から、キャリアコンサルタントとしての活動のみで得ている年収は250万円に満たないという人も多いのが現状です。
教育機関や公的な職業支援機関(ハローワークなど)でフルタイムで働けるケースももちろんありますが、多くの場合、1年などの有期契約で次年度の更新があるのかないのかなど不安に晒されることも多く、メリットと同時にデメリットも存在しています。
これから社会的地位も高まる予感
現状のキャリアコンサルタントの立ち位置は決して高くないというのが正直なところですが、これはある意味当然とも言えます。キャリアコンサルタント自体が、国家資格化してまだ数年しか経っておらず、社会的地位が確立していないからです。
厚生労働省による「キャリアコンサルタント10万人計画」もあり、今後もますますキャリアコンサルタント資格は注目されていくでしょう。
また、日本国内では今後「東京オリンピック」が控えていますが、その終了後には不況が到来すると言われています。失業する人も多く出てくると想定され、人材エージェントやキャリア相談員の需要は非常に高まると考えられます。
それに伴って社会的認知度も上がり、併せて社会的地位も高まってくるでしょう。
キャリアコンサルタントとして活躍するには
今現在の社会的認知度はそれほど高くない、今後数は増えていく・・・、という状況の中で、キャリアコンサルタントとして活躍するにはどうしたら良いのでしょうか。
国家資格としての登場から数年しか経っておらず、まだまだ未知数と言えますが、これから受験しようとする場合、試験の合格を目指すだけではなく、キャリアコンサルティングの中での自分の専門性を意識しておくと良いでしょう。
キャリアコンサルタントは一言で言えば「キャリアの専門家」ということになろうかと思いますが、そもそもキャリアという言葉には多くの意味があります。また、キャリア相談をしようとする人の年齢や立場や属性は様々です。
「どういった」キャリアについて自分は強いのか、「どのような人たちの」キャリア支援に関わるのか、ということを自分の中で明確にし、資格取得にプラスしてその専門性を高めておくことが、実際にキャリアコンサルタントとして活躍するためには必要となるでしょう。
キャリアコンサルタントの関連資格
キャリアコンサルティング技能士
キャリアコンサルタントが国家資格になるのに先立ち、2008年に技能検定職種の一つとして追加されたのがキャリアコンサルティング技能士です。
キャリアコンサルティングの知識と技能を測る国家検定で、「1級キャリアコンサルティング技能士」と「2級キャリアコンサルティング技能士」に分かれています。
2級は「熟練レベル」とされ、相談者に対して1対1での支援が的確に出来るレベルです。
1級は「指導者レベル」で、2級より高い水準で的確にキャリアコンサルティングが行え、組織や関係者との連携などのコーディネート能力を有し、他のキャリアコンサルタントからの相談に対して指導・アドバイスが出来るレベルです。
レベルからもうかがえますが、キャリアコンサルタントの上位資格として位置づけられています。
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格は、日本キャリア開発協会が認定しているキャリアカウンセラー資格で2000年に誕生しました。民間の資格ですが、既に20,000名近くの方がCDAを取得しています。
実務に即したスキルの取得が重視されており、既にキャリア支援に携わっている、キャリア相談を行っているというような実務家向けの資格と言えます。
厚生労働省のキャリア形成促進助成金の対象として「キャリア・コンサルタント能力評価試験」として指定されていたため、2016年3月末までにCDA資格を取得した方はキャリアコンサルタント登録が可能となっています。
現在、CDA資格を取得するには、キャリアコンサルタント試験に合格した上で日本キャリア開発協会に入会し、区分毎のCDA認定条件を満たす必要があります。
キャリアコンサルタントまとめ
国家資格のキャリアコンサルタントのまとめ
- 経験がなくても養成講座の受講で受験資格が得られる
- キャリアコンサルタントとして働くには合格後に登録が必要
- 実技試験は養成講座で、学科試験は個人での対策が重要
- 今後社会的認知度が高くなることで将来性が期待できる
キャリアコンサルタント試験には実務経験や指定講習の受験資格が設定されていますが、多くの人が指定の養成講座を受講することで受験資格を得ています。
経験がなくても十分に道は開かれています。養成講座を受講することで受験資格も得られ、同時に受験対策もできるので、これからキャリアコンサルタントを目指したいという人には一番の近道と言えるでしょう。
今はまだ待遇もそれほど良いとは言えませんが、今後キャリアコンサルタントの数が増え、その役割や位置づけが確立されていくに連れて、社会的地位も高くなっていくと考えられます。国が数を増やそうとしている今がまさに狙い目かもしれません。
簡単に合格出来る試験ではありませんが、興味を持って取り組める人には是非おすすめします!